人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ウマ娘…それは走るために生まれてきた…

彼女らは人類史の名馬の魂『ウマソウル』を宿し生を受ける。

そして自らの存在意義を賭け、栄光を掴むために日々を駆け抜ける!



トレセン学園…そこはエリートウマ娘が集う最高峰の学園。そこに集う者はまさに一流のウマ娘たち。

しかし!!

理事長「危機!!!このままでは!いかぁぁあぁあぁーーーーん!!!」

20XX年!トレセン学園は、食糧難に包まれた!!

オグリキャップ「腹八分目だな…」

スペシャルウィーク「いくらでも入っちゃいます!」

ライスシャワー「いっぱい、いっぱい食べる…」

数多のウマ娘達の食欲により、備蓄と生産プラントは死に絶え、全滅したかに思われた…!

たづな「理事長!これでは食料生産が間に合いません!お腹を空かせたウマ娘が暴徒になってしまいます!」

理事長「憔悴!万事休すか…!」

しかし!!

ゴールドシップ「お困りマリンシップみてーだな、理事長!」

理事長「ぬ!ゴールドシップ!?」

希望はまだ、死滅していなかった!!

ゴールドシップ「コイツを見な。楽園カルデア…楽園ってことはたくさん食料があんだろ。提携組んで助けてもらおうぜ!」

理事長「妙案!!では早速!」

たづな「だめです理事長!理事長には学園のニンジン栽培に回ってもらわないと!」

「不覚!!」

?「では、私が行こう。未だトレーナー不在の私がね」

ゴールドシップ「あ、アンタは…!!」

そしてウマ娘達の命運を背負い!今、一人のウマ娘が楽園へと至る──!!


リクエスト〜目指せ!伝説のエデン!〜

「という事があり、私はウマ娘…トレセン学園を代表してここ、楽園…エデンへとやって来たと言うわけだ。お会いできて光栄だ、御機嫌王。私はシンボリルドルフ。皇帝…その名を冠するウマ娘だよ」

 

───つまりどういう訳なんです?

 

リッカがお茶会に誘われるちょっと前。王になんと資金、食料援助の申し出を示す者が現れていた。それは楽園、即ちエデンの情報を聞き及び別世界からやって来た、伝説の名馬の魂を宿した生命体『ウマ娘』を名乗る者。皇帝であり、トレセン学園の会長でもあるという女性が、気品ある礼節にて王に向かい合う。

 

「かの陰陽師がやっているとの情報は聞いていたな。未来のアプリゲームを原典とした妖精の類か。…念の為聞いておくが、ゴールドシップはウマ娘として存在しているか?」

 

「御存知ですか?実力と破天荒さは他の追随を許さない素晴らしいウマ娘で、このエデンを教えてくれたのも彼女だ。ゴールドシップに、何か?」

 

「いや、何──受肉の時空にて、口座の1割が消し飛んだ故にな」

 

──ギルが遠い目を!?

 

そう、120億。それを言えば大分合っている。詳しくは調べてみよう。因みに目の前のシンボリルドルフはあまりに強すぎて賭けとしてはつまらない馬とまで言われた絶対強者である。

 

「話の仔細は理解した。ウマ娘とやらの擁立がたち行かず経営が傾いた学園の危機を、我が無限の財で立て直したい…そういう持ちかけだな?王を相手に堂々とした物言い…人の上に立つ器は有しているようだな。いや、ウマ娘であったか」

 

「光栄だよ、王。勿論、タダでとは言わない。こちらとしても、数多の便宜は取らせていただく。トレセン学園のスカウト優先権、自由見学、スポンサーとしての優先特権。理事長からも許可を取っているからね。是非、有望なウマ娘を見つけてほしい。そして──」

 

きらり、とシンボリルドルフの目が光る。それはなんと──

 

「──噂に聞きし御機嫌王。あなたを抱腹絶倒、愉快痛快の末に納得させてみせようじゃないか。そのために、私はやって来たのだから」

 

「──ほう。我等に挑む眼差しを向けて来る輩は久しいぞ、皇帝。抱腹絶倒、愉快痛快と来たか。この世の全てを手にした我を崩す手立て、既に掴み虚言では無いと見ても良いのだな?」

 

──ギャグセンス以外の全てを掴んだ王に!抱腹絶倒の挑戦!?

 

分が悪い!エアの危惧がガビンと響くも王は怯まない。皇帝シンボリルドルフの眼差しを、しっかりと受け止める。

 

「あぁ。──貴方に、皇帝のジョークをお見せしよう」

 

──皇帝のジョーク!?絶妙にかっこ良いのか解りません!?

 

「吠えたなウマ娘。この我、AUOジョークに真っ向に挑む気概や良し…!真正面から受けて立ってくれる!!」

 

──AUOジョークで受けて立つ!?王よ、今日が崩脚の時なのですか!?

 

《エア!ジョーク対決の宣言をせよ!!》

 

──え、あ…えぇ…?

 

この方達は…本気だ!本気でなにか、しょうもない事をしようとしている!しかし王が成すといった以上、それは絶対真理の裁定であるが為に──

 

──ジョーク対決!開始ぃ〜!!

 

エアは叫ぶしか無いのであった。…実にトンチンカンな戦いの開幕宣言を…。

 

〜(走るSDエア)

 

「ではルールを確認しよう。単純明快、腹痛で動けなくなった者が敗者だ!…さぁ、ジョークの貯蔵は十分かい?」

 

「ほざくではないかウマ娘めが。ジョークという土俵を選んだ時点で、貴様の釣り銭は無くなったのだ!!」

 

──ど、どうか穏便に…

 

エアを挟み火花を散らす二人の頂点。そう、まさに仁義無きジョークバトルが今始まる!

 

「ではまずは私から。ここに布団がある。実にふかふかして素敵な布団だ。まるで身体が勝手に…」

 

吸い寄せられるように…そっと寝台に入るシンボリルドルフ。──次の瞬間!

 

──うひゃぁ!?

 

「ぬっ…!」

 

驚くエア、即座に庇うギル。その前にて…なんと!掛け布団が高く舞い上がったのだ!

 

「これは…──そう。『ふとんが、ふっとんだ』。ふとんが、ぽんとふっとんだね」

 

───………………………

 

「どうかな?ジャブにしては…強すぎたかな?」

 

自慢げにふとんから起き上がるシンボリルドルフ。困惑するエア。え?本気で?本気で仰っていなさる?

 

「……ふ、ふはは」

 

しかし、エアの困惑とは裏腹に。

 

「ふはははははははは!!そうかそうか!布団が吹っ飛ぶのを掛けてふとんがふっとんだ!それは中々よい目の付け所よ!ふとんがふっとんだ…ふはははははは待て控えよ!かなりのセンスではないか!!」

 

────真意(まじ)

 

「侮っていたぞ。非常に上手いではないか皇帝。そう『ウマ』だけに、な?」

 

「うぶふっ!!ぶっ、ぶふっ…くくっ…くふふっ…!」

 

───えぇ…?

 

渾身のジョーク…らしい…シンボリルドルフのジョークに、カウンターで叩き返す我等が御機嫌王。悶える様に、肩を震わせるシンボリルドルフ。

 

「流石は、楽園の王…!こちらも秘蔵のネタを開放するしか無いようだ…!」

 

「無論だ皇帝、手抜きは不敬と断じるぞ!!命をかけてかかってくるがよい!」

 

──ワタシはどのように受け止めればよいのでしょうか…?

 

困惑仕切りのエアを中央に!仁義無きジョークバトルが幕を開ける───!!

 

 

「ウマ娘のレース場は函館にある。そこは海鮮が美味しい。そう、例えば…『イカはイカが』かな?」

 

「ふはははははは!!ははははははははははは!!!」

 

───(エアのやる気が下がった)

 

 

「我等の戦いに茶々を入れるランサーがいた。それは狂犬にて、横槍を入れてきたのだ。躾がなっておらぬとは思わぬか?横槍を、な」

 

「くふっ…!くひっ、くふふ、ふふっ…!!」

 

──(エアのやる気が下がった)

 

 

「私はレースの前に必ずカツ丼を食べる。カツ丼食べて、レースに『カツ』ために!」

 

「ふふはははははは!!カツで勝つだと!?ふははははははははははは!!」

 

───(エアのやる気が下がった)

 

 

「我等以外にも有象無象は言葉を発する。しかしそれらは大抵が聞くに絶えん。故に我は一喝した!『ダジャレを言うのは、誰じゃ!』とな!」

 

「あっはははははははは!それは私も、ぜひ言ってみたい一言だ…!流石だよ、英雄王!」

 

──(エアのやる気が下がった)

 

…その後も、繰り返しジョーク合戦は続いた。互いの腹筋を殴り合い、鍛える愉快…愉快かな…愉快な戦いが、一歩も引かずに繰り広げられていた。

 

──ふぉーう、ふぉうふぉう。ふぉう、ふぉーう

 

やる気が極限まで下がったエアはフォウの人形と戯れていた。そしてその戦いはやがて終息を迎える。

 

「はぁ、はぁ…!今のアルミ缶の上にあるみかんをも裁かれるとは…!」

 

「貴様もかなりのジョークマニアよな。まさかこの我の、ハサンだけに破産ネタを切らせるとは…」

 

──きゃうー。きゃーう。きゃう。きゅー

 

「…どうやら、私の負けのようだ。見事だよ、御機嫌王。私のジョーク、ギャグの上を行くとは…」

 

「貴様もまた強敵であったぞ、シンボリルドルフ。常日頃笑ってはいるが、この様に腹を抱えて笑う機会はそうそうないのだからな。此度は、引き分けで手を打ってやる。支援の件、全面的に受けてやろうではないか」

 

「ありがとう…。まさか皇帝が、引き分けで精一杯とは…世界は、あまりにも広い。見識がまた広がったよ。ありがとう、御機嫌王。──」

 

…ふと、意志を固めた様に立ち上がるシンボリルドルフ。その目には、決意が宿っていた。

 

「──そんな貴方に、一つお願いをしたい。聞いてはもらえないか?」

 

「ん?」

 

──フォウ、ふぉー。まーりんぺしぺしふぉーう。

 

やる気が極限まで下がったエアとギルに、シンボリルドルフは一つの提案を行う──




会見場

記者「シンボリルドルフさん、いよいよトゥインクルシリーズへとデビューなさいますが!意気込みをよろしいでしょうか!」

シンボリルドルフ「あぁ。──私が目指すのは、古今東西のウマ娘の頂点。唯一無二にして、天上天下唯我独尊のウマ娘だ。三冠、そして7冠…いや。生涯無敗を貫いてみせよう」

記者「「「「「おぉ〜!!!」」」」」

シンボリルドルフ「その覇道、いや…王道を共に歩む偉大なるトレーナーを、この場を借りて皆様に紹介しよう。──王よ、登壇を」

記者「トレーナー…そういえばデビューにはトレーナーが不可欠だ」
記者「あのシンボリルドルフのトレーナー、一体誰が…」

ギル「ふははは!有象無象よ、貴様らは幸運だぞ?我等うまぴょい道の偉大なる旅路、その見送りが叶ったのだからな!」

記者「「「「!?」」」」

「我は関ギル一!このシンボリルドルフと共に七冠、いや比類なき頂点に挑むトレーナーよ!」

──ぎ、ぎるがしゃなでーす…

ギル一「ウマ娘共よ、見上げるがよい!人間共よ、讃えるがよい!貴様らの憧憬、夢に希望!全て我等が背負ってくれる!」

シンボリルドルフ「君達の期待、必ずや応えて見せよう。…彼等と共に」

記者「す、すごい自信と自負だ!これは凄いことになったぞ…!」
記者「明日の記事の一面は決まりだな!!」

シンボリルドルフ「少しの間、よろしく頼むよ。ギルトレーナー」

ギル「こちらの三年はあちらの三十分だ。三十分で…貴様を比類なき伝説にしてやろう!」

──ワタシがふにゃふにゃしている間に一体何が…?

…この後、シンボリルドルフは自身が出れるレースを全て完勝し駆け抜け、伝説を超え神話のウマ娘となる。



────どーきどきどきどきどきどきどきどき!

ギル「我等の愛馬が!!!」



シンボリルドルフを神話と昇華させた伝説のトレーナー、関ギルー。シンボリルドルフのみを育成し、姿を消した黄金のトレーナーの行方は…

エアグルーヴ「会長、あのトレーナーは今どこに…?」

シンボリルドルフ「使命を遂行中だ。とても、とても大きな…」

あらゆるトロフィーを、シンボリルドルフと共に掲げる写真を眺め笑う神話皇帝のみが知っている。誰より彼女が尊敬する、黄金と白金のトレーナー…

「…世界を救う、使命をね」
「はぁ…」

…ギルガメッシュとエア、二人のトレーナーの駆け抜ける旅路を。シンボリルドルフのみが知っているのだ──

シンボリルドルフ 最終育成レベル S+
称号 万全盤石皇帝

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