人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エピローグになります!ゆるくお楽しみください!




・・・しかし、今まで執筆してきて一番需要に疑問を持った話です

不愉快でしたら、読み飛ばして構いません。イアソン好きなんて言う変人だけおよみくだ

やっぱりよろしくお願いいたします!


エピローグ・1 アルゴノーツ

「私の勝ちよ、白い私」

 

 

 

魔術の応酬にて蹂躙し尽くしたメディアが宣告を下す

 

 

 

「はい、どうやら私の敗けのようですね」

 

 

霊核を砕かれ、消滅が始まる白いメディア

 

 

 

「流石は成長した私。魔術では敵いませんでした」

 

「当たり前よ。酸いも甘いも噛み分けた熟練の技、夢ばかり見ていた頃と同じ筈がないのだから」

 

 

「ふふっ――貴女は、私は。本当に健気ですね」

 

 

「・・・なんですって?」

 

 

「裏切られても、罵られても。魔女と言われても、貴女は結局誰かに尽くす。見返りを求めず一心に」

 

 

「・・・」

 

「今回の戦いも、私を倒すには過ぎた魔術を沢山使いましたね。それは何故ですか?」

 

「――貴女の存在が癪に触っただけよ」

 

 

「うふふ、私には解ります。――そこにいる、お弟子さまの為でしょう?」

 

『――私・・・の?』

 

 

――メディアは彼女を下す際、あらゆる魔術を行使した

 

五大元素の魔術、罠の魔術、幻惑の魔術。余りに多彩な神代の魔術を行使した。

 

 

それは、白き王女を倒すには、傍目には過剰と言えるもので・・・

 

 

「弟子にいいところを見せようと張り切ってしまったのです。うふふ、余程嬉しかったのでしょうね。自分を師匠と慕う方を得られたのが、かつての過去を――」

 

最後まで言わせることなく、ナイフで王女を突き刺す

 

 

「敗者が喋りすぎではなくて?立場に相応しく、無様に遁走なさい」

 

 

「――本当に、素直じゃない人」

 

 

消滅が、早まる

 

 

「――ごめんなさい、イアソン様。あの王に選ばれてしまった貴方を護りたかったけれど、私にはその力がなかった。だからせめて――最後の最期まで、よい夢が見られたら良かったのだけれど」

 

「夢はいつか必ず醒めるものよ。華やかな栄光も、頬を緩める幸せも、いつか必ず終わりが来る。――貴女が真に彼を想うなら、取るべき行動は『立ち向かう』事だった」

 

 

ちらり、と。ウィンドウのオルガマリーを見る

 

 

「――時代の最先端に生きるものに、助言をしたりしながらね」

 

 

微笑むメディア。顔を赤くしながらうつむくオルガマリー

 

 

「――ふふっ。どうかそのまま、星のように進んでください」

 

 

『星のように・・・?』 

 

 

「はい。貴女がたが挑む相手は、魔術師ではけして勝てない。――私も、魔術師として完全に負けたのですから」

 

 

『――、――うそ・・・!』

 

 

愕然とするオルガマリー

 

 

師匠が、メディアが、魔術の分野で完敗を認めた・・・?

 

「誰なの、黒幕は。答えなさい」

 

「その自由は剥奪されています。――私に遺せるのは助言だけ」

 

 

王女は告げる。絶望を打ち破るその指針を

 

 

「星を集めなさい。空に輝き、荒波にも、絶望にも、人の獣性にも負けない、輝く数多の星を――」

 

 

信託を告げ、王女メディアは退出する

 

 

「――全く、場を乱すだけ乱していくのだから。これだから、これだから白歴史は・・・」

 

 

『・・・』

 

「・・・大丈夫?マリー」

 

『師匠こそ』

 

 

「私は平気よ。慣れてるもの。罵倒、罵詈雑言どんとこいよ。魔女には付き物でしょ?」

 

『――・・・っ』

 

「やだ、もう。何故泣くのよ。綺麗なお顔が台無しよ?あぁっ、ハンカチハンカチ・・・、ああ、 私レイシフトしていたわね・・・」

 

 

『・・・貴女が』

 

「え?」

 

『貴女が、泣かないからです。大切な師匠の為に涙を流すのは・・・いけないことですか・・・?』

 

 

――メディアが、フードを取る。

 

「――私もまだまだね。大事な一番弟子を哀しませるなんて」

 

そして、歩き出す

 

「少し雑事を終わらせたら、そっちに戻るわ。・・・今日は一緒のベッドで眠りましょう?」

『・・・はい、師匠』

 

「うふふっ。カルデアに召喚されてよかったわ、私」

 

 

笑いながら、メディアがふわりと浮かび上がった

 

 

 

 

 

 

 

「――終わったか、メディア」

 

 

朽ち果てたアルゴー号、甲板にて、ヘラクレスと瀕死のイアソンが待っていた

 

 

「えぇ。・・・マスターたちは?」

 

「先に行ってくれたよ。水入らずで話してね、と」

 

 

「・・・そう」

 

「――めでぃあ」

 

「貴方もしぶといわね、イアソン。そのまま死んでしまえば楽だったでしょうに」

 

 

「・・・なおしてくれ」

 

か細く、懇願するかのように

 

 

「なおしてくれ、ぼくのめでぃあ・・・いたいんだ、いたいんだ、いたいんだよぅ・・・!」

 

 

小さな子供のように・・・彼はメディアに救いを求める

 

 

「・・・・・・」

 

スッ、とナイフを取りだし、イアソンに近付くメディア

 

『師匠!それはっ』

 

「大丈夫だ、所長殿」

 

 

 

「――――・・・」

 

佇み、見下ろす

 

 

「――イアソン」

 

「この」

 

 

「?」

 

「この、のろま・・・はやくなおせと、いって・・・」

 

 

「――ふんっ!!」

 

ナイフを『投げ捨て』、孔の空いた腹に両手を叩き付ける

 

 

「ぎゃぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!」

 

「黙りなさい!治癒するんだから!」

 

 

「加減しろ痛くするな優しくやれこのサイコ魔女め――――!!!」

 

「ヘラクレス!口を塞いで手を握りなさい!」

 

 

「大丈夫、大丈夫だ・・・身体の痛みは数倍になる」

 

「ん――――!!!!!」

 

「さんざん迷惑をかけたのだから地獄の責め苦くらい我慢なさい!!それ・・・っ!」

 

「ん――――!!!!」

 

 

「大丈夫、大丈夫だイアソン!」

 

ぐしゃり、と握った手が潰される

 

 

「んんぅ――――――――!!!!」

 

 

「やっべ。握りすぎた」

 

「左手を握りなさい」

 

「そうだな。傷は深いぞ、ガッカリしろ」

 

「んぅ――――――――!!!」

 

 

 

~そんなこんなで

 

 

 

「死ぬかと思った・・・」

 

 

イアソンがなんとか形と外傷を整え、喋れるようになる

 

「というか死んでいるわ。崩れてく器の外観を整えただけ、貴方が消滅するのは確定よ」

 

 

「・・・そうか。夢はまた、夢のままで終わったか」

 

 

呟く声に、負の感情は見られない

 

 

「憑き物が落ちたな、イアソン」

 

 

「彼処までぶちまけたなら誰でもスッキリする。――思えば生前、こんな愚痴を洩らす暇も無かったしな」

 

ごろんと転がり、空を仰ぐ

 

 

「まぁいいさ。栄光に浸り、夢見ながら消え去るのは慣れている。俺も、まぁ。帰路に嵐に逢って死んだとでも考えるさ」

 

「嵐か、言い得て妙だ。――今のギルガメッシュは正に、理不尽や宿命を蹴散らす嵐そのもの。オレも戦うのは絶対に御免だ」

 

「弱気だなヘラクレス。それでもオレの友か。――全く、ムカつくにも程がある」

 

 

「・・・」

 

「まさか、俺が呼んでも見れなかったお前に、こうして立ちはだかられて、改めて痛感するとはな。――やっぱり」

 

 

イアソンが、初めて

 

 

「――お前は最高だよ、親友(ヘラクレス)

 

輝くような、無邪気な笑顔を見せた

 

 

「――全く」

 

 

・・・そうだ、そうなのだ

 

 

裏切られても、見捨てられても

 

 

 

事の発端から騙されていたとしても

 

 

私は彼に焦がれていた。弱くても無邪気で、どうしようもなく誰かを惹き付ける。彼にまた、私も惹き付けられていた

 

 

それがメディアの始まりだ

 

それが王女の第一歩だ

 

 

それが――私の、初恋なのだ

 

 

 

 

 

「だが、私は諦めないぞ!たとえ何度這いつくばろうと下敷きになろうと、私は絶対に諦めない!必ず、皆が幸せで満ち足りた国を作ってみせる!」

 

 

「――そうか」

 

 

「そういえば思い出したぞヘラクレス!お前私に二度めのチャンスが無いといったな!英雄は願いを叶えてはいけないと!」

 

 

「――あぁ」

 

「馬鹿かお前は!馬鹿だお前は!願いはな、叶えるものじゃない!」

 

ドン、とヘラクレスの胸を叩く

 

「願いは『追い求める』ものだろうが!叶うか叶わないかなんて後でいいんだよ!後先考えた賢しい男が、英雄になんぞなれるか!」

 

「――そうか。あぁ、そうだな。決められた叶う願いなぞ、神々の悪戯とお節介に過ぎない・・・か」

 

 

「だから私はやるぞ!アルゴノーツを組み上げ、俺の国を作り上げる!――だから」

 

 

「・・・?」

 

 

「――だから、その冒険の寄り道ついでに。・・・世界くらいなら、救ってやっても、いい」

 

「――大言を吐いたな、イアソン」

 

 

「バッカじゃないの?」

 

 

「黙れメディア!これだから女はつまらないんだ!精々劣化する見た目を下らん虚飾で着飾るしか能のないぎゃあぁあぁあぁあぁごめんなさいごめんなさい!!!」

 

「やっぱり殺しておくべきかしら」

 

 

「死ぬって言ってるだろ!!・・・――だから、ヘラクレス」

 

「うむ」

 

「今度は必ず、その姿で来い。犬畜生になった無様なお前なんぞ、もう願い下げだ。ついでに世界を救うんだ。俺とお前がいなきゃ嘘だろう?」

 

 

「――勿論だとも。幾度時を越えようと、俺の在り方は変わらない」

 

イアソンの肩を叩く

 

 

「オレはヘラクレス。如何なる時も――お前という『未来の王』を守護する――大英雄だ」

 

 

「――あぁ、そうだとも。そうでなくてはな」

 

 

消滅の、刻が来る

 

 

「そのついでのついでだ。お前を使役するカルデアのマスターとやらに、帆の使い方を教えてやるのも悪くはないか」

 

 

「是非やってやれ。ソレに関しては、私はお前に敵わないからな」

 

「当たり前だ。アルゴノーツ船長ナメんな。・・・行くのか、メディア」

 

 

フードを被り、浮かぶメディア

 

 

「えぇ。死に際も看取ったし、用はないわ。生前のように、下敷きになって死になさい」

 

 

「そうか、では一つだけ」

 

「?」

 

――こほんと咳払いして

 

 

 

「――その歳で少女趣味とか恥ずかしくないのか。現実を見ろ」

 

 

「マキア!!ヘカティックグライアー!!!!」

 

 

「助けろヘラクレスぅ!!!」

 

 

 

「あー助けたいのだがなー今のマスターお前じゃないしなー残念だなー」

 

「ヘラクレス――――!!!舌の根も乾かぬ内に誓いを破るのか――!!!」

 

 

「灰すら残さない!!あんたなんか、あんたなんか死んじゃえばいいのよ――――!!!!」

 

 

『あ、あはははははは・・・』

 

 

――在りし日の思い出のように

 

 

 

ギリシャの仲間たちは、ささやかな平穏を噛み締めていった

 

 




「師匠・・・」

『会話記録』


「・・・」

『秘匿・シークレットレベル・A+』


『記録完了』


「――ごめんなさい、師匠。弟子の悪戯を、お許しくださいね・・・――ふふっ」

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