源氏郎党「はっ!?此処は…!」
源氏郎党「我等は、あの怨霊に倒され死した筈…」
香子「皆様の身柄は、晴明様が保護致しました。殺される刹那、転移されたのです」
「なんと…ならば命拾いしたということか」
「いや、こうしてはおられん!我等、検非違使と結託し態勢を整え再び迎え討たん!」
香子「……」
源氏郎党「香子様、どうか晴明様に礼をお伝え下さい。御恩は忘れぬと」
源氏郎党「我等の命、再び燃やす機会を与えた事に感謝を!」
〜
晴明「源氏はコスト高いからな。また育て直すのも面倒だし、弾除けにするにも勿体無い。死なれると困る」
〜
香子「わ、解りました…御伝え、しておきます」
源氏郎党「源氏進軍!押し止めるぞ!!」
バベッジ『カオルコ。言わぬが花である』
「は、はい…晴明様、ご無事で…」
「まぁとは言ってもだ。私は非力なキャスターだし、直接戦闘にはあまり向かないタイプだ。そもそも対魔力持ってる三騎士相手に勝てるキャスターというのも極めて、極めて限られる不遇なクラスなのは否めない」
【──源氏で無いなら構わぬ。殺せ、歳破神】
現れたる陰陽師と交わす言の葉はもたぬとして、吠え猛る巨大なる大蜘蛛、歳破神。八幡神の一角たる威光と戦慄は、些かも景清には劣らぬものだ。
「せっかちだな。まぁ話が早くて結構だ。源氏も兵士も駄目だとくれば、こちらもとびきりの奇術にて抗う他無いからな」
【戯言を句として果てるがいい…!】
「いいや、死なんし殺さんさ。君等が怨念の集合体であるならば…」
歳破神の巨大なる一撃を見ても、晴明は微動だにしない。そして飄々と、端末をいじり画面を立ち上げる。
「私は、希望の担い手達の力を借りるのだからな」
そのアプリの名は──『多重次元観測アプリ』。即ち、彼が式神として振るっていたものの力の根源の準備であるのだ。
「『雷電・晴嵐』」
瞬間、巨大な太刀を構えた影法師が真っ向から大土蜘蛛を受け止める。その剛力たるや、まさに人類の中においても戦闘に特化した民族の血を継ぐ剛力。
【!?】
「最南端…島津民に縁がある者のようだ。その血気盛んさ、源氏にも退けはとらんぞ」
そして一撃を跳ね飛ばし、まさに嵐が如くに辺りを薙ぐ。振れば消し飛ぶ断岩の一撃が、歳破神を真っ向から跳ね飛ばす。
「『闇黒剣・読破一閃』」
晴明の手に、黒と黄で彩られた刃が握られ辺りを闇の波動で薙ぎ払う。鍔付近に端末を読み込ませる奇々怪々な刀剣は、平安の時代には有り得ぬ形状を取っている。
「『竜頭・冷却』」
更に影法師が現れ、周囲に魔法陣を展開し大気中の魔力を吸収し歳破神に放つ。それは単純な物量攻撃なれど、単純であるが故に圧倒的な勢いと怒涛を以て大蜘蛛を飲み干す。
【──ッ!なんだ、この影法師共は…!】
晴明が次々と呼び出す影法師。見た目も、装いもまるで統一感が無い。しかし共通するのは、サーヴァントにすら通用する程の神秘に満ちた一撃を放つ鬼札達であること。景清は寸ででかわすも、歳破神の身体には小さくない傷が次々と刻まれていく。
「千年の最先端に集った同志たちだよ。現代人は平安武士に比べて非力もいいところだが、こうして自らの願いと力を抽出すれば怪異や怨念すらも跳ね除ける力を発揮する。京に満ちる式神、それらも私が今借りている力の発露だ。まぁ流石に本人は呼べないためにこうして影法師として扱っているわけだがね。──『重兵器・大開放殲滅』」
瞬間、大土蜘蛛と真っ向から組み合えるほどの巨大絡繰の影法師が現れ、全身より鉄風雷火の嵐を巻き起こす。弓矢などとは比べ物にならない程の制圧射撃の雨。辺りに集まってきた土蜘蛛達を余さず殲滅する。
「対処仕切れるとは思わない事だ。戦闘をこなせる輩は一握りとはいえ、どれもこれもが時間神殿を生き抜き今尚現役の者ら。十や二十の数では利かんからな」
【ちっ、小賢しげな術を使う…!ならば貴様を討てば良いだけの事!】
討滅射撃を掻い潜り、軽業の刃にて振るわれる必滅憎悪の刃。晴明自体は稀代の術者なれど、実は武にも秀でていたなどとは無論そんな話は有り得ず。
「言っていなかった様で申し訳ない。君の敵は私一人では無いのさ」
しかし微塵も慌てぬが故の理屈は此処にある。景清の刃を、比類なき剛力にて阻む小さな影が此処に一つ。
「──面白げな催ししとるんやねぇ。うちも混ぜてくれへんやろか?」
そう、人ならざる怪力持つはただ一つ。平安乱す者たるは鬼。その中でも無類の力持つ酒呑童子が、晴明への攻撃を阻んだのである。
「お待たせいたしました、晴明殿。我等鬼陣営、参陣致します」
「お疲れ様だ。流石は鬼、義理堅い。まぁ別にピンチでもなんでも無かったがね」
【ちぃ、次から次へと──!歳破神!為すがままか!八幡神が一角の真価、この程度ではあるまいっ!】
景清の言葉に応え、咆哮する歳破神。大土蜘蛛の真価を発揮し、全てを押し潰さんと立ち上がる。その様子を、酒呑童子は楽しげに見やる。
「おぉ、こわいこわい。確か玖賀はん、うちらより前に大江山におった怪異やろ?言うならおじいはん、みたいな間柄やろか。うちら。ねぇ?」
暴れ狂い、大地を抉り薙ぎ倒しながら迫る歳破神を、ひらりひらりとかわし捌く酒呑童子。酔うているような千鳥足、しかし確かな戦術の形はまさに酒呑の名に相応しい。
「晴明殿。源氏殺しの術は、あの土蜘蛛が放つ障気に景清の術を乗せて辺りに散布しているもの。ならば──」
「歳破神を倒せばいくらかマシになる、か。読み通りの展開だ。酒吞殿、そちらの土蜘蛛は任せました」
【貴様ら──ぐっ!?】
景清が何かを行動に移す前に、晴明は札を放つ。その札は景清の身体に張り付き、そして全身の自由を奪う。
「我が結界に呼応し、君を縛る私の術式だ。まぁ流石に体力を削り切る事は出来ないが、少なくともこれ以上の鏖殺は防げるだろう」
【ぐっ、動けぬ…ッ!おのれ、貴様ら…!】
「確かに怨念は強きものだが、見ず知らずの安倍を憎めるほど情深くはあるまい。このまま封じてもいいが…彼女等の縁になるやもしれぬしな。止めは譲るとしよう」
橋に釘付けにし、景清の進軍を阻む。ならば残るは歳破神の始末だが、今更において鬼が在る中、手助けなど必要に非ず。
「ほーれ。おーにさんこちら、手のなる方へ〜」
酒吞の周囲に撒かれた酒気、妖酒の気にあてられふらふらと精彩を欠く歳破神。手を出し、攻撃すればするほど酒吞童子の術中に嵌まる形となり、よろけた醜態を晒す。
「おーにさんこちら、手のなる方…へ」
そして、酒吞は隙だらけとなった歳破神の頭に乗り──
「ほぉら。捕まえた」
瞬間──目にも止まらぬ連撃にて、瞬時に歳破神を五体四散に相応しく解体する。剛力にして迅速。それは生物を一瞬で骨抜きにする必殺の神業であった。
「悪いけど、お山はぜぇんぶうちらのもんや。おじいはんはそう、冥府に戻ったらよろしおす。ほなな」
そして、歳破神の頭部を蹴鞠のように蹴り飛ばし、晴明の方角へと向かわせる。殺してしまっては、リンボの糧になる為だ。
「お疲れ様でした。うんうん、優秀な仲間達がいてくれると、実に楽でよろしい事だ──」
そして、晴明は懐より封印の札を披露し貼り付ける。歳破神は封じられ、源氏の呪いも幾分かマシとなる。
「ならば帰ろう。やるべき事は行った。後始末は武者ら、マスターらにお任せだ」
アプリを落とし、踵を返す晴明。確かにキャスターは、真正面きっての戦いは不得手。
しかし──自らの工房にてあれば、その牙城は盤石。つまるところ、京都にて晴明に勝る輩は存在し得ないのだ──
景清【おのれ、おのれぇ…!よくも…っ!】
晴明「恨み骨髄と言った様子だな。まぁ解らなくもない。俗に言う生き恥だろう今の姿。だがまぁ、怨霊相手などに陰陽師が負ける道理も無いのは自明の理」
【ッ…!!】
「そこで橋でも見ているといい。君にトドメを刺す輩はすぐ現れる。それまで大人しくしていてもらえると、こちらとしては非常に助かるからね」
それだけを告げ、転移を終える晴明達。気配はかききえ、静寂が戻る。
【おのれ、おのれ…!おのれぇ…!!】
憎悪の向ける相手でなくば、怨霊は脆い。徹底した相性の妙を突かれ完封された事実に、景清は怨嗟と慚愧の咆哮を上げるのだった──
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