人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カーマ「このアイスクリーム美味しいですね!(ペロペロ)」

ラオウ「うむ。我が夏草に在るもの、褒めてくれる事は喜ばしい。気に入ったなら幸いだ(ペロペロ)」

アジーカ『モモモモモモ』

カーマ「…市長さん、なんですね。この夏草、凄く変わりました。前と比べて」

ラオウ「前の夏草を理解しているか、お嬢さん。戸惑っているか?」

カーマ「ええ、まぁ…凄く、進化していますから」

ラオウ「半年だ」

カーマ「!?」

ラオウ「半年もの間、理解できぬ空白がある。それは、私が市長として見落とした余白だ。私はその余白を埋めるために、奮起してきた」

カーマ(ゲーティアが人理焼却していた期間…!確かに外の世界では理由なき空白ですが、それを理解しているのですか…?)

ラオウ「加えて…我が街からは、外国に希望を持って旅立った者がいる。親もおらず、懸命に生きる者が」

アジーカ『!』

ラオウ「私は、今尚生きる未来ある若者の為にこの都市を作っている。それは今言ったものあり、君たちでもある。私は、この夏草に生きる者の為に生きているのだ」

カーマ「……」

ラオウ「遥か異国で苦闘する者を癒やしたい。安心できる止り木でありたい。私が望むのはそれなのだ。それが、私の望む夏草なのだ。その者の澱みを、引き受けてやれるような…」

カーマ(…この方は…)


生徒会長は何故リッカを恩人と仰ぐのか。

「昇陽英傑学園にようこそ、リッカ並びに東風谷早苗、数多の御学友。私は生徒会長を務めている、誰かの幸せが私の幸せがモットーの女黒神愛生!若輩ながら、皆の学園生活を支え見守る役柄に就いている。リッカは私に生きる指針を示してくれた我が恩人!人生の師でもある!」

 

凛とした濃紺の髪、ビシリと揺らがぬ視線に威風堂々。腕組み話す少女は客人に対応する際にも自分を通す程の気概を示す。ルル、ゆかなはいつもと変わらないですねと頬をかいている程度にはいつも通りな様だ。

 

「早苗もよくぞ戻ってきた!連絡を送らんとしていたが所在も、場所もまるで掴めない消失としか呼べない現象を越えられず無念を抱えていたのだ。無事かつ壮健で何より!」

 

天晴!と書かれた扇子を開き朗らかに笑う黒神。僅かに滞在していた早苗の事も忘れていないという程の自負と責任感に満ちた彼女は、揺るぎない自信と自負を否応なしに示している。

 

「すみません!私はこの世界ではなくげんそむぐ!」

 

「ごめんごめん!ちょっとサナちゃん訳ありでさ!会いたかったってサナちゃんも前々から言ってたんだ!元気そうで良かったぁ!」

 

早苗を素早く制すリッカ。早苗は常識に囚われない女。自身の直感で物を言うため嘘偽りの方便すらも使用できない事がここで発覚、清姫にっこり。

 

「ジャンヌよ、よろしく。ところでリッカを恩人と呼んでたけど、それはどんな意味なわけ?」

 

「む、私の事など大した事ではないのだが…そうだな。気掛かりな事を残しては素直にお祝いされるムードにはなるまい。ならばかいつまんで説明しよう。私、黒神愛生はどんな生を送り昨今まで生きてきたのかと。何、そう取り立てて劇的なものでもない。私程度の者など、どこにでもいるのだからな」

 

黒神はそう自嘲し、話し始める。自身がどんな者であり、どんな人物であったか。その半生を──。

 

 

彼女は親を、産まれた直後に無くした。母親は己を産み出した直後に亡くなり、父は何処かへと消え去った。愛人を作っていたのかもしれない。それは最早確かめられぬ事だった。

 

愛も知らず、恩も知らない彼女は生命の意義、意味というものに疑問を持つことになる。

 

『母は私を産むためだけに産まれ、死んだのか。ならば自身が為すべきこと、生きる意味とはなんなのだろうか』

 

此処で、『あなたは誰かを幸せにする為に産まれてきた』と啓示を受ければ彼女はもっと早く、もっと鮮烈に生きていけたかもしれない。しかし彼女には、有り余る才覚…否、『ギフテッド』と呼ばれる障害、或いは特権を手にしていた。

 

何をしようとも完璧以上にできる。出来ない事は出来る人間を見れば出来る人間以上に身につける。解らない事は1を知れば120を可能とする。この世にはできないこと、力を合わせればならない事を学ぶ機会もなく、運命に出逢うこともなく。黒神は歪んだ人間へと育っていく。

 

『この世の全ての人間は、私に統べられ幸せにされるために生まれて来たのだろう。でなければ、こんな不完全な生き物である必要性がない』

 

不完全な生き物であるが為、人間は完璧な生き物を求めた。ならば自身が完璧になる事で人類の希望を担い管理し導こうと、歪んだ全能感…傲慢なる自我を形成していった。

 

『私が提唱する完全に、完成に、お前たち不完全は盲従し従うがいい』

 

そんな、傍らに凡人寄り添わぬ怪物として、人を理解できぬままに人を導かんとする傲慢を懐きながら彼女は小学、中学を卒業した。彼女にとっての世界は、自分という救世主を待つ無知蒙昧の亡者達の庭だった。彼女は人間を、人間として認識していなかったのだ。

 

『自身こそが、完成された人間だ。人間を幸せにする事が私の産まれた意味なのだ』

 

そう信じ、そう生きるものだと。彼女は確信し疑わなかった。──彼女に、『藤丸立香』に会うまでは。彼女とたまたま同じ高校、同じクラスになった彼女は、生まれてはじめて挫折と敗北を味わうことになる。

 

学級委員長を決める投票。黒神は無能な皆を導くために立候補し、立香は皆の不満を少しでも受け止められたらなと背中を押され立候補した。彼女には自信があった。人の上に立つものとして、自身より相応しい者はいないと。そして、開票の結果は…

 

『馬鹿な──』

 

九割の票を獲得したリッカの圧勝。クラスの民意は、リッカを選んだ。彼女はリッカに、初めて自身に敗北を突き付けた者に問うた。

 

『何故お前なのだ、人を救う使命もない、人を救う義理も義務もない、そんなお前が何故選ばれる?私は人を導くために生まれてきたのだ、それが…』

 

それが何故!そう問うた黒神に、リッカは答えた。

 

『誰もそんなこと頼んでない。あなたはそう思わなくちゃ自分が生きていけないだけ。人を見下している癖に、人に頼るみっともない娘。そんなあなたが、私を受け入れてくれた人達をバカにしないでよ』

 

リッカはただ、自分を受け入れてくれた優しい人達を護りたいだけ。何の為に生きていくかなんて、どうでもいいと黒神に突き付けた。

 

『産まれた意味がなきゃ生きていけないなんて、そんなのAIやロボットと何が違うの?』

 

…産まれた意味、生きていく意味。母を喪った哀しみと後ろめたさから縋った理念を暴かれ、彼女は人生の全てを否定され敗北した。元々彼女は、人間社会で生きる完成された怪物でしか無かったのだ。

 

『私は、愚かだった』

 

人を見下し、不完全としておきながらその人間がいなくては何も生み出せない。自身が何かを作ることは叶わない。なんでも出来るだけで、何かをしようとは思わなかった。

 

彼女は自身の傲慢を引きずり出され、リッカに余すことなく喰らわれた。

 

──しかし。生きる意味も、生きていく希望も失い、茫然自失となった彼女を救ったのも、また彼女であった。

 

『酷いこと、言ってごめんね。私、どうしても嫌だったんだ。私を受け入れてくれた皆を馬鹿にされるのは』

 

そうして頭を下げる高潔な意志を見せたのは、藤丸リッカだった。そして彼女は、こう言ったのだ。

 

『あなた、生きてる意味や産まれた意味で悩んでるでしょ。でも、先生や、…私の親友が言ってたんだ。産まれた意味や生きてる意味を持っていると、その為にしか生きていけないって』

 

彼女は、今まで誰も伝えられなかった事を伝えた。いやそもそも、同じ景色を、同じ目線で見ていた。

 

『だから、そんな意味とか理由とかを探すのはあとでもいいんだって。幸せや、人生っていうのは一生懸命生きた最後にわかるものなんだってさ』

 

それは、グドーシから教わった事。リッカの救いとなった言葉は、黒神をまた救う事となる。

 

『だから、一緒に一生懸命生きようよ!不完全とか、不満とかいっぱいあるかもだけど!未来の自分に胸を張れる生き方をしてみよう!一緒に!』

 

見下し、驕っていた自分すらも見捨てず、それでいて対等に言葉を交わし、歪みを糺し目を覚まさせてくれた。人とは首輪を付け引き摺るのではなく、共に生き護る事が大切なのだと。

 

──人生や産まれた事に意味はいらない。きっと終わりに、意味は自分で見出すものだと。彼女はリッカとの対話で見出したのだ。その瞬間、色合いがくすんでいた世界が…生きる事が劇的に思えたのだ。

 

『使命や意味の奴隷であるより、未来の解らぬ荒野が如き人生がどれ程心躍らす事か』

 

──その後、黒神は自身の傲慢と歪みを皆に告げ、誠心誠意謝罪。身近な人達の幸せを自らの幸せとするリッカの生き方を指標として、自身の歪んだ人生を矯正する決意を固めたのだ。

 

そして榊原の推薦により、二年でありながら生徒会長に抜擢。リッカの帰りを誰よりも待ち望む一人となり、彼女の母校を護り続けていた。

 

彼女の生きる世界が、愉快であるように。彼女の未来が、輝かしくあるように。彼女がいつか戻る現実が、痛快であるように。

 

『いつか交わる道の為、私は君を待ち続けよう』

 

そう──人生を救った恩人であるリッカが帰る場所を、彼女は護り続けていたのだ。彼女が愛した人達の幸せを、守り抜く事によって。

 

誰かの幸せが、私の幸せ。──誰かの為に奮闘するリッカの生き方に、少しでも近づける事を願いながら。




黒神「以上、回想終了!ご清聴感謝する!」

じゃんぬ(リッカの人柄は勿論だけど、こうやって向き合った相手の罪や歪みをアジーカは食べてた訳ね…)

マシュ(流石はグドーシさん!誰彼構わず救っちゃうマンさんです!)

黒神「という訳でリッカよ、私は君に贈り物を用意した。誠心誠意の想い、万感の想いを受け取ってくれ!」

ルル「すみません、つかぬ事をお聞きしますがそれは物質ですか」

次の瞬間──

黒神「ん〜〜っ!」
リッカ「んむ〜!?」

「「「「「えぇええぇぇえ〜〜!!?」」」」」

黒神、突然リッカにキス。そう、彼女の辿り着いたリッカへの親愛、それは接吻だった。

じゃんぬ「あぁあぁあぁあのちょっとあなた何してるのよどういう事よーー!?」

マシュ(そういうのもありなんですね!?)

早苗(見た目的には肉食獣同士の牙合わせですが!)

ルル「あばばばばばばばぁ!?」

ゆかな「おやおや、手すら握れん坊やには刺激が強かったか?」

あくあ「ふが!?なにようっさいわね!バイトと受験で眠いんだから静かにしてくんない!?」

黒神「んふ、んん!──よくぞ無事に帰ってきた!さぁ、クラスメートに会いにいくがいい!」

リッカ「──うんっ!」

雄々しいキスを交わし、握手も交わす二人。獅子と龍が如き歓迎の二人は、何処までも爽やかに接するのであった──

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