人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
桃子「夜に攻め入るとの事。丑三つ時に最大限の警戒をお願いします」
リッカ「酒呑童子…!金時兄ぃ、大丈夫?」
金時「おうさ。──聞いてみりゃ当然だ。平安時代を代表する鬼といやぁ、奴らしかいねぇ訳だからな」
マシュ「では私は、香子さんの防御に!先輩は元凶を!」
晴明「私の結界をサラリと抜けてくる。つまりヤツのキャスターはやり手の者だ。段蔵ちゃんにお供の諸君、キャスターが出る予測地点を渡すから、順次対応しておくれ」
「『『『承知!』』』」
晴明「ここで決まれば話が早いが…さて、どう出る?」
〜京
茨木「弱い!緩い!脆い!!不甲斐ないぞ京人共!!太刀の百本集めながら、傷の一つもつけれぬ無様さ!哀れよなぁ!!きゃははははは!!」
検非違使「退け!退け!此度の鬼、生半可では──!」
茨木「んん?…たち消えたか?小賢しい。星熊に虎熊、精鋭を持ち出したかいがないではないか」
酒吞「ふふふふ。元気やねぇ。でもな茨木。壊すばかりで喰らわんのはなんでやのん?」
茨木「…ぐっ」
「殺してばかりで喰らわんはあかんよ。これ、意味は解る?」
「む、無論だ。殺したのならば食う。喰らわねば、殺さぬ」
「そう。禁、破りはったら…あかんよ?」
茨木「う、うむ…しかし吾はまだ殺してはおらぬ。先の日に、綱に金時、…すこしは歯応え良いでの輩を見つけたはいいが…」
酒吞「ふふ、そない?なら…楽しみにしとるさかい、気張りや?ねぇ?」
キャスター「…──えぇ。あなたはどうぞ思うままに。その活動を、私は支えます」
茨木「む、──貴様は…」
〜路地裏
田村麻呂「ぐが〜…」
〜
おまえー!!いくら作戦だからって!俺以外に花嫁姿晒すやつがあるかよ!!
だから作戦だって言ってんじゃん!大体アンタが温羅と仲良く飲み比べなんかするからアタシもさー!
うるせーうるせー!!もういい!この裏切りですげぇ傷ついた俺の心は多分癒えねーからなー!!
〜
田村麻呂「鈴鹿…なんでだ…ぐが〜…」
「チッ、朝の昼の矢先に本当に来やがるとはよ!あいも変わらず律儀な事だぜ、クソっ!」
京の都、丑三つ時。寝耳に水の火急の時に平安武者並びにその相棒、リッカとその仲間が中央に馳せ参じる。其処には天を裂き地を砕かんばかりの威容を誇る巨大な鬼と、そこに咲くかの様な麗しき鬼の二匹が在る。その二匹の様相、皮肉ながらもその場の誰もが見知った姿。
「おぉ、見やれ酒吞!検非違使如きを束ねても叶わぬと漸く理解が至り、武者が血相変えて飛んできおったわ!愉快愉快!さぁて八つ裂きに──と、ぬぅ!?貴様金時か!?」
「誰だと思ってんだ馬鹿野郎!卜部のおっさんに碓井の兄ィは湯治中、綱の兄貴は聖杯戦争にご執心!とあれば四天王最後の砦の俺が来るのは道理だろうが!」
「うっふふふふ。どちらこちらも元気やねぇ。最近のあんたはどーにも煮えきらんようで心配してたんやけんど…元気になって良かったわぁ。ねぇ?」
敵意を剥き出しに吠える茨木と対象的に、どこまでも酒吞は余裕を絶やさない。金太郎に桃太郎、並びに忍にリッカが集うこの状況を、余すことなく楽しんでいる様だ。その思考は、人は決して読み取れない。
「そこの橙髪が小僧のサーヴァント、やったっけ?随分と可愛らしい女の子侍らせよって、悪い子やわぁ…頼光も悲しむんとちゃう?金時が女遊びを覚えてしもて」
「遊びで侍らす様な温いタマじゃ断じてねぇ!こっちは俺の半身、相棒!一蓮托生のサーヴァント!生ける我等が源氏の未来、藤丸リッカよ!!」
「よ、よろしくお願いします!!」
鬼のあまりの迫力に、金時の威勢の良さに反射的にリッカ最敬礼。やはり現代とは違い、源氏に生きる者達は覇気、精魂、気迫が違う。いつものような快男児、女傑ムーブは金時に任せきりのリッカである。
「きゃはははは!血迷ったか金時!どの様な豪傑無双を選ぶか見てみれば、その様な細腕に年端も行かぬ女を懐刀に選ぶとは!無様無様!人形遊びも極ま──」
鬼の威勢の良さで煽りし茨木。しかしリッカと何気なく目を合わせた瞬間、鬼よりずり落ちる程の戦慄が走る。
「【───────?】」
「ひぃっ!?」
リッカの視線の奥に、茨木は一瞬見やる。怪異の首の千は挙げし戦慄の棟梁。泣く子も黙る源氏の大将、源頼光の眼力を。
「な、なんなのだ貴様…?その佇まい、その風体もまるで見合わぬというのに!貴様から頼光の威風を感じるぞ!なんなのだ貴様は!?」
「頼光…頼光さんは私の魂の母上だよ、茨木」
「母上、だと!?ならば貴様は頼光の、む、娘ェ!?莫迦な!その様な事が!?」
「ふぅん…へぇ…」
しかし、酒吞は見やる。リッカの深淵に構えるものが何なのか。リッカに力を貸している存在がなんなのか。それを知り、事も愉快げに笑い出す。
「あっははははは!あの女、よっぽどあんたはんに入れ込んだんやねぇ!まさか【もう一人】をあんたはんに仕込んで護らせて、文字の通りに片時離れず!あー、おかしい。いつまでもいつまでも子離れできん親とは思うとったけど、ここまでやとは思わへんわぁ!あぁ、おかしい!」
「あぁ!?何を訳わからん事言ってやがる酒吞!酔ってやがんのか!?」
(リッちゃん、彼女は気づいている様です。リッちゃんの心に宿る母神、丑御前様の存在を)
頷くリッカ。彼女に宿る武勇と雷光の魔力、並びに雷位の中核を担いし存在、それは文字通りの頼光の半身。荒ぶる牛頭天王、更にはインドラの力の化身、丑御前。慧眼により、彼女は見抜いた。頼光、そしてリッカに宿った紛れもない神性、魔性の領分を。
「しゅ、酒吞?何を、何を見たのだ?そして何故だ…吾はあの女をまともに見やれぬ!鬼の吾が、畏れを感じるあの女は一体!?」
「んー。迂闊に手ぇ出さんとき、茨木。あの娘、うちでもやりあったら首が飛ぶかも知れへんし?」
「………なん……だと……?」
「あの娘はサーヴァント。そんで、うちと小僧は天覧武者。なら、戦うのはうちらだけ。なぁ、小僧?茨木はいつもの通り、暴れて、壊せばええんよ。ねぇ?」
天覧武者…即ちマスターの証。それを優美に掲げる酒吞は愉快げに笑う。対する茨木は何故、人の儀式如きに酒吞が選ばれたのかと不服を未だに隠せぬ様子。金時は構え、酒吞を見据える。
「まぁ、予想はしてなかった訳じゃあねぇさ。頼光サンと同じくらいの力を持つ鬼、そんなんだってんならまず間違いなくテメェは挙がる。あぁ、解ってたってもんよ」
「期待に応えられたみたいで嬉しいわぁ。ふふ、そんならどない?この首、本気で奪いに来てくれはるん?ええよええよ、来ぃや小僧。小僧との本気なんて、子供の頃に以来やねぇ!」
「馬鹿野郎、必要なのはテメェの証とサーヴァントよ!テメェの呼び出した術者をブッ飛ばして締め上げて、そんで天覧聖杯戦争を畳んで終いにする!ソイツが俺らの戦う理由に他ならねぇ!」
「あら残念。本気で殺りに来てくれんの?いけずな坊主…昔はあんな、精も根も尽き果てるまで殺し合って、そんで折り重なって空を見上げて…」
「いつの話だ!そんな事欠片も覚えちゃいねぇ!!酔ってんなら、いつかみてぇにぶん殴って覚ましてやらァ!」
「そうそう、それぞれ!良かったわぁ、すっかりいつもの小僧やねぇ!うっふふふふ!」
(リッちゃん。何故に金ちゃんと酒吞殿は痴話喧嘩を?)
(ブフォッ…!や、やっぱりそう見える?)
そう、リッカにはそれが殺意と敵意と憎しみのやり取りには見えなかった。気心知れた幼馴染みの様で、確かな絆を其処に感じる。彼女と金時には、確かに繋がる想いがあるのだ。
〜
あの小僧が小さい頃は、何も考えないで暴れる熊みたいな真っ直ぐな小僧やったんやけんど。大人になった小僧は小難しく事考えるようになってもうて。まぁ、それも可愛かったわぁ…うふふっ
〜
(幼馴染み、ってことだもんね。そりゃあ…割り切れないか)
金時の荒ぶる部分に寄り添った存在、それが酒吞。ならばこそ、立場や敵味方では引き裂けない絆が介在するのも無理はなく。その想いは捨てざること叶わずとリッカは理解する──が。
「ええい酒吞!ヤツはいまや人間守護する源氏の武者!酒吞が気安く会話をしてやるにはあまりに釣り合わぬ奴原なのだぞ!冥土の土産はそのくらいで良かろう!」
その関係を良く、思わしく受け取らぬものが進展を促す。自らを置いてけぼりにする頭領に不満を現す茨木に──。
「うっ──!?」
【──不愉快です。我が息子に気安く話しかけるその軽薄さ、私の知らぬ息子の刻を自慢気に話すその口。何もかもが不愉快です。虫の分際で、我が子の周りを親しげに飛び回る…えぇ、えぇ、実に、目障り】
(お母さん…!?)
【リッカ?我が娘、私だけの愛娘。さぁ参りましょう。あの羽虫を討ち滅ぼすのです。我が息子は私の息子。【私の知らない息子の顔】などあってはならない。あれは不要なのです。我が家族には不要なもの。共に誅伐を果たしましょう。さぁ、勇ましく刀を手に取って──】
瞬間、迸るように雷を放ち始める童子切安綱。それはまるで、戦場にありながら会話に興じる息子を諌める激憤にも似て。
「おのれやる気か!!良かろう、貴様がサーヴァントと言うなら、素っ首大江山に晒してくれる!!行くぞ星熊ァ!!」
「くっ──金時、桃子!やるよ!どの道京に、あんな大きな鬼を野放しにはできない!」
「承知。さぁ金ちゃん、しゃんとなさい。我等は今、戦場にて向かい合っているのです」
「お、おう!すまねぇ!という訳だ、ここで終わりにしてやらァ!」
「うっふふふ!出来るとえぇなぁ!」
京を護るため、天覧武者同士の戦いが幕を開ける──!
──しかし、悪辣なる酒吞の策。それは真正面からの突破に終止せず。
?「我がマスターの意に従い…ホムンクルス、並びに生体鬼種開放」
京の各地に、鬼とホムンクルスが放たれる。戦闘力は高くなくとも、撹乱には最適な数だ。
「混乱に乗じ、かのサーヴァントを討ち果たす。…恐ろしい御方だ。我がマスター」
その作戦を、術者たる何者かが果さんとしたとき───
「…!魔力反応、これは、蒸気…!?」
〜
バベッジ『蒸気圧、上昇。このまま撹乱を行う。離れるな、カオルコ』
香子「どうかお願いします、おじさま。少しでも皆様の助けになれば…」
〜
「チャールズ・バベッジ…!藤原香子を天覧武者とするサーヴァントですか…!」
よもや、同盟。そう思案したキャスターに…
?「あのー、すんません。酔っ払って寝てたら偉いことになってますが」
「!」
田村麻呂「好酔い止めか吐き気止め…持ってたりしません?」
酒吞童子のキャスターは、野良の征夷大将軍と予期せぬ邂逅を果たす──。