門番の人「………………」
?「…………………」
「貴様は何故ここに?」
「知らん。俺の方が聞きたいくらいだ」
「そうか。ならば…」
「兄様!当たりましたよ!」
「当たりある者のみ通るがいい。よい旅を」
「うむ…。では、行くとするか…」
(一体いつ、縁が結ばれたのか。全く覚えがないが…)
「楽しみです(わくわく)」
(…妹が良いなら、良しとするか)
「ディオスクロイ、現界致しました。英霊にも噂に名高き楽園、その旅路の一助となりましょう。よろしくお願い致します。さぁ、兄様もご挨拶を」
「……………いつの間に我等と縁を結んでいたのだ…」
召喚の儀、現れしはかつては双子の神。しかし人間達の手により双子の兄妹として語られ、片方は神の座を奪われしもの。ディオスクロイがスペースサーヴァント、或いはアルゴーの縁を辿りやってきた。紛れもなき優秀なサーヴァントの結果であるが、ギル、カストロの顔は共に暗い。
「…………………………すり抜けであったか…」
「何だと貴様、どういう意味か!希望の光、輝ける星たる我等では不足だとでも!?」
「兄様、噂に名高き御機嫌な王様は地上の星を手に入れられぬ運命を歩んでいるとか。我等ではなきセイバーを求め、またここに敗れたのでありましょう」
「ははは、それは残念かつ痛ましい事だ。だが見せてやろう。我等の輝き、その落胆を照らすに余りあるとな!」
「うむ、期待はしている故気にするな。落胆は我の運の無さに向けられたものだ。…未だに届かぬ地上の星よ、いつまで我を焦らせるか…」
「フン。行くぞポルクス。人間の組織の分際で楽園等とを名乗る不遜、真偽を見定めてくれる」
「はい、兄様。それでは御機嫌王、またいつか」
二人は王に背を向け召喚室を後にする。もう何度目かも解らぬその敗北を、ギルは静かに反芻するのであった──
〜
「ふん、成程。人間共に誂えた娯楽は全てと言っていいほどに揃っているか。楽園…そう吹聴するに不足は無いと認めてやろう」
設備を回って歩くディオスクロイ、意外にもそう認めたのはカストロ、アヴェンジャーの気質を持つ男である。地上の粋を全て集めたと言って差し支えぬカルデアの用向き、人間を憎みし彼すらも認めざるを得ない発展と開発の賜物であることを彼は頷く。
(人間などの歴史、どうなろうと構わぬと思っていたが…その守護の際の備えとしては上々だ)
「もぐもぐ…美味しい!」
(正直言って人類の歴史など滅ぼうとも涙の一つも流れはせぬが、第二の生、ポルクスと過ごす場としては悪くない、むしろ良い。見事だ王!)
「あっ、このグッズは如何なる…如何なるものです?」
(光栄に思うがいいぞ人類史!我が妹を喜ばせた分だけは貴様らの道行きを照らしてくれる!精々我らの機嫌を取るがいい!矮小な人類どもよ!)
「ここに来れてよかったですね、兄様!」
互いにて互いの所感を懐きながら、楽園の設備を見て回るディオスクロイ。この短期間の間にポルクスの身の回りはグッズまみれとなり、カストロはポルクスが選んだテナントやたすき、おいでませカルデアのハチマキなどを余すことなく装着する事となった。楽園の設備、そして様相は彼等双子の神にも好印象だった様である。
「お、懐かしい顔がいるじゃねぇか!カストロにポルクス!お前らも来たんだな!遅いくらいだけどな!」
「む…?その軽薄かつ迂闊な声音、知っているぞ。我等は貴様と旅をした記憶がある」
「イアソン!アルゴーの誇り高き船長!ヘラクレスのオマケとしてあなたもこちらに?」
おぃい!と突っ込むイアソン。傍らには風呂上がりのヘラクレス。二人はスパにてリフレッシュした様子であり、この出会いは偶然なのであろう。しかし、互いの間に険悪さはない。むしろ、旧友に再会できた気安さに満ちていた。
「性格に難あるお前も来たか、カストロ。ポルクスとは相変わらず仲睦まじい様だな」
「当然だ、並ぶ者なき戦士ヘラクレス。妹あるところに俺はある。例えそれが不本意な召喚であろうとも…」
「召喚されて本当に良かったです!」
「だっはははは!相変わらずのコンビ芸だなぁ!ま、これでまた一つ俺も楽ができるってもんだ!頼むぜポルクス!ボクシングの神様なお前の強さ、見せてくれよ!」
「えぇ、お任せください。ヘラクレス、出会った縁を祝してどうですか?三ラウンド程」
「それもいいが、風呂上がりでな。また汗はかきたくない。今は挨拶回りに時間を費やすが良かろう。その時は是非、相手をさせてくれ」
「…妹の誘いを不意にするとは、お前で無かったら殺していたところだぞ。ヘラクレスよ」
「バーカ。ヘラクレスを殺せるなんざ寝言は寝て言えよ。頭がおかしくなった頃のこいつならいざ知らず、理性と判断が出来たコイツが一度だって死ぬのなんざあり得ないね。現に今までの旅路で一度もコイツは死んでねぇ!」
「ふふっ、あいも変わらずヘラクレスが大好きなのですね。そこは私と一緒です。共に好きな方の為にも頑張りましょう、イアソン」
「………(ヘラクレスへの想いを否定できない顔)」
「あったりまえだ!コイツは古今東西、最強の大英雄!楽園においても揺るぎない頂点だからな!あ、ギルガメッシュは殿堂入りか同じくらいな。ゴージャスの方は特にな!」
「………我が妹の方がカリスマと勇気以外は勝っているぞ」
「そこしか勝ってる場所がないのは大いに同意しよう」
「ヘラクレス!?」
「む、そうだ。ならばお前達にオススメの設備がある。行ってないなら是非脚を運べ。マップのこの辺りにだな…」
「まぁ、ヘラクレスのオススメですって?是非行きましょう兄様!」
「う、うむ…」
どうも会うやつ会うやつが朗らかでやり辛い…。そんな事を感じながら、楽しげなポルクスの傍にてあるカストロであった。
〜
「まぁ…。兄様、御覧になっておりますか?人というものは素敵なものをお作りになりましたね」
二人が脚を運び、見上げているもの。それは再現された満天の星空、星天の海。最高品質のプラネタリウムにて再現された、無数の星々の輝き。感動に目を奪われながら感嘆するポルクスの隣で、カストロは呟く。
「うむ、星々を見上げる分際でありながら…いや、見上げる存在であるからこそか。これ程真に迫る輝きを再現してみせたという事だな」
「えーと、織姫と彦星はどこでしょうか」
「人とは矮小で、愚かで、無様ではあるが…何かを築き、描くという行いは否定せん。人間ならではの文化もまた在ろう」
「ベガ、アルタイル、デネブ…様々な星があるのですね」
「これもまた、神々…星々への尽きぬ憧れがもたらした結果でもあるのだろう。愚かでありながら賢明、愚昧でありながら聡明であるのが人間、か」
「まぁ。あいも変わらず蠍に狙われているのですねオリオンは。自業自得ではありましょう」
(フッ…我等のマスターとなる存在、それが何者であるのか…それくらいの興味は持ってやってもよいな)
「兄様。御覧になってください。あそこに輝くのは…」
ポルクスが指さしたその場所に輝くは、双子の星。かつて、人間にて歪められる前にて輝いていた遥か天空の星…
「…。……そうか。再現されるは道理ではあるのだな」
そう、ポルクスと二人で輝く双子の星。かつて零落する前の偉大なる姿。その輝きをも再現してみせた楽園に…
「ポルクスよ。…俺は正直なところ人類などどうでも良い。人類史もまた然りだ。だが…」
「はい」
「あの輝きを、僅かなりとも再現した人類の必死さに免じて、この召喚の際は力を貸してやろうではないか」
そう。零落させたものも人間であり、そして輝きに憧れ再現してみせるもまた人間。その身勝手ながらも誠実な人類の機微を嗤いながらも…
「えぇ、頑張りましょうね。兄様」
人知れず、妹に奮闘と決意を示すカストロであった。人の為でなく、人の中にある双子の星の輝きを護るためにと…
憎悪の星は、一度きりの召喚に報いる事を誓うのであった。
おまけ
ハデス【やぁ、二人共!来ていたんだね!】
ペルセポネー【ポルクスはともかく、カストロも来るのは意外ですわ!よくぞいらっしゃいました!】
〜
ヒュプノス「来たか。ゆるりと過ごすといいだろう。のんびりとな」
〜
アルテミス「やほやほー!二人共いらっしゃーい!私とオリオン共々よろしくね!リッカには酷いこと言ったりしないでね?」
オリオン「ホント頼むな。アルテミスが世界で唯一オレと同じくらい熱上げてる子だからホントに頼むな」
〜
ヘスティア「まぁ!まぁまぁ二人共〜!いらっしゃい〜!これからよろしく頼むわね〜!」
キリシュタリア「そして私は自分をゼウスだと信じている一般マスター!よろしくね!」
「…………」
ポルクス「兄様、ここは…」
「……オリュンポスであったのか?」
ギリシャの神々が集う光景に、驚きを隠せぬディオスクロイであったとさ──。
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