人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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博麗神社

ゼロ『・・・ってのが、月であった大体のあらましだ。虚無の中に、助けてやりたいヤツがいる。あんたらの力を貸してくれ』

はくのん「いぇーい。私ウルトラウーマンいぇーい。リッカ見てるぅ?ロザリオ~」

リッカ『すっっっげぇぇー!!いいな、いいな!はくのんいいなぁーー!!』

ギル「言われるまでもない。それほど稀少な巨人、我等の宇宙進出の際や地球外の問題の戦力として、マルドゥークと並ぶ有望株となろうな」

──ロザリオで変身!?キングお爺さんの秘蔵っ子!?

はくのん『ロザリオで・・・変身した(ドヤァ)』

リッカ『いぃいーなぁあぁあぁー!!』

「いよいよ、相手も本腰を入れてこよう。リッカ、そして巫女めを仕上げにかからねばな。残る聖杯は、ヤツが持つものを抜けば後一つな様だが・・・」

リッカ『あぁ!それならペペさんが担当してるヤツだよ!でも今、なんだか悩んでるみたいなんだよねぇ・・・』

はくのん「悩んでる・・・?」



?「残る欠片は、後一つ・・・そしてそれは私の手に。でも、なんだかそれどころではないみたい」

「・・・仕方無い。招くのもかねて、手助けをしてあげようかしら・・・」




あなたを見透かす心の瞳

「うーん。困ったわねぇ・・・マスターにあるまじき悩みではあるんだけど、でもやっぱり困ったわねぇ・・・」

 

ミョウレンジは悩んでいた──

 

「ペペロンチーノ!」

 

スカンジナビア・ペペロンチーノは悩んでいた。この幻想郷に来てから、いや・・・アシュヴァッターマンというサーヴァントのマスターになった瞬間から、ペペロンチーノは悩んでいたのである。気楽でひょうきん、精神的に最も成熟している彼女・・・彼・・・ペペロンチーノという人物が、抱く悩み。それはズバリ・・・

 

「なーんか、アシュヴァッターマンに嫌われちゃってるのよねぇ、アタシ・・・」

 

そう、アシュヴァッターマンとのコミュニケーションである。自分以外のマスター達は、サーヴァントとのコミュニケーション・・・絆の構築は極めて良好、積極的である。カイニスとトレーニングしているキリシュタリア、アタランテと、何故かやってきているアナスタシアにアップルパイを作るカドック。蘭におんぶされ帰ってきたヒナコ。北欧の当時を輝く目と耳でシグルドと語り合うオフェリア。ゴッホとスケッチ巡りに勤しむデイビッド。Aチームでこうであり、それ以前のマスターなど語るまでもない。カルデアで重要視されるもの、それは絆と連携である。だからこそ、積極的に交流が推奨されている。

 

しかし、ペペロンチーノとアシュヴァッターマンと言うと中々難しい状況である。ペペロンチーノが何かを話しかければ「あぁん!?」、何をしたいかと聞けば「その時決めらぁ!!」、特訓するかと聞けば「おぉん!?」、・・・などと、常に怒り、憤懣を燃やしている始末。彼は非常に気難し・・・否。情熱的な戦士なのだ。

 

「誰彼構わず、かと思えばそうでもないのよねぇ・・・」

 

自分以外には、ただの気のいい兄ちゃんな彼が尚ペペロンチーノに影を落とす。元々、本来アシュヴァッターマンとは粗暴で狂暴な存在ではない。信心厚きバラモン僧であり、神の信仰に生き真摯に生きるものであるのだ。これは彼のかつての過去の戦、卑劣さと卑怯が跋扈した戦場に起因しているのだ。

 

「サーヴァントっていうのは一面の誇張。あの時の怒りが、彼のアーチャーとしての姿なのね・・・」

 

クルクシェートラの戦い。彼が憤怒の化身となった原因は此処に起因する。この戦いにて彼は、父を相手側の卑劣な策謀で奪われてしまう。無双を誇った父ドローナを倒すため、アシュヴァッターマンと名前を付けた象を殺し『アシュヴァッターマンを討ち果たした』と吹聴した。息子の悲報に、ドローナは絶望し武器を手放し瞑想に耽った。その隙を狙い、パーンダヴァ陣営はドローナを討ち果たしたのである。

 

これに怒り狂いしアシュヴァッターマン。そしてその怒りは彼に戦士としてあるまじき選択をさせる。寝静まり、警戒を解いた陣営へ襲撃──即ち、夜襲。戦士の誇りを汚す最悪の報復である。僧であり、聖仙であった彼をそこまで染め上げた憤怒がどれ程か。それは推して知るべしである。その一面が誇張されたアシュヴァッターマン、つまり常に怒っているのである。めっちゃキレているのである。

 

「参ったわ・・・これじゃあ聖杯探索にも行けないじゃないの。アタシ達以外皆見つけてるのよ?偉そうに年長者面して一番使えないとかそれ一番嫌なヤツよね、我ながら!・・・一人でウケてる場合じゃないわ。今の事件の間には何とかしたいんだけどね・・・」

 

サーヴァントの力なくては、マスターは無力な存在。かよわい女の子(で通している)ペペロンチーノとしては、そんな状態でホイホイ探索に行きたくは無いのである。こう、心と絆がピッタリと繋がったfateパートナー!みたいな感じで行ってみたい乙女心が働いているのである。それはそれとして成果出さないと王の不興を買い冷凍パスタルートである。

 

「んー・・・何かしら切っ掛けを掴みたいわねぇ。でもアシュヴァッターマンの好きなものも嫌いなものも戦いだし、どうしたら・・・」

 

思案に耽る為、人里近い舗装された道を歩き唸るペペロンチーノら、彼もまた、新生Aチームに懸けているメンバーだ。そしてプロである。半端な真似はできないと思案していたその時──。

 

「すみません、ちょっといいですか?実は私、人里への行く道を探しているんですが、こちらで合っています?」

 

ペペロンチーノに、声を掛ける者がある。その声は幼げな響きではあるが、知性と気品を備えた落ち着いた声音であり、聞くものに良いイメージを与える類いの者だ。

 

「え?えぇ。確かこちらを真っ直ぐよ。まぁアタシも来て数日だから、ここら辺しか解らないけどねー!」

 

「まぁ。ではあなたも旅人でいらっしゃるのですか?奇遇ですね、私もなのです。少し変わった服装をしてはいるけれど、これでも立派な成人なんですよ?ふふっ」

 

やや薄紫のかかったボブヘアースタイルに、探索用の装備を付けた小柄な少女。頭にはヘアーバンドを付けた、落ち着いた雰囲気の彼女がペペロンチーノに語り掛ける。

 

「此処で出会ったのも何かの御縁。茶屋でお茶の一つでも如何です?私、訳あって人と話す機会が少なくて・・・」

 

「あらそう?合縁奇縁って言うし、此処で出会ったのも何かの縁だというなら・・・乗らない手は無いわね!よーし、じゃあしばいちゃいましょうか!お茶!可愛らしいアナタ、お名前は?」

 

「名前・・・ (みこと)と言います。あなたのお名前はなんでしょう?」

 

「アタシ・・・アタシは・・・そうねぇ。スカンジナビア・ペペロンチーノよ。あ、ふざけてる訳じゃないのよ?これ、アタシのコードネーム。実は優秀なエージェントだったりするのよ、アタシ?」

 

「まぁ、エージェント。お忍びのお休みだったりするのでしょうか?ふふ・・・そういったお話も、詳しく聞かせていただけたなら嬉しいです。では、早速参りましょうか。ペペロンチーノさん」

 

「了解了解!いやぁ、幻想郷はイイわよねぇ~。皆が皆美少女ばっかり!目移りしっぱなしだわぁー!やだこれ罰当たりかしら?でも仕方無いじゃない事実なんだものー!」

 

「ふふっ。田舎ではあるけれど意外と広い・・・新天地あるあるですね。それでは、そういったお話もごゆるりと致しましょうか」

 

意気投合したペペロンチーノと命は、歩き出す。美味しい茶屋がある人里を目指して。

 

(・・・なーんて言ったけれど。どう考えても怪しいわよね、この子・・・)

 

小さいながらも、風格のある佇まい。旅人にありがちな新天地への高揚と期待、僅かな不安をも感じさせない泰然とした姿。それらを鑑み、ペペロンチーノは僅かな警戒を──

 

「ふふっ・・・あなた、笑顔を仮面にして辺りを欺くタイプですね?」

 

「──あら?」

 

怪しい素振りは見せなかった。しかし、命はにっこりと見据え、語り掛ける。

 

「本当の意味での信頼を得るには、時には単純になる事も大切です。案外、疑念というのは他人に伝わるものなんですよ」

 

「あら、あなたカウンセラーみたいな役職もしてらっしゃるの?」

 

「そんなところですね。まぁ・・・理由もあってあまり歓迎はされないのですが。ほら・・・」

 

命は寂しげに笑う。

 

「人は、どうやら心を手に取るように読み取る相手を嫌うみたいなので・・・まぁ、もう慣れっこなので」

 

それはまるで、長い間そうであったかのように、実感を伴うかのように目を細め──

 

「さあ、行きましょう。もしかしたら、力になれるかもしれません」

 

柔らかく、彼女はまた微笑んだ。




人里・甘味処

命「はぁ、美味しかった。久しぶりです、知らない人とご飯を食べたのは」

ペペロンチーノ「そうなの?アタシで良かったらいつでも付き合うわよぉー?女子会とか大好物だもの!また誘ってくれるかしら?」

「えぇ、もちろん!今日はありがとうございました。御礼に、あなたのお悩みを解消する手助けを致しましょう」

ペペロンチーノ「悩みねぇ~。最近徹夜がキツくなってきたとか、ゲームが長い時間出来なくなったとか色々あるけどぉ~・・・」

命「ふふっ。他には・・・『サーヴァントとの関係構築がうまくいっていない』とかでしょうか」

ペペロンチーノ「!」

命「それは、あなたの心の奥にあるとある感情が原因です。良かったら、二人でそれを明確にしてはみませんか?」

「・・・あら、心を見透かされているみたいね・・・まるで日本の」

「『さとり妖怪みたい』・・・かしら?」

「!」

命「ふふっ・・・少なくとも・・・私はあなたの敵ではありません。あなたたちを応援する、観客といったところかしら」

頬を伝う冷や汗を感じ、生唾を飲み込むペペロンチーノ。命は静かに笑い・・・

うさぎ店員「御代!」

「あ、ごめんなさい・・・」

素直に御代を払ったのであった。

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