人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ニャル【とは言ったものの、最新鋭の飛行艇や戦闘機をブラックホールに呑み込むのはひじょーに勿体ない…楽園になんとしても持ち帰りたい。やっぱ移動手段は多いほうがいいしな】
(さて、となると潜入で内部掌握がベターだが…そうだ。試しにチャンスを上げるとしようか)
【産まれろ…ゴールド・ニャルスペリエンス!】
ニャルニャル【ニャル!?お前はクソ邪神野郎!?何の用ニャル!?】
ニャル【ちょっと人類の愛に触れてこい。モニターしてるから感想教えて。だからいい感じに大気圏の摩擦熱でこんがり焼けてもらう】
ニャルニャル【は!?はあ!?】
【よし行け、三代目仮面ライダーメテオ(ゲシッ)】
【ニャブブブブブブブブブァーーーー!?】
ニャル【大気圏突入はロマンだ。ちゃんとエリア51に落ちるんだぞ…。さて、ステーキでも食うか。これがホントの、宇宙食♪】
エリア51。アメリカ、ネバダ州に点在する最新鋭機密解明前線基地に相当する、地球に秘匿された人類の揺るぎない繁栄と栄華を求める者達の基地。最新の装甲車、飛行艇、数多無数の最新規模の装備が展開され、施設に点在する人員は、愛国心と心身共に鍛え抜かれたスペシャルエージェント達。最新設備と最高のスタッフが構えている人類の叡智の結晶たる場所。其処には、世界に数多無数存在するオーパーツ、未知のエネルギーといったものを収容、そして回収、研究する役割を持つ基地である。そこには世界の未知を解き明かし、究明し、解明し、そして人類の未来の為に活用するための基地である。
──厚い雨雲を切り裂き、エリア51に飛来した極秘資料の存在を、端的に表せばこう記録されるだろう。
【5月末未明、このエリア51に宇宙人が収容された】
後に【N検体】とされる、エリア51の領地に飛来したその検体は、不定形ながらも確かに人型のフォルムや臓器配置をしており、大気圏にて焦げ付いたその存在は、大気圏突破により検体はほぼ死体と同義の重体であったが、スタッフは瞬間凍結の手法により生命活動を維持、この生命体を基地内部へと搬入する。
───宇宙からの来訪者の命を救う為、ありとあらゆる手術が、検証が、実験が為された。
【せっかくだ、まだモルモットにしか試していない新薬も試してみよう】
投薬による臨床実験を繰り返す。地球上全ての物質を試してみる。『痛み』に該当する反応を看る。『喜び』に該当する反応を看る。
【絶好の検体だ、地球上堪えられない理論の手法も実験しよう】
耐久力を測る為に栄養を絶つ。燃やし、冷やし、溶かし、付ける。内臓を掻き出し、部位を切断し、脳と思われる部位の信号を測る。そういった、人類史の結晶とも言える施術を『生きたまま』で行う。懸命に蘇生され、懸命に施術され、懸命に利用されていく検体。
〜
【現場の様子を見てみようか。ニャルニャルくーん?具合はどうかなー?】
【ぎゃあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!!】
【ダメみたいですねこれは。まだ頑張れ、痛いと感じられるならもっと苦しめるぞ。頑張れニャルニャル!リョナ系マスコットとして一皮剥けられるぞ!】
【あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃいぃいぃ!!!!】
【はぁ…素晴らしいクラシックBGMだ。酒が進む…】
〜
…『蘇生』させる為の手術は、すぐに『利用』する為の実験に変わっていた。『検体』から検出された細胞はこの星にはない元素で構成されていたため、時間をかけて研究すれば軍事機関、そして一般家庭にも流通していただろう。──報告を受けた上層部の思惑はそちらにあった。
二十世紀以後、各国のエネルギー競争は加速し、先進国と発展途上国との間には、埋められない差があったからだ。
『地球上全ての人間に、より豊かな生活を』
『富の競い合いから卒業し、人類に新たな目標を』
スタッフ達は、この検体にそんな人類の希望と未来を夢見ていた上層部とは別の思惑を抱いていた。
『この検体は常に、未知の電波を発信している』
『助けを呼んでいるのだ、間違い無く』
度重なる臨床実験の末、研究員たちは確信していた。そして、一つの結論を導き出した。
【この検体実験を続ければ、もっと苦痛を上げさせれば。【必ず次の検体がやってくる筈だ】と】
──そしてその判断と決断は、彼等が人間としての尊厳と人権を、全て放棄した瞬間だった。
より強い苦痛を。より恐ろしい拷問を。もっと、もっとサンプルがいる。もっともっと検体がいる。人類すべてが幸福となるために、もっともっと苦痛がいる。もっともっと残酷な実験がいる。
そこには容赦も、情も、情けも存在しない愛があった。人類への尽きぬ愛。よりよい未来を、よりよい明日を。よりよい幸福を。その為に、人類以外の全てを利用し、貪り、浪費する獣性。そこには、おぞましく美しい愛があった。人類の幸福を願う愛があった。
…犠牲を積み上げ、栄華を謳う獣達の姿が、そこにはあった。その獣達は、検体に苦痛を与え続けた。一切の容赦も無く、一切の慈悲もなく。よりよい世界の為に、よりよい人類の明日の為に。人類の礎となることを、検体に求め続けた──。
〜
【んんん〜…人類の獣臭さはワインとステーキに味わいと彩りを与えてくれる。ナイアの手作り料理のスパイスはいつもこれだな。楽園では味わっていけない禁断の味だよ、うんうん】
そしてこちらは宇宙空間。特設邪神宇宙に領域を掌握し、スーツ姿にてステーキを頬張りながら、ニャルニャルの視線カメラとドローン環境にて蛮行を肴に食事を嗜む邪神が満足げに舌鼓を打つ。
(やはり、人理漂白は天災ではなく人災だった様だな。未知との遭遇…ファーストコンタクトに資源利用目的の苦痛と拷問をフルコースとかそれは滅ぼしますわ、人類。藤丸君等報われないなー)
他人事そのものな、化身が受けている処置を半笑いで眺め続けるニャル。少なくとも人類が、未知の生命に行うアプローチを目の当たりにする。それは、邪神である彼が大歓迎し、尊敬し、参考にしたいと唸るほどに緻密で、華麗で、苛烈で、無慈悲で、残酷であった。これが人類の第一情報であったなら──
【現場のニャルニャル君?聞こえる?生きてる?】
【殺す…必ず殺す…この残酷なる種族の全てを根絶やしにする…!僕が受けた苦痛を、全人類に余さず叩き返す…!】
予想通り、ニャルニャルは人格面の強いストレスにより崩壊をきたし、人類への深い憎悪と殺意を顕にしている。それは当然だろう、とニャルは深く頷く。
(もし娘に同じ事をやられたら、人類で【遊ぶ】のを止める自信があるしな。よし、本来の事象のシミュレータは完了、と)
【殺してやる、このおぞましい生き物を!必ず、ありとあらゆる苦痛を与え、必ず絶滅させ──】
【御苦労。その結論は無用なものだ】
人類への憎悪と殺意に満ちたニャルニャルの人格を消去し、意志を消し去る。モニターの向こうの研究員達は、生命活動の消失に驚愕と狼狽を顕にする。
【さーて、と。混乱と没頭している今が好機だな】
宇宙空間にて爪楊枝で歯に挟まった肉を取り出し、触手で衛星機能を掌握する。これで、軍事衛星からの映像記録はニャルの指先一つだ。
【お前達に異星コミュニケーションを任せてはいけないという事はよーく理解できた。来たるべき対話は…我々楽園が受け持とう】
確信を得たニャルラトホテプは、ブラックホールを通り地表へ降り立つ。──彼の胸には、確かに届いていたのだ。
【ニャルニャル…お前の受けた苦痛と無念は私が晴らすよ。だから見守っていてくれ…あ、もういないのか】
あっさりいなくなったなぁ…そんな益体の無い想いを懐きながら──ニャルニャルが発し続けていたSOSを受け取り、異星の神ならぬ領域外の神が一足早く降臨するのだった──
エリア51にて、突如生命活動を停止した検体の蘇生活動に終始していた研究員達は、そこでおぞましいものを目の当たりにしてしまう。
【[~$((='!+=‘?〜。──·"=))(こんにちはー。這い寄る混沌でーす)←部員専用字幕】
検体の口を引き裂き、ずるりと這い出る特異なフォルム。モニター全てに映し出される、燃え盛る血染めの眼球。意味不明な文体の羅列。
【;#(:‡pjd!(君達は異文化交流が下手っ…!ダメダメさ、そんなんじゃ外宇宙には行かせられないな。というわけで、君達には纏めて私の備品になってもらう事が決定したよ)】
どこからか聞こえてくる賛美歌。礼賛の声。暗黒のファラオ万歳、■■■■■■■■万歳──。
【?·¢™†№§£®¿+~(私の大切な者たちの為に。じゃ…死のうか)】
──ニャルニャルが呼び寄せた最低最悪の邪神が、人類の最先端の叡智と人類そのものへ、舌なめずりと牙を剥くのは同時であった──