人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「行ってほしいところがある?」

ナイア「はい。先程手紙が届き、【お祝いの品を用意したから取りに来てほしい】と。せっかくなのでリッちゃんにも一緒に来ていただこうかと思いまして」

リッカ「それはもちろん構わないけど、ナイアに手紙を渡すような人って…」

ナイア「以前言ったかどうかは定かではありませんが、私の魔具を格安で提供してくださる御方です。直接お逢いした事は無かったと思いますので、是非この機会にコネクションを」

「それって…!」

ナイア「はい。デビルハンター・ダンテさんです」


リクエスト〜デビルハンター・プレゼント・フォー・ユー〜

「失礼します。ダンテさんのなんでも屋…で、よろしいですよね、ここ」

 

届いた書分に合わせ、ある意味ではお得意様であるナイアに先導されやってきたなんでも屋『デビル・ネバー・クライ』に足を運ぶリッカ。そこにいる人物は、当然ながらリッカの世界においても極めて有名な人物だ。

 

(まさかのダンテさん…!そういえば魔具を格安で買い取ったりしてたんだっけ!コネクションすごい!)

 

そう、デビルハンター・ダンテ。週休六日で営むなんでも屋の店主は仮の姿。合言葉を一度聞けば悪魔も泣き出す大活躍にて人間の世界を護る赤いコートのクールガイ。エボニー&アイボリーとリベリオン…2丁拳銃と大剣の組合せはあまりにも有名だ。そんな彼がナイアづてに『お祝いの品を用意した』との手紙が届けば足を運ばぬ理由はない。そして扉を開けた先には…

 

「「うっ…!」」

 

小洒落たレトロな事務所の景観…ではなく、うず高く積まれたガラクタや瓦礫の山がお出迎え。まるでゴミ屋敷のような惨状を目の当たりに、流石の二人も言葉を失う。

 

「お、来たか。久しぶりだなナイア。元気でやってるようで何よりだ。そっちのお嬢ちゃんも、この度はおめでとうさん」

 

そしてそのゴミ屋敷たる惨状から声を掛けてくる存在。姿は見えないが状況的にダンテであろうと目星を付け、二人は顔を見合わせる。

 

「お久しぶりです。少し見ない間にますますズボラさに磨きがかかっているのではないでしょうか?」

 

「相変わらず物言いがストレートだな。これはズボラじゃなくてお前さんらのプレゼントを見繕ってたんだぜ?そしたらまな板の魚にとびはねられたってだけの話さ」

 

「え、ええっと…プレゼントに魔具やアクセサリーを作ろうと一狩り行ったら、アジトに直接襲撃されたか魔具が暴走した、みたいな感じでしょうか…?」

 

ヒュウ、と口笛が鳴る。どうやら自分の言いたい事をピタリと当てた事が気に入った様だ。

 

「流石は音に聞くシャングリラのマスターだ。駄弁りとトークのノリはキレキレらしい。ナイアは口下手だからいいパートナーなんじゃないのか?」

 

「将来的には家族となる予定ではありますが、私は口下手では無いのではないでしょうか?確かにあなたほどジョークは上手ではありませんが…」

 

「ハハッ、そうか。じゃあその将来的な家族の二人のお祝いの品を探すのを手伝ってもらおうか。見てのとおり、何処に行ったか解らなくなっちまってな」

 

愉快げに笑うダンテ。或いは最初から清掃目当てで呼んだのかなこれ…リッカの困惑顔と、いそいそと片付けを始めるナイアの姿があったとさ──

 

〜清掃中

 

「水道、ガス、電気…全部止められていますね。滞納をし過ぎではないでしょうか」

 

瓦礫を撤去し、ゴミを纏めるナイアが、スイッチを連打しながら問いかける。この事務所、やけに暗いと思えばそれもそのはず。生活基盤が軒並みストップしているのである。むしろ今まで生活できていたのが一番の驚きだ。

 

「支払いに役所に行くのも面倒くさくてな。払ってほしけりゃ取りに来いって返したらこのザマだ。ナイア、金はあるから後で払っといてくれ」

 

「全くもう…比類無きデビルハンターでありながらどうしてこう私事ではダメ人間なのですかあなたは」

 

「えほっ!えほっ!埃っぽい!しょうがない、まとめてどかそっと!」

 

このままでは体に良くない影響が出かねない。そう考えたリッカはまずうず高く積まれた瓦礫の山を纏めて外に放り出すことを選択する。両腕に怪我防止の龍手甲を装着し、積み重なった瓦礫を一息に持ち上げる。

 

「うぉおりゃあぁあぁっ!!」

 

筋肉式整頓に繋がる気合の咆哮と共に、瓦礫を撤去するリッカ。捻り出すパワーは悪魔にも決して負けていない。噂に違わぬその力にダンテは息を巻く。

 

「大したパワーだ。防犯ブザーいらずだなこりゃ」

 

「できるだけ人には使わないようにしたいけどね、この力!」

 

「流石の百万馬力です。私は武具扱いに特化してしまったのでこれ程は…ダンテさんは可能ですか?」

 

「どうだかな…最近大した運動もしてないからな。ピザしか食ってねぇ状態でどれくらい出せるやら」 

 

そうして、リッカとナイアの尽力(ダンテはヤジと応援)にて、事務所は綺麗に片付けられる。見るも見事に清掃された空間にて、椅子にてふんぞり返っていたダンテがいよいよ姿を見せる。

 

「ご苦労さん。助かったぜ。仕事疲れで動くのも億劫でな。ハンター同士お互い大変だな、ナイア?」

 

「あなたは週休六日制では…?」

 

(おぉおぉ…!生ダンテだぁ…!!)

 

赤コートの長身、白髪、絶世の美型。20代やや後半程度の不敵な笑みを浮かべた美丈夫が目の前に現れる。ナイアと軽口を叩きながら、手際の良さを称える拍手を贈るダンテ。

 

「まぁそう言うな。支払いとお祝いはきっちりするからさ。ほら、コイツらを持っていきな」

 

そして出されたものは…見るからに禍々しいアクセサリーに武器群、どう使うかも解らない兵器群がずらりと。リッカには悪趣味なオブジェにしか見えないそれが、ナイアには値千金のモノへと映っていた。

 

「おぉ…!上級悪魔の魔具に魔王城の調度品!はたまた地獄元帥の鎧まで!いつも以上に頑張ったのですね、ダンテさん!」

 

「お祝いの席だからな。縁起と景気のイイヤツを狙って狩ったさ。本来ならそれなりの値段を吹っ掛けるんだが、そっちの嬢ちゃんにシャングリラが節目なんだろ?無料でくれてやるよ。特別だぞ?」

 

どうやらダンテはこれを集めていたが故にそこそこ疲弊していたらしい。本来なら魔具を売ったお金で生活費を賄うのが彼のスタイルなのだが、どうやら今回は家計すらも回せないほどに大物を狩ってくれていたらしい。

 

「嬢ちゃん…リッカって言ったよな確か。悪魔にならなくて良かったな。出来た家族は大切にしろよ?」

 

「は、はい!ありがとうございます!ダンテさん!」

 

ダンテの生い立ちからしてみれば、その忠言は何より真摯なものと理解が及ぶ。彼なりの気遣いに、深々と頭を下げるリッカ。彼は飄々としていても、熱いものはキチンと持っているのだ。

 

「よし、渡すものは渡した。じゃあまたな、と言いたいところだが…グレードが上がったとはいえ、いつもの魔具だけじゃぁ味気が無いよな」

 

そうしてダンテは机にどっかりと座り、二人に問い掛ける。とびきりのサービスだぜ、と告げながら。

 

「どうだ二人とも。デビルハンターを雇ってみないか?夜道の警護、怪しげな心霊スポット。鼻歌交じりで歩けるようになるぜ?今なら特別価格でご提供だ」 

 

「えっ!?」

 

「正気ですか…!?誰かと専属契約だなんてまっぴら、やりたいように生きるだけだと公言していたあなたが!?」

 

「お祝いってのは普段やらない事をするから特別なものだろ?それにシャングリラじゃ、ストロベリーサンデーにピザ、トマトジュースも飲み放題食べ放題だってんなら、契約先として不足はないさ」

 

そう、こう見えてダンテは甘党でありピザ好きなのである。それでありながら体型が微塵も崩れないのは流石といったところだ。

 

「ただしかし、マスターとサーヴァントって訳にはいかないな。首輪を付けられたと変な噂が立っちまう。あくまで同盟関係…ってことで、内容はこいつで決めるか」

 

ピン、とダンテはそれを指で弾く。それは美しい装飾が施されたコイン、彼の流儀の契約署名。

 

「表か裏か…。嬢ちゃん、当ててみな。当てたら契約料金は100円にしてやろう。もし外したら…そうだな」

 

「…!」

 

「確か、あんたらのボスはこの世の全てを手にした王だったな?ならこうだ。『その王様の宝物庫の半分』で契約だ。…やるかい?」

 

ダンテから突き付けられた条件。とびきりの祝い案件が示され、リッカはごくりと唾を飲む──




ギル『構わぬぞ。半分程度でそやつを雇えるなら安いものよ』

リッカ「はやっ!?い、いいの!?」

『そやつの調べはついている。そもそも専属契約の案件など巨万の富を積まれても縦に首を振らぬそやつの申し出だ。不意にする事こそ愚かというものよ。思うままに果たせマスター。貴様の賭けに、我が財を乗せてやる』

ダンテ「天晴な気概だな。流石はシャングリラの王様、うまくやっていけそうだ」

ギル『ふっ、ワンコイン働きは覚悟しておけよ?』

そして、賭けの時間が始まる。ナイアと共に相談し、選んだ答えは──

リッカ「じゃあ…表に賭ける!」
ナイア「右に同じ!」

ダンテ「よし、じゃあ俺は裏だな。それじゃあ──」

指で弾かれたコインが舞い、ダンテはそれをすかさずキャッチする。固唾を飲む中、手が開かれ──

「──運がいいな、嬢ちゃん達」

そこに在りしは、表。稀代のデビルハンター、その契約料金がめでたく100円となった瞬間であった。

リッカ「よ、良かったぁ…!」

ダンテ「よろしく頼むぜ。できれば借金の肩代わりをしてくれると助かるんだが」

ギル『小切手をくれてやる。好きな額を書くがいい』

ダンテ「太っ腹で最高だな。それじゃあ──」

瞬間、銃声が轟き断末魔が響く。ダンテが愛銃を撃ち放ったのだ。

「手土産は、地獄の軍勢なんてどうだい?」

すると──事務所の周りに、大量の悪魔たちが現れ取り囲んでいた。恐らく、かの魔具の残党であろう。

ダンテ「ナイア、リッカ。丁度いい。そこで見てな。腕前アピールも兼ねてな」

リッカ「は、はい!」

ナイア「鈍っていませんね?」

ダンテ「そいつは、見てのお楽しみだ!」

【【【【【─────!!】】】】】

…楽園に至る道すがら、今宵もまた、悪魔が泣き出す──

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