グドーシ「タイミングを合わせた、当事者のみの温泉旅行…案外早く一緒にお出かけしましたな、リッカ殿」
リッカ「そうだね…気を抜かなない様にしつつ、皆と一緒にミッションをこなしていくよ!」
「えぇ、それでは拙者は獅子王殿と帰ってくる者達を祈り、笑顔で迎える覚悟はできておりまする。開始といたしましょう」
リッカは席を離れ、グドーシは歩みだす。作戦は既に始まっている。一速同に気をつけながら、そっとなくさり気なく付き合うのもいい案だとも思いつつ、グドーシの会話のサポートに徹するリッカであった──。
「いつかは会いに行かなきゃと思ってはいたけれど、まさかこんな形で会うことになるだなんて…意外でした…」
「それは私も同じだよ、藤丸立香君。娘が大変良くして貰っていて、感謝の念に絶えない。ありがとう」
道を進むバス、土曜の昼下がり。休日であったその時間をのんびりと揺られていながらも、その邂逅は決して無碍にすることは出来ない相手だ。
「いえ、そんな…。俺はマシュの幸せが大切なだけで、良くしてもらったのはむしろ俺の方と言うか」
そう、藤丸は休憩中の福引でペアチケットを獲得していたのだ。マシュとの旅行にいいかなとマシュを誘い、そして待ちあわせ場所にやってきてみれば其処にいたのは並大抵の存在では無かった。
『………』
「我が王よ、水をお持ちしました」
獅子の面を外さず、ぼんやりと景色を眺め続ける獅子王、彼女に騎士としての振る舞いを完璧にこなすランスロット。今回の婚姻、婚約に関係するものがピンポイントで集うこの状況が待ち受けていた事に驚きを隠せないのも無理はない。いつかは会わねばならない、話し合わなければならないといった輩が、こんなにも都合よく揃っていることに作為的な存在を感じられずにはいられない藤丸。自分もまた、マシュの幸せを託すに値する者たちか見定める方針で参加しているのだから。ギャラハッド、ランスロット、獅子王…休日のプライベートといった形で、藤丸は彼等と邂逅を果たしたのだ。
「…話したいこと、知りたいこと、そして確信したいこと。それらが数多あるのはよく理解しているつもりだ、藤丸君」
「…はい」
「しかし、同じ場所に向かい、寝食を共にする間柄になる以上は無闇な争いも、不躾な態度を取らないことを騎士の誇りかけて誓おう。…僕は見極めたいだけなんだ。互いを思いやるといった気持ちを懐く男女を。そしてその想いは、どう紡がれ何処に向かって行くのか。だから…この一時は、素晴らしいものにしたいんだ。どうか、よろしく頼む」
そう告げ、ギャラハッドは右手を差し出す。それは敵意ではなく、この一瞬にて出会いに感謝する清廉な意図の込められたもの。
「は、はい!こちらこそ、よろしくおねがいします!」
藤丸もまた、マシュを託すべき相手と定めているギャラハッドを、噂に違わぬ清廉な者であると見届けるのだと、二人は共に握手を交わす。互いに憎しみや悲しみになどは無縁であろうという、誓いの握手でもあり。
(…こちら響、初対面の環境の変化すら解らないトーク内容で握手を交わしました。引き続き、監視を続けます)
そしてその様子を拝見し、報告するセイヴァーズの一人、響。彼女もまた、この作戦を遂行するためにこの場所におり、感情によるいざこざの仲裁を任されている。そして経過報告は、彼女だけが受け取るものでは当然ない。
(雪泉、了解しました。こちらは親子の経過を引き続き観察します)
そこにいるのは、客を装った忍、雪泉。彼女もまた、別の視点にて彼女とその父を見守っている。その視線の先には、マシュとランスロットが座っている。
「思えば、こうして共に出掛ける事も、二人でじっくり話すことも随分と久しい気がするな。…業務や仕事にかまけていることを痛感したよ。不甲斐ない父を許してくれ、マシュ」
「いえ、お父さんは悪くありません。激務と心労に耐え、私や家の為に一生懸命頑張るその姿…忘れることなど、異議を唱えるなんて出来るはずがないです。改めて、いつも本当にありがとうございます、お父さん」
成人を迎えた親子は、交流が減ってしまう事が多い。マシュとランスロットも例に漏れずやや距離が離れていたことが発覚する。それは回避不可能な運命を背負わせてしまったことによる父の、後ろめたさでもあるのかもしれない。
「…そう言ってもらえると、私も救われた気持ちとなる。本当に、私には過ぎた娘だよ。お前は」
たがその裏や真意は、別のところにある事をマシュは理解している。彼は自身の幸せと未来を本気で考え行動した。その結果がもたらされた望まぬ婚姻だとしても、それでも父への感謝が揺らぐことはない。マシュの言葉に、ランスロットの表情はほんの少し明るくなる。
(やはり、親子の間の感情は決して険悪なものではないようです。互いが互いの事を思いやり、通じ合っている。今回の一件で、妥協や諦めを突破していただきたいですね…こちら雪泉からは以上です。そちらはどうですか?)
雪泉の問いは、再び仲間に届けられる。最後に見据えるべき存在、それは脚を組み、頬杖を付き圧倒的威厳で空の景色をぼんやりと眺める王、獅子王である。その真意に近づく為、スペシャルゲストと共にリッカは応える。
(こちらリッカ、近寄りがたい雰囲気を決して物ともしない彼にコンタクトを頼んでいます!ホント、獅子の仮面の威圧凄いなぁ…ラマッス仮面はあんなに愛嬌があるのに…)
そんな軽口を叩きつつ、グドーシが獅子王の隣の座席の向かいに座る。彼女の心境を、測り掴み取る為だ。
「失礼致すでござる。しかしそなたが来てくださるとは嬉しい誤算というもの。お礼を言わせてくだされ」
『…無下にするも、無為にするも私が選ぶべき選択ではない。ギャラハッドの心身共に関わるものならば、私はそれを受け、未来のために選び取るまで』
「立派でござる。思えば、息子殿との関係がざわつき壮絶な不屈の意志を示すきっかけとなってくだされば幸いでございますが…」
『心配は無用だ。我等に歯向かう、仇なす悪を見逃しはしない。ギャラハッド、我が騎士、そして、メインディッシュ。全てを堪能するまで、獅子の庇護は無くなりはしないことを伝えておけ』
「えぇ、確かに。どうぞよろしくおねがいします、獅子王殿。そして願わくば…」
『?』
「あなた自身も、どうぞお楽しみいただければ。めったにない温泉旅行、そして日頃のストレス。日々の苦難や苦悩を、軽くすることが可能やもしれませぬからな」
グドーシは慮る、彼女は…ある意味で、自身と同じであることを確信していた。神霊の領域でありながら、その身は完全に失われていないもの。
『ギャラハッドの本懐を遂げさせる。…それが、私の変わらぬ願いなのだから』
そう、彼女はただ一心にギャラハッドの幸福と安寧を望む存在でしかない事を…グドーシは既に見抜いていたのであった──。
リッカ(ためらい無く、グドーシに伝えた情報はそっちに送るねマリー!もうちょい、もうちょいで思い出せそうなんだけど…)
オルガマリー(親というものは、子の幸せを願うもの。その大局を見る上で、ここまでついてきつつ不干渉を装っているのね)
(…獅子王様、泣いたりガッカリした事。そりゃあありますよね…なんとか、してあげたくなってきました…!)
(その調子よリッカ。さぁ、もうすぐ付きそうだから支度なさい)
(温泉旅館だっけ?どうやったらニートが酒を跳ねたらみたいな大人の旅館!とかじゃないよね?)
オルガマリー(もちろんよ。そして…今回の旅行で、答えを見つけてほしいわね。王でも、神でもない。彼女自身の答えを)
その言葉に気を引き締め、絶対に成功させる覚悟を決めるリッカ。そして──
『終点、ゴージャス旅館。お忘れ物の無いように──』
(来た…!)
数多のものの未来を抱えた者達を助けるための舞台。──ゴージャス旅館という場へ、一同は降りる準備を始めたのだった──
どのキャラのイラストを見たい?
-
コンラ
-
桃太郎(髀)
-
温羅(異聞帯)
-
坂上田村麻呂
-
オーディン
-
アマノザコ
-
ビリィ・ヘリント
-
ルゥ・アンセス
-
アイリーン・アドラー
-
崇徳上皇(和御魂)
-
平将門公
-
シモ・ヘイヘ
-
ロジェロ
-
パパポポ
-
リリス(汎人類史)