鬼、怨霊、悪霊、怪魔。それらを知る者であり、あらゆる怪魔から逃げることをしなかった者達であった。
しかし、その者らが空想樹を一目見て──
我を失った。子を見捨て親が我先と逃げ、子が泣き親が呆然とする。親を失い、子が惑う。
【────!!!】
天狗達が、鬼たちが。海より来る者達が京に迫る。無常にも戦えぬ民を狙い澄まし、命を魂をすすらんとして──
田村麻呂「征夷大将軍スラァアァアァアッシュ!!!」
──紅き刃が、空を叩き割った。紅き刃が、海を叩き割いた。
京の空に浮かべし怪魔。地上にて蔓延りし怪魔。海にて上がる怪魔。ただの一閃、彼の一閃にて。全てが塵に霧散する。そう、人には振るえぬ黒刀持ちて祓いし退魔の一閃。京に蔓延る慟哭散らす。
田村麻呂「ハッハァー!見たか鈴鹿!なんだあの気持ちわりー樹はよぉ!一丁前にイキり立ちやがって!鈴鹿と逢瀬する時のオレリスペクトか!?のわりには見た目しなってるよなぁ!」
鈴鹿『バカ!バカ!バカ!ホンットバカ!サイテー!しもネタホンットサイテー!』
田村麻呂「許せ許せオレの想いは止まらねぇ!よぉし田村麻呂選手、伐採してみっか!──オラァアァアァアァ!!!」
バットを振るように払われる一閃。正しく空想樹を穿つ──しかし、呪詛重ね二十枚を断ち切るに失する。
「なぬ!?ウルティメイト田村麻呂バスターが!?」
『ダッッッサ!名前ダッッッサ!!』
「にゃろぉ…田村麻呂オブジェにしちゃ趣味がわりい!なら直接ブチ折ってやらぁ!!」
民「なんだあの人…!」
「馬鹿なのか!」「多分馬鹿だ!」
「でも、カッコいい…!」
〜
リンボ【晴明…先んじて京の守護者を呼んでいたか…!】
道長「晴明を厭うあまり細工を見逃したか。所詮道満の中の矮小な一面に過ぎぬな貴様は」
リンボ【お黙りなさい!…ならば、ならば。あの守護にも!地獄をお見せいたしましょう!】
そしてリンボは、悪辣なる召喚を成す──。
『皆様、集まっているね。ではこのどうしようもなさ気な状況を打開する作戦を立てる事に致しましょうか。ようやく道満の悪心、アルターエゴリンボが殴りやすいツラを出したのだ。君たち源氏武者、我々愛と正義の楽園カルデアの大立ち回りの時間だよ』
源氏屋敷、混沌に落ちた京の都。空には天狗が舞い、海よりは京が征伐せしまつろわぬ者達。地上には第四天、鬼と魔物の群れ。それらが幅を利かせる今において、晴明はいつもと変わらずの声を上げる。
「コイツがどんな騒ぎか、アンタは…リッカらは知ってるって訳だな。確か、えぇと…」
『空想樹。簡単に分かりやすく言えば、リッカちゃんが生きる未来に繋がる今を、リンボに繋げてしまう樹だよ。金時くん』
「解りました。即刻にて伐採いたしましょう。我等源氏武者、四天王並びに棟梁。未来に仇なす悪を誅伐致します」
即断即決。棟梁として母として、相いれぬならば砕くまで。そして未来を守護する為に頼光は立つ。その様子を万感の想いで見上げるリッカ。
『しかし随分と早い空想樹のお披露目ね。さてはリンボ、こちらの活躍に相当度肝を抜かれたと見えるわ』
『その通りだ君主アニムスフィア。リンボ…この場合は道満とは分けていただきたい。ヤツは天覧聖杯戦争を催して置きながら、たった二騎しか魂を回収できていない。本来の贄を七騎と言うなら半分以下の数値。開花には程遠い。君達の力を測りそこねていた故の無様さだ。やはり道満を名乗るに値しない側面だな』
ライバルを貶しているのかそれとも褒めているのか微妙な評価を下しながら、晴明は打っておいた手筈を説明し、並びにこれからすべき事を告げる。彼は既に、こちらにまともな説明をせずに準備を終えていたのだ。
『先に言ったかどうかは不明瞭だが、私はあの空想樹を徹底的に邪魔する細工を施してある。直接伐採は流石に無理だが、根張りを阻止する為の霊脈掌握、リンボに食わせる爆弾式魔力の生成、京における守護の徹底…これらは全て、同時に進行中だ』
その言葉に偽り無く、リッカの眼前に続々と通信モニターが届く。それは、頼もしき仲間たちにして同志たち。
『こちら白虎方角、カドック。麒麟守護の霊脈を確保した。防衛に入る』
『こっちも大丈夫よ。青龍方角、ヒナコ。応龍守護として霊脈を護るわ』
『朱雀方角、アルトリア。聖剣と鳳凰で完璧です』
『玄武方角、アイリスフィール!霊亀おじいちゃんで備えは万全よ!』
『こちら流れの風来坊、桐之助ことキリシュタリア。我々は風来人として民達の避難と保護に尽力しよう。任せてくれたまえ、リッカ君!』
『デイビッド、同じく。土産は鳩サブレで頼む』
『オフェリア、同じく』
『ぺぺ、同じくよ!私達はグランドマスター、いつでも一緒。心配ないわよ、リッカ♪』
『こちら薫子。バベッジおじさまの蒸気にて撹乱を』
『こっちは任せんしゃい!なーんつってな!なぎこちゃんもおんぜ!』
「みんな…!」
『そして我が式神…という体にしている部員の諸君にはガンガンいこうぜの命令を出しておいた。怪異を倒せば倒すほどリンボが喰らう毒は増す。皆には頑張ってもらおう。そして───』
『あなや此処が高天ヶ原となりたもう!!』
瞬間、源氏の屋敷の敷地全てが清澄なる空間へと変貌する。気合の入った創造神の号令が、此処に神田明神を顕現させたのだ。
『マガハラの資料も読ませてもらった。あの時の舞台とノウハウは同じだ。むしろ四凶、憎悪に狂った創造神、並びに妖怪の祖などというなんで勝てたか解らん輩より今回はやりやすい筈だ。こうして神々も来てくれたことだしな』
『はい!通りすがりがそのまま居付いたおばあちゃんです!皆さまを応援!平に応援!これまた応援!高性能ばあちゃん張り切っちゃいます!ガンバ!ガンバたもれ!』
イザナミの後ろに控える、絢爛豪華な日本の神々達。霊脈を確保した事により、リッカの天沼鉾を通じて力の付与が可能となったのだ。仕込みと細工は、今になり形を成す。
『さ、流石は安倍晴明!結界を張るにとどまらずこれ程の準備を行うとは!』
『全部掌の上、って感じよね…敵じゃなくて良かったわ』
『それはこちらの台詞でもある。戦術で戦略を踏み潰せる君達だから、私の小細工が生きるのさ。そこで君達にはジャイアントキリング…即ち、大物を刈ってもらいたい』
それは本来の目標、リンボに空想樹並びに、リンボが空想樹の贄として召喚した英霊の撃退を指す。あちらには一騎、特大の呪厄がある事を晴明は告げる。
『リンボの輩は節操が無くてね。後の三大怨霊の一角、大魔縁の側面を既に呼び寄せる準備を始めている。将門公と同格と言えば強さは伝わるかな』
「リンボなんかよりずっと強いですね…!」
『然し。怨霊、荒御魂は全面、本性に非ず。付け入る隙、必ずや在り』
『将門公の言う通り。私達がかの大魔縁を鎮魂する手筈を模索する。その間に招かれるであろう八幡神、サーヴァントを君達は『封じて』ほしい』
『ほら、倒すと魂が空想樹に還元されちゃうからね。そしてそこで役立つのが、これさ!』
ロマンが持っているのは、鈍い金色をしたライドウォッチ。晴明の札と合わせ、封印の手筈は整えてあるのだ。
『これ、なんと仮面ライダーソロモンって言うんだって!これさえあればレイシフトで自衛できるから、僕が魂を回収するよ。それで晴明の札で手にして完璧さ!』
「ロマン仮面ライダーになるのぉ!?いぃーなぁーー!!ズルいなぁー!!いぃーなぁー!!」
「かめん、らいだー?なんかすげぇかっこいいじゃんよ…!」
「…桃子殿。仔細を知るか?」
「変身ヒーローです。ツナ君」
(仲良し…)
リッカ、当然ながら大興奮。彼女にとってのヒーロー、即ち仮面ライダー。ロマンまさかの大抜擢にテンション爆上がりなのは言うまでもない。
「そして全員をシールドバッシュしたのち!空想樹をチョッキンして作戦完了というわけですね!所長!」
『そうだけど…なんだかリッカとレオニダス王にますます似てきたわね…』
「──こほん。要約致します。我々はリンボが呼び出せし魔を打ち払い、あの樹とリンボを討ち果たす。後詰めは皆様に任せる形…」
「えぇ。皆ならきっと大丈夫よ。頼光、あなたとあなたの子供達なら、ね」
「ナーサリー…えぇ。参ります。我等は必ず、勝ってリッカの未来を護る為に」
『いよいよリンボとの腐れ縁の清算の時か。想いが届かぬ男程哀れな輩はおらん。早急に素っ首を叩き落としてやるがいい』
『ギル!ははは、流石ギルだ!渾身の自虐ギャグで和ませてくれるなんて!』
『黙れロマン!!我はあくまで『今は』に過ぎん!やがて念は通ずるのだ!』
そして、いよいよ言葉を賜わせし王を以て、此度の大一番である事が揺るぎなく示される。いよいよ──最後の戦いが始まるのだ。
「リッカ?あなたは未来の棟梁、古今の武者の総大将。今こそ出陣の鬨を上げ、勇壮に出陣を成すのです」
「母上…」
見れば、皆がリッカの号令を待っている。そう。未来の棟梁と認識され…否。
彼女の戦いの始まりを待っているのだ。
「────。…行こう!皆!!」
童子切安綱──そして、龍哮を抜き放ち、高々と掲げ謳う。
「源氏!!──出陣!!!」
「「「「「源氏出陣!!!」」」」」
今こそ、最後の戦いが始まる。京の、全てを護る為に平安の武者達が鬨を上げる。
『さて、道満。君は何を秘策に待つか…楽しみに待っているよ』
晴明がほくそ笑んだ、その刹那──。
「伝令!伝令!」
風魔小太郎、並びに段蔵。京の各地にて散る忍らが、言を告げる。
「大江山の地に、四騎の鬼出現!金鬼、水鬼、風鬼、隠形鬼!酒吞殿と茨木殿、進軍阻まれております!」
「並びに、京の南に二騎、英霊召喚を確認!リンボの用意した英霊!…その名、見た目から判断するに…」
『誰だい?』
「…俵藤太、並びに。…鈴鹿御前!かつての英霊剣豪が如く!狂い果てて候!」
その名を聞き、青ざめる晴明。
『…まずい』
そして…──彼に縁浅からぬ彼もまた。
『…よもや、貴様が堕ちたるか。秀郷…』
将門公が、無念げに眉を顰める。そう、二人はけして、縁浅からぬ相手なれば──。
歳殺神「…我等の前に立ち塞がる者、何かと思えばこれはこれは」
田村麻呂「……」
歳殺神「噂に名高き、田村大明神。いやさ、征夷大将軍。京の危機に至るは必定か。これはこれは」
豹尾神「………最悪。ホント、最悪なんだけど」
田村麻呂「………鈴鹿。なんだよ、お前…それ、それ…」
鈴鹿『バカ!あれはもう鈴鹿御前じゃないし!サーヴァントとしてリンボに狂わされた、アタシの死骸みたいなもん!迷うなアホ!』
田村麻呂「そういう問題じゃねぇ!死体だろうが鈴鹿は鈴鹿だ!それに藤原秀郷殿!貴方様は坂東の乱の平定要!なんだってそんな…!」
歳殺神「これが、サーヴァントの妙よ。マスター次第で、怨霊が比類なき守護神ともなれば、武者が外道に堕ちてみせる」
豹尾神「そゆコト。…そこ、退いて」
田村麻呂「……断る」
「退いてよ」
「断る」
「退いてってば…」
「断る!!」
歳殺神「……」
豹尾神「…アタシより、京の方が大事だもんね。アンタは」
田村麻呂「……ちげぇよ。お前も京も護るんだ、バカ」
鈴鹿『アンタ…』
「死体だろうがなんだろうが…!オメーはオレのもんだ!これ以上辱めはさせねぇ!!」
豹尾神「…そーゆうとこが、好きだったんだよね。アタシはさ」
「行くぜぇえぇえええ!!!」
歳殺神「代わるか、豹尾」
豹尾神「先いきなよ。…マロは、アタシが殺す」
征夷大将軍が先んじて、血塗られた天魔の姫を制さんと刃を振るう──。
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