人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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楽園カルデア

頼光「あぁ、綱!そして金時!生前の活躍をこうして再び目の当たりに出来るだなんて!特に金時!我が娘への判断、素晴らしいです!」

酒吞「リッカはん、良かったねぇ。これで夜を寂しく迷子にならんでようなって。にしても茨木はらしくない。普通逃げはるやろ?多勢に無勢やん」

茨木「今だから解るのだが、どうも綱を見ると殺意以外の感情が湧くのだ。それが、冷静さを失わせる…」
カグツチ「綱に惚の字?」

「断じて!断じて違う!!大体、恋慕を懐いた相手と殺し合いなどするものか!」

ゴルドルフ(君本当に鬼かね?)

紫式部「失礼します。場が平安京であると聞き及び、助言を呈したく…」

メイ「お、紫式部じゃないか。活用してる?泰山解説祭」

紫式部「えっ!?せ、晴明様!?」

ロマン「なんだか君、好意的な反応皆無だよね…」

「人理焼却の犯人と無意識に断定されていた頃の貴方に比べたらマシですよ、ロマン殿」

ロマン「すっごい痛いところ突いてきた!!」

紫式部「そ、それはともかく。──拠点を有してくださる方に、心当たりがあります──」



丑御前【リッカ。私の愛娘、リッカ】

リッカ(母上?)

【はい。あなたの母です。リッカ、金時に童子切を見せるのです。絆の証であるそれが、あらゆる全ての裏付けになりましょう】

(母上…やっぱり、力を貸してくれる人に隠し事はダメですよね)

【えぇ。私の息子と娘、力を合わせる架け橋となりましょう。母はいつでも傍におります。信じなさい、私の愛しい愛しい愛娘…】



リッカ「…金時兄ぃ」

金時「?」

「今から話すことは、全て真実です。この──」

金時「…!!」

「母の刀──『童子切安綱』に誓って!」




天覧武者、そして天覧聖杯戦争

「──なぁる程なぁ。レイシフト、時間旅行、時空の度…明日の明日のそのまた明日。ずっと未来からお前さんらはやって来たって訳か。そりゃあまた、景気のいい話じゃねぇか!」

 

リッカ陣営に二つ返事にて協力を快諾した金時に、カルデア側は持ちうる情報を開示する事を決定した。腹を隠したまま協力するのは不誠実。そう決心させる程に、坂田金時──四天王が一人の未来におけるリッカの義兄の性根は真っ直ぐ痛快であったのだ。その荒唐無稽の言葉もまた、金時は真っ直ぐ受け入れる。

 

「疑問、疑惑は懐かないのですか?かなり筋道が整わぬお伽噺めいた話ではありまするが…」

 

「なぁに、人界最強と謳われた綱の兄貴の太刀を前にし、五体満足どころか斬って鍔迫る武者集団なんざ京にいる筈もねぇ。そんな勇猛果敢な輩が嘘なんてつく理由もありゃしねぇだろ。なら未来から来たって話、本当だと頷く他ねぇわな!」

 

「景気がいい、とは?」

 

「そりゃ勿論、俺らの時代が『未来に続く』って太鼓判があんたらの存在だってことよ!そんで聞きゃあ、リッカは俺の妹で、頼光サンの娘になったと来た!こんな痛快愉快な未来、京の桜吹雪も敵いやしねぇさ!」

 

金時は信じていた。自らに真っ直ぐに助けを求めたリッカ達を。そして、この小さな身体でかの『棟梁』たる頼光に認められた事を。母であり大将たる頼光、戯れや悪戯に子などと呼ばせる筈も無く。

 

「うん。この太刀に誓って──嘘は言わないよ」

 

彼女が見せし、母より賜りし護り刀。天下五剣が一振りにして大将が有する古今無双の太刀、童子切安綱。母と酒吞を象った、橙の柄に塗られた絆の証が、彼女の在り方を何よりも雄弁に示している。

 

「へへっ──どうやら俺っちも、天運が向いてきたんだなァ。まさか俺っちの英霊が、未来の妹で頼光サンの娘とはよ!」

 

「うん!──え?英霊?」

 

「おうよ!リッカ、お前さんは…俺のサーヴァントなんだろ?」

 

マシュと段蔵、お供は顔を見合わせ、桃子は拍手を贈る。先の綱の通り、どうやら自身らの常識とは違う『何か』が起きている事は明白だ。

 

『金時君。確かにリッカ君は相棒だよ。リッカ君は魔術師でもある。紛れもなく現代の最先端の英雄さ』

 

「うぉ吃驚したぁ!?なんだよ急に、晴明様みてぇに脅かしやがって!」

 

『そんな有能天才スーパー陰陽師の事は後でいい。リッカ君は君の相棒、そしてサーヴァントとして実に活躍してくれるだろう』

 

(ちょっとぉ!?)

 

私英雄違う!突如割り込んだメイに抗議するも、メイは機械的なまでに最良の手段を取り続ける。その手際は、情を懐く人間のそれに非ず。

 

(君が英雄かどうかは君ではなく、君を見た全てが決めることだ。私は君を最先端の英雄だと思っている。はい、事実成立)

 

(えぇ!?)

 

(そしてどうやら、君は何をおいても金時君と一緒にいた方がいい。この際英雄かどうかは口実だ)

 

「やっぱなぁ!お前さんが俺のサーヴァント…!強い!愛くるしい!かわいい!ダメ押しに大将の娘!傷一つ付けず護ってやる気合いが入るぜ!」

 

(彼がやる気になるという事実の前には些末なこと、では聖杯戦争の話を…)

 

(───)

 

(…感激で打ち震えている。ならばどんぎゅーちゃんとマシュちゃんに進行を頼むか)

 

テキパキと情報をカルデアに引き出す手際を式神にて遂行する。金時の左手にピタリと張り付き、式神は紅く発行を行う。

 

『左手のそれ、間違いなく令呪だね?私の予測するところ、君たち平安武士は聖杯戦争を行っている。あってるかな?』

 

「聖杯戦争…!となれば、7騎のサーヴァントに聖杯がここにも!?」

 

「お、おぉ。随分話が早いじゃあねぇか。確か7日だか前、左大臣、道長のヤロウが天覧武者…要するにマスターを平安武士が四天王に選び、術式を始めた。異国の術者、要するにキャスターのみを7騎呼び寄せ殺し合わせる聖杯戦争をな」

 

四天王、そしてその棟梁たる頼光をマスターとし、キャスターのみを招き入れる聖杯戦争が行われたことを聞き及ぶ一同。その理由と出典は、けしてやましい意思では無かった。

 

「聖杯戦争において、最後の一騎と一人になればあらゆる願いが叶うとの触れ込みに、京の千年の安寧を実現させるっていうのが触れ込みだ。あのオッサンが中々に薄情なもんで、『異国の術者如きの命で京の安寧が得られるならば安いもの』だなんぞ宣って儀式を始めやがった。頼光サンはこんな不明瞭な儀式に武者達を参じさせるなどどうかしていると直訴はしたがよ…」

 

使い魔が本来の意図。理解してはいるつもりだが、使い捨ての生贄扱いのサーヴァントの認識に、他ならぬサーヴァント達に命を貰ったリッカは俯き唇を噛み、そして顔を上げる。

 

「!じゃあ四天王の残りの二人、碓井貞光さんと卜部季武さんはいまどこに!?」

 

「お、やっぱ頼光サンから聞いてるか!碓井の兄ィに卜部のオッサン、音に聞く頼光四天王の二人は今…有馬で湯治中よ。英霊を殺され、おまけに手傷をつけられちまってなぁ」

 

既に天覧武者としては脱落していた二人。しかし、命は無事であったことに楽園の母は胸を痛めぬと安堵するリッカ。そして桃子は鋭く切り込む。

 

「──その2騎を葬り、手傷を負わせた方。それは先の渡辺綱殿ですね?」

 

頷く金時。そのあまりの絶技、お供らの衝撃は少なくない。

 

『なんと…!同じ四天王すら下してみせるのか!』

『不思議はない。あの斬撃…我らお供の神体にてようやく防御が叶うものだ』

『人界最強…過大でも大言壮語でもないって訳ね』

 

「ですが、桃子さんは人ではなく星が産んだ希望の結晶!負ける道理がありませんでしたね!」

 

マシュっと何故か桃子よりも胸を張るマシュに膝カックンをかますリッカ。情報交換は続く。ロマンに晴明が、その欺瞞を暴く。

 

『ドクター…いや、魔術を修めた者として言わせてもらうよ。それは罠だ。何故って、もたらされるべき聖杯の情報が隠匿されているからね』

 

『リンボは準備が整ったら聖杯を利用し掠め取る腹積もりだろう。いかにもヤツが考えそうな事だ。金時君、聖杯戦争の考案者はかのスーパー陰陽師安倍晴明なんだね?』

 

「お、おう。一月前からどっかに行っちまった晴明様の考案だぜ?」

 

『晴明不在の陰陽寮を取り仕切っているのは?』

 

「…蘆屋、道満殿だな」 

 

やはりか、と晴明は頷く。生前の頃の道満は安倍晴明の術式を改良は出来ても、一からの術式の考案は自分に及ぶべくもない。聖杯戦争などという神域のシステム、自分以外にはソロモンかホムンクルス作りの名家くらいだろうなと機械の身体で事実を把握する。

 

『私の知る限り、其処の京は世紀末だ。陰謀、暗殺、呪殺は天気予報感覚で起こる。善人は死ぬ、悪人も死ぬ。少し街道を外れれば魑魅魍魎跋扈する地獄変。荘園、坂東の乱の残党も雨後の筍が如くだ。左大臣…藤原道長殿は胃痛を常に訴えていたよ。私は常に思っていた。裏方で好き勝手できる陰陽師で良かったと』

 

(((暗黒イケモン…)))

 

「だから願ったのでしょう。人智には遠い平穏を。『そんなものはあり得ない』と知ってしまったからこそ、千年の平安を」

 

「──あぁ。だが、ソイツはあるかも解らねぇ盃なんかに託すもんじゃねぇ。ソイツは今を生きる、俺たちが必死こいて掴むもんだ」

 

その言葉と共に、金時は斧を置く。そして左手の甲を外し、天覧武者たる令呪を示す。

 

「なんでも、天覧武者ってぇのはどいつもこいつも願いを持つらしい。──俺は正直、そんなもんは見つかんなかったが…そのきっかけ、ってやつなら見つけちまった」

 

そして金時は見やる。リッカ──遥か未来の、天下泰平の証を。

 

「この今が、リッカ。お前さんの…大将が夢見た、誰もが平和にいられる未来に繋がるってんなら。俺は絶対にこの今を護りてぇ。何故ならそいつは、『此処』から始まる未来ってやつだからだ。俺は、そいつを護ってやりてぇんだ」

 

「金時兄ぃ…!」

 

「助けてやる、なんて偉そうに頷いちまったが…こっちこそだ。──頼む、リッカ!サーヴァントとして、俺っちと一緒に戦ってくれ!ぜっっっっってぇ!傷一つ付けずに護るからよ!!」

 

共に、平和を。今を、未来を護りたいと。過去を歪ませる輩を討つためにやってきたリッカに願う金時。その申し出──断る理屈は何処にもない。

 

『り、リッカちゃんは人間だからね?ね?』

 

「ロマン殿。リッカねぇの肩書きがなんであろうと関係ありません。ね、マシュちゃん?」

 

「はい!何故なら先輩は先輩だからです!」

 

「──うん!一緒に掴もう!親子が笑って暮らせる未来を!」

 

金時の左手に手を重ねるリッカ。皆が見守る中、此処に完全なる天覧武者とサーヴァント(人間)が生まれたのだ──。

 

 




金時「さて!未来の娘とあらば頼光サンに紹介しないわけにゃあいかねぇが…俺っち今家出中でなぁ…」

リッカ「家出!?なんで!?」

金時「け、喧嘩別れとかじゃねぇ!多分…多分だがよ。大将も…だ」

「…天覧武者で、サーヴァントがいる…」

金時「そういうこった。まず間違い無く、頼光さんが護ってやらなきゃならん非力なキャスターだ。それの手間に、俺っちの面倒もかけるわけにはいかねぇよ」

段蔵「優しいのですね。頼光殿も、息子の心は伝わっておりまする」

リッカ「うん!…!?」

金時「お、おお?どうしたい、急に頭なんか撫でて」

リッカ「──ううん。急にしたくなっただけ!」

金時「?と、ともかく。女の子らを野宿させたとあっちゃ四天王の名折れ。しかし源氏の息のかかった宿なんぞ綱の兄貴に、鉢合わせしたら偉いことだ。さぁて…どうしたもんか」

オルガマリー『それなら、師匠考案のカプセルハウスを』
アンク『居住スペースくらいなら作れるわ、入る?』

マシュ「寝袋あれば大丈夫です!──ん?」

その時、音を立て牛車が寄る。この夜更けに近付く牛車から、貴人の声が響く。

「かような夜更けに、見るも艶やかな偉丈夫が、見目麗しき女性らを侍らせお話し合い。しかし色恋沙汰のようにも見えず。どうされました?お困りとあらば…」

そこより現れしは、鮮やかなる十二単衣に見を包みし艶やかな貴人。

諾子(なぎこ)「この諾子、もとい清子が力添えしましょうか?」

渡りに船の女性が、気安げに言葉を告げる──

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