田村麻呂「許せねぇ…!!」
まつろわぬ者ら【【【【【【……】】】】】】
「よく見たらこの御仁ら…!皆蝦夷の民じゃねぇか!後のアイヌに繋がる誇り高き民族にこんな仕打ちにしやがってぇ…!!」
『田村麻呂…』
「ウコチャヌプコロ出来たんだ!畜生、ウコチャヌプコロ出来た民族になんてことしやがる!!許さねぇ…!!鈴鹿とオチウする前に全員鎮魂してやるしか、ハッ!!!」
『ウコチャヌプコロ!?オチウ!?』
「そうだ…倒すのは蝦夷アイヌの皆様じゃねぇ!いるはずだ!──いた!!」
『ちょ、田村麻呂!?なんなのもー!?』
「いやがったな…アテルイ。いや、俺は解ってたぜ。アイヌの皆様がいるんだってんなら!オメーがいない筈はねぇってな!」
【………!!!】
海の浜辺、黒く染まった海を前に田村麻呂は吠える。175センチの田村麻呂よりも一回り大きい、筋骨隆々の大男。顔に札を貼られ、暴走せし民と成り果てし辱めを受けし英雄。
「俺にはお見通しだぜ!アイヌの英雄!アテルイよ!!」
『いやさっき現れたって教えて貰ってたじゃん!今更!?』
「俺が認識して初めて過程は事実となる!今見たから初めて見た訳だな!」
なんとも征夷大将軍な理論を掲げ、アイヌの英雄の前に立つ。尚、その顔はずっと険しく、そして哀しげだ。
「…サーヴァントってのは本当にままならねぇもんだ。蝦夷の戦いの際、降るべき時に降る事を選べた誇り高き一族。並びにその中でも際立った英雄だったお前様がこんなザマに成り果てちまって。俺は悔しいったらねぇ。ただでさえ、ただでさえオレはお前を助ける約束を果たせなかったのによ…」
【…!!!】
「言葉も意志もままならねぇ。理性と誇りの民族アイヌとその英雄を蛮族めいた扱いしたヤツには落とし前を必ず付けさせる!だから今は、俺がお前を止めるからよ!今度は間違えねぇ、違えねぇ。今度こそ!約束だアテルイ!!」
アテルイ…かの英雄とは縁がある。蝦夷平定の際、田村麻呂は陸奥の統治を彼等に任せるべきと嘆願するほどに彼等に惚れ込み、入れ込んだ。しかしその願いは果たされなかった過去がある。だからこそ、田村麻呂は信じ確信しているのだ。アイヌは、アテルイはこんな蛮族めいた扱いを受けていい者達ではないと。
『…なら、思いっきりやりなよ。アンタの大事な人だってんなら、アンタのやり方で取り戻しちゃいなって。征夷大将軍ならできるでしょ!ほら、これ使って!』
田村麻呂の周囲に浮かぶ大通連に小通連。鈴鹿の想いたる宝刀が、彼を確かに守護せんと浮かび上がる。
「へへ。ありがとうよ鈴鹿!なら思いっきり!」
『うん!』
【!!!】
「殴り合いで行くぜぇえぇえぇえっ!!!」
『いや武器使わんのかーい!!?』
田村麻呂、坂上宝剣を投げ捨てアテルイに単身生身で突撃を行う。それを認めたアテルイも、肉弾戦を認めし体勢で迎え撃つ。二人の距離は一瞬で縮まり──
「まっろまろに!してやるぜえぇえ!!」
【!!!!!】
拳と拳がぶつかり合い、壮絶極まる衝撃波を巻き起こす。海は逆巻き曇天は切り裂ける程の超絶的な波動、猛烈な地響きが周囲に巻き起こる。力と力の衝突にして激突。一歩も退かぬ将軍の戦いが幕を開けたのだ。
【!!!!】
アテルイの猛烈極まりない乱打を、田村麻呂はしっかと受け止める。避けることもせず、ただ受け止め叩き込まれた一撃をその身に刻み込みながら奮戦、真正面から殴り返す。そう、アテルイの鎮魂を為すかの如く。
「マロパンチッ!!マロパンチ!マロ!!パァンチ!!」
『名前なんとかならないのマジで!?』
「名前は重要じゃあねぇ!大事なのは!魂グボォ!!」
【!!!!】
腹にパンチを、拳を捻り込まれても決して膝すらもつかない田村麻呂。変わり果ててしまった、戦場で認め合った者への敬意と、そして…
「ぐっ…つれぇよなぁ!誇り高きアイヌでありながら、言葉も誇りも奪われて、走狗として扱われちまってよぉ!少なくとも俺ァ!やりきれなくてたまんねぇぜ!」
【!!!】
「あの時、約束を果たせなかったヤツとこんな再会になっちまってよぉ…!俺はとんでもなく無念だぜ!だからよ!!そんなお前も!無念で無念で堪んねぇよなぁ!」
【!!!!】
「だかグヘっ!!お前の無念ぐほっ!!そいつをぜんぶへっ!!受け止め…!うぐぁぼへぁ!!受け止め!受け止めんだよぉばふぁっ!!」
『かわすかしゃべるかどっちかにしなさいってバカぁ!ボッコボコじゃんもぉ!』
「容赦ねぇ!当たり前だけどこのアテルイ容赦ねぐほぁあぁあぁあ!!」
喋っている間、問答無用で殴り倒してくるアテルイにボッコボコにされてしまう田村麻呂。相手は言葉と尊厳を奪われた相手。意思疎通など出来る筈もない。しかし、田村麻呂には解る。感じるのだ。
「伝わって来るぜ…!お前の無念!お前の哀しみ!いいぜ来い!ぶつかってこい!ぶつけて来い!!全部受け止めてやっからよ!!」
【────!!!!!】
「全部うぅおぉおぉおぉおァアァアァ!!?」
『田村麻呂ーー!?全然受け止めきれてないじゃんバカー!!』
遥か彼方へとぶっ飛んで行く田村麻呂。大岩にめり込みながらも、その闘志に微塵も翳りは見られない。
「へっ、へへ…こんな出会いじゃなけりゃ、また会えたなって、抱き合ってハグするくらいは出来たのによぉ」
『抱き合う!?あれと!?』
「何より俺がやりきれねえ!!俺が、俺が戦ったライバルをこんな目に遭わされるのはよぉ!!うぉおぉおおぉぁあ!!」
全身に気合を込め、気迫と共に立ち上がる。彼は徹頭徹尾痛快、自分の為ではなく愛する者の為に、その力を全開させるのだ。それは愛する鈴鹿の為であり、京の、日本の為であり、そして何よりも…
「アテルイぃ!!お前の為にも!アイヌの為にも!!負けらんねぇなぁ!負けらんねぇよぉ!!」
【────!!!!!】
「来やがれ!!コイツで最後だぁぁあぁあっ!!」
気合に満ち溢れた咆哮を上げ、突撃する田村麻呂。それに応え、真正面から受けて立つアテルイ。二人は言葉なくぶつかり合い、拳を振りかぶり、そして──
【!!!!】
「ぐへぁっ───ぬぁあぁあぁあぁ!!!!」
頬に渾身の拳を受けながらも、田村麻呂もまた奮起し渾身の拳を放つ。拳と拳との交差。それを鈴鹿は、リッカのサブカル探求にて知っていた。それこそは──
『く…クロスカウンター!!』
「ぬぐっ…──」
流石の衝撃と拳の圧力…それに流石の勢いに、意識が飛びかける田村麻呂。しかし、そこにあった大通連、小通連に支えられ、なんとか倒れずに立ち続ける。
『田村麻呂!』
「ありがとうよ、鈴鹿。だが…問題ねぇ…問題はねぇさ。なぁ、そうだろ」
気合と、愛をもって立つ田村麻呂。そして──
「ゆっくり休めや。なぁ──アテルイよ」
【……────】
田村麻呂のその言葉に安堵するかのように…ゆっくりと、アテルイは倒れ伏すのだった──。
田村麻呂「はぁ、はぁ…。効いたぜ。マジに効いた。流石は唯一無二のアイヌの大英雄。今も昔も一筋縄じゃあいかねぇ。最大最強の敵だぜ…」
鈴鹿『うん。誰がどう見ても強そうなヤツだしね…アタシあんまり覚えてなかったけ、は!?』
瞬間、アテルイの身体が光り輝き、肉体が萎んでいき、そして───
アテルイ「う…うぅ…」
『美女ーーーー!!?』
現れしは美女。青いハチマキと民族衣装を纏った、絶世の美貌持つ女性が現れた。そして同時に、まつろわぬ者…否、アイヌ達が消えていく。
「知らなかったのか?アテルイは女だぞ。歴代のアイヌの英雄達の想いを束ねて、英雄として立つ巫女であり英雄だ」
『初見なんですけど!?ほら、アンタの史実部分の由来じゃないしアタシ…ていうかエジソンタイプだったってわけ!?アテルイ!?』
「そういうこった。つーかエジソンって誰だ。…アテルイ。大丈夫か」
アテルイを抱き起こす。青髪に銀眼の美女が、田村麻呂の腕の中で目を覚まし…
アテルイ「ごめんなさい、タムラマロ…あなたの国を、あなたの慈悲を…私達は、踏み躙ってしまった…」
田村麻呂「いいや、気にすんな。だってまた、こうして会えたじゃねぇか。相変わらず、キレイだぜ。アテルイ」
アテルイ「…もう。妻がありながら…いけないひと…」
田村麻呂「俺の方こそ、悪かった。…仇は必ず討つ。今はゆっくり休みな。アテルイ」
アテルイ「ありがとう。誉れ高き勇者。アイヌを、アイヌに繋がる未来を…お願い、します」
そっと頬に口づけし、アテルイの魂を保護する田村麻呂。消え去るまで、無言で看取る田村麻呂。
鈴鹿『は、初耳なんだけど…色々初耳なんだけど…』
田村麻呂「鈴鹿。…俺は決めたぜ」
立ち上がる、田村麻呂。その目には、決意が漲る。
「もう許さねぇ…『大明神モード』!!開放だ!!」
『マジに!?』
全力を開放する事を誓う田村麻呂。リンボは今、完全に大将軍を敵に回す──。
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