女王「資格があるなら好きにするがいい。無いならば私が処断する」
?「なにそれ怖い。くじ引きしか持ってないんだけどこれは?」
「…よし、ならば通れ。歓迎されるかどうかは貴様次第だ」
?「おう!!よーし!頑張っちゃうぞー!!」
「…なんとなく、昔の自分を思い出さんでもない…」
「三つ星狩人、トライスター・オリオン見参!来ちゃった来ちゃった、来ちゃったぜ古今東西の美男美女が集うと噂のナンパリゾート、カルデアにオリべぇが来ちまったぜ!こりゃあ俺も運とツキが向いてきたってわけだな!なははは!」
一目見るなり「特に言うべきことはない」とバッサリ断じられしスペースサーヴァントの縁を辿ってやってきたオリオン、熊ではない方。超人にして女神を番とするギリシャ有数のプレイボーイ。人妻女神なんだってどんと来いなヘラクレス、アキレウスに次ぐギリシャの有望株が楽園の敷居を跨いだ。無論、なんだか色々変な決意を彼は懐いている。
(噂によればここはマスターもすげぇ美女揃いって話だからな。美少女マスターだったら俺もやる気満々になっちゃうんだけどなー!どうだろうなー!)
通りかがった職員すらも美貌が半端じゃない南の楽園にテンション上がりまくりのトライスター・ハンター。自身と契約した相手が美女であることを心からお祈りし…
「よっし!じゃあマスターに挨拶がてら…楽園でお付き合いしちゃいそうな子にアピールしちゃうかぁ!オリオン、カワイイ女の子の為ならいくらでも張り切っちゃうぜぃ!」
イヤッホー!とテンションMAXで駆け出すギリシャのプレイボーイ。その旅路、というかナンパタイムに待ち受けるのは、果たして…
〜
「むむ、あそこにいるのはアストライアじゃねーか?間違いねぇ、あのドギツい色とロールは間違いねぇ!」
早速始めたナンパロード、出合い頭は平和と裁きの女神アストライア。法と秩序を遵守する厳格な女神である。とはいえその美貌はまさにギリシャ女神ならではなので早速…
「よし!回れ右!!」
オリオン、後ろへ向かって全力で前進。むしろ初対面で女神とエンカウントした自身のチョンボを全力で呪う羽目となる。
(あれぇおっかしいなーいきなり女神と出会うとかどうなってんだ俺ー?まさかナンパの腕前鈍っちゃったー?)
彼のポリシー、女神は絶対にご遠慮しよう。特にギリシャ。好かれても嫌われても絶対にろくな目に遭わない。実体験からくる揺るぎない決意が彼を勇退に至らせる。何も見なかった。何も会わなかった。大丈夫。まだミスはしていない。
「あら、オリオンではございませんの。あい変わらず罪が重すぎますのね?」
(バレたー!!)
2秒でエンカウント。目と目が合う瞬間ヤバいと気づいたオリオン、ハードラックとダンスる羽目に。とりあえず怒らせまいと言葉を必死に探し、
「罪?あー…女性を狂わせる、このハンサムフェイスやその生き様が…かな?もう起源『イケメン』とかそういうレベルの罪深さ…とか?」
「おほほ、蘭陵王さんの爪の垢を飲みながらほざきなさいな。──よい、しょ」
バッサリと戯言を断ち切りながらオリオンの背中に回り、後ろからガッシリと腰の部分に手を回す。無論お誘いではない。
「え?ちょっと?アストライアさん?ちょっと?何する気?」
「何もなにも。貴方の罪をノータイムで裁きますが故の準備でしてよ。───ふんっ!!」
次の瞬間──信じ難い事に、鋼鉄の筋肉にて覆われたオリオンの巨体が宙に浮く。勢いと世界が反転する浮遊感に思考を奪われたオリオンは状況を把握することなく──
「ごげはぁっ!!?」
ヘソから投げるバックドロップ一閃、カルデアにオリオンが突き刺さる。見事に描かれるアストライアのボディアーチ。反り、勢い共に完璧なプロレスアーツがアートを醸し出した。
「自戒し、自省なさい。そもそもあなたが女性を口説く度に罪は重なって参りますのよ?」
(楽園…身持ち、硬いぜ…)
突き刺さった状態にて、オリオンはその盤石さを思い知るのであった…。
〜
そこからケチがついたのか、アルテミス以外の女神に見放されたのかはたまた見向きもされていないかどうかはともかく。オリオンのナンパバトルは難航を極めに極め…
「おっ、其処の紫髪のイケてる姉ちゃん!似合わない杖なんか持ってどうしたのよー!」
「はぁ?初対面で随分ナメた口聞いてくれるじゃない。戒められたいって啖呵でいいワケ?それにその行為、ナンパってヤツよね?」
「え、いや思った事がちょっと漏れたといいますかね?クラスは何、ライダー?うっそだいあなた、だってその鋭いステップポルクスにも劣らない感じの世界を狙える──」
「余計な!お世話!だってのっ!!」
「うおわぁあぁああぁ!!?」
聖女に声をかけてみればゴングが鳴り、アゴとこめかみを的確に打ち抜かれるという鮮やかなサンドバッグとなり…
〜
「え?南米の女神?それがなんでルチャ・リブレ?エラい魔改造されてませんオタク?メキシコって南米でしたっけ?」
にこやかに笑う長身のお姉さんに、正直な疑問を呈してみれば…
「オー、ご存知ないデスか?自由なる闘争ルチャ・リブレ。神々すらも魅了するグラシアスなバトルを!アナタそれはダメ。人生の十割を損してマース!」
「必修科目なのぉ!?え、ちょっとまって!なんでフロントチョーク!?なんで!?怖い!すっげぇ怖い!」
「あなたの様な下半身がだらしない輩の更生にも効果バツグンなのデース!では準備はよろしいですか?飛びマース!!」
「飛ぶとか何!?待って!ちょっと待って!!心の準備とか色々ヤバいからおわぁあぁあぁあぁ!?」
首を極められからの跳躍デスコンボを決められたり…
「次のギリシャジャパンコラボ楽しみねぇ〜。頑張るわぁ〜」
「是非是非お願い致します!これで身内しか登録者がいないと揶揄されまくりの妾も世界にはばたきたもうや!あなや喜ばしき!」
(うほっ!?絶世の未亡人系人妻見っけ!あれ、でも片方見たことあるような…ていうか片方のオリエンタルな人服装エグっ!?)
廊下でコラボ予定を話す美女二人に狙いを定め歩んでみれば…
「そこのお二人様ー!もしよかったらお茶でもど」
「その誘い、叶わぬ禁忌である」
「貴様、今風紀を乱したな…!!」
「えっ!?あれ確かあなた噂のヒッポリュテと誰ですか長身イケメンおにいさぁぐぁあぁあぁ!?」
即座に対応したタケちゃんの合気道足掛けにより空中で3回転した後話を聞きつけたヒッポリュテの渾身の顔面ダンクシュートによりめり込むオリオン。
(け、軽薄な遊びはノーサンキューっていう健全な組織なのね…オリオン、わかっちゃった…)
「立て貴様!楽園でふしだらな事を行った輩にはアマゾネス折檻と決まっているのだ!さぁ立て!!というか貴様オリオンだな!さぁ立て!!!」
「女性と見た慧眼は感服しよう。ならばこそ、『うわっ思ってたのと違う』等と言われて曇る母を目にしたくは無いのでな」
(色々、訳ありで…複雑なのね…)
楽園、清らかなところだなぁ…ヒッポリュテに首根っこを引っ掴まれながら、ズルズルと引きずられていくオリオンでありましたとさ…
〜
「はぁ…ひでぇ目にあったぜホント…」
昼の風紀徘徊員(ちょくちょく迷っている)ヒッポリュテに絞りに絞られ、ヘロヘロになりながら開放されるオリオン。古今東西の美女は揃っているが、決して軽薄な理由の集いでないことは骨身に染みて理解した。
『女性と話をしたいならそういう施設と手続きがある。きちんと段階を踏んでから挑むがいい!』
ヒッポリュテから紹介された飲み会酒場と方式を学び、オリオンは背筋を伸ばす。
「完全NGかと思ったら健全な酒場とかもあるのな!お固いだけじゃないのは流石な楽園といったとこだなぁ!」
(まぁ世界をアレコレする青少年の集いだ、大人の触れ合いはアレだよな!よっし、なら節度踏まえてお話しちゃいますか!)
よっしゃー!あわよくばアフター行くぞー!と、不屈な意志を見せるオリオンに…
「へー、どこに行くつもりなの?ダーリン?」
「そりゃお前!重すぎず一生を誓わなくてもいい一夜のかるーいお姉様たちとの語らいに…へっ?」
「ふ〜〜〜ん。私に声もかけずに行くつもりなんだぁ〜。へー」
聞き慣れた言葉、見知った風貌。何より冷厳荘厳な殺意を以て弓を番える、女神の笑顔がこんにちはしたのであった──
オリオン「あ、あ、アルテミスさん!?いらっしゃったんですねいやぁこれは奇遇だなぁあっはっはっいやいやこれはあっはっはっ!」
アルテミス「うんうん奇遇だね〜。私がいたのに気づかないってどういう事かなー?他の誰かに夢中だったとかかなー?」
おりべぇ「ウワキナンゾスルオンナノテキメ!」
オリオン「なんだその熊のぬいぐるみ!?なんか声似てるけど!?」
「これはオリオンだよ?ヘスティアおばあちゃんに『バブみを感じてオギャりてぇ!お前にはねぇ温かみがてぇてぇ!』なんて言うからちょっと頭をいじったの♪」
おりべぇ「アルテミスダイスキ!」
オリオン「ロボトミーされとるー!!わからせってレベルじゃねぇぞ!いやまて落ち着けアルテミス!話し合おう!時には最高級フルコースより軽い酒場のツマミが食いたい時もあるって時も」
アルテミス「えー?カルデアの皆を軽い扱いしたのー?ちょっと許せない失言だなー今のはー」
オリオン「理不尽すぎんだろ!?」
アルテミス「ちょうど良かった!今リッカとオリオンの話ししてたからぁ、連れてってあげるね!物理的に固まって話せないかもだけどー!」
おりべぇ「アルテミスダイスキ!」
オリオン「待って!?慈悲を、慈悲を頂戴女神さまー!?」
アルテミス「えーい!QPになっちゃえー!」
オリオン「タスケテーーーー!!?」
〜リッカ自室
アルテミス「というわけではい!QPオリオン!運が高まるよ!やったねー!」
『QP結晶に入れられたオリオン』
リッカ「えぇ……」
アルテミス「オリオン共々、これからもよろしくね!リッカ!あ、動いたら教えてねー!」
「…ど、どうすればいいんだろう、これ…」
部屋に妙なインテリアが増えてしまった事に、困惑仕切りのリッカであった──
おりべぇ「アルテミスダイスキー!」
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