人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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虚無の中は静まり返っている・・・


虚無ランニング

「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ」

 

何もない空間を、私は走る。足を踏み出す感覚はあるし、走っている感覚はある。しかし、何かを踏んだ感覚は無いし、前に進んでいる感覚は無い。なんとなく、もがいている様な感じでアバウトに私は進んでいる。

 

ここは虚無の中で、自分の認識でしか歩む意味を作ることができないみたい。指針もない、音もない。声もしないし、自分の声は頭の中で考えているのか喋っているのか判別も難しい。当然光も無いので手先すらも見えない真っ暗闇の中をひたすら進む。ただ進んでいるのも退屈なので、話しかける相手もいない私は脳内で自己問答をしながらダッシュする事にした。話し掛けてくる相手もいないので、割と手持ちぶさた。早い話が暇。

 

(この感覚・・・懐かしい。あの犬空間のハイハイは割と鬼畜でした)

 

BBが私の心を折るために用意したスペシャル犬空間。下半身の感覚を無くしひたすらハイハイさせる事により、私の心をパピコみたいに折ろうと画策したあのラスボス擬き純情後輩(アバズレとかいう真のラスボスに成す術なく取り込まれる情けなき前座。かなしい)BBにもたらされた恥辱、或いは屈辱。どっちでもいい。大体同じ。あのときは仲間達が諦めろよ・・・諦めろよ!どうして頑張るんだそこで!と鬱になったテニスプレイヤーみたいなノリで私の心をベキ折に来た。私のネロも消滅の危機にさらされ没収されていて、私の友達に仲間達も皆殺された(様に見せかけていて)割とピンチ。ピンチのピンチのピンチの連続。フィリアが欲しかった。

 

(正直私もあの時は折れていた・・・とおもう。BBにケツをフリフリしながらただただ前に進んでいただけだった)

 

何度も何度も諦めろと囁かれ、ゴールなどない世界を進み続けた。無様、滑稽だと馬鹿にされ続け、愚かだと嘲笑われ続けた。

 

それでも前に進んだ。

 

何も無い世界をひたすら前に。勝機が失われた世界をひたすら前に。ただ手足が動くからひたすら前に。

 

ひたすら前に進んだ。

 

なんだか異常扱いされ始めた事を覚えている。とっくに意味など無いのに、とっくに答えなど無いのに、とっくに敗けは決まっていたのに。

 

とにかく前に進んだ。

 

止まりなさい、と警告を受けた。止まって、とお願いされた。止まれ、と焦燥の合唱が耳に届いていた。

 

うるせぇと前に進んだ。

 

手足の感覚がある。自分がそこにいるのが解る。まだ前に進む事くらいは出来る。心が何かを感じることが出来る。

 

だから前に進んだ。きっとそれが自分にできる唯一無二の事だと解っていた、知っていた。だからこそ、自分は何の意味もない世界を歩み、進んで、ハイハイし続けた。あのときの感覚は割と思い出したくないタイプのものだけど、この虚無を乗り越えるにはいい発起だと我ながら思う。要するに、諦めなきゃ終わりじゃない。前に進めればなんとかなる。虚無にはなんにもない?とんでもない。自分自身の全てがある。

 

(外でリッカが、霊夢が、皆が待っている。挫けてる場合ではない。あのときと違って、私は勝利に進んでいる確信がある。ふぁいっ)

 

だから何も怖くない。今何もなくても、その先に勝利がある。だから進む。だから前に進む。走れ。走れ。前に進め。何もなかろうと、意味は自分で作るものだ。その意味の積み重ねを振り返る時、どんな人生だったかが見えてくる。たぶん。

 

(今流行りの進撃脳。駆逐してやる。桜の悪巧みを一つ残らず)

 

・・・今思えば、嘲笑であれなんであれ、自分に接触してきてくれたBBはやさしい。今思ってみればBBが見ているという事はそれは誰かが見ていてくれているという結論が導かれる。本当に絶望させたいなら、徹底的に無視してしまえばいい。私もネロや玉藻、リッカ辺りに半日無視されたら絶望する。BBは別に。

 

(やっぱり後輩が一番なんやな。今度プレローと麻婆豆腐奢ってあげよう)

 

カルデアの聖女麻婆豆腐は本当に美味しい。一度食べたら磁力がもうヤバいくらいに強仕して疲れた身体に力がみなぎり外国のCMみたいになる。麻婆豆腐いずぱーわー?!ぱぱぱっぱっぱぱーわー!(チュドーン)みたいな感じになる。ギルはなんだか毛嫌いしているけれど実に贅沢と言わざるを得ない。同じ赤さでもエリちゃんの金星料理とは雲泥の差だ。ガツンッ!と殴られたような辛さの中にビリリッ!とくるスパイシーさと、口の中に広がるマグマみたいな熱にハフハフしながら豆腐や肉を流し込んでいく感覚。もう水を飲む手が止まらないのにレンゲが動く。汗がダラダラなのにレンゲが止まらない。ひたすらにうめ、うめ、うめ。食べ終わった後の爽やかな感覚や口の中の心地よいヒリヒリ。いい・・・楽園最高・・・BBは一口いただきます♪先輩スキアリ!と言って食った後ぶっ倒れて痙攣していたが修行が足りない。これだから黒くなっただけの純情桜は。クンフーが足りん。次アバズレに会ったらアンデルセンに口移しで食べさせて人魚姫2をちらつかせてくれる。

 

(何の話だっけ)

 

話題が逸れた。虚無の中にいるフィリアを見つける話だ。まぁ恐らく身体は無いだろうから貰ったロザリオを頼りに走る。思えばこのロザリオがふんわり輝いていてくれてあったかい。優しく護ってくれているかのようだ。

 

(こんな場所に一万二千年とかウルトラ精神力。月と楽園に御迎えして労ってあげたい)

 

ヴェルバーに対抗する戦力は随時募集している。楽園のギルにマルニキ、そしてウルトラウーマンのフィリアなんて磐石過ぎる。勝ったなガハハ、ネロと一緒に風呂入ってくる。まぁそれは抜きにして、助けたい。助ける。絶対に。

 

(私達は皆で未来を掴む。ギル達が地球を飛び出した時の案内人としても期待できそう。ワクワク)

 

出来れば人間の姿もムチムチであってほしい。絶対眼鏡が似合う。いや似合わせる。リッカのお兄ちゃんのゼロニキは眼鏡で変身する。リッカに死ぬほど似合う筈。羨ましい。

 

(眼鏡はいいぞ・・・サングラスもいいぞ・・・かけて外してまたかけ、ん?)

 

性癖暴露しながら走っていたら、なんだか変なものを見つけた。何も無い筈の場所にあったもの、それは・・・

 

(茶屋)

 

意外、それは茶屋。甘味処が用意されている。あったけぇ・・・虚無あったけぇ・・・なぜゆえ?

 

(休憩していこう)

 

とりあえずセーブポイント的ななんかだと思い利用する。誰が用意したのかこんな憩いの場を・・・そんな疑問に答えを出す一枚の文書が其処にある。

 

『ひねくれものの天の邪鬼に向けて』

 

「おぉ・・・」

 

どうやら、何者かが待っているらしい。あの天の邪鬼の事を。来るのを待っていて、それがここにある茶屋の真相・・・そしてもう一つ。

 

『針は、もうすぐそこに』

 

「マジか」

 

求めていたものの所在を教えられ、ひょいんとジャンプする。針とは間違いなく、求めていたフィリアのものだろう。それがもうすぐそこに待っている。フィリアがそこで待っているのだ。人間というのは単純なもので、どんなにヘトヘトでも、先行きの見えないものでも、希望が示されるとテンションがMAXになるのだ。表情があんまり変わる事が無いのは御愛嬌である。特別なイベントでは笑うので見逃さない様にね。

 

「よーし、行くぞー。レッツゴー」

 

団子を食べ終わり、レガリアで自分の口座からお金を引き落とし・・・はできないので、肌身離さず持っている千円をそっと置き。走り始める。

 

・・・あの天の邪鬼にも、待っている人がいる。ならば余計に負けられない。そう決心し、私は走り続ける。

 

・・・そして。




「此処が・・・」

そこは、さっきまでの虚無とはまるで違う光景。星が輝き、オーロラが満ち、足下には天の川が流れる幻想的な場所。

「フィリア?」

『あぁ、来てくださったのですね!ザビエルさん!』

「フィリアだ(確信)」

『ずっと、あなたの存在を感じておりました。ロザリオ・・・持っていてくれたんですね!感激です!ずっと、ずっと待っていました!』

「虚無にいた時間計算するとマン兄さんと歳が変わらないフィリアだ」

『えっ!?も、もうそんなに・・・あ、一万年・・・そうですか、私ももう成人女性・・・時の流れは速いですね・・・って!今は私の年齢は置いといて!』

はくのん「迎えに来た。一緒に帰ろう」

『はいっ!ですがまずは、これを。私が、私と賢者さんが掴んだ宇宙の針です!』

瞬間、星が、オーロラが、天の川が全てはくのんに集結する。まばゆい輝きの中、はくのんの手に握られしは、荘厳な翼の装飾が施された、刀身と一体化した杖。

『その名も、フィリアガペー!グリーザを封じ、倒すために私の存在から産み出した、キングおじいさまの剣を参考にした杖であり、剣であり、トーチです!』

煌めく輝きを辺りにもたらすトーチ・・・はくのんの手に、それが宿る。

『さぁ、行きましょう!虚無から、世界を!愛と希望を護るために!』

「うんっ」

今こそ、最後のピースが揃う。全ては虚無を、討ち果たす為に──!

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