人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「拙者の最期!刮目ですぞ――!!!」


大海賊

「ようやく本性を表したか、トロイアの守護者よ」

 

 

ドレイクの船から、マスターの傍に飛び移る

 

 

 

「おや、こっちに来てよかったのかい?」

 

 

「小賢しく比類なき槍から、マスターを護らねばならんのでな」

 

 

「黒髭!黒髭ぇ!!」

 

駆け寄らんとするマスターを制止する

 

 

「落ち着けマスター!今近寄ればヤツと同じ末路を辿るぞ!」

 

「でも!でも・・・!!」

 

――マスターの取り乱し方は尋常ではない。彼に、黒髭にそこまで肩入れする事情があるのか・・・!?

 

「耐えることも戦いだ。貴様の価値を貴様自身が安く見るな!無駄に命を投げ捨てるような真似は我が許さん!!」

 

「ぁっ・・・――」

 

『マシュ!リッカを!』

 

「はい、先輩!しっかり・・・!」

 

 

「だい、丈夫でござるよリッカたん・・・黒髭、平気ですし?全然痛くないですし?」

 

 

「いやぁ、ようやく隙を見せてくれたよな船長。余裕ぶっこいてるように見えて何処でだって銃を握り締めてるんだから。天才を騙るバカよりバカを演じる天才の方がそりゃあ厄介だわ」

 

グリィ、と槍を押し込み笑う

 

「・・・ですが、こんなタイミングで裏切りとはアホでござるか。ヘクトール氏は」

 

『ヘクトール!?ヘクトールってまさか、『兜輝く』ヘクトールということ!?』

 

――・・・

 

 

「正解!――いやぁ、これはオジサンなりに勝算あってのことでね」

 

 

「エドワード!!」

 

「舐めるんじゃ、ねぇ!!」

 

 

二人の大海賊が反撃に銃を撃ち放つ

 

 

「残念外れ。――聖杯、獲った!!」

 

黒髭の身体から聖杯を抜き取り、船を飛び越えヘクトールがジャンプする

 

 

「――」

 

「悪いね、英雄王。卑怯卑劣と笑うかい?」

 

「構わぬ。戦の常であろう。貴様の相手を鑑みれば、その軽薄な仮面をまとわなければやっていられなかったろうさ」

 

財を放つが、身を捻ってヘクトールはそれをかわし

 

「そりゃどーも。悪いがオジサンの本命は」

 

「ぅおぉおぉお!!」

 

アステリオスの突進を槍で受け流し

 

「ごめんね、バーサーカーなんぞに遅れを取るほど錆び付いちゃいないんだわ」

 

「がぅうぅう!!?」

 

「アステリオス・・・!?」

 

「本命は女神様――英雄王、マスター可愛さにそっちに行ったのはあんたらしくないミスだったんじゃない?」

 

「ぁ――」

 

――あぁ、解っている

 

「フッ、たわけめ」

 

――こちらがこう動けば

 

「解らぬか?我は『あえて』ここに来たのだ」

 

――そう動くのは予測ずみだ!

 

「貴様を『死地』に誘い込む為にな――!」

 

 

「何っ・・・!」

 

瞬間、ヘクトールの身体を縛るように『鎖』ががんじがらめに縛られる

 

「えっ!?」

 

「――お下がりください。下姉様」

 

そこにいたのは、蛇のように構える妖艶なライダー・・・

 

「め、メドゥーサ!?」

 

「・・・こりゃあどう言うことだ?召喚する役のマスターにしては早すぎる。とても間に合う距離じゃあ・・・――!!まさか・・・!」

 

「えぇ。――私は英雄王により召喚されたのです。『下姉様を守護せよ』という勅令の下、令呪を賜り、カルデアから」

 

 

「だとしても、召喚なんぞ間に合うわけ・・・、・・・まさか」

 

――そう。召喚の種は予め用意していたのだ

 

 

 

 

「我が行くのではない、奴等がくるのよ。・・・だが。その前に」

 

 

「いふぁいいふぁい!ふぁにふるのよー!」

 

――この時に、エウリュアレに一画の令呪を託しておいたのだ

 

(ヤツは必ず女神を狙う。抜かるなよ、メドゥーサ)

(お任せを、英雄王)

 

――あのヘクトールが本性を出した瞬間に即座に対応できるために

 

 

 

「我が隙を晒せば、嬉々としてそこを突くと踏んでいたのでな。『あえて』こちらに来て隙を見せてやったのよ。貴様ほど強かならば『王の失策』を見逃すまい。まぁ、結果はこの様であるが」

 

「――・・・!」

 

「策略や下策に長けていると思い上がったな、ヘクトールよ。この程度の駆け引き、王として当然のたしなみよ。貴様はトロイアにてさぞ名を挙げたろうが・・・――トロイアの戦いに、我より偉大なるものなど一人もいなかったであろうよ」

 

 

――この自分がいる時点で、英雄王の『隙』は、最早隙にあらず

 

――その総てが、こちらにとっての『活路』であると思い知れ!

 

 

「こりゃあ参った・・・アキレウス以来の難敵だったわ。あんたは神嫌いだから、見逃してくれるとおもったんだがねぇ」

 

「ふはは、先程から蕁麻疹が止まらぬわ」

 

――自分が触れたとはいえ、器としてはかなり許容しがたい思いがあった。申し訳ない

 

だが・・・確かに効果があったようだ

 

 

次いでヘクトールを貫く銃弾

 

 

「ッ!!」

 

 

「ほう、まだ息があったか、――黒髭」

 

 

そこには

 

「デュフフフ!リッカたんと拙者の、愛の共同作業ですぞ!」

 

「喋らないで!傷に障るよ!」

 

リッカに支えられた、黒髭があり。――彼の最後の一撃だった

 

 

「ちっ――!」

 

「うぉおぉおぉおぉお!!!」

 

「――しゃあない。命あってのものだね、すごすご引き上げますかね!」

 

「フッ、そうするのだな。下策は貴様の方よ。この海の直中ならば、貴様は親元に帰還するしかあるまい」

 

「――あぁ嫌だ嫌だ。こりゃあ最悪の負け戦かもな――!」

 

鎖を振り回し、メドゥーサをつんのめらせる

 

 

「くっ!」

 

エウリュアレから離れぬようやむなく鎖を解除する。すかさずヘクトールが小型の船に飛び乗り離れていく

 

「あ!あいつ船用意してやがった!ちゃっかりしてんなぁ!」

 

「ほっとこうよ、ダーリン。何も奪われてないんだから」

 

「あぁ・・・――英雄王、ギルガメッシュか・・・絶っっっっっっ対敵に回しちゃダメなヤツだアレ・・・」

 

 

――これで、ヘクトールが仕えているという組織の道が確保できた。彼を倒すのは、今じゃない

 

 

「さて、仕込みは済んだ。・・・後は」

 

 

――消滅寸前の黒髭に寄り添い、涙を流すマスターをみやる

 

 

「デュフフフwリッカたん、拙者の為に泣かないでくだされww首が繋がっている分、黒髭的に全然ましですぞ!」

 

「えぐっ、えぐっ、あうっ、ひっく・・・!」

 

「どうしましたリッカたん!笑顔、笑顔ですぞ?」

 

「あぐぅう、ぅうぅうぅう・・・!」

 

「――ティーチ。いい加減悪ふざけはやめてやりな」

 

ドレイクが銃を下ろす

 

「あんたやアタシみたいなロクデナシを本気で案じている女の涙だ。・・・そんな宝を垂れ流させてんじゃないよ」

 

「――・・・」

 

「ティーチ、ティーチぃ・・・!やだよ、行かないで・・・せっかく、せっかく・・・逢えたのに・・・!」

 

「・・・」

 

「辞世の句ぐらいまともなモノを残していけ。その為に貴様の首を刎ねずにいるのだ」

 

「・・・あー」

 

泣きじゃくるマスターに、そっと黒髭が手を置く

 

 

 

「――いつまでもメソメソ泣いてんじゃねぇぞ、小娘」

 

「え・・・?」

 

――そこには、カリブを支配し、総てを震え上がらせた大海賊の姿があった

 

「天下の黒髭様の死だ。国を挙げて祝うような騒ぎにしやがれ。そんな辛気くせぇ感傷なんざ願い下げだ。笑えよリッカ、そら笑え!ハハハハハハ!!」

 

「――あは、はは、ははは・・・!」

 

涙のまま、マスターは笑う。震えた声で、ひくつく喉で、懸命に

 

「やりゃあ出来るじゃねぇか。覚えとけよリッカ。海賊がくたばるときには笑うもんだ。『ようやくくたばりやがった!ざまぁみろ!』ってな。それが海賊の末路ってもんだ。それが海賊のツケの清算だ。――だからよぉ」

 

ぼふ、とマスターに強引に何かを被せる

 

「だからよ――死ぬ前に、『涙』なんて宝を垂れ流すんじゃねえ。勿体無くて死にきれねぇじゃねぇか」

 

――マスターに被せたのは、血にまみれた黒髭の『キャプテン・ハット』――

 

「俺様なんぞに涙を流しやがった礼だ。ソイツをテメェにくれてやる。――だからいい加減泣き止みやがれ。うるせぇんだっつうんだよ」

 

「・・・うん。うん・・・!」

 

「首はくれてやらねぇぞ、フランシス・ドレイク」

 

「――いらないいらない。あんたの最期は聞いてるよ。その首はきっちり持っていきな!」

 

「は、そうか!いいさいいさ!いいってことさ!」

 

リッカの肩を、思いきり抱き寄せる

 

 

 

「黒髭が誰より尊敬した女が俺の死を看取り!黒髭に誰より歩み寄った女が俺の為に涙を流す!!首も残って、なんて幸福で恵まれた死に様じゃねぇか!!」

 

「ティーチ・・・」

 

 

「それじゃあ、さらばだ人類!さらばだ海賊!そして――さらばだリッカ!!」

 

「!!」

 

「黒髭は死ぬぞ!くっ、はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

 

――最期に、マスターの頭を撫で回し

 

 

カリブの大海賊は、笑いながら消えていった

 

 

「――ではな、海賊。貴様に過ぎた宝の涙を噛み締め、冥府の沙汰を待つがいい」

 

――マスターを心から尊敬する

 

気持ち悪い、と言われた黒髭を、誰もが嫌悪した黒髭を、彼女は支え、歩み寄り、海賊の魂たるキャプテン・ハットを受け取って見せた

 

 

――自分も、そうありたい。誰隔てなく、手をさしのばせるような、輝く生き方をしていきたい

 

今生にて仕える、たった一人のマスターのように

 

――無銘の魂に、また一つ。彩りが加わった

 

 

「・・・大事にしなよ。ソレはアタシら船長の魂だ。ちょっと匂うかもしれないがね」

 

「ううん。…臭いには、慣れてるから」

 

キャプテン・ハットを深く被り直し、顔をあげるリッカ

 

 

「ヘクトールを追うか?マスター。それだけ入れ込んだのだ。八つ裂きにするだけでは飽きたるまい」

 

 

「ううん、ギル。ヘクトールは倒すけど、それは恨みや憎しみじゃない」

 

「ほう?」

 

 

「――この世界を狂わせている奴等の仲間だから倒す!!理由はそれだけだよ!!」

 

ゴシゴシと涙を拭い、リッカが叫ぶ

 

「弱音は吐かない!皆!行こう!!ギル!姉御!力を貸して!!」

 

――あぁ

 

「もちろんさね!可愛い妹分の頼みとあっちゃ断れないさ!」 

 

「今更確認するまでもない。我は貴様への投資は惜しまぬわ!」

 

「先輩!」

 

「行くよマシュ!!さぁ――本当のボスを倒しに行こう――!!」

 

もちろんだとも――!

 

 

 

(誰も憎まず、誰も恨まない)

 

 

 

「――そうだよね。グドーシ」

 

 

 

 

 

 




「リッカたんは拙者の嫁!この扱いからして確定的にあきら」

「『死告天使』――――」



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