人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「――出来ました!改心の出来です!後は、英雄王を待つだけ・・・む!招集!行かなくては」


『救世の旗』
『かるであのみなちん旗』


「マスター!英雄王!今お側に参ります――!」


総力戦・デスマーチランナー

「私の後ろに、イアソンさま!あなたは私が護ります!」

 

 

終末的射撃に晒されるイアソンを庇い、白きメディアが防衛を果たす。

 

 

「当たり前の事を一々言うな!ヘクトール!何を死にかけている!どうせ死ぬなら未来の王を護って死ね!!」

 

 

瀕死の体のヘクトールに激を飛ばす

 

 

「ヘラクレス!!奴等は所詮アーチャーだ!近付いて挽き潰せ!!出来るだろう!それくらい!!」

 

 

「待ってくださいイアソンさま!今放つのは危険です!向こうにはもしかして、本当の――」

 

「黙れメディア!!お前は甲斐甲斐しく夫を護ればいいんだ!いつまで寝ているヘクトール!!」

 

「――はぁ。慣れない悪役なんてするんじゃなかったぜ・・・」

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!」

 

 

船を飛び出し、島に猛進するヘラクレス

 

 

「最強なんだ・・・俺のヘラクレスは最強なんだ――負けるものか!あんな寄せ集めのゴミどもに!!」

 

 

 

 

 

「よし、手筈通りに事は運んだな」

 

 

――こちらの意識を眠らせ、器に主導権を明け渡す

 

 

此度は武力の戦いではない。王としての戦いだ――ならば自分の出る幕は無い。王の采配に総てを託そう

 

 

「総員配置につけ!マスター!マラソンの時間だぞ!おぶっ、女神を連れてひた走れ!」

 

 

「任せて!!」

 

「ますたぁ、えうりゅあれ!がんばって!」

 

「貴方も無茶はダメよ、アステリオス!」

 

「女神よ。彼は私が傍にて守護する。――マスターを頼むぞ」

 

「――私は、護られる側だけどね」

 

 

「準備はよいな、マシュ!」

 

「はい!!英雄王!」

 

 

「援護は任せな!あんたはどうする気だい!?」

 

 

「ヴィマーナより指示を出す!ペース配分、召喚のタイミングは我に委ねよ!よいなマスター!」

 

「ギルの事、誰よりも信じてる!!」

 

 

「それでこそだ!ジャンヌを出せ!マスター!」

 

 

「うん!『ジャンヌ・ダルク』!」

 

 

右手が輝き、二本の旗を持った聖処女が顕現する

 

 

「お待たせしました!マスター!英雄王!」

 

 

「これより貴様は防衛サーヴァントに祝福を与え、一秒でも長く戦線を維持させる支援を行え!出来ぬとは言わさん!我を殺しかける貴様だ、大英雄の追撃ごとき容易くはね除けよう!」

 

 

「解りました!ではこちらの旗を!」

 

『かるであのみなちん』と書かれた旗を手渡される

 

「その旗に祝福を込めました!ある程度、英雄召喚の場所を選定できます!」

 

「不細工な旗よ!だが味があってよい!借り受けるぞジャンヌ!出でよヴィマーナ!!」

 

 

ヴィマーナと同時に、ヘラクレスが上陸し肉薄する

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!」

 

 

「走れマスター!!指示を下すまで形振り構わず走るのだ!!」

 

 

「うん!離れちゃダメだよエウリュアレ!」

 

「えぇ、思いきり走りなさい!」

 

 

「マシュとジャンヌは私が連れていく!」

 

 

「行きますよ、マシュ!」

「はい!ジャンヌさん!!」

 

 

 

「我等も赴こう、船長、雷光よ」

 

「あいよ!楽しくなってきやがったねぇ!」

 

「う、ん・・・!」

 

 

 

 

「しくじるなよ、英雄どもよ――!」

 

 

天空に舞うヴィマーナ、駆けるマスター、護るマシュとジャンヌ

 

 

総てを『賭けた』一戦が始まった!

 

 

 

 

 

 

「オルガマリー!通信をあちらに繋げよ!王の言葉を余さず伝えるのだ!」

 

 

『はい!ギル!』

 

 

上空の島を見渡す位置にヴィマーナを停止させ、千里眼にて総てを見渡す

 

 

「マスター!我の声が聞こえるな!」

 

 

『聞こえるよ!』

 

「返事はよい、呼吸を乱す!今はただ走れ!ヤツが女神を見失うギリギリまでの位置に到達せよ!ついたならば休め!」

 

 

『!?』

 

 

「ペース配分の問題よ!付かず離れず、貴様は誘き寄せねばならん!速すぎず遅すぎずだ!我の指示ならば僅かな休憩は整えられよう!まずは森を抜け平野に行け!」

 

『――(コクッ)!』

 

 

「ジャンヌ!後2分保たせよ!2分間経ったと同時にヘラクレスを逃せ!よいな!合体事故物件(と言う名の麻婆)を喰らうより簡単であろう!」

 

 

『はい!』

 

「マシュ!今までの奮闘を思い出せ!貴様は我の窮地すら救ったサーヴァント!今更ヘラクレスなぞ取るに足らぬ!」

 

 

『はいっ――!やりますっ――!』

 

 

 

「ロマン!貴様は経路をマスターに示せ!怠慢は断じて許さん!勝負処であるからな!」

 

『もちろんだ!甘味と睡眠を沢山摂った僕の有能ぶりを見せてやる!』

 

 

――的確に指示を飛ばし、激励を交え皆を動かしていく英雄王

 

 

 

『ギル!2分経ったわ!』

 

 

「よし!ジャンヌ、マシュ!ご苦労であった!ヘラクレスを放て!」

 

 

 

『ヘラクレス、猛進!マスターとエウリュアレさんに一直線に向かっていきます!』

 

 

「であろうよ!マスター!犬と、炎の守護者を呼べ!オリオンと連携し食い止めよ!」

 

『任せろ王様!働くのはアルテミスだからな!』

 

『はーい!リッカリッカ、深呼吸深呼吸!ちょっとだけ時間あるから!ヒッヒッフー、ヒッヒッフー!』

 

『それ産むやつゥ!――来たぞ!!』

 

 

『――――!!!』

 

 

『クー・フーリン!レオニダス!』

 

 

 

魔力の励起を感じ、二体が召喚された事を感じとる

 

 

『時間稼ぎはお任せを!マスター!呼吸を整えるのです!』

『凌ぐだけならお手のもんだ!死ぬなよ!俺の教えたフォームを忘れんな!』

 

『――⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!』

 

 

『スゥーッ!ハァーッ!スゥーッ!・・・よし!』

 

 

『行って!リッカちゃん!終わったら、女神ネットに招待してあげるからね!後弓矢あげる!』

 

『ノリでリッカちゃんを狩人にすんな!まぁ行け!』

 

 

『うん!皆無事で!』

 

『キリキリ走りなさい!もっともっと!』

 

 

『たぎってきたぞぉ――――!!』

『四枝の浅瀬、見せてやるよ大英雄!!』

 

『⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!』

 

 

「ブーメランサーに成り果てるなよ犬!!」

 

 

『何の話だ!つぅかヘラクレスを戻せるんなら俺のハンデも取っ払いやがれ!!ホントなら城とか戦車とかだせんだよ俺もよ!!』

 

 

「女々しいな犬!貴様が主題の特異点があらば考えてやる!さぁマシュとジャンヌと共闘せよ!」

 

 

『忘れんじゃねぇぞ――!!』

 

 

 

「次は荒野か・・・――マスター!足を取られるなよ!」

『(コクッ!)』

 

 

 

 

 

 

「くそっ!くそっ!寄ってたかって私を狙うとは卑怯ものどもめ!ヘラクレスに八つ裂きにされた後は首を纏めて並べてやる!くそっ、くそっ!畜生!よくも私のアルゴー号を・・・!」

 

 

「進むも退くも難しい。そしてここには防衛娘と死にかけのサーヴァント。どうです?大将は出陣するんですかい?」

 

「するわけがないだろう!!後ろに構え、ただ勝利を手にするのが王のあり方だ!なぜお前たち無能の尻拭いなどしなければならない!?負けたのはお前たちだ!私じゃない!!」

 

「――でしょうね。言ってみただけです」

 

 

「そもそも俺に敗けはない・・・ヘラクレスさえ、ヘラクレスさえいれば俺は無敵なんだ・・・!メディア!さっさと船を直せこの引きこもりがァ!!」

 

 

「はい。イアソンさま」

 

「――嬢ちゃん。もしかしなくても向こうに」

 

「はい。きっといるでしょう。ですがイアソンさまは知らなくていいことです。夢から醒めてしまうような事は、何も」

 

 

「・・・おぉ、こわ」

 

 

「ヘラクレス!!グズグズしてないで戻ってこい――!!」

 

 

 

 

 

 

『やぁお疲れ。ラストチェックポイントだ。水はいるかい?』

 

 

「一口二口にせよ!水っ腹ではまともに走れなくなる!地下の墓地はすぐそこだ!呼吸を整えよ!」

 

『すぅ、はぁ・・・すぅ、はぁ・・・』

 

 

「地下墓地に行ってしまえば後は逃げ道はない!後は貴様の健脚如何で総てが決まる!――覚悟はよいな!」

 

『(コクッ)!』

 

 

『来た来た!うわぁ、おっかないなぁ』

 

 

「ジークフリート、天草を呼べ!最後の関所だ、奮起せよ!」

 

 

『――了解した』

 

『私にお声がかかるとは。良いでしょう。我が奇跡を――時間稼ぎたまえ!』

 

 

「稼ぐのは貴様だたわけめ!!マスター!さぁ、走れ!最後の見せ場だぞ!!」

 

 

 

『(コクッ)!』

 

 

『⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!』

 

 

『行くぞ――!』

『はい、お任せを・・・!』

 

 

 

――こちらの支援はここまでだ

 

 

後は、頼む!皆――!

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ、はっ・・・!」

 

 

リッカが息を切らし、ただ走る

 

 

「頑張るのね、人間の癖に・・・」

 

 

おんぶしているエウリュアレが囁く

 

 

「人間だから、頑張るんだよ!」

 

 

「どうして?怖くないの?」

 

 

「怖いよ!怖いに決まってるじゃん!ヘラクレス、がおーって!うおーって!捕まったら死ぬし!」

 

 

「そ。・・・私もよ」

 

 

「だよね!でも――でもね、エウリュアレ!」

 

 

「?」

 

「怖いとか、辛いとかは!自分の頑張りを止める理由にはならない!自分の輝きを磨くか腐らせるかは、自分次第なんだよ!」

 

 

「!」

 

「自分はエウリュアレみたいに可愛くないし!アルテミスみたいにおっぱいおっきくないけど!」

 

エウリュアレをおんぶから、抱き抱えるように持ち換える

 

「――勇気とか!諦めの悪さだけは負けないつもりだから!絶対、弱音は吐かない――!!だってそれが――!」

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!!!」

 

 

遠い前方に置かれる『契約の箱』、後方に迫る大英雄の咆哮

 

 

「私――藤丸リッカが決めた生き方だから――!!」

 

 

凄まじいヘラクレスのダッシュでみるみるうちに距離が縮まる!

 

「――リッカ!飛びこえなさい!」

 

「『契約の箱』を!?」

 

「いいから!私を信じて!早く!!」

 

 

「――人間讃歌は勇気の讃歌!人間の素晴らしさは――」

 

 

――かつて友と見た、珠玉の台詞を唱え、人類最後のマスターが

 

 

「勇気の素晴らしさ――!!」

 

 

死の契約を、飛び越える――!

 

 

「――メドゥーサ――!」

 

 

 

「――はい。下姉さま」

 

「マスター!!」

 

「オルタ!?」

 

空中のリッカとエウリュアレをメドゥーサが鎖で引き寄せ、ジャンヌオルタががっしりと二人をキャッチする

 

 

「わふっ!!?」

 

 

「大丈夫!?怪我してない!?どこか痛いところは!?大丈夫!?」

 

「う、うん!ありがと、オルタ」

 

 

「――良かったぁ・・・」

 

「ナイスよ、駄メドゥーサ。来ると思ってたわ」

 

「勿論です。貴女やマスターを助けるためなら。・・・あえてサーヴァントを呼び戻し空きを作った英雄王の計らいでもありますが・・・」

 

 

「何でもいいのよ、そんなの。――理解したようね、ヘラクレス」

 

「――!!」

 

 

アークの向こうにて、急停止するヘラクレス

 

 

「あなたと私たちの間にあるソレが、なんなのか・・・!」

 

「――!!」

 

 

警戒し硬直する。――だが

 

「――少しだけ、遅かったみたいね!やりなさい!『アステリオス』!」

 

 

「――――うぉおぉおおぉおぉおぉおぉおぉお!!!」

 

背後から飛び出したアステリオスが、ヘラクレスを『契約の箱』に押し込める!

 

 

「全員踏ん張れ!!押し込めぇえぇえ!!!」

 

 

ドレイク、そして合流したマシュとジャンヌも加わり怒濤のだめ押しが行われる!!

 

 

「やぁあぁあぁああ!!!」

「ハレルヤ――――!!!」

 

「⬛⬛⬛!!」

 

「皆!!行けぇえぇえぇえぇえ!!!」

 

 

「アステリオス!!見せてやりなさい!!貴方の――雷光(えいゆう)の力を!!!」

 

 

「うん!!し、ねぇぇえぇえぇえぇえ――――!!!」

 

雄叫びと共にヘラクレスを退かせる

 

 

――そして

 

 

「よし!触れた!」

 

ぱちんと指をならすダビデ

 

 

同時に、ヘラクレスの身体が即座に消失、霧散する

 

 

「やった――!!!」

 

「あぁ!賭けはアタシらの総取りさ!!」

 

 

「はい!ヘラクレス、完全消滅を確認しました!」

 

 

「やったぁぁあぁあぁあ!!マシュ!エウリュアレ!メドゥーサ!ジャンヌにオルタ!ダビデ!姉御!!アステリオスも!!皆皆!やったよ――!!」

 

 

「ああっちょっと!抱きつかないの!」

 

「ふふ・・・」

 

 

「よく頑張ったわね。同じ女として、あなたの事は認めてあげる」

 

 

「はい!マスター、お疲れさまでした!」

 

「あんたは最高の妹分だ!手放すのが勿体無いよ!」

 

「えうりゅあれ、ありが、とう!」

 

 

「ふふ、何がよ。頑張ったのは、アステリオスでしょ?」

 

「うん!」

 

「ふふっ、マスターが、心配だったのですね」

 

「悪い!?私を呼んでくれたたった一人のマスターを大切にしておかしいですか!?」

 

「別に悪いだなんて言ってないじゃないですか!素直でいいじゃないですか!」

 

「うっさいあーぱー!」

 

「まぁまぁ、喧嘩は・・・」

 

「マシュもお疲れさま!」

 

「!」

 

 

「本当に、ありがとう!」

 

「――こちらこそ、先輩!」

 

 

「さぁて!後はイアソンの野郎だけだ!この海を取り返しに行くよ!!」

 

「おー!!」

 

 

 

――少女の奮闘は、ここに結実したのであった




『ヘラクレス、消滅を確認!リッカがやってくれたわ!』


「ふははははははは!!流石は我のマスター!気合いと根性は一人前よ!」

『――見事と言う他ない。まさか、あの難行を踏破するとは・・・』

『あぁ!凄い逞しくなったねリッカくんもマシュも!』

「――覚えておけ、オルガマリー。我がこの旅にて望むものは、効率や能率、蹂躙などではない。『研鑽』と『愉悦』だ。困難に挑み、立ち向かう事を忘れるなよ」

『はいっ!』

「――さて。指揮を取らせた報酬を頂くとするか」

『ギル!聞こえる!?聞こえてるよね!』

「うむ!よくぞ無事であった!」

『皆のお陰!ありがとう!にーっ!マシュもマシュも!』
『は、はい!にー!』


「――フン、歓喜に緩んだ、だらしのない顔よ」

――・・・とびきりの報酬ですね、王よ


さぁ――後はイアソンを打倒するのみだ!


『・・・イアソン・・・』

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