人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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歳殺神(……しかし、将門公に認められし郎党か。皮肉なものよ。平穏取り戻さんとしていた者の守護が将門公とは。奇しくも立場が真逆となった点も含めて、だ)

【…ならば。全てはお前達次第ではあるが…】

(オレもまた、矜持の一つも奮い屍なりに遺すべきであろう。死して虎は、皮を残すように)

【辿り着けるか、源氏達。針の穴通さんばかりのこの難題…!】




イザナミ『田村麻呂君を神様に!?』

鈴鹿「そうなの、おばあさま。絶対絶対、役に立てる筈だから!あと、アタシも…なんとか、できたり…しない?」

イザナミ『何を言っていますか!』

「や、やっぱダメかな…?無茶?」

『もっとはやくおばあちゃんを頼ってたもう!!さぁさぁ、マロ君を呼ぶが吉ですよ!』

「即答!?さっすがおばあさま!」

(あの大魔縁はちょっち手を焼くかもだから、マロに本気出させないと!リッカ、一人じゃないからね!ファイトじゃん!)

イザナミ『フフフ、では早速霊基を高めるこのお結びと水をのみたもうや!』

鈴鹿「えっ…」

『露骨に嫌な顔をしないでほしいのですがぁ〜!!』


鎮魂・電光石火

「おぉおっ!!」

「だらぁあぁあぁっ!!」

「ふっ!」

 

古今無双の源氏武者、頼光四天王が金時、綱、そして大将源頼光が歳殺神に刃を立て攻め込む。彼を招き入れればリンボ、空想樹が力を付けてしまう。それを阻む為、京の安寧を護るために宝刀閃き、マサカリ唸り、武錬は冴え渡る。並の怪異ならばとうに百は獄門果たす必殺の徒党。

 

【軽いな。余りにも軽い】

 

しかし、その絶技すらも上回る武錬と腕前を、隔絶した絶技を歳殺神は見せつける。マサカリを刀で払い、刀を涼しげにいなし、雷光の魔力と神威を弓矢で弾き飛ばしてみせる。それはまさに、将門公を討ち果たした武威が顕現。躯であれどその妙技に些かの翳りすら無い。

 

「クソッ、強ぇ!流石は藤原秀郷殿、坂東の乱、将門公を下した無辺無双の武者!」

「我等の武勇、ことも無さげに弾いてみせる。あまりにも遠い武の境地、これが──」

「英霊。正しく世に現れたる歴史の奇跡…!」

 

「母上!兄ぃ!」

「ツナ君!」

 

「来てはなりません、リッカ!あなたにはあなたにしか出来ぬ采配がありましょう。それを見極めるのです!」

 

頼光の言葉に、乱入を留まるリッカ。いくら武勇を鍛え上げた人理の希望、人類最悪のマスターと言えど正しき意味にて源氏の者らと頑健さが違う故、下手な加入は足手まといになりかねない。現代の異常は、源氏のありふれた日常なのだ。メディア、ナーサリーが懸命に支援魔術を投げかけている姿を見て、自身の逸りを抑える。

 

「見極めるのです、リッカ。サーヴァントを見てきたのなら、あなたにしか見えぬ、至らぬ活路がある。大将は戦場に出て刀を振るうばかりに非ず。大局を見据える、柱なのですから」

 

母の言葉に頷き、リッカは見る。そして歳殺神の動きを見据え、戦術を導き出す。

 

【では、こちらからも放つとしよう】

 

穏やかで静か、冷静ながらその殺意籠る一撃一撃は源氏を殺めんと振る荒ぶる武威そのもの。首を、目を、心臓を狙う弓矢があられのように迫りくる。

 

【護ると宣う手前、腕前を見せてもらわなくては話にならんな】

 

しかし、歳殺神の武勇はあまりに高みの遥かにある。三人の武者を一人でことも無く捌き続け、傷の一つも負わぬ有様。かつての将門公は不死身の魔人であった。それを討ち果たした彼が弱きなど楽観する事実はあろう筈もなく。

 

「強いですね。武士としての資質とどっしりさが段違いです」

 

マシュと共にリッカの警護に周る桃子も太鼓判を押す。彼の強さとその難儀さは、四天王の数すら拮抗し跳ね返すものだと。それはあまりにも、しかし納得の分析だった。

 

(──でも、なんだか違和感がある。歳殺神は強いけど何か、致命的な隙を晒している。そんな気がする!)

 

しかし、リッカはそれを詰みとは考えていない。漠然と、しかし確実に活路はある。用意されている。マスターとしての直感が、それを今導かんと全力で回転しているのだ。リッカはそれを形にするため、ひたすらに歳殺神を見据える。

 

【現代の武者、歯応えのなきものだ。躯一つ捌けぬ有り様では、京の守護など夢のまた夢】

 

「なんだと…!」

 

【不服だと言うなら立て。脚が無くば剣を突き立て奮い立て。それが出来ねば、失うのみぞ】

 

その言葉と共に、無数の弓矢の嵐を見舞う歳殺神。近づく事すら儘ならぬ弾幕であるが、リッカは此処で俯瞰した大将としての視座にて気付く。

 

(間合いを、取らない…?)

 

歳殺神はその場から動かず、三人を圧倒し相手取っている。しかし何故かその場から決して動かない。弓矢を打ち払い、くぐり抜ければ必勝逆転である距離にて、歳殺神は弓矢を放ち続けているのだ。

 

(弓矢を放つのがアーチャー、で、宝具も弓矢の一射。ならどこまでも離れて撃っちゃえば私達は倒せないのに…)

 

「まるで、『間合い』を測らせているかのようです」

 

桃子の言葉に弾かれたように顔を上げる。そう、それだ。歳殺神は一瞬で殺さず、源氏を跳ね返す。しかしそれは、決して一方的な蹂躙ではない。確かに武者達と、しのぎを削る必殺必中の間合いだ。何故?殺戮の化身と言うにはあまりにも不合理──

 

【些か期待しすぎたか。では終わりにしよう】

 

そして、矢を構える。そこから放つは、祈りを矢に載せた必殺の一撃。即ち、宝具の開帳。一斉に身構える一同。──暴威が、降り注ぐ。

 

【──南無八幡!】

 

「──!!」

 

瞬間、リッカは見る。そこにあった必勝の『活路』。歳殺神が確かに見せた。或いは『見せた』必殺の逆転の光明。それを掴むためには──

 

「マシュ!!桃子!お願い!!」

 

なんとしても源氏の皆の助けがいる。今考えついた事は、恐らく武芸に生きた彼等にしかできない事だ。その為にも、なんとしても守り抜かなくてはならない。マシュと桃子に、鋭い指示を飛ばす。

 

「お任せください!」

「任されましたよ、リッカねぇ!」

 

マシュと桃子、素早く源氏武者の前に庇い立つ。龍神の加護を受けた水の矢の流星群を、自律飛行シールドユニット『スパルタ』で防ぐマシュ。叢雲剣にて叩き落とす桃子。宝具たる絶技を無力化する盾としての役割を、今果たす。

 

【ほう、中々どうして。骨のある輩もいるものだ】

 

歳殺神の称賛の通り、マシュと桃子は防ぎきった。源氏武者にもリッカにも、傷一つ刻まれていない。

 

「すまねぇ!助かったぜ!」

「忝ない、桃子殿」

「──リッカが何かを掴んだのですね。我等を護ったという事は、打開に我等が必要という事」

 

頷く両者。リッカの秘策を信じて時間を稼いだ頼光、綱、金時の頭に声が響く。

 

(皆、落ち着いて聞いてください。──見つけました。歳殺神を倒す活路と勝機!)

 

(…本当か)

 

大したものだ、と綱は所感を浮かべる。それが本当なら、確かにその観察眼に胆力と合理性は棟梁と疑うべくも無いものだ。

 

(はい!ですがこれには皆の力と、武勇がいります。大丈夫ですか!?怪我とかは!?)

 

(案ずることなきよう、リッカ。源氏武者、四天王ともあれば傷や腕の一二、胴体と泣き別れしようとも意に介しはしません)

 

(源氏って凄い…!)

 

(それよりも、打開の策をお聞かせくださいな。何を想い至ったのです?)

 

リッカは頼光達に示す。その光明──恐らく、歳殺神が残せし唯一の活路。

 

(──難題だ。しかし、我等ならやってみせよう)

(オレにはとても繊細な事柄は向かねぇ!ここは任せるぜ二人共!)

(えぇ、いいでしょう。ならばリッカの言を信じ、手筈通りに)

 

((承知!!))

 

念話にて意思疎通を行い、精神を統一し配置に付く三者。歳殺神、再びの構えに入る。完全に鏖殺果たす心積もり故の斉射。

 

【ならばこれで幕を引こう。顕現した地獄で嬲られるよりも、ここで死すが慈悲やもしれぬからな】

 

「……!!」

 

この作戦、否…限界を超えた活路の開拓を託す他無くなったリッカは祈り見据える。源氏の者らの真の力、底力を。高まる魔力。宝具が来る!

 

【南無八幡大菩薩──】

 

詠唱、口にするは祈り。八幡の菩薩へと願い奉る必殺の一撃。龍神の力籠もりし、加護の一矢。それを喰らえば、まさに一溜まりもない。マシュと桃子が再び構える。万事休すか──

 

「──今だあっ!!」

 

【!!】

 

瞬間、リッカが叫んだ。そここそが勝機。そこにしかない活路。それは、歳殺神の宝具の『発動の瞬間』。サーヴァントであるが故、必ずや避けられぬ『真名開放』の刹那──!

 

「「───!!」」

 

瞬間、迅雷に火焔が閃いた。歳殺神が弓矢を構え、射ち放つその瞬間。時間にしてほんの数瞬。隙と言うにはあまりにも小さく狭い、刹那の数瞬。しかし、どれだけ僅かでも。それが隙であるならば。

 

【!!】

 

瞬間──歳殺神を、綱と頼光は貫いていた。1秒未満に満たぬ、詠唱の刹那。祈り届かせし僅かな数瞬。

 

【なん、と…!】

 

抜かった、油断した、はたまた見誤った。しかしそれは確かな事実として。彼女らは掴み取ったのだ。僅かコンマ数瞬。

 

サーヴァントの宝具を開放する手順、そしてサーヴァント故に縛られる制約。ほんの一瞬の勝機を──

 

「金時!!」

 

頼光の鋭い言葉に応え、跳躍する金時。繊細な隙は二人に突いてもらった。なら、自身は何を行いすべきか。無論──

 

「おおよっ!!───ゴールデン!!!」

 

マサカリ担ぐ金時の大跳躍。そう、それは即ち『豪雷一閃』。手繰り寄せた勝機を確定する、必殺の雷撃。その名も…!

 

「スパアァアァアァアァアァアァク!!!」

 

必殺の一撃。まさに天より下る豪雷が如し。天雷を思わせる必殺の一閃にて、歳殺神は打ち据えられ、霊基に著しい損傷を与える…!

 

【────】

 

そう、リッカが見据えたもの。八幡神の活路。それは如何なる化身であれ、サーヴァントであれば逃れられない確定の隙。しかしそれを見抜く眼力、正確に突く技術なくば成立叶わぬ。

 

見ていたのだ、かの娘は。信じたのだ。この武者は。自身が隙を晒すものと。助言が正しきものであると。故にこそ叶った、必殺の一打…!

 

【──うむ!見事なり!】

 

自身の敗北を認めた歳殺神。かつての躯の生前が如く。自らを貫き討ち果たした者達を心より称賛するのであった──。

 

 




歳殺神【うむ、この隙を突くとはまことあっぱれ。生前のオレならば、願いは胸にしまって射っただろう。わざわざ口に出し祈らねばならぬサーヴァント、ならではの隙、其処を突いたとは見事!】

リッカ「…ヒントは、あなたから貰っていました。あなたはアーチャーでありながら、逃げも隠れも、離れもせず戦った。まるで、私達に手の内を見せるかのように。間合いを離さず」

綱「正確に間合いを測らせるかのように…。だが宝具自体に翳りはなく、直撃すれば死んではいたが。桃子殿らが防ぎ、確証に至った」

金時「何かある。伝えたいことがあるってな!」

歳殺神【ははは、見通しか。しかし隙と言うにはあまりに些細。一つ間違えれば全滅という賭けであったぞ?】

頼光「はい。しかしリッカの言うとおり、あなたは私達に見せました。秘奥の奥の手を。一度見せたならば対処は可能。出来ずとも娘の期待を裏切るはずもなく。我等刺し違えようとあなたを葬ったでしょう」

【ふ、ははは!その意気や、よし!ならば、躯は此処で終わりだな】

消滅が始まる歳殺神。しかし、魂を空想樹の贄にするわけにはいかない。リッカが札を持ち、相対する。

【──将門殿よ。佳き娘を得たな】

『我等の未来を守護せし、龍なれば。我等の生きた証也。──暫し眠れ、藤原』

【うむ。任せたぞ、新皇──その加護を、彼女らに齎さんことを──】

僅かな言葉を残し、封じられる歳殺神。確かにその声音には、かつての存命であった…将門公が宿敵の面影を遺して。

『…さらばだ。我が宿敵が躯よ』

強靭極まる殺意の具現を一つ、下した瞬間であった。しかし…。

?【…源氏。死に候え】

?【───ゆかい】

?【■■■■■■】

討ち果たすべき怪異、未だ健在なれば──

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