人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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宇宙空間

ゼロ『という訳で、今日二人をエスコートするウルトラマンゼロだ。何かあってもきっちり護るから、安心してくれよな!』

「輝夜よ。かぐやでいいわ。丁度外に出てみたくなったし、案内を担当するわ。よろしくね」

はくのん「宇宙服も無しに今、私は宇宙にいる・・・」

かぐや「それは私の一時的な能力よ。永遠を操る上でのちょっとした応用ね♪」

「すげぇ」

『あぁ、すげぇな・・・。じゃ、声を聞いたウルトラウーマンとの接触、月の調査。一緒によろしくな!』

「「おー!」」

『じゃあ行くぜ!シェアッ!』

「シュワッチじゃないの?」

『は?』

「シュワッチじゃないのかしら・・・」

『・・・・・・しゅ、シュワッチ!』

「よろしい!」

はくのん(弄られ系でもいける万能兄貴、ゼロにぃ・・・)


ウルトラマンゼロ、月へ!

『月の裏側・・・いや、結界に分け隔てられた表側、か。地球から見上げるのとは偉い違いだぜ』

 

場面は地球から切り替わり、こちらは月よりウルトラウーマンの意志と、戦闘の跡地を調査するために派遣されたウルトラマンゼロ、はくのん、そして水先案内人である輝夜の三人がかの青き星より寄り添う小さな月へと降り立った場面へと移る。そこは月と呼ばれるイメージからは程遠くもある、物寂しい岩壁と静寂のみが広がる殺風景な世界が在った。

 

「本来なら、月の全体は余すところなどなく月の民達が掌握していたわ。けれど歴史の中で月の民は過ちを犯し、宇宙の孔という現象から避難と退避をするため結界を張り現実との境界を作った。・・・残骸の一つも見当たらないとなると、グリーザは本当に容赦が無かった様ね。お土産は期待できそうにないわ」

 

輝夜は月の姫であり、禁忌である不老不死を手にした事により月を追放された存在である。しかしそれは、地上の生活に興味があったため従者に不老不死の薬を作らせ飲ませたという噂もある程の破天荒にして自由人。必要とあらば追放された故郷に近付く事にもなんら躊躇いを見せることのない鉄の心臓持ちである。ウルトラマンとの活動は余程興味深かったのだろう。

 

「このまま戦闘の舞台の跡地に向かいましょうか。岸波、しっかり波動や波長を受信して逃すことの無いように。いいわね?」

 

「解った。ムーンセルやレガリアの探知を強める」

 

はくのんもまた、月に眠っているムーンセル・オートマトンの王であり、レガリアという王権を有する月の頂点でもある。その縁からは預かり知らぬが、宇宙の孔を縫い止めたウルトラウーマンの意志をキャッチできた唯一の存在。今回の調査には欠かせない人物だ。

 

『よし、じゃあちょっくらそこら辺を飛んでみるか。捜査の基本は脚って言うしな!』

 

「あなたは飛んでおられるでしょう?脚というのは違和感がありましてよ?」

 

『そこはほら、フィーリングってやつだよ。感覚の問題だ。さぁ二人とも──行くぜッ!』

 

「飛ぶぅ。でもムーンセルって実際のとこ、何処にあるんだろ」

 

「月の民すらも手付かずな月の聖杯・・・実に興味があるわね。宝探しはいつだってワクワクするものだもの」

 

二人を抱え、ゼロは飛ぶ。虚無へと呑まれてしまった、栄華を誇りしかつての月の表側を──

 

~ウルトラマン飛翔中・・・

 

『月面か・・・ジードのヤツがベリアルに取り込まれて浚われちまった時の事を思い出すな』

 

「流石は音に聞こえし光の巨人。月になんて来訪済みでしたのね。流石」

 

『へへっ、まぁ宇宙の平和を護ってる関係上な。で、どうだ白野。何か感じるか?俺もなんとなく、微弱な波長を感じないことも無いんだが・・・』

 

見渡す限り続く、寂しげな岩肌を飛ぶゼロ達三人。当然ながら生命の気配の無い月の静けさの洗礼を受けながら、ウルトラウーマン、そして宇宙の針の情報を探す三人は調査を続けていた。

 

「んー・・・反応はついたり消えたりしている。声らしい声も、割と最後に聞いたきりで語りかけては来ていない」

 

『肉体を失って、なんとか意志を飛ばしたって話だったな。となるとそのウルトラウーマンは生きてはいるがヤバい状況の可能性が高い。なんとかできるなら、してやらねぇと』

 

「月の賢者の協力を得たとはいえ、虚無そのものたるグリーザをたった一人で相殺に持ち込んだ実力からして、相当な神通力を持ってる筈。あなたやあなたの故郷に情報は行っていなかったのかしら?」

 

輝夜からしてみれば、光の使者たるウルトラマン達が知らない存在がいるという事態が中々な事である。彼らの活動規模は文字通り宇宙規模。それほどの実力者であるならば噂の一つも立っている筈だが・・・

 

『光の国にならウルトラウーマンもいないことはない。だが別の星、Oー50のウルトラウーマンって言うと俺が知っているのは一人だけだ。まだまだ新米で、一人でグリーザをなんとかできるようなレベルじゃない。兄妹揃っていたなら解らねぇが、少なくとも今回の役者じゃないだろうな。そもそも年代が違ぇ』

 

「リッカが言うには、Oー50のウルトラマンはミッションを受けて働くらしい。そのミッションに掛かりきりだったのかもしれない」

 

そしてそのミッションは大抵初心者が受ける難易度ではない。カルデアのマスター基準で言えば、サーヴァント無しで特異点を修復しろといった難易度も平気で下され、死傷する者が後がたたないのがOー50クオリティである。

 

『・・・有り得るな。人知れず単独でミッションを遂行し、相討ちとはいえグリーザすらもなんとかできたウルトラマンウーマン・・・こりゃあ、グリージョ辺りが喜びそうだ』

 

「月の都に行けば文献の一つも残っているかしら。あの姉妹に取り寄せさせましょうか。・・・ゼロ?もうすぐグリーザが生まれた地点へと到着するわ」

 

『あぁ!・・・ってまだ到着してなかったのかよ!?かれこれ十分近くマッハ速度で飛び回ってたんだぞ!?』

 

月の表面、全てが物悲しい状態であったのはグリーザの登場の余波とされる。それほどに凶悪無比の範囲で虚無に呑み込まれたとするならば、月の民が結界を張ったのも頷けると言うものである。

 

「グリーザの残した傷跡はそれほど大きかったと言うことよ。月の民が結界を張り逃げた宇宙の孔はそれほどのもの。さぁ、念のため気を引き締めましょう。人知れず月を救ってくれた光の使者に粗相が無いようにね」

 

その言葉に頷き、青きマントを翻らせゼロは飛ぶ。現地点から更に飛行した、丁度月の裏側の対極、表側と言うべき場所を見下ろし、二人は息を呑む。

 

『これが、無に呑み込まれた場所って訳か・・・』

 

其処は、辺り一帯の『クレーター』であった。スプーンで切り取り掬い上げたかのような巨大な空洞。数百メートルは下らない、底の見えない凹んだ地形。しかもそれらは自然に出来たものではないことは一目で見てとれる。空間の境と境の繋ぎ目がはっきり解るレベルで切り取られていたからだ。今までの荒廃した荒れ地などとはレベルが違う。其処には本当に何もない。【虚無】なのだ。

 

「再開発も望めない不毛そのもの。それが宇宙の理に手を出した者への罰。・・・幻想郷も、今のままではこうなるでしょう」

 

虚無という現象そのものには、発展した科学も生命を捨てた不死も無意味であった。ただ結界を張り隔絶するしか無かった危機が地上にもたらす暗示を行う輝夜であるが、ゼロはそれを否定する。

 

『いいや、そうはならねぇ。リッカ・・・俺の妹とその仲間達がギリギリまで頑張ってるんだ。俺達の力を合わせりゃ、グリーザなんぞに負ける筈がねぇ!』

 

「そうあってほしいわ。ある意味・・・この危機を乗り越えることが出来たなら、地上の民は月の民達の鼻を大いに明かせてやれるでしょうから」

 

決意を新たにしたその時、はくのんの耳に音が届く。宇宙の静寂の中でも弱々しい、消えてしまいそうな声だ。

 

〈──か・・・──声・・・──ます・・・〉

 

確かに呼び掛けているその声、それは地上ではくのんが耳にした──ウルトラウーマンの声と全く同じもの。同時に、指のレガリアが点滅している。間違いなく、ここに在る。残留思念、ウルトラウーマンフィリアの意志が此処に。

 

「・・・!聞こえた。この真下から声が聞こえる」

 

『本当か!でかした白野、よっしゃ、一気に降りるぜ!!』

 

一気に飛び降りるゼロ。かつて孔が空いた無限の虚無の跡地に待ち受けるものは希望か絶望か、果たして──。




月の都・表側跡地

はくのん「誰もいない。当たり前だけど」

輝夜「結界で仕切ったのが遥か過去の話だもの。数万年単位で生きる方でないと途方もない昔・・・いえ、数千万単位でも少し長いかもしれないわね」

ウルトラマンゼロ『ここまで来て成果無しで帰るつもりはねぇ。手荒で強引だが、無理矢理にでも顔合わせさせてもらうぜっ!!』

瞬間、ゼロが光輝く。宇宙の闇すらも切り裂くその輝きは、かつてセイレムにも示されたウルトラマンゼロという存在の極致にて境地。

シャイニングウルトラマンゼロ『輝夜、俺達の周囲を一時的に永遠で固定してくれ。限定的に時間を巻き戻す!』

「承知したわ。岸波、目を閉じて」

はくのん「おなしゃす」

永遠、そして一瞬を操る輝夜の能力にて、自分達の周りの時間はそのままに、それ以外を逆行させ一時的なタイムトラベルを行う準備を行う。そして──

『シャイニング・・・!スタードライブ!!』

シャイニングウルトラマンゼロの力で、周囲の時間を猛烈な勢いで過去へと戻す。それにより、ウルトラウーマンとグリーザが戦った時代へと近付いていき、対話を試みるのだ。

『応えてくれ。俺達には、君の力が必要なんだ!』

「お待たせ致し申した」

ゼロの呼び掛け、はくのんの声。それらが重なりし瞬間──声が響く。

女性の声『──来てくださったんですね!ありがとうございます!信じていました、来ていただけると!』

其処に現れしは──銀のしなやかな流線型ボディにして、背丈、胸、尻部といった女性的なスタイルを強調した豊満な肉体に黒のライン、金色のプロテクター、ガントレット、アンクレットを装着した、凛々しい目付きのウルトラウーマン。頭部には王冠の様な、ティアラの様な高貴な飾りを懐き、ロザリオをあしらったカラータイマーを胸に懐き白きマントを羽織りし女傑、或いは女帝めいた神々しい姿。

『私はフィリア。ウルトラウーマンフィリア!今はグリーザの中でふよふよしている死に損ないです!よろしくぅ!』

ゼロ『おっ、お、おう。あんたが、ウルトラウーマン・・・』

「想像してたイメージと違う・・・!?」

「・・・グリーザの中で生きているのだから、実力がない筈は無いでしょう?」

「納得」

快活で儚げなイメージの声とはまるで真逆なその神々しく神秘的な女性ウルトラマンのフレンドリーな邂逅に、一行は唖然とするのであった──






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