人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オルガマリー「リッカ、グドーシさん?マシュはどうだっ…」

リッカ「すやぁ…」

グドーシ「ネハン…」

オルガマリー「……」

リッカとグドーシが床で寝ている



マシュの部屋に来てマシュが床に寝かせるはずはない



予期せぬ出来事によって意識を誘拐された



現在異変対処中と推測。リッカ、グドーシ、マシュが当事者の状態

オルガマリー「…」

聖杯が起動中



マシュも予想できなかった状態と推測



マシュの願望を聞き入れたと予想



起きないマシュ



マシュの精神世界に起こった特異点と推測



連絡がなかったということは、二人は強制的に招かれた



今起こすのは危険


オルガマリー「…ロマンとギルにだけは、伝えておきましょう」

マシュの百倍は探偵らしいオルガマリーであった。


名探偵マシュ!~衝撃編・探偵とはあらゆる事象に難癖をつける厄介な批評家~

北欧旅館、ヴォルスンガ。切り立った崖の秘境に構えられた、蒼白き焔に囲まれた豪奢な館。この館は最近日本に越してきたようで、ホームステイの手段を募ったところ商店街広告担当のジークの目に止まり、福引の景品として活用される事となった。リッカ達は無事に一等を当て、この人里離れた旅館へと案内される運びと相成った。森や海に囲まれた絶界の館…まさに。

 

「まさに、事件の予感しかしない物件案件ですね…!私の茄子色の脳細胞も嫌な予感しかしないと猛っています…!まずは栄養を補充していきましょう!んんんんー」

 

「白い粉を吸うマシュ殿。薬物にハマっていたホームズ殿のリスペクトですな。ちなみに駄菓子なので御安心を」

 

「…どうでもいいけど、吸ってる顔は隠しときなさいよ。顔芸レベルなんだから」

 

(やっぱりマシュはもっと自分を出す方法を模索してるんだなぁ。現実より2割増しでギャグだもん)

 

そんな四人を迎えるように、エントランスに人が集う。羽根の生えた黒髪、桃髪、金髪のワルキューレ…メイドワルキューレ達の登場だ。

 

「ようこそいらっしゃいました。髪の黒いワルキューレ、オルトリンデとお覚えください」

 

「私はヒルド。景観や幻想の投射やプラネタリウムとかの担当をしているよ。よろしくねっ」

 

「金髪の…サイカワワルキューレ。スルーズです。お見知りおきを」

 

それぞれの自己紹介を行う、人間離れした美貌のメイド達。無理もない、実際に飛んでいるし紅き眼を持っている。そうそうお目にかかる事ができないタイプの美少女だ。グドーシが礼を行い、じゃんぬは興味なさげに屋敷を見渡している。

 

「そして、当方が館の主のシグルドである。そしてこちらが妻の──」

 

「きゃあぁあぁあぁ!?」

 

真っ先に絶叫を上げたのは、我等が名探偵マシュであった。無理もない、何故ならシグルドは姿を現したその瞬間から──血塗れだったのだから。

 

「こんにちは…お騒がせしてごめんなさい。私は妻のブリュンヒルデです…」

 

「ちょ、ちょっと!?なんで血まみれな訳!?もう事件かなにかなの!?」

 

「お、おちつ!おちつきください!これは、これは何やらじけ、じけっ…!」

 

マシュ、大いにテンパる。彼女には猫探し人探し百発百中の実績はあるが、人のスプラッタは未だ勉強中なのである。それでいいのか名探偵。

 

「ごめんね、うちの夫婦はあれが普通なの。好きすぎて、事ある弾みでお姉様は夫を殺そうとするわけ。愛って怖いよねー」

 

「そのまま致命傷になってしまえばいいのに…!私達からお姉様を奪ったシグルド様なんて…!」

 

「まぁまぁ、それが幸せならば祝福するのも妹の役割ですよ?スルーズ」

 

三者の言葉をリッカはふむふむと聞き及ぶ。どうやら彼女らは立派に自意識を確立させている状態であることが見て取れる。一人一人が大切な家族の扱いを受けているのだろう。

 

「ははは、愛のある殺傷沙汰は当方は気合やガッツで堪えてみせるとも。我が愛の愛に満ちた一撃では死にはしない。何故か?もう既に、我が心はブリュンヒルデに奪われているが故に──」

 

「まぁ、貴方…(ザシュザシュザシュザシュ)」

 

「なんか血が噴水みたいに出てるんだけど!?」

 

「うぶぶぇ…!!」

 

「流血沙汰でダメとは…なんという探偵☓というスキル持ちか。前途多難でござるなマシュ殿」

 

マシュ、ガチの流血沙汰にグロッキー。推理どころか精神バランスを崩す始末である。彼女的にはスムーズに無血で解決するのが理想であったのだろう。しかしこれはただの導入である。挫けるには早すぎる。

 

「おや、客人の体調が優れぬ模様。オルトリンデ、スルーズ、ヒルド。気分転換に彼女らを案内してやってほしい。彼女らは大切な客人であるが故に」

 

「「「了解致しました、シグルド。それでは、こちらへ」」」

 

シグルドの言葉に寸分違わずに従い、ワルキューレ達は随伴を促す。彼女らをもてなす為、案内をしてくれる様だ。付いていかない手はないとリッカは皆を促す。

 

「ほら、ついていくよ!マシュもしゃきっとする!待ちに待った探偵やるんでしょ!」

 

「そ、そうでした…!私は名探偵、屈するわけには行かないのです…!断固たる、決意!固茹で、卵ッ!」

 

「掛け声ダッサっ!」

 

「まぁまぁそう言わずに。あのワルキューレ達の案内に預かるとしましょうぞ、リッカ殿?」

 

「うん、そのつもり!…」

 

リッカは飛び去るワルキューレ達の後ろ姿を、じっと見つめていた──。

 

 

「寝室を御案内致します。皆様は強い希望で相部屋でしたので、このスイートルームをお使い下さい」

 

オルトリンデが案内したのは、四人が共同で使うスイートルーム。部屋というよりマンションの全室はある広大な部屋。キングサイズベッドが人数分あるというとんでもない広さの部屋…というより、居住ルームと言えるやもしれない。

 

「広いです!景色も一望できますし、タイプライターのタイピングも捗りますね!」

 

「待たれよ、拙者は相部屋でよろしいのですかな…?性別が異なる者ですが」

 

グドーシも当然のように相部屋な事に、グドーシ本人が疑問を呈するが、そこは仏陀系男子。信頼は篤い。

 

「グドーシなら大丈夫!」

「過ちとか、気の迷いとか出来心とか一番無縁なやつでしょ、あんたは」

 

「ははは、確かに。では、ベッドに包まれると致しましょうぞ」

 

あっさり受諾された事を受け入れ、ベッドにて瞑想を始めるグドーシ。オルトリンデは説明を終え、部屋の退出を行う。

 

「それでは、ごゆるりと」

 

「あ、オルトリンデ。ホームステイって初めてなの?」

 

リッカの言葉を吟味し、頷くオルトリンデ。これは、昨今の思いつきであるという。

 

「シグルド様は『良き影響をもたらす』と外界の交流を考えていました。北欧から日本への環境の変化にて起きるお姉様を気遣う…そのために」

 

「ん、そうなんだ。解った、ありがと!」

 

「この景色を独り占め!いえ5人占めですね!探偵の役得!役得ですよ!後で追い詰められた犯人ごっこしましょう!」

 

オルトリンデから交代するように、スルーズがやってくる。どうやら、案内役の交代なようだ。

 

「それでは、浴場を御案内致します。こちらへ」

 

 

スルーズが案内せしは、空中に浮かび上がる天空浴場、ルーンの力で制作された名物であるとの触れ込みだ。

 

「男性、女性と分担しお使いください。混浴は、我が主とお姉様の専用なので」

 

「ラブラブなんだね、二人!」

 

リッカの問いに、不機嫌そうに耳をぴょこぴょこさせるスルーズ。どうやら二人の関係に、思うところがあるようだ。

 

「…お姉様を私達から奪ったシグルド様には思うところがないではありませんが、それはそれ。完璧な使命の遂行は私達の本懐ですから」

 

「あら、お利口さんなのね。最愛の人が奪われたのに待てができるなんて。立派よ?」

 

「戯れはやめてください!あぁ、私に…私達以外に微笑みかけるお姉様なんて見たくなかった…!機会があればあの御方に目にもの見せるしか…!…」

 

失礼、コホンと咳払いしそそくさと退室するスルーズ。彼女はどうやら、情緒はとても発達しているらしいことが見て取れる。

 

「じゃあ最後は私だねっ。付いてきて付いてきて」

 

テンション高目な桃髪、ヒルドが最後を飾る。案内のトリを飾るヒルドが招く場所とは──

 

 

「ここが私達の職務部屋。何かあったらすぐに呼んでね。すぐに駆けつけるからっ」

 

そこは、三人のワルキューレの書斎。文化の参考書が広がるスペース、殺風景なスペース、スタンダードなスペースが用意されている彼女らの自室である。

 

「私達、日記を付けてるんだ。毎日毎日新鮮なコトばかりで情緒が刺激されるから、書き留めるのは大変なんだけどね」

 

「…何も書いてないわよ?」

 

「それは盗み見防止の為のルーンがあるから。ちょちょいと書けば…ほらっ」

 

ヒルドがルーンを刻むと、日記に文字が浮かぶ。その内容は、日々の新鮮な刺激を書き記したものばかりだ。

 

「私達にとって、感情はエラーみたいなものなんだけどね。スルーズは戸惑いながら勉強してて、オルトリンデは真面目にエラー報告として日記をつけてるの。かくいう私もメモしてるんだけどねっ」

 

「ヒルドも感情を勉強中?」

 

「そんなところ。まだ良くわかんないから、色々見てるんだけどね。説明は以上ですっ。楽しんでねっ」

 

テンション高めに去っていくヒルド。どうやら三種三様に感情を獲得し、勉強中の様だ。

 

「仲睦まじい家族…どうやら何も起こることはなさそうですね!先輩!」

 

「うん!大丈夫そうだね!じゃあ皆、お風呂に入ろっか!」

 

「拙者は一人で湯浴みになりますが、皆様は羽根を伸ばされよ。瞑想しながら入浴するでござる」

 

「それ休めるの…?ま、あんたがいいならいいけれど…」

 

挨拶回りを終え、まずはゆっくりと疲れをとらんとする一行。

 

──しかし、名探偵の行くところに平穏な外周などあるはずもなく──

 

 

 




浴場

マシュ「犯人はあなたです!犯人は…お前だ!犯人ですね!?あなたは犯人ですか!?」

じゃんぬ「なんで探偵が訪ねてるわけ?スプラッタ耐性も無いし、ホントガワだけの温泉卵よね、あんた」

マシュ「お、温泉卵…!?ふ、ふふふ…そんな風に言えるのも今だけですよじゃんぬさん…!万が一に事件か起きた時、私は真価を発揮しますから!えぇ!万が一!」

グドーシの声『リッカ殿、リッカ殿。レイライン会話でござる』

リッカ『グドーシ。そっちは大事?』

『怪しい気配は無いでござる。そちらも色々、探りを入れていたでござるな?』

リッカ『うん。マシュは素直だからかな。──大体分かっちゃった。後はどうマシュに推理させるか…』

リッカが言葉を浮かべ、思案したその時──

ブリュンヒルデの声『あ、あなた───!?』

リッカ「!!」

マシュ「今の声は!」

じゃんぬ「来ちゃったわね、万が一…!」

グドーシ『向かいましょうぞ』



シグルドの亡骸「」

ブリュンヒルデ「あ、あぁ…あなた…どうして…」

スルーズ「い、いやぁあぁあぁあっ!?シグルド様、シグルド様が…!!」

オルトリンデ「何故、何故?こんな…何故、冷たくなって…」

ヒルド「しっかりしなよ二人ともっ!警察を呼んで!くっ、っ…はやく!」

血溜まりの中に沈むシグルド、呆然とへたり込むブリュンヒルデ。茫然自失のオルトリンデ、錯乱するスルーズ。気丈に振る舞うヒルド。

マシュ「ほ、本当に…事件が…」

リッカ「……」

じゃんぬ「とりあえず、警察を待つわよ。マシュもリッカも…」

リッカ「マシュ」

リッカはそっと、マシュに耳打ちする。

(──探偵として、こう言って)

マシュ「先輩…?」

それは、マシュという探偵を奮い立たせる助手としての言葉──

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