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エルキドゥ「パーティーかぁ。確か幻想郷にはアイテム屋があるんじゃなかったかな?確か…香霖堂だっけ。ちょっとググってみよう」
(…幻想郷に紛れ込んだ古いアイテムを集める店。つまり…)
「リサイクルショップ…!?」
エレシュキガルの部屋
エレシュキガル「はぁ…同盟の皆を誘いたいけど、どこに誘えば喜んでくれるかしら…」
(幻想郷を下見に行きたいけれど、迷いそうだし…でも見ているだけじゃ…うぅん…)
エルキドゥ「エレシュキガル!暇かな!」
「きゃあ!」
「行きたい場所があるんだ!一緒に行こう!」
「い、行きたい場所…?わ、わかったわ」
(本当、見習いたい積極さなのだわ…でも、どこかしら…?)
「やぁ、いらっしゃい。香霖堂にようこそ。ここは色んな物珍しいアイテム、道具、用途不明の物体を幅広く扱っているよ。お気に入りの道具があったら遠慮なく声をかけておくれ」
銀髪のボブカット、和洋折衷の服装に金色の瞳、眼鏡を掛けた思慮深げな男性店主…森近霖之助がエルキドゥとエレシュキガルを迎え入れる。香霖堂…それは魔法の森の入口にある物品…外の世界の様々な胡散臭い物品を取り入れている物珍しい店である。言うなれば幻想郷のリサイクルショップ。そんな格好の穴場を、エルキドゥが見逃す筈はなく。
「ここが幻想郷のガラクタ集め店、香霖堂かぁー。探索しがいがあるなぁ。早速色々行ってみよう!エレシュキガル!」
「わ、わ、わかったのだわ!だから引っ張らないでー!?」
(ほう…あの緑髪の青年…)
そんなわちゃわちゃを見つめる、店主森近霖之助。その視線の先には、緑髪の麗人の姿──
~
「へぇ…本当に色々なものが置いてあるのね。でも値段が書いていないのだわ…」
招かれてやってきたエレシュキガルの眼前に広がるは、古今東西の古き良き商品。冥界の女神には知る由もない、名前も解らぬグッズ。彼女にとっても貴重品、珍品。エルキドゥはそれぞれを懇切丁寧に手に取り、説明していく。
「これは知ってる?独楽だよ、独楽。紐を巻いてね。くるりっと腕を振って、こう」
「こう?あ、回らないのだわ…」
「あはは、買って、いつもの集まりとやってみてごらん?僕も買ってエアやギル、フォウとやるつもり。あ、そうそう。これ見て見て」
「?紐?」
「ふふっ…これがね。せーの、くいっ、くいっと」
「!?て、手のひらで…タワーに!?」
「あやとりって言うんだよねー。リッカの故郷で昔流行った遊びなんだよ。手先の器用さが大事でね。ほら、手を出してエレシュキガル」
「こ、こう?」
「はい、せーのっ」
「はっ!?わ、私の指にタワーが!?」
「あはははっ。糸だけでこんなに面白い遊びが出来るんだよ。凄いよね、古き良き知恵ってさ。まだまだあるよー。このメンコって言うのはね?」
古き良き遊び、それを可能とする、もう忘れ去られたかつてのアイテム…かつて日本で流行り、親しまれた遊びを教えていくエルキドゥ。彼は古きと、歴史を楽しみ、重んじる緑の人。当然ながら、こういったお遊びも勿論、大好きなのである。
「これをね、力の限り叩きつけて…せいっ!」
「きゃあぁあぁあぁあ!?」
「あははははは、エレシュキガルが飛んで行っちゃった。大丈夫〜?」
「だ、大丈夫なのだわ…エルキドゥと一緒に遊ぶってこういう事だから…」
「けほっ、けほっ…でもなんだかここホコリ溜まってない?仮にも商品を立ち並べるお店がこうだなんて、足りなくない?自覚が足りないよ。ショップとしての。んー…」
エレシュキガルを助け起こし、埃舞う展覧ルームを見つめるエルキドゥ。彼は埃駆逐系麗人。どんな場所であれ、散らかり、散乱、出不精、怠惰は決して容認出来るタイプでは無いのである。
「よし、掃除しよう。エレシュキガルはマスクして待っててね。大丈夫、3分位で済ませるからね。ちょっとマスクしてそこにいてね。行くぞー」
「あ、ちょっと!?許可とかは…許可とかは…」
「後でいいんじゃないかな」
「よくなーい!?」
そして始まるシームレス大清掃。古き良き散乱具合とか、オリエンタルムードとか関係ない。正しき物品は正しき場所へ。灰は灰へ、塵に塵に。散らかった部屋は余すことなく綺麗なクリーン空間へ。天の鎖の提供でお送り致します。
「エレシュキガル、エレシュキガル。ここの窓のとこ、すいーってやってすいーって。そして…ごにょごにょ」
「ええっ…?…ま、まだ埃が残っているわよ!このポンコツチェーン!」
「ああっ!厳しい冥界の女主人!もっと完璧を、完璧を果たせと言うんだね!よーしもっと、もっとやるぞー!」
ショートコントを果たしながら、清掃に費やす事数分。何ということでしょう。埃を被っていた各種商品はピカピカの素敵な新品が如き様相、木造建築の網目すら一望できる新装開店が如き作りへと変貌したではありませんか。匠の業ならぬ鎖の業。これこそがギルのズッ友クオリティ。快適極まる居住をあなたに。躊躇うことない最先端のピカピカ空間を問答無用でお贈り致します。
「うん、きれいになったね。お客様に埃のプレゼントだなんてありがた迷惑の大きなお世話だもんね。さぁエレシュキガル、続きをやろっか。こっちはおはじきって言ってね。パチンと弾いて、その色に点数が記されていて、それを集めて点数を競って──」
(…本当に楽しそうだわ、エルキドゥ。やっぱりあなたは、ただの兵器なんかじゃない。立派な人だと私は思うのだわ)
エルキドゥは事あるごとに兵器として振る舞う側面も持っている。自身は人間の真似事をしているだけの兵器だと。でも、エレシュキガルは彼の事を物言わぬ兵器だと感じた事は一度もない。
(あやとりや、おはじきにメンコ。…どれも皆でできるパーティーゲーム。エルキドゥはきっと、私が皆の輪により深く入っていけるように考えてくれているのね)
そう、マンドリカルド率いる陰キャ同盟。エレシュキガルも参加しているそのグループは、割と根暗気味のメンバーが集っている。そして陰キャ特有『割と誰かを誘い辛い』が皆発動しがちなため合流の機会はまちまちである。だが、この古き良き遊びであるならば声掛けはしやすく、集まり易くなるはずだ。
(あなたはいつだってそうだった。ウルクの民はあなたの事を道具ではなく、人として見ていたのだわ。それはあなたが見せる、たおやかな優しさを素敵に思っていたから)
エレシュキガルの事をずっと、エルキドゥは気に掛けている。エレシュキガルも勿論、そんな彼を頼りにしており真っ先に何かを相談する相手なのだ。高天原の一件といい、エアの影響を受けているのはギルだけではないのだろう。彼もまた、良き因果を受けているに違いない。どんな時でも、どんな場所でも彼はきっとそうなのだ。
「だからね、君がこうして素朴な遊びをしている姿はきっと冥界のイメージアップに…、?どうかしたかい?」
ふと、そんな事を考えていたら目線と顔に出ていたらしい。怪訝に返すエルキドゥに、苦笑と共に返事を返す。
「ふふ、なんでもないのだわ。エルキドゥも買って、誰かと遊ぶの?」
「うん。ギルやエア、フォウとあやとりしたり、メンコしたりするつもりだよ。やっぱりこういうのは皆でやったりするのが一番だもんね」
ほら、やっぱり。あなたは友達思いの素晴らしい人だもの。…ギルガメッシュはあなたしか友はいないと決めてしまったけれど。
「それは素晴らしいのだわ。エアに優しく手ほどきしてあげてね?」
「え?君も一緒にやればいいじゃないか。僕達は君を歓迎するよ、エレシュキガル」
「…ふふっ、そうね。このエレシュキガル!日本のお遊びマスターになってやるのだわ!」
あなたにはたくさん、友達が出来てもいいわよね?…大丈夫よね?
「おはじきはイシュタルに投げつけてやろう。宝石と勘違いして油断したところを、ズドンだ。宝石なんかよりずっとお似合いだよね」
……い、イシュタルとはとても因縁があるから仕方無いのだわ…
「店主ー。店主ー、買うよこれ全部。非売品とか言わないよねー?爪剥ぐよー」
…やっぱりギルガメッシュより危ないといった評判と評価は間違っていないのだわ。
私が上手くフォローしないと…!改めて使命感に燃える、エレちゃんでありましたとさ──
霖之助「勿論提供させてもらうよ。あんまり貴重品でもないからね。掃除の御礼に代金も結構だ。持っていっておくれ」
エレシュキガル「やった!エルキドゥのお陰なのだわ!」
霖之助「エルキドゥ、やはり…君は天の鎖、英雄王ギルガメッシュの親友エルキドゥかい?」
エルキドゥ「そうだよー。僕なんかをズッ友だなんて…全く…」
霖之助「…お願いがある。神代の神が作った芸術品、君を詳しく調べさせてくれないか?」
エレシュキガル「だわっ!?」
エルキドゥ「僕をかい?」
霖之助「あぁ。珍しいアイテムに目がなくてね…神代の天の鎖…叶うなら隅々まで知りたいんだ…知識欲は抑えられない…大事なんだ…」
エレシュキガル「どどどどどうするのだわエルキドゥ!?こんなこと、ギルになんて説明すれば…!」
エルキドゥ「じゃあ表に出よう。スペックを知りたいんだね?望むところさ」
霖之助「えっ」
エレシュキガル「えっ」
「性能試験は大事だからね。見て満足してもらえるなら大歓迎だ。兵器として…全力で披露させてもらうよ」
霖之助「み、見た目に対して随分…」
エルキドゥ「さぁ、ゴーゴー!」
「好戦的なんだね…!?」
エレシュキガル(せめてやりすぎないように祈る)
~数分後
魔理沙「おーい霖之助ー!ニトライザーって知ってるか!レアな玩具で…」
霖之助(ふんどしの姿)「ふふ、ふふふ…綺麗に衣服だけずたずたにされたよ…なんて精密性、なんて機動力、なんて演算力だ…素晴らしい、ウルクの至宝に出会えるなんて僕は最高だ…!」
魔理沙「何があったぁ!?」
~
エルキドゥ「~♪」
フォウ(上機嫌じゃないか、エル)
エルキドゥ「楽園に来てからずっとそうだよ。さぁ、皆で遊ぼう!」
エレシュキガル「…」
『ふんどし』
(何故エルキドゥは持ち帰ってきたのかしら…)
エルキドゥ「ギルー!穿いてほしい下着があるんだけどー!」
(穿かせるため!?)
楽園で一番自由かもしれないエルキドゥであった。
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