人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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【強くなりたくば喰らえ!!! 朝も昼もなく喰らえッッッッ 食前食後にその肉を喰らえッッ 飽くまで食らえッッ 飽き果てるまで食らえッッ 喰らって喰らって喰らい尽くせッッ】

大地「俺少食だからあんまいらない」

『全身粉砕骨折』

生徒「ガッ、大地(ガイ)アッッッッ!!」


【防腐剤…着色料…保存料… 様々な化学物質 身体によかろうハズもない。しかし、だからとて健康にいいものだけを採る。これも健全とは言い難い。
毒も喰らう 栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ血肉に変える度量こそが食には肝要だ】

大地「ハンバーガーとカップラーメンでいいでしょ」

『全身筋肉断裂』

生徒「ガッ、大地アッッッッ!!」


【漫然と口に物を運ぶな。何を前にし、何を食べているのか意識しろ。それが命 喰う者に課せられた責任。義務と知れ】

大地「腹に入ったら何でも同じでしょ」

『停学処分』

生徒「ガッ、大地アッッッッッ!!」


―――昇陽英傑学園パンフレットより、食堂料理長、大塚勇次郎の言葉

マシュ「ロボットは素晴らしいです!!あれ?先輩はどこに?」

じゃんぬ「お…」

「お?」

「鬼が出たわッ…!!」

「鬼!?」


さぁ、生き様の魅せどころだぜ──

【男子三日会わざれば刮目して見よ…なんて古い連中は言ったもんだが、女もまた一日目を離せば変わるもんだ。ソイツの味や、生き様によって真珠にも、ブタにもな。お前はい〜い変わり方をしたぜ、藤丸】

 

リッカを特別室──一日一人しか喰らうことの出来ぬ勇次郎特設ルームに連れ込み、厨房に立つ地上最強の料理人の言葉に、固唾を飲みながら頷くリッカ。彼のもたらすこれからの『料理』に、龍が如き生き様を手にした彼女ですら、将軍や王を待つ平民かのように萎縮せざるを得ないほどの圧倒的迫力。

 

(背中から見える、鬼の貌みたいな筋肉の盛り上がりッッッ…変わってない!あの時の、勇次郎料理長のままッ!)

 

大塚勇次郎…人呼んで『地上最強の料理人』。この世全ての生き物は自身の餌であり食材と呼んで憚らぬ傍若無人、傲岸不遜にして食に最も真摯な雄。彼が生まれた瞬間、人間を含む全ての捕食者は被食者の烙印を押されたとまで言われる程の究極の領域にいる『絶対強者』。彼はあらゆる意味で、人類の枠組を超越していた。

 

【自分探しだの、武者修行だの…そんな理由で外国に行くヤツはチラホラ見かけたが…そもそも自分なんてものは日々の中で作られるもの。世界中何処にも、自分なんてモンは落ちてる筈がねぇ。気付かねぇのか気づきたくねぇのか…他者に揺らがされる価値観なんぞ脆弱の一言…】

 

西に人食いライオンがいれば生意気だと首を落とし、東に山の主たる熊がいればイキがりやがってと股裂きにし、アマゾンに珍味があれば生身で突撃し、北に湧き水あらばその身一つで採ってくる。食材、喰らうという全ての行為に真摯的である傍ら…

 

【空腹無くして美食のカタルシスはあり得ねェ。強くなりたくば喰らえ!!俺の料理を喰らいたくば戦え!!】 

 

その日最強の『雄』にのみ地上最強の腕前を振るうと豪語し、戦いに戦い抜いた空きっ腹と一緒に最強のスパイスをもたらす為に学食を『闘争』の場へと変えたその存在そのものが概念の男。夏草にて食事は奪い、戦い、勝ち取るものとの『渇望』にて染め上げたのはこの男の為せる業である。(キチンと女性や子供達、普通に食事できる区画も作られています)。その究極の雄が、リッカに飯を創造るという行為。それは言葉少なくとも勇次郎最大の歓待にして歓迎であった。

 

だからこそ──リッカは天皇に向き合う時と同様、それ以上に緊張していた。彼は食事という行為を物質に例えるなら、あらゆる『不純物』を容認しない苛烈極まる一面を持っているからだ。

 

手を洗っていない、足を組む、舐り箸、過度な私語、汚い食べ方、挨拶のしわすれ、好き嫌い、感謝の欠落…それらを一つでも怠った者を彼は一人たりとも許さなかった。例えそれが生徒であろうとも、例えそれが大統領であろうとも。彼が【不誠実】と断じた者は例外なく彼により【破壊】され『再起不能』にされてきたのだ。『我こそが捕食者』などという傲慢を許されているのは己のみ。命をいただくという概念を侮辱したものは、もれなく病院の点滴のみしか味わえなくなる。

 

そして今!リッカはその『闘争』の舞台に立っているッッッ!無礼や不躾があらば、リッカは今ここで【破壊】されるッッッ!それは強さや弱さの話ではなく『尊厳』の問題ッ!彼の傲慢さは英雄王ギルガメッシュに全く引けを取らないッ!

 

 

【この食事にて…お前の『成長』を見る。もしお前の渡米が下らないものであったなら…】

 

「〜〜〜〜〜〜ッ……」

 

【お前…明日の『出汁』になるぜ……】

 

リッカ!裁定の時ッッッッッッ………!!!

 

【そう硬くなるなよ。難しい話じゃねぇ。お前の『生き様』を見せろって話だ】

 

ポン、とリッカの肩に手を置く勇次郎。その鋼そのものの手からは、神威が如き蒸気が湧き立っている。

 

【期待してるぜ…一年分の【仕込み】を、見せてくれよ】

 

「はいッ…!!」

 

背筋を伸ばし、口の中がカラカラになりながらもリッカは見据える。目の前の、本物の【雄】。ヘラクレスにも届くであろう究極の【生ける英雄】への期待に応える為の覚悟。

 

【まぁ、モノはシンプルだ。温めた手で握るだけの『飯』…塩をちょいとまぶした戦国時代からの『握り飯』…ソイツをお前にくれてやる。ただ、それだけ】

 

そして彼は厨房に立ち…両手に…

 

「え、えぇ〜〜ッッッ…!!?」

 

炊飯器…炊きあがった『4合分』の米を片手ずつに持つという離れ業…いや、真似など出来る筈もない業を見せ…

 

【ただ【握る】。それだけの、簡単な───】

 

(ゆ………)

 

歪んでいた。熱気か、或いはオーラの産物か。勇次郎の周囲の景色が歪み、捻れていた。そして上半身の一張羅が、筋肉の膨張により裂け、現れしは彼の背中に宿る筋肉の膨張により垣間見える【鬼】───

 

【チェリアァアァアァッッッッッ─────!!!!】

 

気迫。そして咆哮。鋼の如くに練り込まれた筋肉の硬直が、両腕の掌の中心、炊飯器より抜かれた炊きたての飯に宇宙の如く収縮され──

 

(ほわぁあぁあぁあぁあぁあぁッッッッッッ!!!)

 

爆裂、爆散。その余りの衝撃は空気を、大気を、星を伝播し、衝撃波となって学園を、夏草を駆け巡った。その結果───

 

『全校生徒にお知らせします。ただいま、料理長の料理により全ガラスが破裂、消滅しました。張替え班は直ちに、学園内のガラスの補修をお願いします。今のお料理による津波の心配はございません。繰り返します。ただいま、料理長の料理により──』

 

慣れ親しんだ様子の放送が響く。勇次郎の料理は世界を揺るがす。かつて夏草に振る隕石をも吹き飛ばしたとされる渾身の料理、リッカは夏草の伝説を目の当たりにしている。

 

【──出来たぞ】

 

全てを蹴散らし、吹き飛ばし、世界を揺さぶる勇次郎の料理が終わり、彼の手にあるものを見る。それは握り飯。塩と海苔がいつの間にか加えられた──

 

(デッ、デカァアァアァアァイ!!)

 

説明不要、勇次郎の顔が隠れるほどの巨大おにぎり。あれ程の硬質で握られたにも関わらず、ほかほかと湯気が登り、指でふにりと突けば何処までも沈んでいきそうな、マリリン・モンローの柔肌が如き米の絶妙な味わい。そして山のような圧倒的スケール。軽く数人前はある。人が、女の子が食べれていい量では無いッッ…!

 

【召し上がれ。さぁ…腕の見せ所だぜ、トカゲちゃん】

 

「ッッッ……」

 

これを、どう食するべきか。リッカは悩む。思い悩む。間違えれば、不敬を買えば全身を砕かれ肩から胸にかけて勇次郎のチョップがめり込み頭皮ごと髪を引きちぎられるかされるのは明白。残すなどあり得ない。しかし、あまりにも数が多い。一人分ではない…一人分…

 

「───!!」

 

天啓──閃き。九十九の努力を形にする、リッカの天性の啓示。彼女の生き様は、勇次郎に対する答えを導き出した。

 

「み………」

 

【んん…?】

 

「皆でッッッッッッ……食べて良いですかッッッッ……!!」

 

リッカ、渾身のお願い!一人ではなく、皆で!彼女はそう、楽園の皆で世界を救った!孤高ではなく、団欒!それが、彼女の得た『真理』ッッッ…!!

 

【────エフッ、エフッ。クク、ハハハ、ハハハハハハ!!ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!】

 

勇次郎、鬼の笑い。リッカの目を見据え、呵々大笑の大爆笑。涙すら浮かべる破顔一笑。彼は笑い、笑い転げ、そして───

 

【──大正解だぜ】

 

「!!」

 

赦しを出す。そう、これは生き様を試すテスト。彼女は外国で、異郷の地で何を得たのかを見据えるための握り飯。丁度『大人数』で食べる量の飯で作られたおむすびであるが故に。一人で喰らう、という思い上がりを見せていれば、リッカは一生病院行きだっただろう。

 

【仲間と喰らえ。友と喰らえ。笑い合い糧としろ。俺以外の総て、寄り添う賢しさを忘れるな】

 

「料理長ッッッ…!」

 

【ココはお前の故郷だぜ…リッカよ】

 

「あ───」

 

ありがとうございましたァッッッ!!リッカは涙を堪え、料理長に礼をする。言葉をかけることなく、勇次郎は満足げに厨房へ去っていった──




おむすび(リッカ)「みんな〜!!」


「「「「「り、リッカッッッ!!」」」」」

マシュ「先輩がおむすびに!?」
エル「これが噂のロボトミー!?」

リッカ「皆で食べろって!帰郷祝だよ〜!」

ルル「あの料理長に…ワガママを、通したのか!?」
エル「流石先輩ですっ!ゲッターエンペラークラスの料理長から許可を勝ち取るなんて!」

アカネ「い、一生食べられないかと思ってた料理長の料理を…マジ…?」

リッカ「私の生き様を認めてもらえたのかな?だったら嬉しいなぁ…じゃあ皆で食べよう!せーの!」

一同「「「「いただきまーす!!!」」」」

また一つ、リッカは強くなるのであった──

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