人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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小町(どうするんです?十王裁判は全部やるんですか?)

四季映姫(勿論です。皆忙しくて予定は合いませんでしたが、そこは私がなんとかします。一応、こんな事態も想定していました。閻魔しか暇ではない自由時間の使い方を…)

小町(噛み合わなかったんですね…)

ペルセポネー【冥界の共通点として…暗いですわね】

ハデス【明るい冥界だとねぇ…イメージ違いだって言われるんだよねぇ…あ、でも大神マルドゥークの力を上手く連ねたエレシュキガルちゃんの冥界は天国のような冥界になったね!】

小町(明るい冥界かぁ…)

四季映姫(見てみたいものです。では任せましたよ、小町!)

(は、はい!)


ハデス一家の地獄旅行記~裁判編~

【ようこそ、というのも変ですね。ですがようこそいらっしゃいました。ここは地獄の王が一人、秦広王が裁きし間。この地にてまず、すべての亡者は裁きを受けることとなるのです…】

 

厳かに、裁判所にて声が響き渡りハデス達を迎え入れる。其処は七日間単位で裁きが行われる、通称十王裁判といった様式を、あくまで様式…外来の方に解りやすく整頓された手順で公開するイベント。とはいえ、一切の緩みなく空気は張り詰めていることから、微塵も手抜きは行われていない事は明白だ。

 

【地獄の王がたくさんおりますの?変わった統治法ですわね…仲違いや意見の相違は起きないのか気になりますわ…】

 

【僕は駄目だきっと、ペルセポネーやケルベロス以外の子とうまくやっていける自信は無いよ…エレシュキガルちゃんは例外だろうし…】

 

【【【クーン】】】

 

【しゃんとなさい、ハデス。ケルベロス。ならばこそ、見識を広げ良きところを学ぶのですわ。我々もまた、教えを乞う羊なのでしてよ】

 

(いい意味で…こんな真面目な神様いるんだねぇ…)

 

ちょっとサボりは控えよう。そんな決意を人知れず懐く小町であった。そしていよいよ、沙汰を決める一連の流れが開かれる──

 

~初七日

 

小町「日本の裁きは7日単位で行われ、初めての裁きは読んで名の通り初七日といいます。地上では供養とかが行われ、それもまた裁判の裁きに加味される訳ですね」

 

ハデス【成程、祈ってくれる様な方がいてくれる生を送ったかどうかも判断基準なんだね。生き様は重ねられるもの。手厚く葬られるは善人でなくてはならないだろう】

 

小町「そしてまずは秦広王様…先の通り最初の方に裁かれる訳です。そら、お出ましですよ」

 

秦広王(四季映姫色違い服)【秦広王です】

 

ペルセポネー【まぁ!ヤマザナドゥとそっくりですわ!?】

 

小町(本人なんだよねぇ…)

 

秦広王【小野塚小町。あなたは直近、どのような働きをしましたか?】

 

小町「えっ?そりゃぁ真面目で誠実、サボることなく一生懸命粉骨砕身努力し働いていましたよ!」

 

秦広王【そうですかそうですか。その様な】

 

ペルセポネー【あら?糾弾も鞭打ちもありませんのね?】

 

秦広王【ここで見るのは『正直か否か』。嘘をついているかいないかではなく、つかないかを見ています。ですからここでは否定をしないのです。よろしい。進みなさい】

 

ハデス【あっさり終わった…?システマチックなんだね】

 

秦広王ちゃん【ちなみに裁きはここで決定し、天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の何れかに行き先が決まります。悟りを開き解脱すれば極楽浄土に行きますが…解脱者は最近では一人くらいしか見ませんでしたね。人間では無かった様ですが】

 

ハデス【…あぁ…】

 

【ですが罪深い方は更に先に進みます。先の三途の川の更に先を渡り、次なる王の場所へと向かうのです。次なる王は初江王。そこでは更に亡者の魂を改めます】

 

~初江王・生前の行い

 

初江王(四季映姫色違い)【はぁ、はぁ。初江王は亡者の生前の行いを改めます。善行を行ったか、悪行を行ったか。直接尋ねるのです。小町、あなたはサボりの際閻魔ちゃんの閻魔亭にて時間を潰しておりましたね】

 

小町「うっ…は、はい。その通りです」

 

【そして更に持ち合わせがないからといってツケにしましたね。何回かに分けて。しかもそれを返し終わっていない】

 

「はい…」

 

ペルセポネー(随分と根掘り葉掘りですのね。ギリシャでは地獄に堕ちたならば悪人!以上!ですのに)

 

ハデス(もっと言うと神のお気に入りだと勝手に生き返らせたりね…)

 

(((クゥ…)))

 

【よろしい、進みなさい。次は栄帝王です】

 

小町「…あたい亡者役なんですね…」

 

【地獄の亡者が良かったですか?】

 

「いえとんでもない!」

 

~栄帝王・邪淫改め

 

栄帝王(四季映姫色違い)【ふぅ、ふぅ。栄帝王の間では邪淫の罪を改めます。もし邪淫の罪を犯していたのが男性ならば】

 

化け猫【フシャーーー!!!】

 

ケルベロス【【【ワゥ!?】】】

 

【化け猫に股間を噛まれます。女性の場合は蛇が股間に潜り込みます】

 

小町「あたいはやってませんよ!独り身なんで!相手がいないんで!」

 

【知っています。ですから裁くまでもありません。行きなさい】

 

小町「酷くないですか!?」

 

ハデス【こ、股間が痛くなってきた…なんて恐ろしい…】

 

ペルセポネー【素晴らしい刑罰ですわ…!あ、でもケルベロスに穢らわしいものを噛ませたくはありません。ここは股間にヒュドラの毒に致しましょう】

 

ハデス【もっと恐ろしい事になってる…!?】

 

ケルベロス【【【ワフ】】】

化け猫【ナーゴ】

 

(仲良くなってる…)

 

~五官王・秤の測量

 

五官王(四季映姫色違い)【ぜぇ、ぜぇ。ここでは罪人の罪の重さを秤にかけ、量ります。どれほど重いか、罪深いか一目瞭然というもの。さぁ小町、鎌を】

 

小町「はーい。とほほ、つるし上げってやつだねぇ…」

 

ハデス【…やや重さが傾いたね】

 

「このように、重ければ罪業あり、軽ければ良し。そういった盤石な観測を得ていよいよ大本に至るわけです」

 

ペルセポネー【なんと長丁場でしょう!沢山の方がいらっしゃるジャパニーズ・ヘルならではの手間暇ですわね!】

 

【そう、そしていよいよ来たるは──】

 

 

~閻魔大王・最終裁定

 

四季映姫(いつもの姿)「はぁ、はぁ…此処に至るは閻魔大王。ここにて、亡者への最終裁定が下されるのです。最高裁判長…私の役職でもありますね」

 

ハデス【なんて威圧感なんだ…!僕も思わず背筋を正してしまう…!】

 

ペルセポネー【毅然となさいませ、ハデス?あなたはギリシャにおけるダイオー・エンマです。劣る場所など何も無いですのよ!】

 

映姫「亡者の生前の行いを全て記した閻魔帳、そして相手のすべてを映す浄玻璃の鏡。これらを使いすべての虚飾と嘘を剥ぎ取り真なる姿を晒すのです。小野塚小町、あなたは自身のサボり癖を改め、反省していますか」

 

小町「反省しています…ついついやっちゃうんですよねぇ…」

 

映姫「冥府の職務放棄、本来なら問答無用で地獄行きですが、あなたは職務に誇りを持ち仕事自体は良き功績を挙げています。故に地獄行きではなく──説教部屋行きとします」

 

小町「あぁー………」

 

ペルセポネー【あら、問答無用で地獄行きではありませんのね?】

 

四季映姫「勿論、そのような極悪人もいますが大抵の者は悪行を悔やみ、気にして、反省しているもの。そういった魂は必要以上に苦しめはしません。本当に邪悪なる魂…それの指標はいくつかありますが、特に『何が悪いのか解らない』『閻魔にすら悪くないと主張する』等の自身が悪に染まっている事すら気付いていない者は救いようがありません。そういった輩が、最後に堕ち行く場所…それが、地獄という下層であるのです」

 

ハデス【成程…自身を悪と気付いておらず、自覚なく他者を虐げる者こそを、日本は悪とするのだね】

 

ペルセポネー【…お待ちになって!?】

 

ケルベロス【【【ワゥ?】】】

 

【それで言うと…オリュンポスの神々もれなくアウトですわよ!?】

 

ハデス【あ、あはははは…神はほら、理不尽なものだから…】

 

ケルベロス【【【キューン…】】】

 

四季映姫「以上、これが裁判の大まかな流れとなります。皆様、大変お疲れ様でした」

 

小町「あはは、お疲れ様です!いやー、真に迫ってびっくりしちゃいま──」

 

浄玻璃の鏡『いやー、映姫様ってばイザナミ様の前では借りてきた猫みたいにペコペコしてて面白かったねぇ。まぁ地獄なんてもんができる遥か前の神格だから誰一人裁けるわけないんだけどさ。白黒つけられないからしょぼくれてて可愛かったねー』

 

映姫「勿論、あなたは説教部屋です。よろしいですね?」

 

小町「………はい」

 

ハデス【裁きは冗談じゃなかったね…】

 

ケルベロス【【【キューン…】】】




四季映姫「(ガミガミガミガミガミガミガミガミ…)」
小町(しょぼーん)

ペルセポネー【盤石に整えられた裁判システム、そして間違いと負担のないよう考えられた多人数制度…なんと完成度の高い冥府でしょう!我々には無い、キリッとした裁判でしたわね!】

四季映姫「お楽しみくださってなによりです。そちらはたった二人で運用なさっているとか。どのような分担を?」

ハデス【僕が魂の質と罪状を見抜き、ペルセポネーが然るべき苦難と場所へと分担する形です。一人でやっているときもありますが、やはり二人だととても楽で】

ペルセポネー【エンマ達が行っている裁きや改め、あれらは全てハデスが一瞬で終わらせますのよ?一人で十王分!それが我が夫ハデスですわ!おーっほっほ!】

ケルベロス【【【わぅーん!】】】

【脱走にはケルベロスが対応してくれる。今まで脱獄を許した事は無いほどの敏腕ぶりさ。いつも助かっているよ】

四季映姫「ふふっ。なんと素晴らしい方でしょう。勤勉で、真面目で、頼もしい。小町?ケルベロスさんを見習いなさい?」

小町「あんたら凄いよ…完敗だよ…」

四季映姫「さて…それではペルセポネーさんのリクエスト通り」

ハデス【えっ?】

「地獄に参りましょうか。有名所の八大地獄をご案内します。火車の準備を致しますのでしばしお待ちを」

ハデス【リクエストしていたのかいペルセポネー!?】

ペルセポネー【カルデアでオリュンポスの神々が狼藉を働いた際の参考にしましてよ?】

小町「火車って罪人を乗せる車ですよね?誰が乗るんです?」

四季映姫「(にっこり)」

「…あたいですか!?」

地獄編に続く!

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