人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ(獅子王様は何をやっているんだろう…偵察任務開始!)

獅子王『……』

(山の方に行った!追跡!)

河川

獅子王『……』

(釣りしてる…でも釣れない…)

山道

魔猪「ブギー!!」

獅子王『糧となれ』

(狩りしてる…!)

頂上

『……(パタパタ)』

(マツタケ焼いてる…)



なのは「お帰りなさいませ!…わぁ!?」

『魔猪の山』

獅子王『ぼたん鍋…というものを…』

「わ、解りました!」

獅子王『…楽しみだ』

(…あれ?獅子王って…意外と、俗…?)

もしかしたら、神が如きビジネスウーマンの比喩なだけかもしれない…尾行し、そう感じるリッカであった──




まだ未来の箱は開けられていないのだから

「こうして裸一貫、ありのままの姿で語り合うというのも得難き経験。メンタルセラピストとしてこの様な場を設けることができたのは僥倖にござる。さぁ御三方、ゆるりと温泉にて悩みつらみをお湯に溶かされよ」

 

((光ってる…))

 

(後光が射している…)

 

やってきたゴージャス温泉、男湯の間。互いに遠慮と後押しをしてしまいフェイントの掛け合いとなってしまっている三人の背中を押さんと用意されたこの場所で、グドーシはその行く末をやや仏陀モードにて見守る。具体的にはなんだかちょっと話したく、語りたくなる気持ちになる仏の後押しである。彼の前には、太陽に晒される厚着の旅人と同じである。更にこの場には、タオル一枚しか隠せるものなど無いので。

 

「…私は、愛娘の幸せを願って婚姻と縁談の準備を続け、話を持ちかけた。今の今まで、それは正しいことだと自分に言い聞かせてきた。これで娘の生は安泰だと。不自由と苦労をさせる事はなくなると」

 

口火を切ったのはランスロット。父親として、社会人としての苦悩を曝け出す。彼は悩むという点では右に出る者はいない、クソ真面目な困った御方なのである。

 

「しかし、マシュ嬢は誰かに幸せを用意されねば幸せを掴めぬほど幼くは無かった。彼女は自らの力で相手を見初め、そしてどんな苦難や立場の違いにも揺らがぬ愛を懐いていた。それに気付いたのは縁談を持ちかけた後であった、と」

 

「その通りだ、グドーシ殿。私は娘を、明くる日の小さき彼女のままだと心の何処かで思っていたままだったのだ。彼女はもう、自分の人生を生きているというのに」

 

「ランスロット卿、あなたの娘さんを想う気持ちは真のものでしょう。──しかし、あなたが娘の機微を完全に理解できぬほど愚鈍な騎士ではないことは、同じ円卓の騎士として百も承知。ならば何故、娘の機微を理解できなかったか。…あなたは父であり、そして完璧な騎士でありすぎたんだ」

 

ギャラハッドが告げる言葉に、藤丸は面食らう。その目には…微かな怒りが浮かんでいたからだ。

 

「あなたは娘の他に、騎士の体面、王の面子、そして何より家柄そのものを護る最善を選んだのでしょう?数多存在する護られしもの、得られしものを見て一つを切り捨てた。マシュ嬢の気持ちという根幹を。完璧な騎士という立場と役職を、あなたは捨て去ることが出来なかった。だからこそ、あなたは縁談を取り決めてからマシュ嬢に伺ったのでしょう。娘の幸せではなく、あなたは騎士の体面と王への忠義を選んだのだ!ランスロット卿!(ハラリ)」

 

「ギャラハッド殿、落ち着かれるべし」

 

「……そう、なのだろうな。娘に先に伺い、意志を確かめることも出来たはずだ。私が全てを捨て、娘に財を託し退陣すれば少なくともマシュは自分の未来を選べた筈だ。私は…自らの築いた地位と名誉の為に、この縁談を強行したのだ。父ではなく、騎士の自分に負けたのだ。…すまない…ギャラハッド卿、藤丸君…」

 

「ふむ、藤丸殿。この思いをそなたはどう受け取られますかな?」

 

「──俺は、間違っていないと思います。地位や名誉は、社会で生きていく上で絶対に必要だと思います。父の視点からしてみれば、普通のサラリーマンなんかより、王様の息子さんと結ばれる未来を取って当たり前だと思う。どちらか先かという話だけれど、政略結婚を強要してしまった結果を悔やみ、悩む貴方を責める気にはなれません、ランスロットさん」

 

「藤丸君…」

 

「だが藤丸君、君とマシュは引き裂かれてしまうんだぞ!?互いに心が通じ合っている者が、ただ逢うだけで不義理と詰られる様になる!見栄や地位、体面が自由な生き方を殺すこの現代で、想いを貫ける男女がどれほどいることか!私はそんな者達を護り、助けたいと願う獅子王に尽くし、支え奮闘してきた!そんな私が、護るべき幸せを踏みにじる側になるなどなぜ許せるだろうか!」

 

「ギャラハッド殿は真面目かつ誠実な御方でござるな。如何ですかな、藤丸殿。もし、自分以外に想い人を託さねばならない際に、彼であったならば」

 

「はい。今の問答で確信しました。…ギャラハッドさんなら、マシュを大切に想ってくれる。政略の立場でなく、自分の想いで向き合ってくれる。ランスロットさんの目は、間違っていませんでした。俺が望むのは、マシュの幸せです。ギャラハッドさんが俺よりマシュを幸せにしてくれる方なら、俺は喜んで身を引きます」

 

「藤丸君…!何を…!」

 

「君は、そこまで我が娘の事を…」

 

「──しかし、それはあくまで心のお話。現実のお話をすれば、マシュ嬢はギャラハッド殿に抱かれます」

 

「……」

 

「マシュ嬢はギャラハッド殿をあなたと呼び、朝も夜もギャラハッド殿に尽くすでしょう。行ってらっしゃいギャラハッド、あら、ネクタイが曲がっていますよ。お弁当は作っておきました。帰りをお待ちしております。行ってきますのチュー」

 

「ぐ、グドーシ殿!?わ、私は、僕は伴侶にそのような…!?」

 

「…………」

 

「お帰りなさいあなた、ご飯にしますか、それともお風呂になさいますか、それとも、私とキャメロットしますか?」

 

「…………だ」

 

「グドーシ君!グドーシ君!?」

 

「今日は待ちに待った日です。どうか思うままに昂りください。あなたの世継ぎを、未来に繋がる大切な命をこのおな」

 

「──そんなの嫌だぁあぁあぁああぁあ!!!!!」

 

立香、覚醒。グドーシの無欲読み上げボイスに建前と理性を破壊され、自身に掛けていた理性と納得を破壊し本心を吐露する。

 

「嫌だ!!マシュに俺以外の男が出来るなんて!マシュを幸せにするのは俺でありたい!幸せにしてあげて!毎日毎日マシュを抱きたい!子供は最低5人は欲しい!!お産に付き合って産み終わったマシュを思いっきり抱きしめたい!マシュをお母さんにするのは俺じゃなくちゃ嫌だ!!一生…一生俺だけに夢中にさせたい!!(ハラリ)」

 

「藤丸君…!」

「君は…そこまで…!」

 

「えぇ、たしかに聞き届けました。では、場所を変えましょうか」

 

そうして移動した先は…熱く滾る情動、サウナである。灼熱の密室が、昂ぶる男の気持ちを促す。

 

「でもダメなんだ…気持ちだけじゃ苦労をかけるだけで…オレは…マシュと三つ子を不自由なく養える自信がない貧乏リーマンなんだ…俺のエゴでマシュに負担をかけるくらいなら、死んだ方がマシだ…」

 

「確かに、今のままではマシュ殿はけして幸せにはなれないでしょう。養育費は高きもの故。しかし…」

 

「──えぇい!立場が何だ!収入がなんだというのだ藤丸君!君は間違いだ!誤っているぞ!」

 

「ギャ、ギャラハッドさん?」

 

「そこまで愛を懐き、想うなら何故自身を高めようとしない!何故社会的弱者の立場を甘んじる!?愛する者のため、株でもFX取引でもなんでもして社会的地位の向上に励もうと何故しない!何故そう後ろ向きに思い切りがいいのだ君は!!(ハラリ)」

 

「ギャラハッド卿…」

 

「僕から言わせてみれば、好きな人を手放すより株で当てるほうが何倍も簡単だ!チャンスがあり、覚悟があれば金融機関で資金を借り受け何倍にして返すほどの幸せを掴めるはずだ!挑戦なくしてなぜ愛を貫ける!君は何故、マシュに相応しい男になろうとしない!?」

 

それは、ギャラハッドの本心であり疑問だった。相応しくないのなら、相応しくなるように努力せよ。それは、叩き上げの厄災の騎士の気迫であった。

 

「誰かに取られるのが嫌なら、数年は僕とランスロット卿が彼女を預かる!誰かに横取りされぬよう手配しよう!その数年の間に、君は覚悟を決めてもらう!マシュに相応しき社会的地位を獲得する覚悟をだ!」

 

「つまり…俺にラウンドナイツ・コンツェルン大幹部クラスの存在になれと…!」

 

「その通りだ!人の恋路を邪魔する僕とこのダメ親父を、蹴り飛ばしてみせるんだ藤丸君!君ならできる!何故なら君は、心の在り方でマシュ嬢を射止めた男だ!いや、やってみせろ!」

 

「ギャラハッドさん!俺…やります!!必ずマシュに相応しい男に!」

「そうだ藤丸君!マシュに相応しい男になれるのは、君だけ──」

 

熱く手を重ねたのを最後に、二人はサウナにて限界を越え折り重なるようにぶっ倒れたのであった──。

 




冷やしエリア

グドーシ「ととのいますなぁ…」

ギャラ&藤丸「「あぁ〜…」」

ランスロット「…グドーシ殿。縁談の件…数年の猶予をもたらせるよう、共に王に口添えてはくれまいか」

グドーシ「おや、獅子王に異を唱えるのですな」

ランスロット「先の熱き告白を聞けば、我が身を恥じるばかりだ。皆、若者なのだ。無軌道さや情熱を、大人の正論で封殺して何故未来を担えるだろう」

グドーシ「その通り。藤丸殿には自己改革の意志が、ギャラハッド殿には間男になる屈辱への反逆の意志が、そなたには未来を見据える決断力がちょっぴり欠けていらした。この様に、丸裸で語り合えばわかり合いは容易にござる」

ランスロット「あぁ。…マシュにも、藤丸君の手伝いをさせ、私も出来得る限りのサポートはする。…それでも彼が及ばなかったならば、私は縁談を正式なものとする」

グドーシ「えぇ、それがよろしいかと。思いを力に変えられるかは、彼次第なのですから」

ランスロット「…ありがとう。グドーシ君。君が感情的な水掛け論を封じてくれたからこそだ」

グドーシ「ははは、拙者はお風呂に入っていただけでござるよ。…これからは、そなたら次第でございますからな」

(…たまには拙者も、リッカ殿への想いを口にするのも乙かもしれませぬなぁ)

生きていてくださり、まことにありがとうございまする。母が子に懐くが如き愛を彼女に告げる事を想い、グドーシは笑顔で空を見上げるのであった──。

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