人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マシュ「ぁ…」

リッカ『うぉおぉおぉおぉおぉおぉおっ!!!』

BB「…!」

「せん、ぱい…?」

じゃんぬ「リッカ…あんな事まで出来たのね…!よく見なさい、マシュ!あの娘が、あんたの先輩よ!あんたの、皆のために、自分の為に理不尽に挑む──!」

リッカ『だぁあぁあぁあぁーーっ!!!』

じゃんぬ「私達の…!藤丸リッカよ!」

マシュ「…!」


父はとても強いというお話

【なんと愚かしく、憐れな成れの果て。そんな姿になった者が、どうして普通の人間を名乗れるでしょう。あなたはとうの昔に、人間であることを放棄していたのですね】

 

『人間か、そうでないかを決めるのは誰かからの評価でも力の有無でもない!自分がどう在りたいかを決める心の在り方次第だよ!だから私は、確信してる!いつ、どんなことがあろうとも私は人間だって!人間だから…!人の痛みを分け合えるし!理不尽を許せない怒りを懐く事ができるんだ!』

 

BBの鎌、リッカのツインスラッガーがぶつかり合い火花を散らす。褐色赤眼の邪神の傀儡、希望の翼を広げる希望の龍。深夜の空に、凄絶なる火花の軌跡が刻まれる。

 

【人を救うというのなら何故邪魔をするのです?確約された絶望、破滅の確定した未来から人類種を保護する私の役割を、何故?】

 

『目を潰して、鼻を削いで耳を塞がせて閉じ込める事を救うとは言わないんだよBB!人間の本懐は、良い未来であれ悪い未来であれ、変化を求めて生きていくもの!ずっと昔に貰ったバトンを持って走り続けているのが今の人間の在り方!BBのやり方は、それを全部潰しちゃう!だから私は、あなたを止める!!』

 

迫りくる触手を、蜘蛛糸状の光線で薙ぎ払う。種として生存…いや、標本として管理できればそれでいいBB。当たり前の日々がいつまでも続くことの素晴らしさ、尊さを命を懸けて護るリッカ。人類種の行き先を夢見る二人は、何処までも相容れない。

 

【一人の超抜種が見る未来と、大多数の民衆が見るもの未来はあまりにも違う。あなたが見る未来に到れる人類などは存在しません。川が高きから低きに流れるが摂理なように、人類は苦難に挑むよりも安寧に縋るでしょう】

 

『そうかもね!人間ってちっぽけで弱い生き物だってよく知ってる!だけどそれだけじゃないってことも!ちっぽけだから──護りたいって思うんだから!!』

 

【運命とは平等で、絶対です。1万分の1の確率すら赦されない絶望に抗うことは、ある意味何よりも質が悪い。いたずらに希望を持たせてしまうのですから】

 

『運命なんて後出しの予言と変わらない!誰かが何かが起こった後で言う運命なんて台詞、私は受け入れるつもりはない!暗闇の荒野に道を拓く様に、希望が無いなら私が灯りになって道を作って進む!!』

 

【その暗闇の中に答えは無いと知りなさい。答えなど何処にも無いと悲嘆に暮れなさい。闇も影も、あなた達が晴らせるほど薄くはない…!】

 

『それでも進むことを辞めない!!私が私であるかぎり、希望の未来を掴むために私は戦う!いつかそれが、私の後に続く人達の希望になると信じてる!!』

 

「──先輩…」

 

「ホント、神様って何考えてるのかしら。女の子にしたことだけが、ミスってやつなんじゃない?」

 

邪神の言葉を、絶望を強靭に跳ね除けるリッカ。彼女の中には、数多無数の希望と絆が満ちている。それは紛れもなく、世界が自身にくれたもの。その暖かさが胸に在る限り、リッカはけして絶望などしない。知っているのだから。人間は愚かであり、同時に何よりも尊き希望を紡ぐ生き物であるのだと。

 

【…。愚かしさも極まりました。その様な希望への逃避は、闇を直視する事から逃げたに──】

 

【いいや、リッカ君は自分自身の意志で、言葉で絶望に、神に挑んでいる。たちの悪い邪神エミュしている君なんぞよりずっとずっと立派だよ、後輩くん?】

 

BBが切り捨てた刹那、リッカの口から放たれたのはリッカの声ではなかった。それは、聞く者の心臓を握り潰すような冷え切った声。しかし、彼の『素顔』を知るものには優しく、穏やかで悪戯好きな困った人の声。

 

(ニャルさん!?え、なんで!?)

 

そう、楽園の親バカ、ニャルである。リッカの内から響いた声と同時に変化が訪れる。白と紫のバトルアーマースーツが反転し、黒と赤の禍々しいカラーリングへと反転する。デモンベイン・ゼロビヨンド・ナイアーのもう一つの姿…邪神により近いフォーム、ナイアーモード。邪神はそれを通じて、リッカに力を貸しにやってきたのだ。

 

【もちろん、君を助けに来たのさ。私の大好きな物語の主人公を、よりにもよって私のパチモンなんぞに台無しにされてたまるものか。私も君と同じさ。大好きだからね、人間】

 

(ニャルさん…!)

 

【それに私を名乗りながら曇らせの手段があまりにも雑なのに文句を言いたくてね。なんだあの出来の悪いパッチワーク。出落ちに全力とかスプラッターかB級ホラーじゃないか。ジルの旦那も言ってるでしょ必要なのは鮮度と胴体だって。寸分違わず精巧に作って認識魔術かけさせて、一旦平穏な日常堪能させて親近チョメチョメにしていざ合体って時にアレを見せたら心身共に木っ端微塵だろうに初邂逅の衝撃にばかり拘るとかこれだから悪ぶってるだけの白より白いBBちゃんはさぁ…】

 

止めたらラスボス?邪神としては短絡的かつ安直な仕事に非常に納得がいかずやってきた様子でもあるようだ。苦笑いを懸命に抑え、邪神と力を合わせる。

 

(そ、その曇らせ談義は後で!ニャルさん、BBをなんとかできる手段はありますか!?)

 

【勿論ある。BBちゃんに巣食う私の力を引き剥がし私の力を撃破すればいいのさ。所詮魅入られた程度の同調率、本家本元のこっちが負けてたまるかという話だよリッカちゃん。しかし、何故私が来たかというとだね】

 

(!?)

 

【娘も銀河警察も、そういう緻密な作業てんでだめだから…BBちゃんも楽園の一員だから、殺したくないだろう?それがシミュレーションでもね】

 

──不覚にも、リッカは感動で息を詰まらせた。彼は本当に、心の底から。楽園に関わる者を、彼は愛しているのだ。それは、再現されたデータでしかない者にも向けられていることからも明らかだ。

 

【だから私がそれをやるよ。リッカちゃんはBBちゃんの保護をお願いね。…?どうかした?】

 

(う、ううん!やっぱり、このニャルさんは素敵だなって!)

 

【最近褒め殺しされちゃうくらい皆に受け入れてもらえて嬉しいよ。だから頭がプレシャスになったんだね。さて…切り離す手段はどうしたものか…。…!】

 

ふと、邪神は思い至る。邪神の因子とBBを切り離すもの、その手段とそれに使うもの…メスに当たるものを。

 

【──反応が見たいし、ちょっとやってみるか。リッカちゃん、君のお父さんはウルトラマンベリアルだったよね?】

 

(そ、そうだよ?) 

 

【ちょっと呼んでみてよ。お父さん!力を貸してって。必ず来てくれるはずだから。さぁさぁ、ほらほら。せーの!助けて!ウルトラムァアァアァン!(CV ウイッシュの人)】

 

(た、助けて!お父さん!ウルトラマンベリアルーっ!!)

 

ニャルに言われるがまま、魂の叫びを父親に届ける。──その祈りは、確かに届いた。あまりに衝撃的な形で。

 

【──俺様を呼んだか?娘よ。お前が助けを求めるなんざよっぽどだ。カッ飛んできてやったぜ】

 

「何これーーー!!!?」

 

飛んできたのはウルトラマンベリアル…の顔面がくっついた剣。そうとしか言えない珍妙な剣がリッカの前に浮遊して現れた。リッカからしてみれば、父の生首にしか見えない程の代物。

 

【フィリアガペーと同じ規格の武器…名付けてベリアロクだよリッカちゃん。ゼロの弟子を名乗るヤツがこれを使ってるんだ】

 

(だからってこれはあんまりじゃない!?お父さん生首を振り回されるような悪いことした!?…したね。いっぱいしたね。光の国壊滅に並行宇宙完全制圧にクライシスインパクト…)

 

【迷ってる場合じゃねぇぞリッカ。お前が助けたいものを助け、斬りたいものを斬るんだろう。なら俺様を手に取れ。俺達親子に…斬れない物はない!】

 

父の言葉に、気合発破覚悟を決めベリアロクを手に取るリッカ。邪神、ウルトラマン。そしてそれを振るう資格在りし人間。役者と舞台は整った。

 

【虚仮威しを…消えなさい…!】

 

BBより放たれる、無数に蠢く触手。邪神の権能の発露であるそれを、ベリアロクは一飲みにしていく。

 

【ハッ!ライコウの用意するタコの方が何倍もうめぇ!リッカ!一気に決めるぞ!】

 

(き、決めるってどうするの!?)

 

【勿論、BBちゃんも助けるのさ。お父さんの頭の後ろのスイッチを3回押してご覧?】

 

(スイッチ!?あ、これ!)

 

『ヌゥッ!!』

 

(呻いた!?お父さん大丈夫!?痛かった!?)

 

【気にするな。あと2回だ!気合いを込めろ!】

 

『ヌゥアッ!!ヘェアッ!!』

 

邪神の導きと、父の激励と共に行った操作にて、刃の部分にエネルギー刃が伸びる。それは別の世界にて、虚無すらも両断せし魔剣の一閃──!

 

【娘に手を出すヤツは、俺様がたたっ斬る!!デスシウムスラァアァアァアァッシュ!!ゼェエアァアァアァアァッ!!】

 

(ほぉおわぁあぁあぁあぁあぁえぁ!!?)

 

【wwwwwwwww】

 

気焔万丈の父、剣に引っ張られ振り回される娘、大爆笑する邪神。三位一体の龍が迫り──

 

【ッ、あぁあぁあぁあぁあぁあぁ!?】

 

問答無用にて、父の生首を振り回してくるという正気度ZEROものの光景に対応が遅れ、そのままZ字に切り裂かれるBB。Z字が刻まれた瞬間──

 

【よし、そこだ】

 

(おっ!!!?)

 

胸の中心に深々とリッカの腕を突き刺す。そのまま邪神の力の源である触手を抉り取り、邪神の影響からBBを開放する。

 

【俺様の娘に手を出そうなんざ、2万年早い!】

【リッカちゃん、確保!】

 

(うわわわわわ!?)

 

「──あ…」

 

邪神の影響である褐色と、触手が失われ、糸の切れた人形のように倒れ込むBBを抱き抱えるリッカ。二人の父のお陰で、無傷でBBを救うことが出来た。

 

(…ありがとう、二人のお父さん)

 

【フン、いいってことよ】

【イメージとはいえ、私の不始末だからね。さて、後は杜撰な仕事の後処理に付き合ってね】

 

そう。邪神にはまだ、排除しなければならないものが残っている──




兄だったもの【?¡[))¢·++·:?】

じゃんぬ「このっ、近寄るなっての!」

マシュ「あぁ…兄さん…どうして…?」

じゃんぬ「だから見るなって言って──」

『ヌゥッ!!ヘァッ!!』
ベリアロク【デスシウムファアァァァング!!】

じゃんぬ「ぎゃーーーーー!!?」
マシュ「きゃあぁあぁあぁ!?」

迫りくる悪辣なパッチワークに対応していたじゃんぬとマシュの前に、突如巨大なベリアルの頭部が兄だったものを食らい尽くした。その光景に絶叫する二人。そして…

マシュ「きゅう…」
じゃんぬ「あ、ちょっと!?しっかりなさい!?ちょっとー!?」

ベリアロク【失礼なヤツだ。気絶とはな】
(無茶言わないで!?怖いよ!?)
ニャル【流石、気絶させる手間が省けました。では早速マシュちゃんに…】

(何をするだぁーッ!?)

【精神分析だから安心してね。ついでに、減ったSAN値も回復させなきゃね】

そう口にし、マシュの額に手を当てる。悪夢の現実で失った正気を癒やす、精神の安寧へとマシュを導く──

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