人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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キャスター「…この反応…」

(僅かながら、サーヴァント。この者もまた、坂田金時の手の者──)

田村麻呂「畜生、俺が独り酒とはよぅ…鈴鹿の酌してくれた酒はあんなにもうめぇのに…あー、くそ、寂しいなあ畜生…」

(前後不覚の今、無力化する好機。この装い、紛れもない京の関係者)

ホムンクルス「「「「「」」」」」

キャスター「…申し訳ありませんが、ここで倒させていただきます。お覚悟を」

田村麻呂「へー、誰が誰を倒すって…いてて…」

ホムンクルス「「「「────!!」」」」



段蔵「やはり香子殿にバベッジ殿でありましたか。援護感謝でございます」

マシュ「蒸気で目くらまし!そしてホムンクルスを牽制!完璧ですね!」

ロマン『ホムンクルス、そしてこの魔術の腕前。多分敵のキャスターはパ──』

バベッジ『…!報告。敵のホムンクルス、消失』

マシュ「!?消失!?」

晴明『急にどうし…、…─あぁ、もしかして…』




田村麻呂「んだよコラァ!酔い止めくれって言っただけでなんで殺しにくんだよコラァ!!」

ホムンクルスの死体の山『『『『『『』』』』』』

「チキショウ…京の温度差はひでぇもんだぜ。鈴鹿の温もりが恋しいなぁチキショウ…しゃーねぇ。散歩してまた寝るか…」

〜カルデア

鈴鹿「あの馬鹿ーー!!何やっとるか征夷大将軍ーー!!」

温羅「あー…田村麻呂殿だよな、そりゃあ来るよなぁ…」

オルガマリー「多分、仲間にできるのはあなたたちだけだから…回収してもらえるかしら…」



金時「こんな夜更けにわざわざ来るとはな!何を企んでやがる!」

酒吞「ふふっ、ええやないの。ただやりたいようにやるだけ。理屈や理由は後からで。それが一番やで?」

リッカ「…酒吞…金時兄ィ…」

茨木「なにを惚けているッ!!」

リッカ「!集中しなきゃ…!」


鬼を殺さず鬼退治の巻

【…。ひとまずあの金色の虫を潰す前に、京を騒がす大ぶりの虫を潰すことにしましょう。リッカ、桃子さんと上手く足並みを合わせるのですよ?】

 

いつもと異なり、リッカに語りかけ力を貸す丑御前。彼女としては即座に茨木も酒吞も自ら叩き潰す選択を取りたいところであり、実際それを行えば事は瞬時に片が付きはするのだが。ただ単純に、【子の活躍の場を奪う】のは忍びないと判断したが故の自制が働いたのだ。リッカは静かに頷き、桃子に合図を送る。大柄な鬼、約三体。

 

「茨木に酒吞はまだどう転ぶか解らない、とりあえず京から退いてもらおう!桃子、あの大きい鬼を排除お願い!」

 

酒吞は金時にかかりきり、茨木は鬼達を指揮している。ならば今宵もまた戯れの過程なのだろう。なら、遊びは早急に玩具を破壊するに限る。丑御前もその為の猶予をくれたと確信し、リッカは自身の従者…日本一の鬼退治者に指示を送る。

 

「了解しました。お供は三匹、あちらも大きい鬼が三匹。数も合っていますので手早く済ませてみせましょう」

 

「ほざいたな!異郷の術者共ォ!!」

 

しかし、それらの意識を全く介さぬ茨木が猛然と飛び掛かり、ぶつかり合う。リッカを掠め、突撃せしは桃子、彼女に矢の如く。腰に差していた脇差し一本にて彼女は受け止める。

 

「そして思い出したぞ!吾を侮辱してくれた女武者!そういえば汝らとは京の外れで見えていたわ!よくも大江の茨木童子を敵ではないと!侮ってくれたなぁ!」

「…?事実では?」

 

桃子としては、茨木も酒吞も、リッカと仲良しな鬼であり温羅の盟友だ。それは何処に行っても、決してかわりはしないと考えている。故にこの特異点でも、彼女らの力は必要になると考えての言葉であり、それは今尚変わらない。

 

「ッ、貴様ァアアア!!」

 

しかし、茨木としては鬼の面目を丸つぶれにする態度に等しい。片腕を奪われ、渾身の突撃を脇差し一つでいなされ、汗の一つも流さぬその余裕は彼女から冷静さを奪うに十分であった。不思議そうに首を傾げる桃子に、血涙を流さんばかりに猛る茨木。

 

『なりませぬ主!何故そう最低限の言葉で相手を激する事が出来るのか!』

『GI的に考え、我等が主は一言が尖すぎる』

『ダメよ桃子!倒しちゃダメだからね!あぁもうリッカちゃん、私達で鬼を退治しましょう!桃子なら足止めを完璧にしてくれるわ!』

 

【【【ォオォオォオォオォオ!!!!】】】

 

お供の声と同時に、指示を失った鬼達が猛り出す。このままでは即座に無差別な破壊活動に移るだろう。頭領である茨木が冷静さを失っている今が絶好の機会、キャスターも見えない今遊びを仕舞にさせるチャンス!

 

【〜。桃子に迷惑をかけるとは救いようのない虫ぶり。仕方ありません…お供の力を借りて、即座に事を成すのですよ?リッカ】

(はい!お母さん!)

 

丑御前の言葉に頷き、三匹のお供と頷き合う。まずアンクがリッカの背後に浮かび上がり、全身を神獣から武装生物モードへと進化させる。

 

『援護射撃するわ!リッカちゃん、思いっきり撃っちゃって!』

「解った!」

 

頷き、月女神の弓矢、星を穿つ黄金を構える。前に構えた瞬間、真月の如き円形が弓矢の形となり、光の弦と矢が即座に装填される。

 

『せー、の!一斉射!!』

「ツクヨミ、アルテミス!行くよ!!」

 

アンクの面を制圧する一斉射撃に、丑三つ時の月夜に放たれる光の束の光線の束。鈍重なる鬼を纏めて貫き消し去る光学の弓矢が、鬼の一匹を完膚なきまでに貫いて見せる。

 

【ゴ、ォ…】

【ガアァァアァ!!】

 

『敵方、猛然と突進。頑強なる様子、受け止めねばならぬ。アンク、此処は代わろう』

 

残る二匹、大柄の鬼の一匹が猛然と突進してくる様子を見やり、猿の化身、フワイサムがリッカと共に立つ。

 

『GI的理論的に考え、リッカ殿の攻撃に合わせて拳を放つ。さすればその最速の一撃は一直線の軌道を描き敵を穿つだろう。そう、槍の如く』

 

その理論展開と同時に、フワイサムの巨大なアームユニットが現れ、鬼の突撃を真正面から受け止める。それは鬼の強靭な突進を受け止める、猿の剛腕。霊長最強の腕力を再現した剛力そのものだ。

 

 

「なるほど!ビッキーの繋ぐこの手が槍の理論!」

『然り。ならばリッカ殿にも十分可能な筈。さぁ真っ直ぐ最適解に拳を振るう時!いざ!』

 

その言葉に頷き、猛然と拳を振るうリッカ。それに連動し、フワイサムのアームユニットも大きく引き絞られ、そして態勢を整える。そう──

 

「───おらァァァっ!!!」

【!!!!!】

 

ゴリラのアームハンマーが如く。渾身の力で殴られ叩き伏せられ巨漢の鬼は哀れ、大地にめり込み倒れ伏す。鬼を退治するために鋳造されし三匹のお供。その力を引き出せしマスターあればその力はまさに無双。地響きを起こす程の衝撃を最後に、動きを止める鬼の一匹。

 

【グオォ、グァアァアァア!!】

 

瞬間、最後に残った鬼が暴れ出す。劣勢を悟ったか、それとも自棄を起こしたか、大跳躍にて京の民家を踏み潰さん勢いの高さにまで翔び立つ。

 

「あんな大柄で、街中に着地されたら…!」

『心配御無用!リッカ殿の雷位、そしてこのイヌヌワンの特性加速を合わせれば、月夜をバックにスライスなど容易き所業!』

 

言葉と同時にイヌヌワンが弾け飛び、リッカの身体の各所にブースターユニットとして取り付けられる。人間一人を自在に宙に舞わせる、超加速ユニットとしてリッカに侍る。

 

「桃子が温羅ネキに蹴りをかましたときの…!私にも出来るんだね!」

『本来ならばマスターであるリッカ殿が最前線で暴れるのが異端なれど、今はリッカ殿はサーヴァントの扱い!すなわち、そう!何もおかしくないのです!さぁいざ!飛翔しあの鬼を退治しましょう!』

【ありがとうございます、犬飼殿。実に忠実な、我等が家庭の番犬にてございますね?】

『お褒めに預かり!え!?今の誰!?』

 

そんなやり取りを交わしながら、超加速ユニットに点火するリッカ。魔力の高まりが頂点に達し、上空までの距離を一気に駆け抜ける程の機動力を確保する。

 

「逃さない──!桃子に変わって!鬼退治仕る!!」

 

龍哮…は空気を読んでスヤスヤタイムな為、手に握りしは平安の護り刀、童子切安綱。空中に一筋の軌跡を描き、繰り出す無数の一閃こそは棟梁の一撃。

 

「龍哮一閃!雲耀神雷───!!!!」

 

雷位を一瞬だけ開放し、ブースト乱射と合わせ一閃を無際限に繰り出し空中を駆け巡り、駆け回るリッカ。目にも留まらぬ、目にも映らぬ軌跡を経て、やがて地上に雄々しく二本の脚にてリッカが降り立つ。

 

「────誅伐、完了!」

 

そのまま厳かな所作にて刃を払い、静かに鞘に護り刀を収める。同時に爆発四散し、消え去る鬼の手下達。

 

【えぇ、素晴らしい武芸の冴え。母として鼻が高いです。それでこそ我が愛娘たち。それでこそ、我が娘のお供達】

(桃子も家族、娘扱いなんだ!良かった!)

 

『丑御前様でしたか…。びっくりしたぁ。いえいえ、犬の復権はまだまだこれから。後3年か4年後にはお供犬としてモンスターハンターに犬が実装される予感がするでしょう!』

 

【うふふっ。さぁそれではリッカ、露払いも終わりました。桃子と共にあの金色の虫を狩り、そして貧相な虫も下して終わりに致しましょう──】

 

リッカに比類なき武芸を託し、力を貸す丑御前。娘の活躍に大満足しながら、その余韻のままに狙いを鬼の首魁二匹へと定める。

 

「うっ、く…!」

 

『リッカ殿!腕に震えが!』

 

(母さんが二人を狩ろうとしてる!金時兄ィ、酒吞!はやく〜!)

 

童子切安綱に手を添えるよう動かす母の催促を感じながら、リッカは祈る。丑御前が刃を抜いてしまっては、母に抗える自信はない。祈る様にリッカが見やったその時──。

 

「なっ──星熊!虎熊!?お、おのれぇ!!」

 

空気の読める、茨木が動く。リッカは内心、ガッツポーズを取るのであった──。

 




酒吞「あらま。茨木と鬼達、やられてもうたん?びっくりやわぁ。強いんやね、小僧のサーヴァント」

金時「おぉ!?マジかよ!?ヘヘッ、流石だな!リッカに桃子!どうだ!これ以上やるってのかよ!」

酒吞「ん〜…どないしよ…ん?」

金時「あ…!?」

「…うん、うん?酔っぱらいに?なんやのそれ。撤退?へぇ…そない?ふぅーん…?」

(なんだ、何の話を…うおっ!?)

酒吞「残念やけど、今宵はこれでしまいみたい。うちのキャスターはんが、酔っぱらいに絡まれてえらいこっちゃ~って連絡入れてきよったわぁ」

金時「あぁ!?なんだそりゃ!?」

茨木「えぇい、忌々しい…!!酒吞、すまぬ!ぬかった…!星熊達をやられた…!!」

酒吞「うん、そやねぇ。小僧も元気になった事やし、旗色も悪いし…ここは退こか?」

リッカ「…酒吞に、茨木…」

酒吞「こんばんは、小僧のサーヴァント。愛らしい顔してごっついんやねぇ。そっちの陣羽織も、麗しゅう」

桃子「あ、はい。こんばんは」

茨木「ま、まだだ!まだ我等は負けておらぬ!酒吞と吾が力を合わせれば逆転など──、ッ!?」

金時「あ…?」

酒吞「あら。…ほんに、間の悪い…」

瞬間、血相を変えて茨木が酒吞を抱え逃げ果せる。その大跳躍はスキルとして昇華されるほどのもの。それにキャスターの術も加わり、まさに神業であった。

リッカ「退いた?なんで…」

──瞬間、後ろから声が響く。

?「金時。並びにそのサーヴァント。よく頑張りました。棟梁として、嬉しく思います」

金時「───!?」

弾かれたように振り返る金時。察したように引っ込む丑御前。其処には──

幼女「こんばんは。お昼ぶりかしら?」

桃子「おや、先の幼女さん」

頼光「私がかけつける頃には終わらせる手際の良さ、流石ですね。そして…はじめまして。源氏が棟梁、源頼光と申します──」

リッカ達の前に姿を現せしは、京を守護する源氏の棟梁──そして、リッカの母の生前の姿──

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