ニャルラトホテプ【御召喚、御足労大変感謝致します、始皇帝。私、ニャルラトホテプです】
始皇帝「なんだ、裏方の邪神ではないか。家族は息災か?あれ、今何年?」
【今は人理再編が起こる六ヶ月前。2017年の6月になるところです】
始皇帝「…大分早いな…そうか、召喚はあれか。時間軸関係無いのだったな。ではエアは全能の力を引き出せてはいないのだな?」
【えっ、なにそれ凄い】
「あぁ、そうか。では朕とギルの世紀の決戦もまだか…だが、召喚により他ならぬ朕がそれを特等席で見れるか!フハハ、楽しみだ!」
晴明『ネタバレ勘弁ですよ始皇帝さん』
「あぁすまんすまん。本題だな。だいぶ前の召喚、そして楽園の暗部であるそなたが喚んだということはアレだな?良い子には見せれぬ案件だな?」
ニャルラトホテプ【そういう事です。お二人には助力を願いたく──】
〜???
コヤンスカヤ「はぁ…そろそろ新しい魔獣が欲しくなった頃合いです。しかし世界は平和そのもの。そろそろ一悶着ありませんかねぇ」
【メッセージが届いています】
「?」
【狐の尾っぽ飾りが欲しい】
「は?──なっ──!」
瞬間、無数の触手にて桃髪の美女がパソコンのモニターに引きずり込まれた──。
「いった!?あいった!?なんです!?なんなんです婦女暴行からの拉致監禁とかどこの蛮族の所業ですか!?出るとこ出ます!?私徹底的に戦う所存ですが!?」
日課の金勘定をしていたところ、突如黒き正体不明の【ナニカ】にモニターに引きずり込まれコンクリート打ちっぱなしの味気無い部屋に監禁拘束されし桃髪の絶世の美女。傾国を容易く行えるであろう美貌、そして声音、おそらくすっぴんであろうその麗しの姿を振り乱し喚き散らす。レディの扱いがなってないと大層御立腹の様子である彼女が見たものは──
『久しいな、女狐。うん?ここではまだ活動の片鱗すら見せていなかったか?そうかそうか、我等があまりにもフライングしていた故前後不覚であるのは仕方なき事か』
『出るとこ出たらまず間違いなく君は極刑間違いなしだと思うな。日本三大怨霊の一尾の化身よ』
「…………なんです、これ?悪の秘密結社?」
屹立するは三つの石碑。サウンドオンリーと刻まれた威容を放つオブジェクトから三つの合成音声が流れるプライバシーの遵守に則った素敵な仕様で、タマモヴィッチをお出迎えする。
『悪とは失敬な。そなたの河の淵の如き腹に比べれば我等は天上の雲が如くよ。悔い改めてものを言わぬか無礼者』
『その説はすまなかったね。でも正体バラされた時の君の絶望顔で私は曇らせの良さを知ったとこあるから。君が悪いとこあるよね』
「…?──なんですかその、妙に訳知りな物言い。あなたたちは一体…」
【無駄な話に興ずるつもりはない。手荒な招きですまないなビッチ。だがデリヘルを呼ぶ気ならこっちも相手を選ぶ権利がある。君は私的にノータイムチェンジだ】
そんな失礼千万な侮蔑を向け、愚弄する漆黒の石碑にタマモヴィッチは向き直る。だが、その声から本心は伺えない。抑揚があるのかないのか、男か女かすらも掴み取れない不定形さを有した声に、彼女は空寒いものを感じながら返答を返す。
「人を拉致監禁しておいてノータイムチェンジ宣言とか、随分と無礼を働いてくれますね。あなたもしや、私を上回る畜生にして悪逆無道の悪鬼外道では?」
【人には敬意を払い、弄び、破滅させるのがライフワークだが、獣相手にそんな気概を懐くのは頭がおかしいヤツだけだ。そうだろう?【5番目の
その言葉を告げられたタマモヴィッチから表情が消える。向こうの相手は、何から何までを把握している。自分は先手に先手を打たれ、虎穴へ引きずり込まれた事を理解したのだ。
「──南極の『神殿』…カルデアの手の者ですね?」
『無形よ、こやつすっごい話早い』
『流石の慧眼、時の朝廷に取り入れる頭の回転は流石ですね。処しときます?処しときます?』
「外野うるさいんですけど!?」
【悪知恵は働くようだな。そうそう、私達はカルデアへの善意の『協力者』だ。協力はしているがカルデアの全容はなーんにも知らないし、なーんにもわからない。ただ、面白そうだから付き合っているだけでね】
嘘である。楽園の皆こそ大事な宝物であるし、大事な娘と家族が在籍している為もう一蓮托生である。だがそんな頭プレシャスの一面を彼女に見せる理由も義理も無いため、彼は外注の協力者を嘯いたのだ。
「へぇ、そうなんですかぁ。だったら私にこーんな酷い事をしちゃったらカルデアの名誉に傷がついちゃうゾ♪清く正しい世界を救った組織の足を引っ張っていいのかナー?」
【魔術師が運用してる組織がクリーンな訳無いだろう。お前が知るカルデアは外道の巣窟、忌むべき人でなしの集団だぞ?耄碌するのは契約を締結してからにしてもらおうか、妲己】
「…!」
『楽園』ではなく【カルデア】と言う事によりアンジャッシュ的な認識齟齬を起こした話題を提供し、同時に彼女の側面を呼び、牽制する。彼女の本質を呼び当てながらもこちらの真意を全くしらせぬ交渉…否、恫喝。あまりに無機質で野蛮な手口に閉口するタマモヴィッチ。
「…あなたがプライバシーの欠片もないクソ野郎だと言うのは解りました。そんな腐った性根では永遠に独り身でしょう。可哀想に…」
【そうだな。奇跡でも起こらん限り私は永劫下劣な卑劣漢さ。だからこそ、お前のような畜生相手にはうってつけな訳だ】
「もう御託は結構です。それでなんです?私を手篭めにして、快楽を貪りたいのですか?」
『ないわー。水銀一気飲みばりにないわー』
『晴明✕道満の純愛ばりに無いな』
「もうホント外野何なんです!?野次るためにいるんですか!?」
【嬉しい事にそんな意志はない。ただ、お前と協力関係を結びたいと思ってな】
「………協力ぅ?」
先の態度からは想像もできない殊勝な申し出に、タマモヴィッチは困惑と懐疑の声を上げる。そう、申出されたのは協力であった。
『これからの未来、この地球は外宇宙からの侵略を受ける。その際に君──九尾の大元からの分身である君は、外宇宙からの侵略に迎合するかは微妙なラインだと推測される』
『人類まるっと滅ぼされては、ライフワークの人類の愛玩どころではあるまい?ならば『敵の敵は味方』という論の通り、異星の神はそなたと不可侵条約を結ぶであろう事が予測される。それに先んじてそなたと契約を結ぼうと言うわけだな』
「…異星の神の侵略?あー…人理再編とかの発端になる事件ですか?」
【察しが良くて助かる。端的に言って旅先をチョロチョロされると目障りでね。毒も適度に摂れば薬と言うし、君を無害よりの存在にしておきたいんだよタユンスカポン】
「誰です!?…もし断ったりしたら…私、どうなっちゃいます?」
【断ってからのお楽しみだ】
黙考するタマモヴィッチ。彼女は相手の顔さえ見えればそれが嘘か、本質かを瞬く間に見抜ける。しかしこの連中は巧妙に素顔を隠しコンタクトをする小賢しさを見せているため、本心がまるで読み解けない。腹の探り合いすら許さない恫喝じみた席に、彼女は付き合わされているのだ。
「…ビジネス契約と言うなら、結ぶのも吝かではありません。ならば当然、見返りは用意してくださるのですね?」
【勿論だ。君の望むレアエネミー、モンスター、珍獣、竜種、怪人、人間、神、悪魔。それら全てをたちどころに揃えて君に提供しよう】
「なんと!?」
【愛玩が好きで、蒐集家なんだろう?絶滅種や幻創種のカタログを見て溜め息を付いた事は無いか?絶版になったゲームソフトや車はプレミアが付くものだ。君が望むならアヴァロンに繋がる道を守護する獣や、星の触覚たる生物、光の巨人やエンシェントドラゴンまで幅広く取り扱ってあげよう。無論、格安でな】
獣としての欲求を完全に満たし尽くす垂涎の好条件に、タマモヴィッチは目を輝かせる。それらを知っているということ、価値があるという事こそが真実の裏付けとなる。
(私のコレクションが一気にグレードアップするチャンス!前々から竜種は属性ごとにコンプしたいと思っていたんです!それが更にエンシェントともなれば…!)
『浅ましい欲得が透けて見える。んー、これは傾国』
『火のないところに煙は立たないって真理ですね』
【どうかな?勿論剥製などではない、生きた新鮮なドラゴンだよ?なんなら卵もつけよう。たまごっちでもやってみるかい?】
(…ですが個人的に気に入りませんし、この方が一番嫌がることは、その異星の神に私が寝返る事。──恥をかかされた礼として契約破棄からの更新を前提として、精々毟らせてもらおうかしら。いざとなれば私、世界も跨げますしね)
「えぇ、えぇ!是非ともよろしくおねがいします!手に手を取り扱って、共に人類を護って参りましょう♪太っ腹の御大臣様♪」
喜色満面、裏切りを前提とした契約締結を了承するタマモヴィッチ。彼女には自信と自覚があり、同時に実力もあった。人間社会などゆうに破滅させる程の。
【あぁ、よろしく頼むよビーストⅤ。共に世界を護ろう】
「…私ばかりパーソナリティをぶっこ抜かれて不公平ですぅ〜。ビジネスパートナーとして、歩み寄るのは大事だと思いますがぁ?」
ただ、誤算があるとすれば──
『そうだな。では名乗ろう。オッス、朕『始皇帝』』
「…え?」
『こんばんは。安倍晴明です』
「は?」
【私には無限の通り名があるから、何て呼べばいいのか…確か、一番有名な名前は【ニャルラトホテプ】だったかな?】
「────!!!」
【よろしくね。タマモヴィッチちゃん?】
…今まで話してきた相手達が、そんな小手先で崩せるような相手ではないことを。タマモヴィッチは漸く理解した──。
タマモヴィッチ「痛ッ!?」
『晴明☆朕朕札』
晴明『それは神霊、ビーストクラスの力を極限まで封じる札だ。単独顕現で異星の神側と密会を企むのが君という女狐だからね。対策の一つは用意して当然だ』
「ッ…!相変わらずの暗黒イケモンぶりですね…!」
始皇帝『そなたを野放しにしておくと、英雄姫が真価を発揮する未来が変わるやも知れぬのでな。我が演算すら越え、全能の一端を行使する高みへもたらす為に、そなたには大人しくしてもらわねば困る。故に──今度は、丁寧に行く』
そして幕が上がる。其処にあるのは古今東西の拷問器具にして始皇帝が選びぬいた選りすぐりの拷問官達。向こう4千年は退屈させない盤石の施設。
始皇帝『足の健と喉を斬っておけば、万が一逃したとしても問題はあるまい。そういう凌遅は朕得意であるぞ』
タマモヴィッチ「えっ、ちょっ、契約は!?これパートナーにやる仕打ちじゃないですよね!?それにあなた、今なんと名乗りました!?それは領域外の──!」
【契約はしたとも。口頭契約も確かに契約だ。だが、大事なのは契約であって君じゃない。私が君に求めるものはただ一つ。『余計な事をするな』だからな。彼等もそれを遂行させるためのメタ、プロフェッショナルだから呼んだのさ。君の口座も、君の財力も、君の能力も、君の尊厳も、全て契約の見返りとして没収する。君が時の朝廷にしてきたようにな。妲己君】
タマモヴィッチ「──おのれ…!!初めからこれが算段であったな!謀ったか、蠕くだけが取り柄のゲテモノが…!!」
【いい言動になってきたな。化けの皮が剥がれたな、女狐。だが心配するな、慌てなくてもその小綺麗な五体、残らず暴かれる事になるのだから】
「ッ、ァ、ぎっ、痛い、痛い!ギャァァァァァ!!痛いぃいっ…!!!」
ニャル【決戦の際には開放してやる。枯れ木も山の賑わいと言うしな。だから向こう残り半年、【お前にはこの世全ての苦痛をプレゼントだ】。邪神と契約したら…破滅するのが世の習わしだろう?】
始皇帝『まずは乳房から潰すか』
晴明『火炙りとかどうです?玄翁ハンマーで頭を割るとか趣深いですよ』
タマモヴィッチ「ま、待って!解りました、心から仕えます!尽くしますから!せめて、せめて監禁ぐらいに──!」
【悪いが、それは出来ない契約だ。私はカルデアの盤石を一欠片でも揺らがせる生物を、決して許さない質でね。お前、最後には異星の神に取り入るつもりだったろう】
「───!!」
【残念だ。もっと早く尽くしてほしかったな。そしたらVIP待遇にしたのになぁ。残念だよタマモヴィッチ。だから──】
「ま、待っ──」
【お前はそこで、乾いてゆけ】
モニターを落とし、ビーストⅤの封殺に成功したニャルラトホテプ。
【さて、口座と財産を差し押さえに行くか】
彼はタマモヴィッチのすべてを、奪い取り活用する為に歩き出すのだった──。
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