人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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天邪鬼とは、ひねくれものだ。

絶対に素直にはいと言わない。絶対に解ったとは素直に言わない。善意には嫌悪を。嫌悪には歓喜を覚える生き物だ。

そんなやつだから、忌み嫌われるのは当たり前だ。綺麗を汚いと、好きを嫌いと言えば疎まれるのは当たり前だ。

だから、どこへ行っても歓迎されないし、どこへ行っても邪魔者扱い。それはまあ、仕方がない。

だってそういう生き方しかしらない。そういう生き方しか解らないのだから。相手を騙して、欺いて、自分は反対の想いを告げるしかなかった。

そうすることしかできないから。そんな生き方しか出来ないから。世界は、自分達のようなひねくれものを受け入れる様にはできていないんだ。

この世には、表と裏しかない。自分はずっと、裏側にしかいられない存在なのだ。そういう風に生まれた存在でしかないんだ。

仕方ない。仕方ない。仕方ない・・・

・・・でも。世界の何処かに。一つくらいはあってほしいとも思った。

そんなもの、あるわけないと思いながら、いつの日か、ふっと空を見上げた日に、それはあった。

「・・・・・・」

明るい色も、暗い色も。一緒になってかかる空の橋。

それは──



正邪【・・・・・・・・・それは、一体・・・なんだっただろうか・・・】

【・・・最後の準備を、始めよう】


終局と希望の序章

「どうして、正邪ちゃんはこんな事をしようと思ったんでしょう?」

 

にとりのアジト、地下特訓訓練所。それぞれのメダルの所有者とローテーションで特訓をつけられていたリッカ。それが一段落し、今は早苗と共に休憩室にてジュースを飲んでいる。そんな一時の中、そんな呟きを漏らしたのは早苗だった。何故、正邪はこの様な行為に至ったのかと。

 

「確か、『平等で素敵な世界を作りたい』だっけ。・・・綺麗な願いが、結果的に全てを滅ぼす事に繋がる、かぁ・・・」

 

その在り方には非常に覚えがある。今の平穏、安定に牙を剥く愛。人類悪と呼ばれるその生きざまに、今の正邪は非常によく似ている。彼女の願った想いは、本来はもっと素直な叶い方をさせてほしかったのかもしれない、とも。

 

「確か、正邪ちゃんって天邪鬼なんだっけ?となると、自分の為に使う聖杯を敢えて、誰かの為の願いに使った・・・って事、なのかな?」

 

「と言うことは、正邪さんの本当の願いは・・・本当に、誰もが平等でいられる世界の実現なんですねっ!そう考えると、あんまり悪者と決めつけるのも気が引けるというか、なんと言いますか・・・」

 

自身の為ではない、誰かの願いを持つ者を一方的に悪と断じ、排斥するのに疑問を持つ早苗。そもそも今の正邪は正気を失っていると推測される。自身のやっていることがなんなのか、認識しているかどうかすら怪しい。

 

「そうだね。私の意見としては・・・正邪ちゃんだって幻想郷の一員なんでしょ?だったら、おかしくしてる聖杯をなんとかしちゃえば、新しい道も見えてくるかもね!」

 

自身らは正義を求めている訳ではない。納得できる結末を、誰もが目指す、夢見る痛快な物語を追い求めている。ならば。虚無に魅入られた天邪鬼だって引っ張りあげて取り返す無茶も、通すことも為すべき事に入るやも知れない。

 

「心配せずとも、対面の時間は遠くは無さそうですよ?先程、聖杯の欠片が全て集まったとの連絡がありました!」

 

耳の早い情報屋、文が掴んだ情報・・・それは決戦の舞台が整った事。仲間たちが、為すべき事を成したという事実であった。各地に広がった聖杯の欠片、それは今敵味方に分散し、揃っている。

 

『それに備え、ニトライザーとメダルの最終調整をしたい。リッカ、上がってきてくれ』

『四十秒で支度しなっ!』

 

「どうやら、こちらも準備は出来つつあるようです!」

「がんばれぇ!悪酔いしてるヤツをぶっとばせ!」

「応援してあげるよ。人の底力、見せてみな!」

「今度は是非、紅魔館にプライベートでお越しください」

「白玉楼も是非よろしくお願いします!」

「いやあの、私達の場所は気軽に来れなくないですか・・・?」

 

訓練をつけてくれた、幻想郷の住人達。そう、まだ存分に堪能など出来てはいない。騒動ではなく、のんびりとした日々を送るためにも。虚無に全てを飲み込ませる訳にはいかない。

 

「皆、本当にありがとう!お借りした皆の力・・・絶対に無駄にしない!絶対勝ってみせるから!」

 

その協力と期待に、笑顔とサムズアップを返し。早苗達と共ににとり、ヒカリの下へと向かうリッカ。決戦の時刻は、すぐ其処にまで迫っている──

 

 

『先程から、虚空振動・・・即ち、空間の歪みが大きくなっている。間違いない、これはグリーザ出現の予兆・・・準備が整ったのはこちらだけではないと言う事だ』

 

モニターに映ったヒカリの示すモニターに示されたデータは、空間レベルと指された指標がある。本来なら絶対五以下にならないそれは、とある地点に3を示す箇所がある。起こり得ない異常、即ち──正邪が行っている異変が成就しようとしているのだ。

 

「だぁが悲観するのはまだ早い!!こちらも虚無に対応するメダルの組み合わせをいくつか用意したぞ!無事に使えたなら多分やれる筈だ!ゆかりん!おーい!紫のあねさーん!」

 

にとりの呼び掛けに応え、空間が裂け現れる妖怪の賢者にして苦労人。紫が件のメダルを差し出す。それこそは、グリーザに対抗すべく選抜されたメダル達。

 

「はいはい、聞こえているわ。はい、リッカちゃん。これが、あなたが振るうべき希望・・・理屈を超えたパワーを秘めたメダル達よ」

 

其処に示されたのは紫のメダル、温羅のメダル。そしてなのはのメダル、響のメダル。二枚一組のメダル達・・・

 

「あれ?二枚足りなくないですか?三枚一組ですよね?法則的にずっとそうだったじゃないですか?」

 

「実はな・・・最後の二枚が決まってない!!」

 

「はぁ!?」「此処に来てですか!」

 

文、早苗の驚愕も無理はない。決戦のメダルがまさかの片手落ちである。その事情を、ヒカリが説明する。

 

『いくつか有用な組み合わせを見つけ、理論的に後一歩であるメダルがこの四枚だ。だが、あと一歩限界を越える為の二枚が難しい。相性のいいメダルはあったのだが、相性が良すぎる為に数値が規定値に収まってしまう。必要なのは、限界を超えた作用・・・120%の出力なのだ』

 

相性を、理屈を突破するためには後一歩の踏み出し、ブレイクスルーが足りない。それが、虚無に立ち向かう為に必要な力の最後の一ピース。

 

「確かに紫さん、温羅ネキと肩を合わせられる人なんてそういないよね・・・幽々子様も当然試して『相性が良すぎる』側って事だったんだよね。なのはさんや、ビッキーのもあるなんて・・・」

 

「この方達も、リッちゃんのお友達ですかっ?」

 

「幼女と・・・なんだかリッカさんに雰囲気が似ている方ですね?」

 

「あ、うん!こっちの女の子は私の教官の高町なのはさんの天使だった頃で、こっちは立花響って生きざまが最高にカッコいいイケメンでね!」

 

リッカが誇らしげにメダルを手にし、掲げた時──ポケットにしまっていた、とあるメダルが光を放ち始める。それは、まるで共鳴しているかのように。

 

「おや!?リッちゃん!?なんか光ってますよ!?」

 

「え、え・・・なんだろ?どしたんだろ?」

 

あわててポケットをまさぐり、それを手にしてみると・・・光輝いていたのは、幻想郷にて巡り合えた友のメダル。

 

「サナちゃんのメダルが・・・光って・・・おおっ!?」

「こ、この数値は!?」

 

瞬間、手にしていた響メダル、なのはメダルが共鳴し輝きを放ち始める。早苗、響、なのは。共に、物語の中心を担った経験のある者達。言うなれば、定められた結末を変えうる者達。そして、リッカと絆を結んだ者達。

 

『そうか──東風谷早苗の能力は奇跡を操るもの。彼女のメダルを触媒にし、宿ったメダルの力が進化したのか・・・!』

 

ヒカリの言う通り、メダルに変化が訪れる。学生服だった響のメダルは、光の翼が生えたエクスドライブモード。可憐な天使だったなのはは、歴戦の戦士となった教官時代へ。早苗のメダルと共に、輝く金色へと変化する。

 

『ライズメダル・・・!リッカ、これならば行ける筈だ!理屈と常識を超えた力を手にし、グリーザを討ち果たせ!やれるな?』

 

「──世界は異なってても、一緒にいてくれる人達。だから、この三人なのかな・・・」

 

金色に変化した、ライズメダルを握りしめる。一組の組み合わせは手にした。それは、友が導いた奇跡。

 

「ありがとう、サナちゃん!皆の為に、奇跡を起こしてくれて!」

 

最後のピースは、ずっと近くに。奇跡は常に、傍らに存在したのだ。

 

「えへへ・・・リッちゃんの勝利の女神になれて何よりです!どうか、おもいっきりやっちゃってくださいね!リッちゃん!」

 

「もちろん、仔細はおまかせください?面白おかしく取り上げちゃいますよ!ブン屋の意地にかけて!」

 

その決意を背負い、リッカは頷く。そして、残る一組の組み合わせを探さんとした、その時──




???

正邪【・・・揃うべきものは揃った。今こそ誰もが夢見る、望む世界の為に・・・】

【グリーザメダル】

【虚影の塵】

【聖杯の欠片】

【さぁ、裂けろ・・・現れろ、宇宙の孔、グリーザ・・・!】

グリーザ(第一形態)【──ヒャッ、ヒャッヒャッ。ヒーッ,ヒヒヒヒヒ・・・】



にとり「──!空間レベル、0!空間に孔が空いた!バカな、早すぎないか!?それに、大量のシャドウ・サーヴァントも・・・!」

ぶるりん【プルプルプルプル】

「ぶるりんも此処にいるのに・・・!?なんでだ!?」

リッカ「グリーザ・・・!」

ギル『予想より早い決戦の狼煙であったな。存外に盛り上げてくれるわ、天の邪鬼めが』

早苗「金ぴかな王様さん!?」

ギル『博麗神社にて会合を行う。準備を整え参ぜよ。全員にて、いよいよ現れた虚無を討ち果たす!核は無論貴様だ、我等がマスター!友を連れ来るがいい、急げよ!』

リッカ「うんっ!!」

紫「想像以上の手際の良さね。奥の手になるだろう温羅のメダルの最後の一枚もまだなのに・・・」

温羅『紫!その点は・・・』
『心配ごむよー♪任せてー♪』

「え?・・・えっ?」



正邪【さぁ、始めよう・・・!平等で、誰もが虐げられない世界の創造を・・・!!】

【ヒャッヒャッヒャッ・・・ヒーッヒヒヒヒ・・・アハハハハ・・・】

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