人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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今日も今日とて休日出勤でしたので、メッセージと感想返信は明日になってしまうかもです…ごめんなさい!

代わりとなってはなんですが、依頼していたタイトルロゴを公開いたします!表紙とイラストレーターさんの紹介は、1500回記念に!ご期待ください!


【挿絵表示】


ギルの入れ墨と、この小説に深い関わりを持つ虹色を記していただきました!自分が書いたものではありません!ありませんよ!

タイトル表紙の納品ももうすぐ!ワクワクしながら待ちましょう!


リッカ(自害──!)

グドーシ(創作ビターエンドパターンでござる。楽園において死別や離別を容認していい道理は──)

リッカ「──わっ!?」

オルガマリー(止められるはずよ、あなたなら)

(マリー!?──おぉおおっ!!!)

ヒルド「えっ──あっ…!?」

じゃんぬ「セーフ!!」

オルガマリー(あなたたちは大丈夫でも、マシュに何かあったらいけないわ。彼女は大切な──)

グドーシ(…?)




名探偵マシュ!〜真相編・一番近くにあったもの

「な…なんで?なんで止めるの?なんで!?」

 

自害に至ったヒルドを、寸での所で止めた者。それは温泉卵探偵の助手、リッカであった。彼女に突き刺さる筈だった槍は、寸前で食い止められている。彼女は推測していたのだ。感情の理解に至ったヒルドは、そうするのだと。ヒルド本人はその行動に、理解と把握が及ばず狼狽する。

 

「私、殺したんだよ!?シグルド様を!殺人鬼だよ!?私なんて、死んだ方がいいに決まってる!」

 

「殺させない!マシュはあなたを死に追いやる為に推理した訳じゃない!あなたは勘違いしてるし、まだマシュの推理は終わってない!」

 

「やだ、やだよ…!死にたいの!こんな事して、生きていていい筈がない!死んで、シグルド様に謝りにいくの…!!」

 

意志は固く、揺るぎない自己破壊の意思。些細な感情への憧れが、取り返しのつかない事態を引き起こした事への絶望に、慟哭と自害の意志は揺るがない。禁断の果実を口にした者へと与えられた罰。しかし、彼女を殺しては、死なせてはいけない。探偵は、人を死に導く死神ではない。死なせるために秘密を暴くのではないのだ。そして──

 

「ダメ、ヒルド!」

「死んでいいだなんて、言わないで…!」

 

リッカに続くように、ヒルドを抑えるのはオルトリンデ、スルーズ。大切な者を奪われた哀しみを味わう者が自身を止めた事実を、何よりヒルド自身が受け止められない。

 

「なんで!なんでなの!?あんたたち、私が憎くないの!?シグルド様を殺したんだよ!?あんたたちの幸せを殺したんだよ!?」

 

「それでも、死んでほしいだなんて思わない…!私達は、三人で一緒のワルキューレだから…!」

 

「貴方の苦しみを、悩みを解ってあげられなかった事にも間違いなく一因はある…!あなたが犯した罪は、私達も一緒に背負いたい!償うためには、生きていなくちゃいけないでしょう!?」

 

「スルーズ、オルトリンデ…!」

 

やがて、リッカが槍を奪い取り抑え込む。自害をさせず、最後の推理を聞かせるために。

 

「マシュ、教えてあげて!最後の推理を!」

 

「はい!ヒルドさん、あなたは自身の感情を理解できなかったと言いました。でもそれは違います!あなたはきちんと、幸せはなんであるのかわかっていました!自覚出来ていなくても、形として残していたのです!」

 

そうして突き付けるもの、それはヒルドがワルキューレ達と付けていた日記。この事件の突破口としての役割を果たした所有物。

 

「本当に感情というものを理解できず、幸せを壊すことを主眼に置き、シグルドさんを殺すつもりであったならこの日記を残すこと自体がナンセンスです。この日記には、あなたの葛藤や苦悩、凶行に走る決心の全てが記されている。決行の際に紛失や焼却していれば、この真相に辿り着く事は出来なかったかもしれません。ですがあなたは、それをしなかった。何故ですか?」

 

「ただの記録日誌だもん!どうこうする必要なんてない!」

 

「本当にそうなら、サボることも忘れることもあるかもしれません。しかしこの日記には一つたりとも欠落はありません。毎日、簡潔ながらもしっかりと欠かさずに、皆様の生活の様子…仲睦まじい事への報告…そう、毎日欠かさずです!ヒルドさん、これはあなたの事務的な管理記録というだけの理由ですか?」

 

そう、ただの一度も欠落はない。ただの一度も見落としはない。そのページを読めばその日の景観が目に浮かぶ程、簡潔ながらも的確な文が記されている。それは、ヒルドが事細かく記したもの。

 

「それは私の機能、ワルキューレとして記録しているだけのもの!他意なんてない!」

 

「それは…あなたが気付いていないのです。あなた自身が、皆様にどんな感情を懐いていたのか。どんな想いを抱いたのか。それは、あなたが残したこのページに」

 

開いたページは、2枚の白紙。何も書かれていないページ。そして其処に、グドーシがそっと手を翳す。

 

「自身の内面と言うものは、見えにくいもの。しかし完全に心や感情の無い者はそうはおりませぬ。それは、そなたが感情を学ぼうとした事実そのものにも見られるように…そして、その想いとは、このように産声を上げたがっているのでござったよ」

 

そこには、ルーンにて念頭にロックされた最奥の秘密。それはきっと、ヒルドが日記を捨てることが出来なかった理由にして、答え。其処には──

 

「──!!」

 

そこには──デフォルメされた家族の似顔絵の集合ページ。ムスッとしたスルーズ、真顔のオルトリンデ。笑みのシグルド、困り顔のブリュンヒルデ。ヒルドの手書きで記された、家族達の肖像。

 

「これは、あなたが家族を大切に想っていた何よりの証拠だと私は思うんです。無感情だとしても、理解できないのだとしても。大切な人達と過ごす時間は、あなたの心に確かなものを残していたんですよ」

 

「…皆…オルトリンデ…スルーズ…お姉様、シグルド様…」

 

そっと渡された日記を渡され、崩れ落ちるヒルド。彼女は幸せがなんであるか解らなかった。解らなかったけれど、家族の暖かな時間が確かに『幸福』であることを把握していたのだ。それを、定義する知識が無かったが故にそうと気付かなかっただけで。

 

「…こんなの、こんなの見せられたって!今更どうしろっていうの!私はもう…殺してしまった!ブリュンヒルデお姉様の大切な人を!皆の大切な人を!」

 

「ヒルド…」

 

「お姉様、私を許さないで…!私は知りたいというだけで、あなたの幸せを台無しにしたの…!悪いのは私、裁かれるのは私…!だから、私を殺してください…!私があなたから奪った様に、私から…!」

 

泣きながら懇願するヒルドを、ブリュンヒルデはそっと…抱きしめた。報復ではない、容赦の抱擁。

 

「…どう、して…?」

 

「大切な人を奪われたからと、また奪い返して…そうすれば、あの人は帰ってくるのでしょうか。あなただって、大切な人。私の、スルーズの、オルトリンデの。…あの人の、大切な人。あなたを奪えば、それはスルーズとオルトリンデから奪う事になってしまう」

 

「そうです…!やったことを憎むことはあれ、あなたに死んでほしいだなんて思わない…!」

「シグルド様も、きっと哀しむ筈だと思います。…私達が憎み合い、殺し合う事を。私達を愛してくださったシグルド様は、そういう方だったから…」

 

スルーズとオルトリンデも、哀しみに満たされている。そして純粋であった。ヒルドに対する恨みや憎しみより何倍も、彼女やシグルド達を想う気持ちが強かった。

 

「…あの人が『良き影響』と言って日本にやってきたのは…ヒルドやオルトリンデ、スルーズの為でした。感情を得た二人、そしてそれがまだ乏しい一人。豊かな文化に必ず触発され、情緒は育ちそれが個性となると。だから…シグルドの願いを、私は尊重します」

「お姉、さま…」

 

「やり直しましょう、ヒルド。罪を皆で償って、また新しく…私達は、皆で一つの、家族なのだから」

 

ブリュンヒルデは、彼女を赦した。憎しみや哀しみはどこかで誰かが終わりにしなくてはならない。奪い返したとしても、奪ったものは元に戻らない。

 

「うぅ、うっ…ごめんなさい、お姉様…!ごめんなさい、スルーズ、オルトリンデ…!ごめんなさい、シグルド様…!うぅ、うああああぁあぁ…!!」

 

…かくして、一人のワルキューレは不完全さを覚え、故障した。彼女は理解した。他者へ攻撃する快感、二度と戻るもののない喪失感と後悔。そして、憎悪を癒す絆、愛。

 

「…事件、解決だね。マシュ」

 

「…はい。ありがとうございました、先輩。皆様…」

 

愛と、赦しの感情に懐かれ滂沱の涙を流しながら泣くヒルドと寄り添い合うワルキューレ達は、皮肉にも神話の如くに美しき光景を紡ぎ出していたのだった──

 

 

 




じゃんぬ「ぐすっ、ひっく…」

リッカ「…泣いてる?じゃんぬ」
じゃんぬ「…胸、貸して…」
リッカ「よしよし…」

オルガマリー「みんなの力で、あなたの推理を作る探偵…ふふっ、さながら温泉卵ね。あなたらしい」

マシュ「皆さんがいてくださるからこそ、ですよ。…皆さんがいてくださったから…」

オルガマリー「それでいいのよ。…さぁ、殺人罪の現行犯として、彼女を連れて行かなくちゃ」

???「いや、その必要はない。何故なら、我が家族は誰も死んでおらず殺してもいないからだ」

オルガマリー「…は?」

グドーシ「おや…これは驚きましたな」

現れた男性。それは、紛れもなく先程死んでいた筈の──

シグルド「当方、死の淵より帰還せり。探偵諸君、感謝する。そなたらがヒルドの愛を自覚させた事により、当方はガッツが発動した」

ヒロインXX「も、もしかして…!愛って遅効性でもいいんですか!?」

オルガマリー「…ニャル。検死判定はあなたとXXだったわね?」

ニャル【生き返ったんですよぉ!予想できるわけないじゃないですかー!】

ヒルド「シグルド様…!ごめんなさい!私、ごめんなさい…!」

シグルド「謝ることなど何もない。事件など何も無かったのだ。ただ…其処には好奇心のみがあったのだ。知りたいという気持ちを止められはしない。時には狂気に至るそれを、当方は受け止めた。それだけだ」

ブリュンヒルデ「…あなた…」

シグルド「心配をかけた。だが…愛ある限り、当方は不死身の英雄である──」

…事件の解決は、被害者の復活という形で霧散した。名探偵マシュの初推理は、無かった事となる。

マシュ「良かった…!」

リッカ「ふふっ。解決だね!名探偵さん!」

マシュ「はいっ!マシュっと解決、一件落着です!」

涙を流しながら抱き合う家族の笑顔。それのみを報酬にし、マシュは朗らかに解決を宣言するのであった──
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