人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ちれーでん・フロント

恋「ようこそー!最近出来たちれーでんへ!私はこのスパの支配人・・・の妹!れん!恋と書いてれん!よろしくね!で、ペットのリンとクー!」

リン「ナーゴ」

クー「カァ?」

ペペロンチーノ「可愛らしい店員さんねぇ・・・え、最近出来たの?」

「そうそう!支配人がとあるものに祈りを捧げたらなんか凄い女神様に繋がって!『スパを・・・温泉街を作りたもう・・・お腹わって話すには温泉と日本創成前から決まっておりまするです・・・お婆ちゃんの知恵袋あなや・・・』なんてお告げを聞いて作ったの!」

ペペロンチーノ「具体的!?」

アシュヴァッターマン「おぉよ・・・見れば見るほど特訓や修行に使えそうなもんばっかじゃねぇか!!こいつぁいいぜぇ!」

恋「そう!これが真実だよ!イザナミ様は温泉を作って憩いの場とした!私達は優しいお婆ちゃんの血を引いてるんだ!」

リン「ナーゴ」

「え?なんでイザナミ様って解ったって?い
や全然解んないよ?」

クー「カァ?」

「?そんな事すぐわかるでしょ?何故なら私はお婆ちゃんを信じている!私達はイザナミお婆ちゃんの子孫だー!うぉー!!」

「カァー!!」
「ナーゴ」

ペペロンチーノ「・・・命ちゃんにまた会えたら、紹介したいわね・・・どうする?アシュヴァッターマン。どれから楽しみましょうか?」

アシュヴァッターマン「あん?んなもん──決まってんだろ!!」



冷凍パスタを熱いサウナにアシュヴァッターマンと一緒に放り込み解凍しよう!

「他にもいっぱい、楽しげな施設あったじゃない・・・ほら、リラックスチェアとか、卓球とリクライニングルームとかあったじゃない・・・色々あんなことやそんな事が出来る場所、あったじゃない・・・なんでよりにもよって『ここ』なのかしら・・・アシュヴァッターマン・・・」

 

ペペロンチーノはオネェである。男より強く、女性より繊細で麗しいそんな種族である。世間の奇異の目すら跳ね返すその包容力に満ちた人生観は総じてオンリーワンであり、オカマバーなどには疲れきったサラリーマン等が足しげく通ったりする。そんな人種である。そんな人種である彼が、弱音を吐くのは非常に珍しい。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

座禅を組み、目を閉じ瞑想に耽るアシュヴァッターマンは答えない。既に自らのチャクラを高め高次の次元へと自身をトランスさせている。別にシュレピッピによりク・リパースを高めるとかそういう類いのムナンチョヘペトナスではない。れっきとした修行、苦行である。インドとはとりあえず困ったら苦行、修行しとけばなんとかなる世界観なのだ。修行は場所を選ばない。シヴァの化身である彼は特に修行大好きである。インド皆修行大好き。カーマはグドーシの膝枕で涅槃していた。

 

まぁ、その修行の地が──

 

「ここ!健康ランドの!サウナなんだけど!?修行とか無縁の場所よね!?アタシ間違ってないわよねぇ!?」

 

アシュヴァッターマン、ペペロンチーノ。男二人、暑いサウナ。何も起きない筈はなく。始まったのは修行でした。タオル一枚でひたすら瞑想する事十分。煮えたぎる暑さにて全身の毛穴が解放しきり汗という汗がかきでる中で高まる修行の気運。アシュヴァッターマンリクエストを聞いたのが運の尽き。彼は躊躇いなく選んだ。瞑想と修行が一気に出来る地を。それがここ、サウナである。本格的な木造作りの高級サウナに籠るアシュヴァッターマン。彼は基本、超ストイック。

 

「あーだめ。アタシこういう熱いのダメなの。アタシクールな子がタイプだし好みなの。フィーリングもそう、男の子もそう。冷やさなきゃ頭とか・・・」

 

「足りねぇな。水ぶっかけりゃ湯気出んだよな(バシャー)」

 

「アッーーーー!!!?(汚い高音)加減とか知らないのアナターーー!!?」

 

もう前が見えないレベルでモックモクとなったサウナルーム。冷やしパスタが熱々のカルボナーラになっちまったぜHAHAHAなんていってる余裕もなく二人を襲う熱気。ペペロンチーノはぐわんぐわん、求めた死線にアシュヴァッターマンはニッコリであった。

 

「そうだ、これだ・・・!熱く滾れ、サウナとかいう修練の場よ!俺の抱く怒りのように!俺の滾る怒りのように!!はっはははははこりゃあいい!次はカルナとアルジュナ、ラーマも連れてくるしかねぇわなぁ!!」

 

「・・・・・・もう好きなようにやってちょうだい・・・アタシもう出ていいかしら・・・」

 

人間が堪えれるギリギリの暑さでグロッキーなペペロンチーノ。やだめっちゃサーヴァント付き合いって大変じゃない・・・リッカちゃんホント凄いわ世界を救うマスターってホント凄いわ・・・なんて、ぐわんぐわんしているアタマに思い浮かぶは一日の大半をサーヴァントとの日々に費やしていて疲労を微塵も見せない少女。レベル違うのね・・・と思っていた矢先。

 

「俺はテメェが気に食わなかった」

 

追い討ちを掛けるダメ出しがペペロンチーノを襲う──!だがまともに返答できる余力は残っていないので、語らせるままに聞きに徹する。

 

「カルデアではしゃいでる時も、ダチと騒いでる時も。どこか一歩引いてるテメェが気に食わなかった。団欒の環を作るのがうめぇ癖に、テメェはそこに入らねぇ、遠巻きで距離を取って諦めてるテメェが気に入らねぇ。何故だ?何が気に食わねぇんだ?」

 

それは、ペペロンチーノの諦念を見抜いた聡明な聖仙の観点。彼は誰よりも苛烈で誰よりも、聡明でもある。マスターの機微を、見逃す怠惰など憤怒で焼き尽くすほどに。

 

「あそこにいる奴等ら、全員いいやつらじゃねぇか。背中を預けてよし。並び立ってよし。なんなら背中を追いかけがいのある奴等だ。なのにテメェは、そいつらを遠くから見てやがる。何が気に食わねぇんだ、コラ」

 

「・・・気に食わない、なんてとんでもない。一度見放されたアタシ達を、また仲間として招いてくれた。あそこにいる皆には感謝しっぱなしよ。でも・・・だからこそ、かしら。居場所が出来たからこそ、自分がいなくなった後を考えちゃうというか。むしろ、自身がいなくても変わらない場所であってほしい。なんて思っちゃったりするのよね」

 

自身が存在を重くしてしまえば、自身が死んだとき、消えたときに大切な人達を自身がいたときよりも哀しませてしまう。そう考えたなら、自身の存在はなるべく自然に、薄い方がいいだろう。いなくなったとしても、数日経てば激動の日々に消えるようなそんな存在であった方が。人は必ず死ぬ。自分はきっと、その必ずが訪れる日が近いだろうから。

 

「あり得ねぇな」

 

しかし──アシュヴァッターマンは、ペペロンチーノの諦念を真っ向から切り捨てる。そんな事はあり得ねぇと。

 

「あのなぁ・・・あんまり嘗めてんじゃねぇぞ?ちったぁ信じろよテメェの仲間を、テメェのサーヴァントをよぉ!仲間っつーのはなんだ!上っ面だけヘラヘラして肝心な時に見殺しにしてくる奴等を言うのか!あぁ!?」

 

「・・・違うわよね。特に、彼女達は」

 

そんなビジネスライクな観点とは、対極にいるだろう。特に──絆に助けられ、絆で助けてきた少女と・・・あの陽気なAチームのリーダーは。

 

「サーヴァントってのは、みすみすマスターを殺す為にいる木偶の坊か!?俺はそんなに信頼出来ねぇか!?あぁ!?」

 

サーヴァントとはマスターを護る為の盾であり剣である。しかもインドであり三騎士であり、何よりも外道を嫌う義憤の戦士アシュヴァッターマンである。そんな彼がいながら、死を意識して怯えているのかと彼は問う。

 

「それも・・・無いわね。会ってまだ短くはあるけど・・・あなたの事、信頼したいと思っているわ」

 

そうとも。諦めたと言うのは簡単であり、誰にも出来る。しかし、それでよくなるのは自身の寛容さのみだ。諦めの良さは何も産み出さない。特に、挑む前の諦めの良さにはだ。

 

「おうとも!!なら──それでいいじゃねぇか。スカした面していじけてんじゃねぇよ。そりゃあ、俺も悩むなとは言わねぇ。いつも怒ってろとも言う気はねぇ。だがよ・・・」

 

信頼とは、まずは自身が示すものだ。それを怠る者に未来はない。このサウナで、覆い隠すものは何もない。

 

「預けてみろや。心や信頼ってヤツをよ。サーヴァントってのは案外、心から信じてもらえりゃあ、命懸けで応えたくなるヤツがたくさんいるってわけだ」

 

「あなたも、その一人かしら?」

 

「おぉよ!頭から爪先まで信頼しやがれ、信用しやがれ!そいつを受けて俺は怒る!そいつを燃やして俺は怒る!!敵に向けて、運命に向けて!!テメェが冷えきって、諦めきってどうしようもねぇってんならよぉ!」

 

代わりに俺が!!怒ってやらぁ!!力強く宣言するアシュヴァッターマンは熱かった。サウナの熱すらも及ばないほど熱く、滾っていた。

 

そんな熱さ。一から十にも苦手なタイプではあるけれど。

 

「・・・えぇ。アタシ達を阻む運命が現れた時、遠慮なく怒ってちょうだい。誰もが諦めてしまいそうな時、あなたが業火になってアタシ達を滾らせて。期待しているわ。アタシのサーヴァントさん?」

 

「おぉよ!存分に期待しやがれ!!この俺が、 テメェの代わりに!テメェらの何より激しく燃えて燃えて怒ってやらぁ!!!」

 

・・・ここで、ようやく本当に絆を結ぶことが出来たのかもしれない。いや、これは些細なきっかけ

でしかないのかもしれない。

 

「頼もしいわぁっづぅ!あづぃ!もうダメアタシ出るわぁー!!?」

 

「待てコラまだいけんだろぅがよぉ!!」

 

それでも──マスター最悪の死因三位『相性悪くて自滅敗退』にはならず、むしろ好調なスタートを切れた二人でありましたとさ。

 

此処に、冷凍パスタは解凍を始めたと言っていいだろう──




恋「もういいの?」

ペペロンチーノ「えぇ、アリガト♪次は全部終わってから来させてもらうわ。仲間達と一緒にね」

アシュヴァッターマン「いい修行場だったぜ。また使わせてくれや!」

リン「まさかサウナに二時間くらい籠って帰る客がいるとは予想外だったね・・・」

クー「マグマ風呂とかどう?」

恋「そっか!じゃあ頑張って・・・あ、そうだ!おねえちゃーん!お土産お土産ー!」

ペペロンチーノ「お姉ちゃん?」

?「ふふっ・・・汗と一緒にわだかまりも流せたみたいで何よりだわ」

アシュヴァッターマン「おぉ?」

ペペロンチーノ「あなた!?・・・命ちゃん!?」

さとり「ふふっ。その名は借りの名前よ。本当は古明地さとり。この地底の主をしているの。こっちは妹の古明地こいし。さとりの名前通り、さとり妖怪だったわけね」

こいし「お姉ちゃんがご迷惑おかけしました!こいしです!そしてペットの燐と、空!」

燐「いやぁ、喋らないってしんどいねー」

空「何はなそうとしてたっけ?」

ペペロンチーノ「そんな偉い人がここまでやってくれたの?どうしてかしら・・・?」

さとり「・・・シンパシー、かしら。私もあなたも『知ってしまった』事が枷になってしまっている。だから解るのよ。あなたの気持ちが。それを、少しでも軽くしてあげたかったの。お節介だけどね」

「命・・・いえ、さとりちゃん・・・」

さとり「占いで言い当てる私を不気味がらなかったあなたの悩みを解決してあげたくなった・・・理由はそんなところよ。アシュヴァッターマンとも仲良くなれて、良かった」

アシュヴァッターマン「あぁ?仲良くはねーぞ」

さとり「これからよ。・・・事態はもうすぐ動き始める。その為に必要なお土産を、持っていって」

『聖杯の欠片』

「イザナミ様とお話できた光栄で十分よ。これは、あなたたちの望みにどうぞ」

アシュヴァッターマン「お前・・・ありがとよ!」

ペペロンチーノ「ありがとう。でも、お別れじゃないわよ?さとりちゃん。次は、皆で来ちゃうから・・・ね♪」

さとり「えぇ。待っているわ。頑張って、楽園の皆様方──」

さとりの協力により、この地の聖杯の欠片は集まる。

一つは正邪に、それ以外は楽園に。虚無との対決は、すぐそこまで迫っていた──

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