晴明「マシュ殿。リッカ殿への土産はこれがオススメだよ」
マシュ「ありがとうございます!参考にさせていただきますね!」
晴明「うんうん、先んじて頼んでおいた制圧は無事に完遂されているようだ。有能な協力者がいてくれるのはありがたい」
ロマン『レイシフト…正しく扱えたらロマン溢れる使い道がいくらでも思いつくのになぁ』
晴明「人類が本当の意味で何かを扱えた事はそう多くない。力や術の研鑽は失敗し痛い目に合わなくては覚えられないものだろうさ。かくいう陰陽術も、都の守護にも転覆にも使われた。だからといって陰陽術自体を廃止するという極論はあまり好ましくはないだろう?要は、使い方だ。月並みだがね」
ロマン『君はどちらなんだい?陰陽道は正義か悪か…』
晴明「そうだな…それは、リンボを倒した際に君達が決めてくれればそれでいい。ある意味でいえば…」
『?』
「初めてだからな。自分の意志で世のため人のために力を振るうのはな」
『…そっか』
「うん、無事に話はまとまったようだ。流石は欠けぬ月が如くとまで謳ったミッチー殿、迷いのない事運びにて助かる」
リッカらが左大臣と謁見していたその頃合い、一方の晴明達は先んじて確保してもらっていた霊脈の地を訪れ儀式の準備を成す。それは聖杯戦争を掌握するに等しい場外戦術にして盤外戦術。人を貶めるとは違った意味の外法を試みる最中であった。
「一通り調べ上げて見た所、やはりこの聖杯戦争はリンボの持つ空想樹に捧げる英霊の魂を吟味する為のものだ。一対一にて勝敗を決する空間…楽園のデータベースで拝見した、将門公の神田明神の邪悪版といった仕掛けが施されていた事を突き止めた」
一対一にて戦い、倒された魂を喰らう悪辣なる死合舞台。それらを有し仕掛け、負けた英霊の魂をリンボの術式の糧とする。晴明は道満の処置する術は大抵知り尽くしているため、霊脈の流れを見る事でそれらを容易く看破するに至る。仮にもライバルとされし者を元にした目論見、見破ってやれぬ筈は無いのである。
「という訳で、霊脈を掌握する事により儀式丸々いただく事にする。平安京全体の魔力の流れを掌握する事により、怪異を弾くも弱らせるも、平安京内での転移や強化も自在に行える環境を整え、リッカ君や皆のサポートを執り行う。やってもらえるかな、ロマン殿」
『掌握自体は問題無いんだけど…大丈夫かな?藤原さんや道満…いや、この場合リンボだけど、改竄の後に気付いて面倒な事になったりしない?』
「そこは問題ない。そもそも平安京の守護は存命の晴明が打ち立てた結界を起点に成り立っている。大きな鬼種や怪異は足を踏み入る事すら出来ない程度のものを都全体、すっぽりとね。小細工の隠蔽なんて容易くやってみせるとも。そもそもの話、私一人の腕に平安京全員の陰陽師が束になろうと相手にならないくらい隔たりがある。それに、私がどうしてこんな事をしたのか、など理解できる輩はいないだろうさ」
奇人変人の天才陰陽師ならばこそ、その奇想天外は秘匿される。ある意味で自身の立場を最大限利用した手練手管に、マシュやお供達は関心しきりとなる。
『ボッチを苦にしない男って凄いわね〜…』
『顔と腕前だけで十分と言い切る陰陽師殿だ』
『面構えが違う』
『そういう事なら、解ったよ。それじゃあ遠慮なく、平安京を陣地として頂いちゃおうかな!』
ロマンが言葉と同時に霊脈に作用する。魔術王としての証の指輪が揃いし時、ロマンは人類の魔術全てを支配下に置き、それを手中に収める。理屈、理論を無視したまさに傲慢なまでの王の特権。例え極東の術であろうと、人が成したものならば掴めぬ道理はない。
『はい、完了したよ。これで平安京の魔力リソースやアドバンテージはボク達のものだ。侵入したり触れたりすれば、即座に楽園は感知できる!』
「流石です、ドクター!そのお手前、全く変わっていませんね!」
『戦において陣をどこに敷くかはそれはもう大事。先んじて全ての物件を独占しておくが如き力業、お見事です。ロマン殿!』
いやぁ〜、それほどでもあるかな?なんて調子に乗るロマンを微笑ましく見ながら、更に晴明は準備を行う。先の道長とリッカの問答、段蔵の記録から把握済みであった故の準備だ。
「これでリッカ殿とは別のマスター達も召喚、行使が可能となった筈だ。所謂グランドマスター諸君には人知れず戦う平安守護…サブクエストをこなしてもらうことにしよう」
「キリシュタリアさんやカドックさんにも助力を願うと言うことですか?」
「そういう事だね。リッカ君が頑張っている間、こちらとしても支援はしてあげたい。天覧武者を制している間、本来の京の防御を固めると言うことさ」
(晴明殿が平安守護に燃えている!)
(やはりなんだかんだ言って京は大事なのね)
「倒された怪異は、私の術で細工をし霊脈を通してリンボが養育している空想樹やヤツ自身に悪影響をもたらす毒として送り込む。毒と薬は紙一重。滞りなくヤツの目論見が進んでいると錯覚させるための手練手管だ。タメに溜め込んだ毒が、ヤツの腹で爆散するその瞬間…その際にリンボはどんな無様を晒してくれるのかを考えると楽しみで夜しか眠れない」
(訂正すべき。多分に趣味が入っている)
「倒せば倒すほどリンボは満たされ爆発する…即ち、アルターエゴお腹いっぱい作戦ですね!」
『可愛らしい名前とは裏腹にやってることは凄くえげつないけれどね…』
「そういう事。このお腹いっぱい作戦は雑魚や怪異を多く倒せるかによってリンボへの嫌がらせレベルが変わってくる。どうか楽園所属の皆様には奮って京の都を頑張って護ってもらいたい。リンボへの痛恨の一撃と、平安の為にもね」
天覧聖杯戦争を取りやめなかったのはこれの為と晴明はほくそ笑む。そもそも帝公認で平安京丸々覆える魔術を活用しないのは愚かに過ぎる。それをすることでリンボを玩び、平安京を護れるのなら即刻中止だなんてとんでもない。用意された土台はとことん使うべきだ。
『…マスターの皆には伝えておいたわ。夜の間、平安京のエネミーを一掃していく作戦で始めるわね』
「よろしくお願いする。…では、その『平安京の守護』を受け持つとっておきの英霊を召喚するとしよう。マシュ殿、用意を」
「はい!」
円卓をサークルに敷き、召喚の準備を行う。そう、彼の存在…下総における将門公と言っても過言ではない存在を招くのだ。
「平安京と言えば外せない、初代征夷大将軍。数多の怪異や天魔の姫、極めつけは大獄丸すらも討ち果たした日の本の大英雄。かの御仁を我々のみが知る切り札として使役しよう」
京の始まりの守護者にして、征夷大将軍である押しも押されぬ大英雄。京の並ぶもの無き繁栄の礎を築いた御仁に、晴明は目を付けたのだ。
「餅は餅屋、特異点修復は楽園、そして守護は征夷大将軍。かの御仁にご助力をお頼みしようではないか」
即ち…征夷大将軍、坂上田村麻呂。天満の姫、鈴鹿御前の夫にして京の始まりとも言える存在。京の全てを護るなら、決して外せぬ大英雄。
「では、始めようじゃないか。君達の戦いの結実が、かの大将軍に届くことを祈って召喚するとしよう」
『し、しかし晴明殿!マスターはどうなさるおつもりか!?』
『リッカ殿はサーヴァントとして頑張っておられるが…』
「なぁに、その為の京の霊脈の制圧だとも。彼のマスターは…この『平安京』そのものだ」
そう告げ、召喚の準備を滞りなく進めていく晴明。その手際の良さと淡々とした試みぶりに、一行は晴明が京に重宝されし理由の一端を垣間見るのであった──。
…しかし、晴明の予想通りの事の運びも、一旦ここまで。
ロマン『召喚、英霊の反応!クラスはセイバー!成功だ!』
晴明「よし…」
『初代征夷大将軍…!どの様な方がいらっしゃるのか!』
オルガマリー(鈴鹿には内緒にすべきなのかしら…)
彼の目論見通りに、召喚は果たされ初代征夷大将軍は姿を現す。
大刀の青年「お?…おー?あぁ、オレ召喚されたのか?マジでか?」
晴明「お初にお目にかかる、偉大なる初代征夷大将軍。こちらは楽園カルデアの一味。そして私は安倍晴明」
青年「おぉ、マジか。オレは坂上田村麻呂。まぁ日本にいるなら名前くらいは知ってんだろ。知ってなきゃヘコむぞマジに」
マシュ「もちろん知っています!初代征夷大将軍…凄い御方だと!」
安倍晴明「此度は我等と共に、京の守護に邁進していただきたく思います。何卒お頼み申し上げる」
田村麻呂「ほー。よし解った!任せたぜ!!」
安倍晴明「有り難く…。…?任せた?」
田村麻呂「やだ!守護とかめんどくせぇ!嫁に裏切られたハートをオレは癒やすに忙しい!じゃ、傷心旅行行ってくるからじゃあな!」
安倍晴明「え。…えぇ…?」
初代征夷大将軍、その天衣無縫ぶりは何人たりとも制御が叶う者でなく。一行は呆然と、京に出かける背中を見送るのみであった──
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