人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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俵藤太「おぉ、いたいた!はは、やはり堪えたか将門殿よ!」

将門公『意気軒昂の道理なし…』

「うむ、そういう所がリッカに好かれるのだな。今のそなたは和御魂。やはり荒ぶりはせずとも気には病むか」

将門公『そなたの有様を知ればこそ…我はやりきれず。辛く在れば』

藤太「まぁ既に死んでいたとあらば手の打ちよう無く。実に無念なれば。だが!だがだぞ大明神!」

『……?』

「無念は濯がれるものだ。そら、我等が大将が出陣している!言の葉の一つ、かけてやるとよい!さぁ、さぁさぁ!」

将門公『………うむ』

俵藤太(かつての首級を取られた相手に此処まで。やはりそなたは、最大の政敵であったのだろう。将門公…)


歳殺神・俵藤太

【ほう。朱雀門まであと僅かという場まで至り、よもやすんなりと達する事は無しとは思ってはいた。しかしこれは大層な見送り、出迎えと来たな】

 

朱雀門、即ち京の中核にある空想樹に至らんとする、リンボが招き八幡神が業を有する英霊の前に立ちはだかるリッカ、並びに源氏の武者達。…その勇壮なる姿、その偉大なる勇姿を知らぬ者は一人としていない。

 

「トータさん…俵藤太。そして藤原秀郷さん…!」

 

【躯名を呼ぶか、娘。そしてその身に宿す神威に神気…ならば、立ち止まる他あるまい】

 

リッカに宿すもの、宿る者が何であるのか。それを理解し、歳殺神…即ち俵藤太は立ち止まる。山を7周りする大百足、果てはかつての平将門君をも討ち果たした古今無双の大武者の躯は語る。

 

【しかし、精強にして勇壮なる平安の武者たちよ、散れ。何者も、我の歩みは止められぬ。忌名…歳殺神・俵藤太。貴様らの死であるが故に】

 

「俵藤太…!」

 

「そうですか。英霊…伝説として語られる古強者。我等は異郷異邦のキャスターしか知らぬ身ではありましたが。藤原秀郷殿、その別名を俵藤太。…即ち、我等の人の歩みそのもの」

 

そう、彼は押しも押されもせぬ大武者が一人。かの魔人、人の身にて制せし豪傑。それらが殺意、一本の剣と至ったならば。その実力とその殺気は如何ほどばかりか。

 

『───秀郷』

 

その時、リッカの目が金色に輝き、黄金の神気が立ち昇る。それは人の身に隔絶したもの。彼女を守護する神威が一柱。

 

【む。…ほほう。これは数奇な。その娘を守護する側面を魅せているのか。将門公】

 

その姿を見据え、躯の身ながら笑みを浮かべる歳殺神。かつて、坂東の乱にて向かい合った不倶戴天の両雄が並び立つ。しかし、あの日の勢力とは、何もかもが異なった場合の立場にての相対。

 

『やりきれぬ…慚愧に絶えぬが如し。古今無双、我を下した武者のそなたが、この様に歪み果ててみせるか』

 

【奇しくも、かの時とは何もかもが変転しているな。新皇として朝廷を改せんと立ったそなたに迎え討つかつてのこの躯。そして今、歳殺神を名乗り京を脅かす我に、守護神として顕せし将門公】

 

『儘ならぬ…儘ならぬ事よ。今此処に、飯と平穏を愛した藤太はもうおらぬか』

 

【無念なる事にな。此処に在り、蠢くはただの躯が故に。気を病むな、大明神に在りし者よ】

 

それのみを交わし、将門公は沈黙する。最早、言葉を交わす境地は過ぎた。最早一刻も早く留め、封ずる他無し。

 

『龍華。躊躇うなかれ。最早止め鎮める他に道は無し』

(はい。その無念と悔恨、無為にはしません!)

 

将門公の慚愧、かつての好敵手の歪み果てた姿に愁眉を懐きながら、リッカに後を託す将門公。その意志と想いを、リッカは受け取り相対する。

 

「オレっちでも知らねぇ訳のねぇ大武者、俵藤太殿!散々英霊を近い最中に見てきたが、よりにもよってアンタがよぉ!なぁ、頼光サン!」

 

金時の言葉に頷く頼光。彼女や彼等にとって、それは理解し難き様相として疑問となる。

 

「金時の言う通り。正真正銘の英雄、英傑と謳われし方が。何故世を乱す大悪に肩入れするのでしょう。リンボなる者の操る術。そこまで強きモノか?人の想い、貴方がたの想いが悪逆に屈するなどと、私には到底考えられない。如何です!秀郷殿!」

 

【……はは。刃を交わす前の啖呵としては、実に熱の入った事だ。だがまぁ、そうだな。問われたからには、それなりに返してやるとも】

 

秀郷、藤太は生来の快男児にして常識人。カルデアに在りし藤太はモーセ、三蔵を御すほどの履正の方であるが故、業と理性を両立させる程の意識を保つ。そしてそれは、サーヴァントである身をも理解する程に。

 

【前提として、所詮は人理に刻まれた影法師。如何なる跡を残そうとも精々が使い魔よ。それにな。──この身、既に躯にて候】

 

「躯…」

 

【躯は想わぬ。躯は願わぬ。想いを受けて守護の神に至るものあらば、定められたるままに荒ぶる他に道は無し。それが答えだ。源氏の者共よ】

 

それ故、最早自らの意志は無いと歳殺神は応えた。最早止める理性も、躊躇う意志もありえぬと。埋め込まれし業のなんと深き事か。リンボのなんと罪深き事か。

 

【我は既に、英霊の躯。想わぬ、…願わぬ。こう語る今も所詮は幻想。故に、面影を重ねるのは止めておけ。躯に問うはやめておけ。死して散るが定めなれば】

 

「……」

 

リッカに、楽園にいる者はどうしても想起を成してしまう。食堂にて、畑にて、プラントにて、酒宴にて、酒場にて旨き飯を振る舞う彼の姿を。彼がいるから、南極に在りながら美味い飯が余さず喰える。人生の醍醐味を示してくれた大恩ある方なれば。

 

「──なら、私達はあなたを止めます。躯だと言うなら、尚更丁重に敬わなくてはならないから。躯と屍は、皆仏様になるから。壊したり、傷つけたりしちゃダメだから!」

 

リッカはせめて、戦う意志を揺らがせない。躯となった者の尊厳は護らなくてはならない。立ち向かわなくてはならない。かつての母がそうだったように。かつての母にそうしたように。

 

だが──今は。あの時のように、二人きりでも、自身のみが覚悟する様な状況ではない。

 

「貴方を止める!──京の皆が、美味しいご飯をお腹いっぱい食べられる未来を護るために!!それが出来るのは!私達だけだから!!」

 

意志を示し、戦う決意を固めるリッカ。金時、綱、マシュ、桃子に忍達。戦う意志と決意は、此処に集っているのだ。

 

【──佳き願い、佳き大義だ。見知らぬ娘よ。良い物を食らい、良い物を飲み、良い物を味わったのだな。うむ、この躯の気がかりともなるはそれのみであった】

 

「藤太さん…」

 

【何、そう気に病むな。屍は踏み越えてゆくものだ。生者を狩る亡者など殊更に質が悪い。出来の悪い悪夢、終わらせて見せるのだ】

 

その言葉を皮切りに、一同は構える。戦うは、あの将門公すら討ち果たした大武者。躯なれどあまりに強き者。

 

 

【さぁ征くぞ。将門公に認められし娘、並びに源氏の武者達よ。護る程の気概、決意、覚悟を持たねば吾は止まらぬ】

 

引き抜かれる太刀、振るわれるマサカリ、盾に構えるお供達。彼を止めるための戦いが今、…幕を開ける。

 

【さぁ──踏み越えてみせよ!旭に照らされるか、宵に沈むか!この国が結末はお前達次第よ!】

 

「──行くよ、皆!!源氏!進軍ッ!!」

 

「「「「「源氏!進軍ッ!!!」」」」」

 

『───我が宿敵、我が郷愁。鎮まらん事を願う。伏して願わん。かの鎮魂。我がますたぁ、龍華。どうか聞き届けん事を願う』

 

(勿論です!絶対に──進ませはしない!!)

 

将門公の願いを受け、今戦いの幕は上がる──!




頼光「…縁を結び、力にもならば。縁が敵に、悪き巡りも来たる。楽しくも辛き旅路ですね、リッカ」

リッカ「辛くないですよ、母上。私は楽園に来てから…たくさんの楽しいを皆から貰いました。私がいるのは、みんなのお陰だから。だから逃げない。だから、負けません」

頼光「それでいいのです。棟梁迷わば人界は外道に堕ち、未来は閉ざされましょう。辛くとも、怖くとも。逃げてはならない。──ふふっ。なんとまぁ、そっくりなのでしょう」

リッカ「産みの親より、育ての親だと思いますから!」

頼光「えぇ。戦いましょう、リッカ。あなたの信じた神の為に。未来の為にも!」

リッカ「はい!!」

歳殺神【…佳き娘に帰依されたものだ。将門公よ】

その願いが果たされんことを願い、今幕を開ける!

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