人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1452 / 2530
王の間

ギル「懐かしい奔走よ。かつての下総を思い出すではないか。ゴージャス御大尽…あの頃のマスターはまだまだ未完成であったな」

──少し前なのに、遠い昔のようです。あの頃も素晴らしかったですが、あの頃よりも皆様の質も人員も比べ物にならないくらいに豪華になりました!

フォウ(今はこうして安心してみていられる。皆の進歩は凄いね!)

《これだからこの叙事詩の開拓は止められぬ。見通せぬ空がごとき成長は見て退屈を覚えさせぬ》

──この年末が勝負、ですからね。

《うむ。我等が仕留めるは異星の神、並びに異聞帯の王のみ。心苦しくはあるが、奴等には我等が手を下すまでもなく研鑽されてもらわなくてはな》

──この一年は皆様の年です。あらゆる未来に負けぬ程に強く、大きくなれることをワタシは…ワタシ達は信じています!


天覧聖杯戦争、邪悪あり!

「という訳で、私は遥か未来にヒューマギアに乗り移り女性となって戻って来て、こちらは未来より紛れ込んだ晴明モドキを討ち果たすためにやってきた古今無双の勇者達。なのはいいんだが転移したてで宿が無い。それなので君に宿を見繕ってもらいたいという話なんだがどうだろう?あと草の庵がよろしくだって」

 

「あ、え、その…?あ、はい、そう、そうなのですね?はい、晴明様がそう仰られるなら…え!?草の庵!?」

 

晴明…傍から見ればそう名乗る少女にしか見えない者が最新話術を織り交ぜて香子、即ち紫式部に説明を行うこの状況。最新話術は混ぜる必要皆無な為、晴明は弟子をからかっている以外の何者でもない会話運びである。当然、目を白黒させる香子。当たり前である。

 

『ワンパチッ!(抗議の意)晴明殿!そなた程の知恵者であれば噛み砕いて説明できよう!ゴーストタイプを蹂躙するかのような物言いを何故なさらぬか!イヌヌワッ!(憤慨の意)』

 

「心配ないんだガーディ君。彼女が真に私の弟子香子ならば、これでも確かに真意は伝わる」

 

「そ、そういうものなのですか?」

 

「は、はい。晴明様は稀代の陰陽師。その神仙の叡智はまさに並ぶ者なき聡明さ。正直に申し上げまして殆ど何を言っているか解らなかったので…」

 

「殆ど、なあたり香子は優秀だった。内裏に帝も首を傾げるばかり。雰囲気で政やってるなかで彼女は多少なりとも理解できた。あくまで、多少なりとも」

 

「は、はい。ですので…この気狂い一歩手前の聡明さは紛れもなく晴明様。そして其処に金時様や頼光様の刀を佩く少女、異国の方に物語の英雄とならば信じぬ訳には参りません。ですので…心より歓迎致します。皆様方」

 

頭のおかしさをもって本人の証を立てた晴明。これにより、無事に寝泊まり叶う宿を手に入れた事となる。一同はホッと胸を撫で下ろす。

 

『良かったぁ!一時はどうなることかと思ったけどなんとかなったね!まさかそれを見越して直接行ったのかい?』

 

「対話はリッカ殿の領分だが、1から絆を紡ぐのと既に紡いだ関係と縁を利用するのでは後者の方が手っ取り早い。リッカ殿はリンボ討伐に温存する切り札、余分なメンタル負荷を負わせるのは得策じゃない」

 

(利用って言ったわよこのイケモン)

(最初はニャルタイプかと思っていたが違う。人に対する情、接し方が昆虫的なまでに規則的で、それでいて自分の胸中は淡泊だ。必要とあらば平然と連帯保証人に友人を使うタイプなのだろうな…)

 

「お猿さんとフラミンゴさんに酷い言われようだな。私はただからかうのが好きなだけなのに」

 

(私の事を気遣ってくれて、負担を減らしてくれるのは伝わってる。凄い冷徹でクールなんだなぁ…)

 

想い想いの評価が飛び交った後に、一行は作戦会議を行う。今回の天覧聖杯戦争、リンボに繋がる儀式を破綻させる為の作戦会議だ。

 

「結論から言わせてもらおう。この天覧聖杯戦争、完遂させる必要は無い。私が持ち込んだ術式であると言うなら、リンボとかいう道満モドキが絡むと伝えればミッチー、げふん。道長殿も思い直すだろう」

 

「先輩!今ミッチーと言いましたこの方!」

 

「フリーダムすぎないこの陰陽師様…?」

 

「そこでだ。金時殿、リッカ殿。そして桃子殿と段蔵殿は私がリンボのヘイトスピーチをかき上げた手紙を持って内裏へと行ってもらうね。リッカ殿をサーヴァントとして迎え入れた旨を話し、この外道が仕組んだ戦争を終わらせるとミッチーに伝えてほしい」

 

「ほぉ。左大臣に直接直訴するって訳かぃ。外道の企てあり、直ちに終をってか」

 

「直接伝えちゃって大丈夫かな?戯言とか斬って捨ててこない?」

 

「そこは問題無いよ。リッカちゃん、君は人類一対話というコミュニケーションに長けた存在だ。君の言の葉は道満は愚か、私の術よりも強い。影響力で言えば帝の小僧よりも余程だ。君の言葉、私の文。そして四天王坂田金時の太鼓判。信じなければ左大臣をケツで磨くだけの男という嫌な箔がつく。彼は傑物だ、必ず聞き届けるだろう」

 

褒めているやら貶しているやら微妙なフリーダムトークにて、陰陽師は役割りを分担していく。

 

『ちょっと待った。内裏って要するに神殿みたいなものだよね?どうやって入れてもらうんだい?』

 

「カチコミアームズ!!いざ!出陣!!」

 

「「「『『エイ!!エイ!!オーッ!!!』』」」」

 

『うるさいわよバカ陰陽師にバカお供!主もリッカちゃんもマシュも悪乗りしないの!』

 

「へえ、いい気迫じゃねぇの!」

 

「真似してはなりませぬ、金時殿…」

 

「まぁそれだと平安の乱一直だから冗談として。香子、君は内裏務めだったな?彼女らを一つ内裏に招いてくれないか?」

 

晴明の提案は大胆にも、香子の力を借り真正面から入れてもらう正攻法であった。彼は説明を続ける。

 

「私の手紙を金時殿に託し、リッカ殿をサーヴァントとして得たと伝え天覧聖杯戦争に邪悪ありと告げ、君たちが全勝宣言をしマスター達と戦う。その間に私が聖杯に汲み取られる魂に細工し儀式に爆弾を仕込む。ついでに内裏に控える道満がリンボなのかどうかをリッカちゃんの対話技術、段蔵殿の虫の報せで見極め、リンボであるならアサシンモードの桃子ちゃんが始末して首を証拠に挙げれば天覧聖杯戦争はそこで終わりだ。要するに、宣戦するってことだね」

 

『忍の皆が散開して集めてくれた情報によると、この時代の晴明はどうやら姿が見えない様なんだ。何処にも見つからない…何をしてるんだろう?』

 

「成程、確かに私はクラスを変えられます。アサシンにも当然。暗殺も可能かと」

 

「…アサシン?桃子、それって…」

 

「心配はいりませんよ、リッカねぇ。疑心暗鬼の傀儡だった髀ではなく、隠密と隠遁を得手とした桃子・エージェントモード。壊れはしません、大丈夫!」

 

『類似イメージ検索…該当。対魔に』

『やめなさいバカザル!』

 

「大丈夫と言えば…私がリンボを倒して、リッカねぇは大丈夫ですか?」

 

「もちろん大丈夫。私がしたいのはリンボに引導を渡したいのであって、誰が渡すかは拘ることじゃないからね。リンボだったら…お願いね、桃子」 

 

リッカと頷き合う桃子。その様には、リンボのように偏執的な拘りなど微塵も介在しない。掴むは仇の首に非ず。母が望んだ平穏のみ。

 

「あ、安倍さん!このマシュが、このマシュがスタメンにいないのですが!」

 

「申し訳ないねマシュちゃん、君には私、三匹のお供の霊脈確保チームに入ってもらう。忍連合が霊脈の地を見つけ出した。そこに私が術式にて細工と…とある英霊を招く。こちらに君は来てもらうよ。先輩とは離れ離れだが…」

 

「ぐ、ぐぬぬ…!い、い、いいでしょう…先輩のお役に立てるなら、一時的に離れるのも許容します!」

 

「ありがと、マシュ。そういう所大好きだよっ!」

 

「先輩っっっっっ!!!」

「良かったねぇマシュちゃん!」

 

「へへっ。騒がしく逞しきは男子だけに非ず、ってか?頼もしいコトこのうえねぇやな!」

 

「そういう事だ。ロマン殿、この運びでいいかな?」

 

『僕が出来る事は霊脈から平安京全土のレイラインを掌握する事くらいだから、戦略はお任せするよ。気を付けてね、皆!』

 

(…陰陽師の観点からしてみれば、貴方様こそ何より恐ろしく頼もしい味方であるのだがね、魔術王殿)

 

「わ、解りました。…天覧聖杯戦争が終わり、流れる血が少なくなるのは非常に良きこと。それならば、協力は惜しみません。皆様、どうかよろしくおねがいしますね」

 

香子も了承の意を見せる。今ここに、リンボの目論みを瓦解させることに命を懸ける陰陽師の策が幕を開ける──。




晴明「よし、話もまとまったね。皆、ベストを尽くそうじゃないか。香子?」

「は、はい。どうなさいました?」

晴明「見ての通り、君の味方である戦力は芳醇にして盤石だ。故に──『隠す必要は無い』」

香子「───!」

晴明「リッカ殿。その龍の眼で見極めてくれ。いるだろう。高密度の魂が」

晴明の言葉通り、リッカは見据える。──隠匿はされているが、リッカの眼と、桃子と晴明に託された数々の物品が反応を示す

リッカ「サーヴァント…いる。緊急霊体化かな?不安定だけど…」

晴明「霊脈から呪を受けているんだろう。長く霊体化出来ないんだ。今は渾身でごまかしているんだろうが…」

香子「…あぁ、流石です。そこまで見ているだなんて…」

晴明「気に病まなくていい。私の上はロマン殿しかいないからな」

ロマン『えぇ?あはは、いきなり褒めないでよ照れるなぁ〜…って、えぇ!?サーヴァントだって!?』

金時「するっ、てぇと、つまり…」

リッカ「──香子さんが、天覧武者…要するに、マスター…!?」

悪意の欠片も無い為、リッカの探知は遅れた。しかし晴明は、弟子の魔術行使を見逃しはしない。

香子「…はい。皆様を信じ、命運をお託しします」

左手を見せる香子。そこには、マスターのあかしたる、令呪。

「私が…異境の術者、チャールズ・バベッジおじさまのマスター。紫式部にてございます…」

暴露と同時に、一行の前に荘厳なる鋼の鎧が現れる──。

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。