人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マシュ「ぁ…ここは…?」

(私は確か…兄さんだったものと…)

兄『マシュ』

マシュ「!…兄さん!?ギャラハッド兄さん!」

ギャラハッド『すまない。僕が託した力が、想いが。君を迷わせる事になってしまった』

マシュ「いいえ!迷ったのは私の弱さです!私は、兄さんを…兄さんを利用した相手に何も、何も出来ませんでした…!」

ギャラハッド『──。マシュ』

マシュ「は、はい!」

『生きてくれ。この世界の明日と未来を信じて。君の未来が続く事こそが、僕の願いだったのだから』

「…!」

『僕は君の幸せを、いつまでも祈っている。どうか、忘れないでくれ。僕はいつでも…君を思っているよ』

「兄さん──!」

『兄は、妹を護るものだからね。──あの時、君を護れて良かったよ。マシュ』

マシュ「兄さん──!」



ニャル【霊基に残った残留思念を表層化した。マシュちゃんが聞いている言葉は、間違いなくギャラハッド兄さんの意志だよ】

(そして、この感じ──どうやら、我々のこの世界でね役目は終わったようだな──)


エンディング〜決意の朝焼け〜

「という訳で、世界を滅ぼす方向から救う方向で決めた美少女マスター、マナカちゃんです!皆、よろしくね!力を合わせて頑張ろー!」

 

「同じく!愉快で無敵なグレートデビル!あなたの私のBBちゃんです♪都合のいいことに最近の記憶がすぽっと抜け落ちていますので、どうぞ細かいことは水に流す形でよろしくおねがいしまーす♪」

 

あまりに早い変わり身、別に誰も見逃しはしないであろう転身を見せるふたりの今回の元凶のいけしゃあしゃあぶりに閉口する一同。先の戦いで負けたもの、道を示されたものの身の振り方としてはあまりに鮮やかな翻心ぶりである。その図太さはまさしくラスボス級だ。非常に人生を楽しく生きていると言わざるを得ない。

 

「一度か二度ヤキを入れといた方がいいんじゃないかしらこいつら…反省の色がまるで見えないんだけど!?」

 

「反省することとか無くない?私はいつだって恋する女の子だもの!好きな人の為に世界を滅ぼすくらいはやって当然でしょ?」

 

「ごめんなさいイノシシ聖女さん、私はただ善意で勝ち目のない戦いに赴こうとする哀れでちっぽけな人間の皆様が心配で凶行におよんでしまった筈なんです…その際の形状や状態は問わないので、監禁だろうとペシャンコになったジャンクデータであろうとヨシ!な現場BBちゃんなんです…くすん。世話焼きがすぎると言うのも大変ですね…でもでも、間違いなく人類の皆さんの為をおもっての行為ですので!おしゃまでプリティな小悪魔後輩の愛嬌と思って!どうぞお見逃しくださいね♪」

 

ダメねこいつら…はやくなんとかしないと…的な表情にじゃんぬが陥るのも無理はない程の傍若無人ぶり。ともすれば人類バッドエンド案件だったというのに悪びれない二人に、怒りを通り越して真顔になるほかないじゃんぬ。そんな気苦労も知らず、二人は我が道を行く様子で話を進めていく。

 

「さっき私が言ったように、獣の召喚は最早避けられない。私が呼び水になってしまった以上、ⅠからⅦまでのビーストは必ずややってくる。そいつらを倒すには個人の力だけではあまりにも無理ゲーってやつなの。だからこそ!私達が力を合わせて、獣を討ち滅ぼす為の世界の盾にならなくちゃいけないの!この学園は、本来そのためにあるんだから!だから私は設立する事に決めたわ!世界を救う為のマスター達の集い!『グランドオーダー部』を!獣を相手に一歩も下がらない凄く強いマスター達を集めて!世界を救う為の組織!となる部活を作るの!朝の学園で!」

 

「元々その為に設立されたのがこの学園ですので、その素養があるマスターさんの候補は事欠かない筈です♪じゃんぬさんも世界を救うサーヴァントとして、今日から自覚を持って行動してくださいね♪」

 

「はぁ!?何よそれ、いきなり言われても困惑しかないってのよ!いきなり世界とかスケールがデカすぎるわ!こちとらリッカのお陰でようやく頑張ろうかなって覚悟決めたばっかりなのよ!?」

 

じゃんぬの至極当然の指摘が冴え渡る。滅ぼす側から救う側にジョブチェンジしたふたりの視点はあまりに速くスピーディーで、極めて真っ当な感性をしたじゃんぬにはついていくだけで精一杯である。

 

「覚悟を決めたら後は突っ走るだけでしょ?いつ目的を果たすの?今でしょ?」

 

「これだから真面目に不真面目ななんちゃって不良サーヴァントはあざといんですよね…そこはやっぱり即断即決でやるわ!私が人類の為の人柱になる!くらいの覚悟のキマリっぷりを見せてもらいたかったです。BBちゃん、しょんぼり」

 

「あんたらに諭される謂れもガッカリされる謂れも無いっつの!なんというか本当、悪びれない奴らね!大体──」

 

「──いいえ、やりましょう。じゃんぬさん、私達の未来は、私達の手で守り抜くんです」

 

じゃんぬの言葉を遮り、立ち上がったのはマシュである。先の憔悴しきった状態とは見違えるように、全身には勇気と決意が漲っている事が一目で理解できるほどだった。その見違えるような決意の固めぶりに、思わずじゃんぬは息を呑む。

 

「ど、どうしちゃったのよアンタ。さっきまでと丸で雰囲気違くない?」

 

「先程までの醜態、本当にすみませんでした。でも私は先程…御話しができたんです。亡くなった筈である兄との、対話の機会があったんです。そこで、私は誓いを立てました」

 

そこで立てた誓い…兄が生きれなかった世界の未来を、きちんと生きていく。またいつか出会った時に、胸を張って出会う自分であるために。今を懸命に生きる。そしてそこに生きるすべての人達の明日を護り、兄の果たしたかった使命をはたす。その為の勇気を兄から、そして何よりマスターであるリッカから貰ったのだ。

 

「だからこそ、確執は捨て今は手を取り合って進むことが大事なんだと思います。それが、人類の未来を護り、救う為の最適解だと信じて進みましょう!立ち向かうことで、運命は必ず変えていけると信じて!」

 

「ちょっと見ない内に立派になったのね、マシュ、んやっぱり兄弟の感動の再会は間違って無かったんだね!」

 

「なんだか物凄いダメ出しを受けたような気がしますし、すっごく酷い目に遭わせた気もしますが思い出せないのでノーカンです♪マシュさん、随分と辛い想いをしたせいか物凄く大人びて見えます…!やはり試練!試練は全てを解決しますね!」

 

「せいっ!」

 

「「はうっ!!」」

 

言いたい放題な二人に、折檻チョップをかます真面目。彼女らの言葉はともかく、最早マシュに迷いは無かった。

 

「始めましょう、私達のグランドオーダーを。人類の…私達の未来を掴み取る為に!」

 

決意と決心に満ちた、盾の乙女の覚醒。絶望のみの袋小路から、紛れもなく希望が生まれた瞬間だ。彼女は最早日常に阿るだけの少女ではない。マシュ・キリエライトは今、人類の守護者の気風を芽生えさせたのだ。

 

「…わんわん泣いてたと思ったら、急に仕切りだしちゃって。よくわかんないやつよね、あんたも大概」

 

『じゃんぬだって同じだよ!あなたも人類を救う為の黒い聖女であり、魔女なんだから!』

 

『出来ると我等は確信しております。どうかみなさんと力を合わせてお進みあれ。その道筋に、遥かな祝福があらん事を』

 

「そ、そう?あなたたちにそこまで言われると照れるわね。勿論、やれるところまでとことんやってみるつもりだけど!それに平和になった世界で、あなた達と平和な世界を過ごすっていう夢もあるわけだし──」

 

…じゃんぬが振り返った先に、もう人影は無かった。リッカとグドーシ、二人はじゃんぬに激励の言葉を手向けに、消え去っていたのだ。

 

「──。ううん、あなた達の事だもの、世界の一つに収まるようなタマじゃなかったのね、きっと」

 

エミヤやカーマもいないことを考えれば、それは一目瞭然だ。彼女達は…うだつの上がらない自分達に、喝を入れにやってきてくれていたのだろう。

 

「…大丈夫、大丈夫よ。離れてたって、一緒にいた記憶は無くならないし。繋いだ絆は断ち切れないって信じられるもの。前を向いて歩こうとしてる。それが、証拠だものね」

 

驚きはあったが、それ以上に決心が勝った。いつか再び出会うために、出会うための世界、亡くさないために、護るために。またいつかの再会を信じて進むことを誓う。

 

「私も、やれるところまで頑張ってみるから。だからそっちも、悔いの無いよう…頑張りなさいよね」

 

…それは本来、いた事すら認知されない者達の人知れぬ退去。或いは、同一人物なれど別人の言葉。どちらにせよ、感知することはありえないもの。

 

「信じてるわよ!あなたたちの事──!」

 

だが…彼女は忘れはしない。鮮烈に自らの全てを奪っていった、一人の少女と、穏やかな悟りの少年の事を。

 

──世界を救う為の旅路は、今日より続いていく──




リッカ「そんなぁあぁあぁ!?まだじゃんぬと話したいことがあったのに!?さよならも言えなかった…!?」

グドーシ「唐突すぎる別れ…無念にござる。しかし、学園生活の続きは現実にとっておきましょうぞ」

カーマ「6月に、一度帰るんですよね?勿論付いていきますからね!」

エミヤ「どうやらクリア条件を満たしたようだ。流石の手前だな、邪神殿」

ニャル【マシュちゃんのやる気スイッチをオンにさせる…それであのカケラはクリアだったから。これから先どうなるかは、あちら次第だな。ベリアルさんにいい土産話ができた】

ギャラハッド『皆、お疲れ様。どうやらギャラハマスクの気配が近いようだ。もう少しで補足できる』

リッカ「こんな曇りに特化した世界構成…一度クレーム入れなきゃね!」

『次の世界は…どうやら『愛の逃避行』が命題な様だ』

リッカ「愛の」
グドーシ「逃避行…それはまた、ロマンチックですなぁ──」

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