人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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旅をする魂が在った


旅をする王が在った


それに続く善き人が在った


そして――それを支える者達が在った


その忠節と、絆が


小さな奇跡を起こす――


小さな奇跡

――走る光が収まり、目を開く

 

 

 

「ギル、お疲れ様でした」

 

 

 

聞こえるオルガマリーの労い

 

 

「うむ。お前たちも随分と奮闘した。我等の帰還せし場所、よく護ったな」

 

頭を撫でる

 

 

――左手には、黄金の杯が握られている。黄金の船と操舵輪、ハートと槍、そして黄金の羊皮を象った――

 

 

「それが・・・界聖杯。修正される世界、総てを汲み上げた、『世界そのもの』の聖杯・・・」

 

 

――そう。これは、果てなき戦い、想像もつかない害悪に対する、備え

 

 

――いまだ姿は見えずとも。必ず機会はやってくる。『世界総て』を懸けて立ち向かうものが

 

――護りたいものが、確かにあるのだ

 

 

「あの戦艦は腰を抜かしたよホント!君は本当に規格外だなぁ!」

 

 

「たわけ、当たり前の事を一々驚くな。――さて」

 

――こちらの戦いはこれからなのだ

 

 

「黒幕の正体、これからの方針、目的の真偽などの面倒事は貴様らでやっておけ」

 

 

――大英雄と戦った時よりなお強く、扉を睨み付ける

 

 

「我の決戦は此れより始まるのだ――」

 

 

右手にエアを握り締める

 

 

「ちょ!?」

 

 

「マスター、我を止めたくば令呪を使え」

 

 

「ええっ!?」

 

 

――呼吸を整える

 

 

「来るか・・・!」

 

 

「皆さん!お疲れ様でした!」

 

 

満面の笑顔で管制室に入室する、聖女ジャンヌ

 

 

「『天地乖離す(エヌマ)』――」

 

 

「わぁあぁギルストップストップ!!!マシュ止めてぇ!」

 

「落ち着いてください!落ち着いてください英雄王!」

 

「えぇい離せ!離さぬか!度重なる我への暗殺!最早生かしてはおかん――!殺らねば殺られるのだ!!」

 

「だからってカルデアを吹き飛ばしちゃだめー!!」

 

 

――最早言葉は不要。マイレンゲは用意してある

 

 

来い!麻婆!!

 

 

「ふふっ、元気に溢れていますね!お腹は空いていますか?」

 

「減らしてきた!だがそれは我が部屋で美食(グルメ)る為だ!断じて貴様の劇物を食すためでは――!!」

 

 

「良かった!では食堂へ!」

 

「・・・何?」

 

――ここでじゃないのか。あれ?麻婆は?

 

 

「皆さんも、是非!『皆さんの分もありますよ』!」

 

 

――!?

 

「貴様何の真似だ!?我だけでなくマスター達まで仕留めんとするか!!何処を、何を目指しているのだ貴様は――!?」

 

「それはお楽しみです!さぁさぁ、さぁさぁ!」

 

 

凄まじい力で、器を掴み引っ張っていくジャンヌ

 

「離せ――――――!!!!」

――パワフルすぎる・・・

 

 

 

断末魔と共に連行される

 

 

「私達も行こうよ!」

 

「えっ、先輩」

 

 

「死ぬときは一緒!」

 

「・・・カルデアの旅は終わりかしら」

 

「諦めないでください!」

 

 

一行は連行された王に殉ずるように、食堂へ向かった・・・

 

 

 

「――・・・・・・」

 

 

鎧をひっぺがされ『おぉさまえぷろん』と書かれた前掛けを着用され席につく器

 

 

「あはは、似合ってるじゃないかギル!」

 

 

「殺すぞ」

 

「ごめんなさい!!」

 

「――何故我がこのような・・・」

 

 

――自業自得です。共に滅びましょう

 

 

「何が来るのかなぁ?わくわく」

 

「先輩・・・もしもの時は、私が・・・」

 

「・・・来たみたいよ」

 

食事のときとは思えぬ沈痛な雰囲気の一同

 

 

「お待たせしました!皆さん!」

 

 

朗らかな笑みのジャンヌが、入室する

 

 

「――・・・薬草も無限では無いのだがな・・・」

 

 

「ジャンヌ、今日はどしたの?」

 

 

「はい!今日は私が、いいえ」

 

 

――?

 

「『私達』が作った料理を食べていただきたく思いました!――皆さん!」

 

 

パンと、合図と共に

 

 

 

「失礼する。料理を運んできた」

 

「おう、皆健闘したな、食らえ、ただ食らえ。カロリーはイカガだ?」

 

 

エミヤとタマモキャットが続々と料理を運んでくる

 

 

それらは和食であり、洋食であり、中華であり。様々な地方の絢爛料理だ

 

「わぁぁあ!?」

 

「スゴい・・・!」

 

「・・・アニムスフィア家の家庭でも、中々無かった手作り・・・」

 

「我等の監修だ。味は保証する」

 

「うむ!お残しは泣くぞ?」

 

 

――料理が赤くない。これはいったい・・・

 

「――・・・麻婆はどうした?」

 

器の問いに、ジャンヌが応える

 

 

「はい!こちらです!」

 

差し出される麻婆

 

 

 

――だが、その麻婆はおかしかった。赤くないし、汗も涙も出てこない。匂いを嗅いでも卒倒しないし、舌を砕くような刺激も伝わらない気がする

 

 

「・・・何の真似だ?貴様の受けた苦痛のごとく、辛く辛くするのではなかったか?」

 

 

目の前におかれた状況が信じられないと言わんばかりにジャンヌを睨む

 

 

「はい、辛味はお休みです!今回は『皆で食べる麻婆』ですよ!」

 

「――何?」

 

 

「『皆さん』に言われたんです!『たまには英雄王だけではなく、皆で食べてみては如何か』とか、『皆で食べれば美味しくなる』とか!『辛くし続けては、本来の味が損なわれる』とか!皆さんの意見を参考に作ってみました!」

 

「――・・・」

 

無言で目の前の麻婆を一口食べる

 

「あぁ!祈りをしなくてはだめですよ!」

 

「――!!」

 

 

――美味しい!辛いが、卒倒する辛さではない!きちんと料理として成立する辛さだ!美味しい!!

 

 

「それはアタシと赤マント監修、味見はアーラシュにきである。集大成だナ」

 

「・・・特異点から帰還する度に死にかける貴方を、いい加減救わなくてはならんと思い立ってな」

 

 

「――・・・誰だ」

 

「はい?」

 

 

「貴様に、正道をたたき込んだものは誰だと聞いているのだ。どこの料理協会だ?」

 

 

「はい!」

 

そういって、ジャンヌは端末を取り出す

 

 

「『部員ネット』の皆様です!」

 

 

「――――――」

 

――――――

 

 

「部員ネットの皆様が、沢山の意見をくださいました。ああしたらいい、これはするべきではないと。ああした方がいい、こうした方がいい。それらが総て、王たる貴方を想った言葉でした」

 

 

――・・・・・・

 

 

「ギル!」

 

「英雄王・・・!」

 

「・・・本当に何処から繋げてるんだろうね?ソレ・・・」

 

 

「・・・それで、辛さの求道を止めた、と」

 

 

「はい!独り善がりはやめ、貴方に喜んでいただける麻婆を!これは、私と、部員の皆様の気持ちです!」

 

にっこりと、聖女が笑う

 

 

 

「食べて・・・いただけますか?」

 

 

「――――――で」

 

 

――――あ

 

 

「?ギル・・・?」

 

 

「でかしたぞ部員共――――!!!!!」

 

ありがとうございます部員の皆様――!!

 

 

コロンビアポーズを取り、歓喜を表す無銘の英雄王

 

 

「大儀であった!大儀であった!!嗚呼、なんということか!この我が!よもや全身全霊で!何かに感謝する日が来ようとはーー!!」

 

 

――もう一口ごとに魂を砕かなくていいんですね!五感総てを砕かなくていいんですね!やったあぁ――――!!

 

「最早疑うまでもない!忠節、忠義、真に認める!!貴様らの働きは!貴様らの忠義は!確かに我という王を救ったのだ――!!」

 

 

本当に、本当に!感謝の念にたえません!ありがとう、皆様本当にありがとう――!!

 

 

「ギル、泣いてる・・・」

 

 

「そりゃあね・・・エアまで抜いてたし・・・よっぽど嬉しかったんだね・・・」

 

 

「何処からか沢山支給物資を贈ってくれたりするし・・・本当に助かっているわ」

 

「謎の協力者、ってとこかな?まぁ、あの王様だからね。なんでも不思議じゃないか」

 

 

「あぁ・・・そんなに喜んでくださるなんて――私まで嬉しくなってしまいます・・・!」

 

 

 

「フハハハハハハハハハハハ!!辛くない麻婆などおそるるに足らぬわ!よし!皆スプーンをとれ!二次会と行こうではないか!」

 

 

「うん!マリー、マシュ!」

「はい!」

「えぇ!」

 

「デザートは後からオルタとヘラクレスさんが届けてくれます!」

 

 

「では、いただきますしよっか!」

 

 

 

――では!偉大なる王、大切な仲間たち

 

 

 

そして――旅路を見守る皆様に感謝を込めて!

 

 

 

「では行くぞ!!両手を合わせて!」

 

 

「「「「「いただきます――!!」」」」」

 

 

 

「はい!召し上がれ――!」

 

 

 

 

「スシ( ゚Д゚)ウマー!やっぱり海鮮サイコー!!」

 

「やっぱり、ご飯とバランスのいい副食ですね」

 

「・・・」

 

「お腹減っていないかい?マリー」

 

「い、いえ・・・どれから食べようかなって」

 

「食い意地ぃ~」

 

 

「違うわよ!はむっ、はむっ、パン美味しい!」

 

 

「リスみたい!あははははっ!」

「ふふっ・・・」

 

「僕はデザートが楽しみだ!SweetSじゃんぬは絶品なんだ!(集中線)」

 

 

「フハハハハハ!!食えないことはない!だがそれでよい!胃と喉を焼かぬだけで料理と呼べよう!ジャンヌ!」

 

「はいっ!」

 

 

「――この麻婆!お代わりだ――!!」

 

 

「ああっ、あぁ――!はいっ――!!」

 

 

 

 

 

 

 

笑顔の団欒、哀しみ無き食卓

 

 

 

溢れんばかりの、愉しみと歓び

 

 

 

――此処にいなくとも、同じ時空にいなくとも

 

 

 

確かに『絆』は此処にあり

 

 

 

――頼りない魂と、無銘の英雄王を

 

 

 

――地獄の辛味から、救い上げたのだ――

 

 

――穏やかな食事を終え、部屋に向かう。

 

「さて、部員共の褒美はなにが良いか・・・ラピスラズリか?刀剣か?・・・むぅ、人理を救った暁には必ず下賜してやらねばな」

 

 

幸福感と共に、魂を眠らせる

 

 

「フハハハハハ!これならば、セイバーの召喚も上手くいく筈だ!刮目して見るがよい――!!」

 

 

 

――良かったですね。英雄王・・・

 

 

――眠りにつく、瞬間

 

 

 

――?

 

 

 

『――・・・こんにちは。ナナシの魂さん。『ブイン』が見ていた物語は、貴方たちが主役ね?』

 

 

 

――全能を感じさせる、何者かの声が

 

 

『貴方の事、応援してるからね。整理券を貰ったの。きっとすぐに逢えるわ。貴方の王様とワタシの王子様、並んだら素敵だと思わない――?』

 

 

――聞こえた気がした




これにてオケアノスは完結です!


今までとは大分オリジナル展開を加えた特異点、如何だったでしょうか?楽しんでいただけたでしょうか?

ヘラクレスやアキレウスはともかく、大戦艦まで受け入れていただけたのは本当に嬉しかったです!出来ないことはない、そう、ギルガメッシュならね!

fateでは一番好きなキャラはもちろんギルガメッシュですがラフム以外大好きです!だから、ついつい見せ場を作りたくなっちゃうのです!使い捨てたいキャラは一人もいませんラフムくたばれ!


これから暫く幕間となります。ロンドンを読み返すので、ペースが遅れてしまうかもしれません

「キュー(はいはいワロスワロス)」

・・・実は当初の予定では、ロンドンは小便王まで全部すっ飛ばすつもりでした

正直そこまで重要なイベントは小便王ぐらいかなぁ、と思っていたので、でも。皆様楽しんでくださるようなので、全編やりたいと思います!

「ええ解ったわ!(ロンドンに)連れていってあげる!(ロンドンに)連れていってあげるわ!!」

精一杯頑張ります!でもシェイクスピアはあんまり喋りません。原作者も手間がかかるやつを素人が操れるわけないだろ!いい加減にしろ!!
 

体調を心配してくださる方、いつも楽しんでくださる旨のコメントをくださる方、大冒険をしてくださる方、本当に楽しませていただいています!


貴方達こそ我が至宝!我が王道!――なんて、いいたくなるくらいです!


次は、無銘にとっても大きな転機になります!ご期待ください!


寒さが厳しくなってきますが、英雄王の威光にて、皆様の心が暖かく照らされますように――!


本当に、ありがとうございました!!
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