ニャル【ゲーティア達の御使い全員昇華されましたからね。やっぱり敵意より尊重しか勝たんなって。まぁそれを人類がやるにはあと数段生命体の次元を上げなくてはならないですが】
『善悪も許容し、バランスを崩さず、それでいて良しとする生命体としての精神…ある意味人類の到達すべきステージ、可能性を王に示したわけですね。至宝と呼ぶにはさもありなん。彼女の存在そのものが人類の可能性の天井を引き上げたという事ですな』
ことが終わり、休憩がてら三人で楽園の記録を見返していた。
朕「おぉ、こやつ下総では安倍晴明と名乗っていたな」
【ネガティブキャンペーンにも程があるのでは?】
『大丈夫、誰一人信じてないから』
【セイレムは楽しかった…私の書いた脚本でも最高傑作と言っていい…】
「んー。見れば見るほどそなたが味方にいる理屈が読めんのだが」
【愛…ですかね】
『そう、ここで愛』
【これでひとまず、最低限やっておかねばならない事は終わりました。後は本来の目的、外宇宙から飛来する生命体を確保し、観察する事のみ。御二方、本当にありがとうございました。実に助かりました】
先の獣の封印を終え、後は本懐に至るのみ。自身では本体の特定や拷問器具の調達に些か時間がかかった事を考え、ニャルは二人の召喚に感謝し礼を告げる。彼は昆虫的とすら言えるほど、敵味方の区別が激しく徹底的であるのだ。
「うむ、くるしゅう無いぞ。アレの封印は朕も試みた最適解でもある故な。世界を思うまま貪る獣、封ずるは必定。例え朕の世界で無くとも、野放しの放逐などできるものでは無いからな」
『お役に立てた様で何より。自身の術で他者の運命を変えるのはとても小気味よいものです。それが繁栄であれ、破滅であれ。まぁ、偶然あれには二度破滅を贈った事になる訳ですが。いやはや悪い事をしてしまった。暗黒イケモンを否定できませんな』
【おぉ、怖い怖い。私も本来なら脚本畑かつ、勝手に滅びていくのが好きなので手を下す回数は少ない上、今では力の九割を放り捨てている状態で加減が効かなかったらどうしようかと思っていました。いやはや、興が乗ってうっかり殺しでもしたら、楽園が越えるべき試練を奪ってしまうところでしたからね。では早速、楽園行きの手配を…】
「あぁ、その事だがな。朕は残り六ヶ月、ここで叙事詩の黙読に耽る。ついでがてらあの女狐の監視と宇宙からの刺客の検問は果たす故、そなたらは楽園に帰還すると良いぞ」
意外にも、始皇帝は楽園へ脚を運ぶことを後回しにする事を宣言した。その理屈は、治世者らしい気遣いの発露が主である。
「どうやら朕の見た未来は誰においても先の話であることを理解した。だが、朕には過去の未来であれ、今を生きる者たちはこれからの未来。ネタバレされるは上手くなかろう。エアの奇跡は、縋ってしまっては間違いなく到達しえぬ領域だからな。半年後の開戦まで、朕はここを別居としてゆるりと旅路の咀嚼に励む。あ、でもワープホールは付けておいてもらうぞ。たまに散策したいからな」
【なるほど。お気遣い大変感謝致します。…正直覚悟していましたが、家族を残して出張とかいやーなフラグですからね】
『NTRの鉄板導入ですね解ります。逆に私は、楽園にて控えようと思います。アルターエゴ、リンボの再起と復讐にね』
逆に晴明は早急な楽園への合流を提案した。その理由はやはりアルターエゴ・リンボの存在であるという。彼の天性の直感と虫の知らせが、彼が大人しくしているとは思えぬと予測していたのだ。
『本来ならば無限の不死性で各地に式神を飛ばし、あちらこちらに現れ状況を混乱に陥れていた筈。しかし今回の先手でそれら全てが御破算になった。愉悦と享楽を邪魔されたリンボは大幅に時計を早める事が予測される。私が絡んだ以上、冷静さもあるかどうかも怪しいからね』
【となると…楽園カルデアに、大規模な交戦を仕掛けてくると踏んだ訳ですね?】
『そういう事になる。アレは自身の安全を確保した上で他者を愚弄するタイプの側面だ。残り一つの命を最大限に使い、楽園の旅路を終わらせにかかってくるだろう。その際の対策をスムーズにするため、楽園のみなさんとのコンタクトは取っておきたいんだ』
「うむ、手負いの獣は実に厄介よな。朕もそれはよくわかる。永世帝国を築く際、最後の国を落とす際には大層手を焼いた。楽園の者達と手を取り合い、今度こそかの悪鬼外道を討ち滅ぼすべし!夏休みの宿題の様なものであるが、頑張るしかあるまい!」
【……結果的にすげぇ余計な事をしてしまった感がしてしまいましたが、その時はよろしくお願いします。私はお二人の中間…楽園とここを行き来し、準備に励みますよ。私はあくまでも楽園という光の影であり闇。汚れ仕事請負人ですからね】
彼は夏のイベントにも参加できるかどうか半々で見ていた。皆が心ゆくまで浮かれることができる様に、自身のみが気を張る覚悟をしてこの業務についていたのだから。しかしそれを、二人は制する。
「朕も初めて聞いた時はすっごいビックリしたが、そなたには家族がいるのだろう?ならば仕事と家庭、どちらも重んじるが家長の務め。より良き未来に取れる最善を選び続けよ!」
『そうそう。愛を知っているか、そうでないかで結末は大いに変わってくる。リンボにそれを思い知らせる為にも、あなたには大事にしてもらいたい。他者を愛する想いを。花束でも買ってみてはどうかな?』
【お朕朕さん…安倍野郎さん…ありがとうございます。私、結婚記念日や子の生まれた日は毎年祝いたいタイプなので。それではお言葉に甘えて、家族サービスに勤しみます!】
こうして、楽園の暗部である邪神は基地と頼もしい仲間を手に入れた。来る6月、ニューメキシコ州に飛来する宇宙人を確保できるかによってこれより先の運命は大きく左右されるだろう。少なくとも、人類の自業自得である【人災】のルートは削除されたと言っていい。これでもし同じことが起こるなら、それは【天災】クラスの大事件だ。だからこそ、楽園が挑むに相応しいとニャルは頷く。
【鮮やかに解決するは彼等の役目。盤外戦術と反則の応酬はこちらの役目。これからも油断せず、盤石な未来へ向けて頑張っていきましょう!】
「うむ、期待している!そなたらにはなんとしても、我が永世帝国に辿り着き正々堂々と雌雄を決してもらわねばならぬからな!フハハハハハ!」
『私も出来ることはやると約束します。まぁほぼなんでも出来ますが。ところで二つほどよろしいでしょうか?』
「【ん?】」
『これがうまくいって、もし異星の神の侵略行為が起きなかった場合、そもそもロストベルト自体のイベントがカットされたりしないですよね?そうなった場合、朕朕さんの未来はオールカットされる憂き目に遭うのですが』
「───────確かに」
『それと異星の神の侵略があれこれ言っていますが、領域外の高次生命体であるニャルニャル君を始めとした宇宙侵略対策のノウハウが万全なこの世界のカルデアなら、そう顔色を変えず奮闘せずとも大丈夫なのでは?ほら、記録見る限りノウハウ不足で負けてたっぽいですし。ニャルニャル君がセイレムでやらかした侵略行為の二番煎じに甘んじてません?異星の神』
【──────ホントだ】
『まぁあくまで気付いただけなんでそんな事無いとは思うんですが。リンボとかまだ不安材料はいますし。だからそう肩肘を張らずにいきましょう。我々、出来る手を全部打ったらエンディングショートカットできちゃうくらいの過剰戦力だと思うんで、個人的に』
何から何まで正論のツッコミを突き付けられ、面食らう二人の高次存在。そういえばやりすぎたらフラグ消失の可能性すらあった…そもそも世界的に見たら起きない方がいいじゃん…
「【───ははははははは!】」
だが、王と姫の愉悦は試練とそこに起こる研鑽を見ることであり、地球を離れる際の禍根を断つことにある。人理再編の戦いで起こる際の成長は決して無下にしてはならないだろう。世界の為でなく、自らの愉悦の為に王は戦っているのだから。そう信じ、笑って懸念を吹き飛ばす邪神と始皇帝なのであった──。
(…しかし、あのリンボが曲がりなりにも愛を口にするとは。この世界の藤丸リッカちゃんに懐いた感情が本当に愛だとするならば…)
『…無駄なところで難易度上がるかもしれないなぁ』
そして、リンボの次の動きにも懸念が高まる晴明でもあった。愛を知ったのは果たして、嘘か真か──。
肉塊の褥
「おのれェエェエェエ!!おのれ、おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれ───」
『晴明ィ!!」
「よくも、よくも我が目論見、不死による観覧と嘲弄の目論見を御破算にしてくれた!口惜しい、恨めしい…!楽園カルデアを阻む未知行きの呪詛を軽く百は考案していたものをォ!!おのれ、おのれェ…!!」
「晴明ィ!!」
「かくなる上は異星の神の降臨など待たず!残り一つの命にて貴様らを血祭りにあげて差し上げる!晴明を有した今、最早拙僧の怒りと憎悪は有頂天!!ンン、ンンンンンンンンン─────」
「晴明ィ!!」
「我が秘奥、我が領域!我がすべてを使い地獄を齎して御覧に入れよう!我が美しき、我のみの空想樹!【地獄界曼荼羅】にて!!!覚悟めされよ楽園の方々!藤丸龍華!そして───」
「晴明ィ!!!」
美しき獣は、地獄が如き肉塊の中で雄叫びを上げ続けた──。
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