人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
文『御安い御用です!』
早苗『負けないでくださいね、皆さん!』
はくのん「避難、終わった?」
リッカ「うん!二人でやってくれた!じゃあこのまま、作戦開始しよっか!」
霊夢「結界の中へ、ね。・・・・・・そうね、だったら・・・」
はくのん「?」
霊夢「作戦、ちょっと変更するわ。雁首揃えて行ったら逃げられちゃいそうだし。まずは私があいつと戦うわ」
はくのん「ふぁ」
霊夢「逃げられる想定をしてないから焦るのよ。だったらあえて逃げ道を作って、そこに誘導してやればいい。はくのん、あんたは私と来なさい。リッカは、ちょっと待ってなさい」
リッカ「う、うん!」
霊夢「あと・・・せっかく仲良しになったんだもの。友達はこきつかわなきゃ嘘よね?」
早苗「ふぁっ!?」
はくのん「鬼巫女の予感・・・」
霊夢「一刻を争うわ。一回しか言わない。じゃ・・・行くわよ!」
「「嫌な予感・・・!」」
【来たか、欺瞞の楽園を守り続ける博麗の巫女。人間でありながら妖怪を許し、弱者の進歩を許さない死神・・・】
固有結界の寒々しい光景の中、白黒と紅白の少女達が向かい合う。片や世界の体制を疎む天の邪鬼。片や閉じた世界と世界を隔てる巫女。二人はこの場で対峙を果たす。だがそれは、会話の為ではない。
「あんたと大層な理念の話し合いなんかするつもりはないわ。下らない思想犯の恨み節なんか、聞くだけ時間の無駄ってヤツよね!」
霊夢は相手に歩み寄りはしない。味方か敵か、仲間か敵か程度でしか認識をしない程にある種淡白で機械的だ。誰にも与さない世界の番人は、本質的に誰にも心を許さない。霊夢に、情で退治を鈍らせる相手は何処にもいないのだ。札と陰陽玉の弾幕を展開し、正邪へと叩き付ける。
【やはりな。弱者を慮る事のないその傲慢、閉じた楽園を維持せんとする怠惰。お前の存在こそ幻想郷の腐敗の温床のひとつ】
「!」
しかし、放った弾幕は正邪をすり抜ける。いや、あらゆる表現が意味を為さぬ事が起きたのだ。その場から動くことなく移動した・・・或いは、そこにいた筈の存在がぬるりとブれ透過した。そうとしか言いようがない回避を行われたのだ。初めから無駄撃ちをしたような不快さに、霊夢は舌打ちを放つ。
【お前を虚無に呑み込み、秩序を滅ぼす。弱者は弱者のまま、強者は強者のままでいる事を強いる虚栄の楽園を破滅させる足掛かりとする・・・!】
そして、正邪もまた弾幕を放つ。・・・いや、それは弾幕と言うにはあまりにも恐怖を煽り、背筋を凍らせるものだ。
【真なる平等の世界の礎となれ・・・!欺瞞の強者よ・・・!】
それは無数の『手』。まるで引きずり込まんと伸ばされた無数の手が正邪から、空間から無数に伸び、霊夢へ向かって引き伸ばされていく。一度でも当たれば、問答無用で連れていかれると直感させる、戦慄の弾幕。
「ッ・・・!」
霊夢は反転し、高速で縦横無尽に空を舞い、虚無の弾幕を回避し続け戦線を維持する。こと回避、拒否に至って霊夢の右に出るものはいない。今回の戦いにおいて、要となるもう一人の逸材なのだ。
「何が欺瞞よ・・・!其処には一応秩序やルールだって出来てる!先人が住みやすいように努力して今があるんでしょうが!頭のおかしいはみ出しものの犯罪者が、偉そうに革命語ってんじゃないわよ!」
【貴様が秩序を担う側だからこそ言える戯言だな。住みやすい?それは強者のみが住みやすい偽りの平等だ。弾幕勝負などとまやかしの御題目を広め、真実を覆い隠した強者どものみが住みやすい虚栄の秩序だ!】
針にて手を迎撃し、正邪に向けて弾幕を話しながら言霊をぶつけ合う両者。幻想郷にて救われるものがいると霊夢は語り、そもそも幻想郷自体が欺瞞と語る正邪。
【『幻想郷において、人里の人間が妖怪となることは最大の禁忌』!幻想郷の醜悪さ、そして平等が欺瞞である最大の理由の一つがこれだ!人が力を持ち、定められた役割から外れることを禁ずる!進歩と発起を咎め、弱者を弱者のまま留め嵌める枷、これを傲慢と言わずしてなんという!】
空間に穴を空け、更に無数の手を取り出し差し向ける正邪。
「わざわざ人間を止めて妖怪になろうとする頭のおかしいヤツ、排斥されて当然でしょうが!人間は弱くて愚かなんて固定観念と認識に凝り固まったあんたこそ傲慢よ!」
それら全てを打ち消し、正邪に拳を叩き付け向かい合う霊夢。
【それがやむを得ぬ理由が介在したとしてもか!死を逃れられぬ子が最後にすがった、健康になりたいと願った最後の手段として妖怪になったとしてもか!人間の在り方に疑問を持ち、自身で選んだ結果だとしても貴様は排斥するのか!】
「当たり前でしょうが・・・!いちいち情や哀れみでルールをねじ曲げる方がよっぽど質の悪い!あんたが言ってるの、易者の事でしょう!」
易者。かつて外の世界を占いで見据え、発展と進歩が許されない幻想郷の在り方に疑問を持ち自らを妖怪に変質させた男。『人里の人間に危害は加えない』『無益な殺生はしない』と言っていた者だが、霊夢は妖怪であれば必ず退治する存在であったが故に問答無用で抹殺、存在を排除された元人間。
「まともな人間は、そもそも禁忌を犯そうとすら考えない!タブーを破るような人間なんて遅かれ早かれ退治されるのが世の常でしょうが!あんたは平等と無秩序の区別がまるでついていないわよ!」
【その秩序を人間どもが定めたなら認めもしよう!だが実際は貴様ら体制側の存在が定め、貴様のような強者が問答無用で敷いた圧政以外の何者でもない!人は人であればいい、弱者は弱者のままであれ!家畜は蒙昧であればいい!それが貴様らの謳った幻想郷の真実だ!】
弾き飛ばし、聖杯の欠片を高く掲げる正邪。
【弱者は永遠に弱者のまま・・・愚者は永遠に愚者のまま。私はそんな腐った安定を貪る幻想郷を破壊する。真なる平等をもたらし、誰も踏みにじられない世界を作り上げる!それが私の変わらぬ願いだ!】
「・・・!」
【虚符『零龍』・・・!貴様はこれで封殺してやろう!聖杯の欠片で再現した空虚なものだが、貴様らの掲げる空虚な遊びにはなるだろうよ!】
それは、孔から這い出る薄紫の龍型弾幕。宇宙を引き裂いたかのような装いの爪に、十メートルを越えるかのような巨大ドラゴン。全てを呑み込むかのような、巨大龍弾幕。
【────!】
「くっ・・・!!」
突如現れた巨大なる弾幕。攻撃を行っても全てを呑み込み、すり抜けてしまう虚無の龍が霊夢に襲い掛かる。これもまた、虚無に繋がった正邪が振るう虚空の力の発現なのだ。
【所詮会話や言葉などで調和は保てない。今の問答でそれをよく理解した。──ならば作るしか無いだろう。実際に、真なる平等の世界を作ることによってな・・・!】
「大層な事をほざくわね・・・!打出の小槌といい、王様の聖杯といい!自分一人の力じゃなんにもできない他力本願の分際で!」
かつて正邪は、打出の小槌を振るえる一族を利用し、異変を起こした。小人・・・針妙丸をたぶらかし、自身の為に願いを使わせる形で。
【力において重要なのはどう得るかではない。どう使うかだ。それもまた、生まれながらに才気溢れる強者のお前には解らんだろうがな】
「あんたも弱者を利用してる癖に、説得力ゼロなのよ!支離滅裂な物言いばっかしてるから、虚無なんかに魅入られるんでしょうが、バーカ!ていうかあんた、針妙丸はどうしたわけ!?」
【さぁ・・・何処に行ったと思う?】
「・・・まさか!」
【話は終わりだ。この辛気臭い結界から出るとしよう。・・・来い、グリーザ・・・!虚空怪獣よ・・・!】
呼び掛けに応え、現れる怪獣グリーザ。虚無へと全てを呑み込む、ある意味で神がごとき存在。
「待ちなさ、くっ・・・!!」
慌てて阻まんとする霊夢だが、予想外の龍弾幕に阻まれ、正邪に近付く事が出来ない。球体のグリーザに乗り、霊夢を嘲る正邪。
【私を閉じ込めるつもりだったのだろうが、アテが外れたな博麗の巫女。虚無とは平等だ。全てを零に戻す崇高な概念・・・それを以て、私は作る。・・・真なる平等を。誰も踏みにじられない世界を・・・!】
欠片を振るい、グリーザを発進させる。オルガマリーの固有結界を『透過』する虚無の方舟。
【さらばだ。そう悲観する事もない。すぐに全てと再会できるだろう。──虚無という、真なる平等の上でな・・・】
そのまま霊夢を置き去りに、正邪は外界へと飛び立つ──
「──今ね!!」
そして、それこそが。霊夢達の反撃の合図──
霊夢「白野!あんたが頼りよ!絶対失敗するんじゃないわ──よっ!!」
霊夢は懐から『ロザリオ』を取り出す。それは、グリーザが取り込んだ愛と希望の巨人と紡いだ絆の証。
「いっけぇーーーーーっ!!!」
霊夢はそれを、札を巻き付け投げ付ける。グリーザ目掛け、宇宙の穴に目掛け。
正邪【何・・・!?】
瞬間移動した刹那の為、グリーザも正邪も反応が遅れた。ロザリオと、そしてそれの持ち主たる──
はくのん『天空ペケ字チョップ(迫真)』
【・・・!ウルトラウーマンの使徒か・・・!】
予め、札として霊夢の懐に入っていたはくのん、そしてフィリアロザリオ。結界から出る形に合わせ、霊夢が見計らい投げ付けたのだ。虚無へと侵入するために。たった一度のチャンスをものにするために。
はくのん「おっすごレベル、C。最も限りなく正解に近い。将来に期待」
霊夢「アホいってないでさっさと針見つけて来なさい!!」
正邪【これを、計算していたのか・・・!?そのために、会話で時間稼ぎを、くっ・・・!】
はくのん「犬空間を思い出す。逝ってきます」
そして、ロザリオの力は強大でなすがままに侵入されるグリーザ。無から有を取り込んだが故の不安定さのまま、結界より弾き出される。
【おのれ、小癪な真似を・・・、ッ!】
思い至る正邪。ここには、まだいない。霊夢と並び、或いはそれ以上の脅威を持つ存在が。
【ヤツも何処かに潜んでいるのか・・・まさか!】
──いや、潜んでなどいない。彼女は常に、真っ向から現れる。
文「行きますよぉ!!せー、のぉお!!」
早苗「いっけぇえーっ!!リッちゃーん!!」
リッカは──飛んできた。真正面から天狗に抱えられ、奇跡の風に乗り、そして──
リッカ「うぉおぉおぉおーーーっ!!!」
~
『Licca!accessgranted!』
『なのはメダル』『早苗メダル』『響メダル』
リッカ「全力全開!!繋ぐ絆が、私の奇跡!!なのはさん!サナちゃん!ビッキー!!」
『Nanoha striker』
『Sanae』
『Hibiki Exdrive』
リッカ「行くぞぉおぉ!!!えい!えい!おぉおぉぉーッッ!!」
なのは『うんっ!』早苗『はいっ!』響『とりゃぁーっ!!』
『FujimaruLicca! Exdrive striker!!』
~
正邪【な、何ぃ・・・!?】
瞬間──『虹色の嵐』が巻き起こり、グリーザもろとも正邪を地表へと叩き落とす──!!