(さっさと潰すに限るが…あいつリッカちゃんに酷いことしたからな。あいつにとどめを刺すのはリッカちゃんがいい。私がその瞬間を見たい)
【というわけであいつが一番嫌がる奴を呼ぼう。カモン!日本最強クラスのキャスターさん!】
『スマホ』
ニャル【えっ?】
『こんばんは。安倍晴明です。原作で立ち絵が無いので式神とスマホで失礼するね。召喚ありがとう』
【…は、はぁ…】
『で、何をする気かな?嫌がらせ、邪魔ならお任せなさいな』
【あ、話が早くて助かります。ではですね──】
準備中…
【さぁて、準備も出来たことだし…徹底的な盤外戦と行きましょうか。それではお願いします、魂まで根の国な暗黒イケモン!安倍の野郎さん!】
『それ持ち上げてる?それともディスってる?後できちんと教えて下さいね大事ですから』
ヒラヒラと舞う安倍晴明の──スマホと式神が床に五芒星を描き魔法陣、そして逆召喚陣を展開し、彼の求めた相手を強制的に引き寄せる──アンカーを突き刺すイメージの強引で乱暴な──術式を展開し、人物を招く。彼にとって、極めて重大な人物を。
『確認しておきたいんだけど、キャスターリンボとかいうのは彼が名乗っていたもので?』
【えぇ。リッカちゃんのお母さん、源頼光に酷いことした腐れ外道のゲロカス野郎ですよ。あんな酷いヤツは見たことないって思いましたね。ホント、リッカちゃんを愛してるとかどの口で言うのやら】
『〜。その言動はともかく、私は近年稀に見るブーメラン発言を聞いた気がするね。本気なのか戯言なのか割と判断に苦しむなぁ。君みたいな輩を使うカルデアってもしかして…質の悪い組織じゃない?』
【私の事は嫌いになっても!楽園の事は嫌いにならないでください!】
迫真だな…。ぼやきながらの片手間で、彼は喚び出す。逆召喚という体の、先手を打つ布石だ。
『来るがいい。姿を見せろキャスターリンボとやら。私の知る輩か見極めてやろう』
安倍晴明の召喚術、それは卓越した神技と呼ぶに相応しいものだ。おそらく彼程の縁と術の両方を兼ね備えていなければ、叶わぬ反則級の裏技。
「ン、ン!?ンンンンンンンンンン!?何故、何故、何故何故何故私は招かれたのか!?」
【黙れゴミ屑】
召喚を完了し困惑する最中、仮面ライダーエボルに素早く変身し、数十トンの腕力で締め上げるニャル。二メートル近くある巨体を片手で捻り上げる状態に持ち込まれ、泡を吹くその存在──。
『キャスター・リンボ…随分と誇張された何かの間違いじみた存在、側面に成り果てた『彼』と言う事か、これは』
「──!?───!!!」
合点が行ったかのように頷く式神を目にし、壮絶な形相となり睨みつけるリンボ。ニャルの手を放せず抵抗するが、邪神の束縛は微塵も揺らがない。
【安倍さん、と言いますと?】
『彼は蘆屋道満…の、一側面。君たちのクラスでいうならアルターエゴと呼ばれるヤツだ。私もあるだなんて今まで知らなかった彼の心の側面…『何か』への劣等感、屈辱、コンプレックスを極限まで拡張させ、いくつかの神霊や怨霊を取り込んで成立させた歪な存在だ。あと安倍さんはくそみそな感じがするからやめてほしいな』
あっさりと晴明に自身の生い立ち、正体、成り立ち、真名、クラスなどをペラペラと暴かれ、顔を白やら赤やらに変えるリンボ…蘆屋道満。彼は晴明のライバルとされ、後に時の京に攻め入り混乱をもたらしたとされる陰陽師である。
『いくつかの神霊の存在、読み取れるかな?邪神クン』
晴明の問いかけに即座に対応し、触手を無数に、乱雑に突き刺し貫くニャル。霊基状況を、余すことなく解析し、暴き立てる。秘密を無くした敵方など、恐れることなど無いと言うように。
「───!!???」
【どれどれ…。…アステカ神話の女神、イツパパロトル。スラヴ神話の悪神、チェルノボーグ。そして平安日本の怨霊、悪霊左府が組み込まれていますね。生意気にもハイサーヴァントクラスとはなんともまぁ。晴明に勝てないからって他神話に縋るのがなんというか…みみっちい事で】
「!!!!!!!」
【人は事実を衝かれるのが一番頭に来ると言うが、本当だな。言っておくが、リッカちゃんの親子の絆を弄んだお前に遊びをする気は無いんだよ、こっちはね】
目を血走らせ泡を吹く道満に、無表情で締め上げるニャル。彼は楽園に関わるもの、携わるものを心より敬愛している為に敵対者には【真面目】に接する。リンボにかける情けなどある筈もなく。
『止めよう邪神くん。本当の事を言うのは。確かに私は道満の完全上位互換だが、ライバルがいたほうが後世の創作のネタになるんだ。私の女体化どう?レパートリーある?』
【そんなに見かけませんね。あなたより矢部彦麻呂の方が人気ですよ絶対。どうします?始末します?】
『誰それ知らない…。まぁそれはともかく、ソレを殺しても『本体』は痛くも痒くも無いだろう。ソレはただの式神だ。彼はどうやら、特殊な術で擬似的な不死性を得ている』
晴明の指摘に、明らかな動揺、焦燥の意志を見せるリンボ。彼は説明する。リッカに叩き切られた彼が、何故こうして活動しているのかを。
『生活続命の法、と言ってね。無数の式神に本体の魂を転写し活動させることによりマリオの残機の如くに命を増やす術を彼は施している。今彼を潰したところで、また新たな式神が起動するだけだろう』
【リンボを見たら三十人はいるってことですか。ゴキブリめいていますね】
『やめて差し上げて。本人は美しき肉食獣とか名乗ってたみたいだから。まぁ本当に美しい人は自分を美しいとか言わないと私は思うけどね』
そんな所感を振るいながら、安倍は更に術を展開する。彼の所業、腕前を完全に把握しているが故の処置を施す。
『本来の道満はそんな事はしないだろうが、このリンボは間違い無く放っておくと厄介だ。他人を嘲笑い踏みにじる事に躊躇いがない陰陽師等危険極まる。流石に本体は処理できないが…その脅威を限りなく抑える事は出来る』
そう告げ、白色の五芒星がリンボに向けて叩き込まれる。日本最高峰の陰陽師が放つ、その術法の『解除術式』である。
『その自由と悪趣味の発露を封じさせてもらおう、アルターエゴ。私の術式にて、続命の法を解除させてもらった』
「──!!」
『この私の式神と端末がある限り、お前はその術を使えない。この式神が始末されれば、次はお前自身が打って出なくば術の一つも行使できん。自由にしていると碌な事をしないだろうから、しっかり制限させてもらうぞ』
晴明の対策は精緻で、正確で、最適で、無慈悲で、簡素だった。これより先の舞台で、万物を嘲弄するトリックスターの振る舞いを行う筈が、最大の宿敵により、その席を極めてこぢんまりとしたスケールに縮小され、後がまったくない状態へと墜とされてしまったのだった。その事実に、激憤の相を見せるリンボであったが二人は全く動じない。どちらが一枚上手かの格付けなど、とうに終わっているからだ。
【お見事。流石は暗黒イケモン晴明様。容赦の無い】
『褒められると照れてしまう。さぁ邪神くん、ソレを破棄するといい。それでリンボは一度死ねばそれまでの状態へともつれ込ませる事が出来るだろう』
万物を嘲笑い、弄ぶ存在。過不足なくリンボはその資格を得てはいた。しかし、それはあくまでも人の世のもの。宇宙を庭にし、人類全てに這い寄る者の無慈悲さに比べてしまえば児戯に等しく。
【それでは遠慮無く。──本体はリッカちゃんの母の仇、始末するのは私では無い。だから不死と【後】を奪う】
【レディー!ゴー!!ブラックホール・フィニッシュ!!】
「!!!!!!」
【さようなら、アルターエゴ・リンボ。──リッカちゃんの断罪の刃に備え、首を洗って待っているがいいさ】
それだけを告げ、展開したブラックホールに無慈悲に蹴り込まれ、哀れ道満の式神は何万分の一に圧縮された時間の中で、ブラックホールに粉々に砕かれ、意識の一片に至るまで塵となるのであった──。
ニャル【チャオ。よし、これで使徒の一人は無力化、弱体化に成功したな】
晴明『随分と徹底的に布石を打つんだね。君はどちらかと言えば、躊躇いなくリンボにカルデアの情報を流すタイプに見えるが』
ニャル【頭プレシャスですからね。私は、私と私の愛する者を絶対に裏切らないのです。他は知ったことじゃないですが】
晴明『ふむ。そんな風に君を変えたカルデアに、私も行ってみたいな』
ニャル【多分顔出しは当分先でございます】
『えー』
ニャル【すまぬ、すまぬ。そんで次は〜…見覚えあります?こやつ】
『コヤンスカヤ』
晴明『あれ?玉藻前じゃないのこれ』
ニャル【あ、やはりご存知ですか?】
『それは勿論。自分が化性である事を隠しながらバレることに絶望していたのを哀れに思い、全員の前で正体を明かしてあげたあの九尾の狐…尻尾かな、これ』
ニャル(酷いなぁ)
『大丈夫?妲己や傾国の相が強いから、厄介だと思うよ』
ニャル【心配御無用。彼女の対処には適任を呼ぶつもりなんですよね〜(ニヤニヤ)】
『へ〜…?(ニヤニヤ)』
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