(京の行末はどうなる事か。…そして、君はどうなる事やら。…信用はしていないが、信頼はしている)
「君なら、精々上手くやり下手を打つだろう。──なぁ、道満。…さて、と。最後の細工を始めるか」
内裏にて──
「フム──」
源氏総意、天覧聖杯戦争に大悪の疑いあり。我等、まやかしの奇跡に頼らず平安を守護せん。その報告を聞き、口元を不敵に吊り上げしは左大臣、藤原道長。尊き京を見る望月の男、事実をただ受け止める。
「では、かの未来の棟梁とそのマスター、怪童丸めが私の無理難題を成し遂げたと言うこと。ふはは、実に愉快愉快!天覧聖杯戦争の儀に邪魔は入ったが、何──」
そう、これはこれで愉快な事だ。かの四天王が一人、足柄山の坂田金時が京の為にここまで働いてみせる。そしてそれに最早、未来への憂いを道長は懐いてはいない。
「源氏の世、そして京の未来は遥かへと繋がってみせる事をあやつらは示した。未来の棟梁、頼光が生き写しのあの娘…我等にもたらした吉報の意、理解してはおるまいよ」
京の千年の繁栄。そして平穏。それらを立証、証明するものこそがあの術者。晴明が太鼓判を押す、童子切安綱を佩くあの娘。自身らの願いと歴史は確かに未来に繋がっている。ならばこそ、胡乱な儀式が成ろうと成るまいとどちらでも最早構わぬのだ。歴史は、連なると示されたのだから。
「ならばこそ、我等の振る舞いの正しさを律するために時を使わねばな。行方知れずの晴明が戻り次第、検討を始めよう」
ならばこそ、この儀式はもうどうでもいい。正しき歴史の認可、未来への立証。それらは果たされたのだから。拘る必要は最早無いのだ。
「聞いていたな、道満」
「……………」
沈黙を保つ道満。道長は告げる。
「いずれ遣いは来ようが、天覧聖杯戦争の儀は止めだ。直ぐに手配せよ。急げ」
「……………」
沈黙を保つ道満。───その顔には、笑み。
「…道満」
「…ンン。ン、ンンン…ンンンンンンふふふははははははははははははは!ははははははははははははははははははははははははははァ!!」
沈黙を破る道満。その顔には、狂気の笑み。道長は訝しむ。
「何を嗤うか、道満」
「ははははははははははははは!口惜しきかな!口惜しきかな!!後一歩、後払い一歩のところで源氏、はたまた肉親の殺し合いとなったものを!おのれ楽園!おのれ、おのれ藤丸龍華!まぁそうでしょうそうでしょう。彼女の縁、取り巻く想いはこれ程に強い!」
「──貴様。道満ではないな。ならば、リンボ何某とやら、大凶族なる者か。やはり…」
道満の乱心の目を見抜く。いや、道満に非ず。そして、金時に未来の棟梁が娘は真実を口にしていた──自身の後手を、静かに悔やむ道長。
「然り!!いやはやこの時代に正しく生くる哀れなる陰陽師!既に狂い果て!我等は合一しまして候!」
「痴れ者め。──誰ぞある!誰ぞある!」
速やかに道長は声をかける。即座に現れしは、内裏に構えし舎人の精鋭たち。
「左大臣!如何された!」
「謀反である。道満法師…いや。キャスターにしてアルターエゴとやらのリンボ!宮中に潜んでおったわ!…らしくもなき手落ちよ、道満めが」
そして、リンボを取り囲む精鋭の陰陽師たち。それらは、陰陽寮最高の陰陽師精鋭十余名。これあるを予期した左大臣の命により、法師を呪殺せんが為に十全の支度を調えていたのだ。
「アルターエゴ・リンボ御覚悟!アルターエゴ・リンボ御覚悟!」
「ほう?成程。流石は左大臣殿。もしもに備えておられたか」
そして縛られし、晴明より伝授された五芒星。それらは瞬く間に、リンボを縛る。呪殺は──
「ンンンンンン──無為!無謀!無駄!無様ァ!!」
──成らず。リンボの腕の一振りにて、陰陽師達の術は破棄される。そして──
【六根清浄悪行罰示。──急々如律令!!】
瞬間。呪詛にて。陰陽師達は頭を破裂し死に至る。ただの一言。道満が手腕、神域の天才以外に対処できる域にあらず。即座に呪殺果たしてみせる。やんごとなき内裏、凄惨なる死臭に満ち溢れ血煙が立ち込める。
「…よもやこの現世に、左大臣を謀る者があるとは。フフ、抜かったわ。数多の呪詛と怨霊を相手取るこの道長を、かように手酷く出し抜くとは」
「フフフ、ンンン。道満法師の行末実にあっけなく。ただの一言、晴明には一度も勝てぬぞと呟きますれば哀れ崩れ果て、このように拙僧と合一致しました。──即ち!この道満、道満にて道満に非ず!!」
そして、道満…いやアルターエゴ・リンボは真の姿を顕す。現世の全てを嘲笑い、そして弄び、絆と愛を踏み躙る真生の外道。
【──我こそは。英霊剣豪の仕掛けを発案せしキャスター・リンボ】
無数の目。朝廷に破棄されたもの、迫害されたもの。まつろわぬ者、安寧に牙を剥く者ら。
【我こそは。妖術師が垣間見たいずれ降臨されたる【異星の神】を待ち侘びしアルターエゴ・リンボ】
無数の邪神、無数の悪鬼、無数の魍魎、無数の呪詛、無数の餓鬼、無数の天狗、無数のまつろわぬ者達。その中心に在りし、大陰陽師の装いせし、嘲笑う者。
【我こそは。天覧聖杯戦争第七にして最大最強のキャスター。──そして。我こそは地獄界曼荼羅を成さんとし、この安寧の世を転覆せしめんが為の八神将が一柱】
そして──日本に仇なす。無念抱えし者らを統べし者の名として。
【黄幡神。芦屋道満である。ンン、ンンンンンン。ンンンンンンふふふふはははははは!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!】
嘲笑うリンボ。その嗤いは告げる。平穏の終わり。安寧の絶命。万雷の喝采の中、消え果てる平安の未来を。
【というわけで。喜びください皆々様。天覧聖杯戦争はこれにて仕舞い。我が持ちたる聖杯に納めし魂、なんと二騎。いけませんいけません。コレでは、いけませんね!】
「…」
【コレでは、我が悲願大願は成就されませぬ。皆様の活躍たるや見事なるもの。至る前に落とす。それをしなくては一つの魂すらなき有り様。左大臣殿。左大臣藤原道長殿。どうかそこにて、間近にご笑覧を。黄幡神芦屋道満が成し遂げます空前絶後の大偉業!そう!!【地獄界曼荼羅の成就】を!!ンンン、ンンンンンンハハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!】
全ての準備が整い、嗤うリンボ。その時──
──空が、変わる。赤い月。死の赤月。呪の月。夜空の色は、鮮血の赤。
そして──月より溢れ出す、天より漏れ来る翼生やせし外道の法師達。翼を有し悟りを邪魔する、第六天の住人。名を天狗。
そして──海より来たる、まつろわぬものら。不要とされ、迫害され、破棄された者達。
そして──世界を引き裂き。平安京朱雀門に、空想の根が落ちる。あり得ざる歴史を、永続させる為の大樹。赤い月の下にて嗤うその名、空想樹。かつて下総に現れし穢土城を呪詛にて邪悪に昇華させしリンボが手製の空想樹。
【ンンンハハハハハハ。はははははははははははははははははははははァ!!】
名を───地獄界曼荼羅。世界に現れし、この世ならざる邪悪と呪詛の結晶体の顕現である──
【我、日本国の大魔縁となり皇を取って民を皇と成さん】
【草も木も 我が空想の礎なれば いずくか皇の 棲なるべし】
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