人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「招待状が2枚ある!」

『綺羅びやかな招待状』
『エレガントな招待状』

オルガマリー「リッカの名前が書いてあるのは、こっちね、フランス王家とピラミッド、獅子が書かれているわ」

リッカ「………へ?お、オルガマリーのは?」

「私は…とにかくエレガントね。とりあえず行くしかないわ。さぁ、あなたも準備なさい」

リッカ「だ、大丈夫!?オルガマリーなんか凄い場所行こうとしてない!?」

オルガマリー「だ、大丈夫よ…時計塔の頃を思い出すわ…」

リッカ(だめじゃない!?)

〜そして

眼帯の男「来たかね?こちらだこちら。オルガマリー君」

オルガマリー「…─────」

エレガントな男「よくぞ来てくれた。心から歓迎しよう」

強靭な男「あぁ。伝えたい言の葉は、十や二十では効かんからな」

眼帯の男「ははは、意味がわからなかったら素直にそう言い給えよオルガマリー君。では、順に自己紹介と行こう」

トレーズ「トレーズ・クシュリナーダ」

ヴァルゼライド「クリストファー・ヴァルゼライドだ」

ブラッドレイ「そして私が、キング・ブラッドレイ。はっはっは、今日はよろしく頼むよ」

オルガマリー(助けてギル…!!)

なんの因果か、集ってしまった3人の閣下。エレガントサミットが幕を開ける──。


リクエスト〜Your Excellency──分かりづらかったら最後の御方の台詞だけどうぞ──〜

「まずは心からの礼讃、称賛、そして驚嘆を告げさせてもらう。善を謳い、弱きを憂い、そして弱きを踏み躙らぬ公正にして公平なる組織という、一笑に付する一つの理想を体現したこのカルデアという組織。心からの喝采を贈ろう。オルガマリー・アニムスフィア。世界を救済するという大願の為、一丸となって突き進み。断じて犠牲と礎を許容せず万民に笑顔と未来を齎すその誇り高き有り様。俺という破綻者、塵屑にはこの上なく輝いて見える。あぁ、天に輝く日の様に」

 

此処に集まりし、茶会に招かれたオルガマリーが、掛け値なしの称賛を黄金の閣下より賜る。彼はクリストファー・ヴァルゼライド。一言で言えば悪の敵であり、英雄譚の主役であり、大義と正義を愛し其処に生きる個人個人を愛せぬ狂人である。

 

「組織とはどの様に腐るか、理解はしているか?君主」

 

「──集いし集団の中、価値なき者が自己を主張し、同調した者達が利権を主張し、本来の崇高さが失われ傑物が去る。残された愚昧には理念を貫く力なく、緩やかに消え去る。コンテンツの一生に通ずる盛衰です」

 

オルガマリーの言葉にヴァルゼライドは頷く。それこそが腐敗の要因。組織とは、完全無欠の組織とは何を以て定義すべきなのかと。

 

「人の意志は多様であるが余り、それは集団を歪ませる。善意であれそれは例外ではない。部下、側近、盟友、同盟…それらに意志と思惑が介在した刹那、組織は見る間に純粋さを喪って行く。故にこそ、純粋さを保つには絶対なる個人、けして揺らがぬ単一の歯車が必要であると俺は疑わなかった。むしろ今もその理論は揺るがない。──だが君達は、俺が夢見た明日を生きている。涙無く、犠牲なく、礎なく。より良い未来へ、より良い結末へ。英雄王という巨大極まる絶対の歯車が在りながら、護られるべき民であった一人一人が輝かしい未来を『齎される』のではなく『掴み取らん』と突き進む。帝国すら辿り着けたか定かではなく、いや『国』と『民』との仕分けでは辿り着けぬ境地を俺は見た。解るか、君主よ」

 

そう、彼は許せなかった。善が、愛が、絆が、夢が、希望が。小賢しいだけの矮小な悪に弄ばれる世界の在り方とそれを容認する世界そのものが。綺麗事を無様と嗤い、愛する者を破滅に導く世渡りがうまいだけの、権力や生まれにかまけただけの指導者、報いを受けぬ悪という概念そのものを憎んだ。そんな世界の在り方を認めず、しかし無辜の民達、虐げられた人々という『どこにいるかも解らぬ者達』の為にひたすら猛進し『悪の敵』を目指した彼が、民と、指導者と、それらを内包しておりながら全くそういった悪に破綻しない『組織』を見たのだ。その価値が、その意味が。どれほどまでに素晴らしく尊いものかなど表せぬとばかりに今此処に来た。

 

「俺は涙を明日に変えるのだと常日頃思っていた。どれほどの犠牲を積み上げようと、どれほどの嘆きが待っていようと。俺は積み上げた犠牲に必ず報いる。流した涙は、必ずや安寧に繋げるのだと。…同時に、常日頃思っている事は事実だった。『犠牲を容認した時点で俺は悪だ』と。お前達の輝かしき、絢爛の旅路を見据えた末に至ったのだ」

 

それは、ここにしか在らぬ真理。人類が一つにならねば至らぬ結論だと知ってなお。高らかに告げられる。

 

「明日は、変えるものではない。ましてや涙を吸い上げるものですらない。──生まれるものなのだ。庇護する必要なき民達と、微塵も揺らがぬ絶対真理を胸に、そうした笑顔と奮起の末に、愛と希望に満ちた明日は生まれる。──俺は心から、君達に敬服した。どうかそのまま変わることなく突き進んでくれ。俺では叶わぬ道を。俺では届かぬ路を。それこそが、滅びをもたらす光ではない…暖かな陽射しの様な光なのだから」

 

「お代わりは必要かな?」

「ミルクでいい」

 

一頻り語った後、ヴァルゼライドは着席しブラッドレイよりミルクを貰う。握った手の力強さに感嘆する暇もなく、次なる閣下が口を開く。

 

「──君達は勝者ではあるが、敗者でもある。歴史に求められるのは勝利だが、人間に求められるのは戦う姿、その姿勢だ。君達の戦いを礼賛し、讃える手段を人類は持たぬだろう。君達の戦いは常に水面下、人知れぬものだからだ」

 

トレーズ・クシュリナーダ。人間を愛し、人形を厭い、積み重なった犠牲を忘れずに敗者であることを願うもの。

 

「ならば君達の戦う理由とは何だ?人は称賛、名声、己の何某かを信じ求めて戦う。君達は護るべき相手、護った世界に何も齎されはしないだろう。君達は一度も負けず、しかしただの一度も勝つことなくこの星を去るだろう。君達は、常勝無敗の敗者なのだ」

 

「……」

 

「ならば何故だ?何故君達は抗う?誰にも認められぬまま、誰にも認可されぬまま世界は周り、君達の重ねた栄光は民衆の雑多に掻き消されていくだろう。その戦いに、君達は何を望むのかね?」

 

トレーズの言葉は難解で、かつ単純だ。求められし栄光は手に入らず、そして誰に認められる事もない。ならばそれは勝利の栄光なき敗者に過ぎない。ならば、何故戦うのかと彼は問う。

 

「──それは、勝利にも敗北にも興味が無いからです。閣下」

 

「ほう…」

 

しかし、今のオルガマリーは圧倒されるばかりではない。彼女は知っている。理解している。何の為に戦うのか、何の為に生きるのかを。

 

「美しく思われる悲しき人々の感情、重んじた伝統、それらを消し去る弱者の叫び。それは等しくこの世界より生まれます。衰退という終止符を打たれる強者、時代の息吹を生み出す弱者。それらは等しくこの世界に生きている。ならば──我々の戦いとは、それらを生み出す土壌たる世界そのものを護るためにあるのです。強者も、敗者も、等しく歴史を織り上げていき世界を作る。ならばその歩みを阻むものこそが我々カルデアの敵。我々はその敵に右往左往する対応者であり、悲劇を未然に防げぬ神ならざる弱者でしかない。しかし──我々を導き、最先端を駆け抜ける方は強者でも弱者でもない」

 

「では?」

 

「裁定者です。悪も善も、弱きも強きも全てを見定める役割を己に課した王。ならばこそ、等しく護り、戦うのです。歴史を積み重ねる人々、積み重なった歴史そのものを報酬として戦う。ならばこそ、其処に勝者も敗者もない。あるのはただ、未来を奪わせぬという決意と意志がある。だからこそ、強弱差別産まれぬ昨今の我々が在るのです。トレーズ閣下」

 

トレーズは静かに紅茶を口にし、オルガマリーの言葉と理念を聞いた。そしてそれは、人間同士の争いの中では産まれぬ──やはり、人々から見放された敗者である彼女らから生まれたものだと。

 

「……私を、善と思うかね?」

 

「善なるものは犠牲を容認しません。ましてや犠牲者を覚え自らを慰める事はしない。崇高な戦い、出されるべき犠牲など無い。犠牲を認めた戦いに、犠牲を出す戦いそのものに私は否と言い続けるでしょう」

 

そう。それが今尚続く楽園の理念。誰もが綺麗事と笑うそれらを脇目も振らず追い続ける事こそが、自身達の戦いの意味なのだから。

 

「──かつての最大の理解者と、同じ結論を突き付けられるとは。どうかその崇高さとエレガントさを忘れぬよう、願うばかりだ。ロード・アニムスフィア」

 

「お代わりはいるかね?」

「いただこう」

 

ブラッドレイの酌を受けるトレーズ。お、終わったのかしら…。そう不安げに唾を飲むオルガマリーに、ふとブラッドレイが口を開く。

 

「…藤丸龍華、マシュ・キリエライト、オルガマリー・アニムスフィア」

 

「え?」

 

「カルデア職員たち。シオン職員。レオナルド・ダ・ヴィンチ、シバの女王。この時代に、集いに集った英傑達。…人間とは何一つ思い通りに行かぬ腹立たしい種族だが、一つだけ思うことはある」

 

キング・ブラッドレイ。人間の身体をベースに作られたホムンクルス。憤怒を司る、大総統。

 

「私が唯一選んだ妻、あれには誰も彼もが及ばぬが…」

 

眼帯を取り、満面の笑みにて告げる。あらゆる宿業から解き放たれた今の彼だから言える一言。そう──

 

「皆───いい尻だ───」

 

 

彼は、女性の身体で言えば尻派だったのだ──。




ダ・ヴィンチちゃんのラボ

『ゼロシステム』

にとり「エレガントなおっちゃん開発も行けるんだな!すげー!リアルゼロシステムとか初めて見た!」

トレーズ「有意義な一時を過ごせたせめてもの返礼だ。一つの指針として、コンパス代わりにこれを使うといい」

にとり「ゼロシステムとムネーモシュネー辺り掛け合わせたらすごいの出来そう!アドバイザーとして常駐してくれよエレガントなおっちゃん!」

トレーズ「アドバイスか…私が言える事と言えば…」

にとり「ひゅい?」

トレーズ「事は全てエレガントに、だ──」



アマテラス「ワフ?」

ブラッドレイ「ほう──神などおらぬと思っていたが、やはりジパングは神秘の島か。いやいやはっはっはっは(ぐにぐに)」

「ワブ、ワブッ、ワフ」

「はっはっはっは、こやつめあの時ははっはっはっは。お陰ではっはっはっは(わしゃわしゃ)」

「ワブッ、ワゥッ──」

「ポチ、お手」

「────ガウッ!!!!(ヒュパァンッ!!)」

ブラッドレイ「あぶふっ!?」

見切れなんだのは二度目だったか(by ブラッドレイ)

大終末の潮牙

ヴァルゼライド「素晴らしい鍛錬の場だ!誰も犠牲にする事なく、己を際限なく高める事が出来る!この世の艱難辛苦を煮詰めたこの世の地獄!あぁ、だからこそ挑もう!だからこそ乗り越えよう!乗り越えられない困難などない!カルデアの者達に私が残せるものなど、この理念が精々だ!」

スフィンクス・アウラード『───!!』
ラマッス『『『『『『!!!!!』』』』』』
ヒュドラ・ドッペル『シャアァアァアァ!!!!』

ヴァルゼライド「ぐ、おっ───毒、か…!更に、無数の神の獣達の群れ!ゴールは、遥か遠くに!」

オルガマリー「ヴァルゼライド閣下!」

「────まだだっ!!!」

オルガマリー「!ヒュドラの毒を…克服した!?嘘…!?」

ヴァルゼライド「見ていろ君主!最後にモノを言うのは!裏打ちされた鍛錬と気合なのだ!そしてどの様な不条理に晒されようと高らかに吠えろ!」

ラマッス『『『『『グァ────』』』』』

スフィンクス・アウラード『────!!』

「──まだだ!と!!」


…──その日、大終末の潮牙に一人の男の名が刻まれた。

決して破られぬセキュリティなどない。研鑽と発展を怠るなとの発破と共に。

群がる神獣をまだだと無際限に起きる覚醒で跳ね除け。

あらゆるトラップで受けた負荷をまだだと数秒後に完治し。

無限とも言える回廊を、餓死と疲労死すらまだだとただひたすら歩み続けた。

『突破不可能』の不文律を捻じ曲げ、迷宮走破に至った男の名。

──クリストファー・ヴァルゼライド。その名と実績は、楽園の防犯喚起の象徴になったと言う──

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