人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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レイシフトできないから鍛えまくっていいという風潮


異端?封印指定?ホルマリン?政策?取り引き?駆け引き?


もちろんオルガは抵抗するで?
      

全部で!!




――これだ!見つけた!終末剣エンキ!剣にも弓にもトンファーにもなる!凄い便利!


これを主武装にしよう!


新たなる叡智

自室の書斎にて、本と資料に目を通す

 

 

 

ダ・ヴィンチちゃんに勧められた、様々な智恵の書物、その教本を、オルガマリーは読み漁っていた

 

 

 

「・・・」

 

 

メディア・リリィの言葉を思い返す

 

 

魔術師として、若かりし頃とはいえ師匠が敗北を認めたという驚くべき言葉

 

星を集めよ、という、確かにこちらに向けられたアドバイス、または天啓

 

魔術師で在る限り、勝てないという言葉

 

「・・・負けるから、勝てないからといって、なにもしない言い訳にはならない」

 

 

昔の自分なら、ヒステリーを起こしレフに助けを求めていたかもしれない

 

だが、今は違う。さっきの言葉はリッカのものだ

 

 

・・・彼女は才覚や生まれに恵まれた人間ではない。魔術師としても、けして優れた才は持っていない

 

 

本来なら、誰にも見向きもされない筈の彼女が今、―三つも歴史を取り戻している

 

 

魔術の研鑽もなく、優れた魔術回路もなく、また代を重ねた家系もない

 

 

そんな彼女が、確実にグランドオーダーを進み、果たし、確かな未来に進んでいる

 

 

・・・そうとも。偉大なことを為すのに必要なことは、外観でも、魔術の腕でも、積み重ねた家系でもなんでもない。それを誇る魔術師は皆焼け落ちた

 

 

ただ、『勇気』を持って、立ち止まらず進み続けること。それのみが、この絶望を晴らす唯一の力なのだ

 

・・・それを。私は皆に教えてもらった

 

 

「・・・私は、止まらない」

 

そうだ。絶望や理不尽は、足を止める理由にはならない

 

 

絶望なんて辿り着く場所はいらない。ただ、輝かしい望む未来へ進み続けるだけでいい

 

 

希望と、皆との絆。そして――勇気を持って進み続ける限り、道は続くのだ

 

「皆が止まらない限り、その先に未来はある・・・!」

 

だから、私はやるべき事を

 

 

たとえ覆せぬ理不尽があろうと、それを覆す力を

 

 

・・・願わくば、彼女達の行く先を切り開く切っ掛けになることを目指して

 

 

私の研磨は、続くのだ

 

 

「・・・ふう」

 

 

一息つくのと

 

 

「すみません、少しよろしいですか」

 

 

「はひっ!?」

 

 

ドアのノック、優しい声音が響くのは同時だった

 

 

「い、いい、今開けます!」

 

 

わたわたと慌てながら扉に向かい

 

 

「わたっ!?」

 

扉を開けると同時に足をもつれさせ、盛大にずっこける

 

「・・・だ、大丈夫ですか?」

 

扉の先には、大賢者ケイローン

 

 

・・・その前で、私はずっこけていた

 

 

「は、はい・・・上がってください・・・」

 

 

 

 

 

 

「珈琲です、召し上がってください」

 

 

ことり、と淹れたての珈琲を注ぎ、振る舞う

 

「あぁ、ありがとうございます。・・・礼節と気遣いを心得た、優しい娘なのですね、貴女は」

 

 

にこりと穏やかに笑うケイローン

 

「はひっ!」

 

「あははっ、そう畏まらなくとも宜しいですよ。こちら、名刺となります」

 

「め、名刺?」

 

「現代では、これが礼節だと聞きました。名刺だけでも、というやつです」

 

「はっ、はいっ!恐縮です!」

 

 

・・・一々驚いては話にならない。それは解っているのだが。目の前にいるのは、大賢者、ケイローン

 

 

数多の英雄を育て、自らも星座となった空前絶後の大賢者

 

 

そして・・・私が見上げていた、大好きな星座と、『射手座』の原型なのだ。緊張しないはずがない

 

 

・・・だが

 

「・・・はい、取り乱しました」

 

落ち着きを取り戻し、席につき、ケイローンを真っ直ぐ見詰める 

 

私は、所長の立場なのだ。いつまでもわたわたしているわけにはいかない

 

少しでも、立派な所長として振る舞えるようにならなくては

 

 

「・・・覚悟、決意、そして、勇気」

 

「?」

 

「貴方を支えているものですよ。それと・・・敬意と感謝、でしょうか」

 

「・・・!はい!」

 

一息で見抜いた・・・!これが、神話に燦然と輝く賢者の眼力・・・!

 

 

「不躾な真似をすみません。ただ・・・あまりにも真っ直ぐで、眩しかったもので」

 

・・・嬉しかった

 

 

誉められた事もそうだが、今ケイローンが誉めた事は、友達(リッカ)王様(ギル)に貰ったモノだ

 

 

かけがえのない二人から貰ったモノが、大賢者に認められたと言うことが、たまらなく嬉しかった

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「ふふっ、謙虚でもありますね。・・・貴女の身体の事は聞かせてもらいました」

 

珈琲を飲み、オルガマリーに向き直る

 

「聖杯を賜り、一体化した奇跡の人間・・・死の運命を打破した世界でも稀に見る『聖杯の触覚』となった君を」

 

 

「・・・はい。私は、ギルに奇跡を賜りました」

 

忘れもしない。彼のくれた、ただ一つの奇跡

 

彼がいるから、私はここにいる

 

・・・ギルは、私の恩人だ。いくら感謝したってしたりない。私の、唯一人の王様だ

 

 

「その作用で、食事も排泄も、睡眠すら不要になったとか。――それを貴女は、どう捉えますか」

 

 

「・・・え?」

 

 

・・・キョトンとしてしまう

 

 

食事は・・・餓死しないことはありがたくもある。排泄も、トイレに立たないのは楽でいい。睡眠も、眠らなければそれだけやることができる

 

我ながら、便利で良いことづくめだと思う

 

 

「――私は、君が心配なのです」

 

 

・・・え?

 

大賢者が、私を、心配?

 

 

「奇跡を目の当たりにした人間は、大抵が歪んでしまう。名利に、我欲に、浅ましい欲得に歪んでしまう。君はどうですか?『人である』生き方が、歪んではいませんか?」

 

 

「・・・それは」

 

「私は、それが心配だ。人である振る舞いを忘れてしまったら、それは自らが人であるという自己存在を脅かす歪みになる」

 

・・・!

 

「歪みが腐らせるのは肉体や精神ではない。魂だ。魂は劣化する。叡智や奇跡は、魂を救いはしても癒しはしない。不死を手に入れたとしても、魂はけして強靭にはならないのです」

 

 

・・・それは、確かにそうだ

 

 

聖杯を賜ったところで、リッカや王がいなければどうなっていたかはすぐにわかる

 

 

『何も変わらなかった』。理不尽を世界のせいにして、レフにすがりつき、みっともなく思考放棄していただろう

 

 

・・・魂は、けして独りでには救われないのだ。誰かが、傍にいてくれなくちゃ

 

 

「私の言葉を、理解してくれているようですね」

 

「はい。私の魂は、聖杯とは無関係な所で救いを得ました」

 

リッカ、マシュ、師匠、職員の皆、サーヴァントの皆

 

そして・・・ギル

 

 

「それだけは、誓って本当です」

 

「はい。だからこそ、私は恐ろしい。奇跡に侵され、人でなくなってしまう貴女の未来が」

 

 

「――・・・」

 

「貴女の輝きと未来は、かけがえの無いものだ。何者にも奪う権利の無い、大切な宝物だ」

 

珈琲を、飲み干す

 

 

「――そこでです。貴女の歩むべき道の案内を、私にも受け持たせては貰えませんか?」

 

 

――――それ、は。つまり

 

 

「えと、それは、つまり」

 

「はい。私は、貴女の教師になりたいのです」

 

 

卒倒しそうになった。というか三回気絶した

 

 

「おっと」

 

倒れこむ所を、ケイローンが支える

 

 

「私が貴女を見守ります。人外に堕さぬよう、道を見失わぬよう。空に輝く星座のように」

 

「ぁ――」

 

「貴女の『人間性』を、私が護ってみせる。・・・どうでしょう?この私のお節介を、許しては貰えませんか?」

 

 

――そんなの

 

 

「は・・・」

 

そんなの、決まっている――

 

 

「はいっ!!よろしくお願いいたします!大賢者ケイローン!身に余る、身に余る光栄ですっ!!」

 

 

嬉しい。憧れのケイローンに教えを乞えるのは勿論だが

 

・・・自分が憧れていた英雄が、こんなにも優しく高潔な方であった事が、何より嬉しい

 

 

 

見上げるばかりだった、空の射手座

 

あの輝きと同じくらい、ケイローンは素敵な存在であってほしい

 

そんな子供の拙い願いが・・・叶ったようで

 

 

「決まりですね。これからよろしくお願いいたします、我が教え子、オルガマリー」

 

「こちらこそ!大賢者ケイローン!」

 

「はははっ。大賢者、は結構ですよ。出来れば、先生、と呼んでください」

 

 

「はいっ!先生!!」

 

「では早速、こちらを」

 

「?」

 

 

手渡されたのは、スケジュール表?

 

 

「私と英雄王が考案した、一日の生活表です。八時間の睡眠、一時間の昼寝、三食を摂った生活を、貴女には送ってもらいますよ」

 

 

・・・理想的な生活サイクルだ・・・これを、ギルが?

 

「あぁ、貴女に英雄王から言伝てを預かっています」

 

「は、はい」

 

「『――貴様の代わりはどこにもおらぬ。研鑽と勤勉と同程度、自分を大切にせぬか、たわけめ』」

 

「――!!」

 

 

「『貴様の献身と奮闘は重々評価している。今のお前に足りぬは、自愛と休息と知れ』」

 

 

・・・ギル・・・

 

「『風邪を引くなよ。我に看病の手間を取らせるな』・・・と」

 

 

「――っ」

 

「・・・愛されていますね、オルガマリー」

 

 

「はいっ・・・」

 

「素敵な方です。貴女の王は。これも、英雄王が考案なさったのですよ」

 

「・・・はい・・・私、頑張ります・・・」

 

 

スケジュール表を、大切に抱える

 

「自分を・・・大切にします・・・これから、よろしくお願いいたします・・・先生・・・」

 

 

――ありがとう

 

 

・・・大好き。ギル・・・――

 

 

 

「はい、オルガマリー・・・では、気分転換に身体を動かしましょうか」

 

「はいっ?」

 

 

「はい、パンクラチオンですよ」

 

 

「――は、はい・・・」

 

 

 

 

 

 

「あ!マリー!」

 

 

学舎には、タンクトップとスパッツ姿のリッカが待っていた

 

「リッカ。あなたも?」

 

「うん!ヘラクレスとアキレウスが、『お前には絶対パンクラチオンが似合う』って!」

 

 

「――・・・」

 

「マシュが後でお弁当を作ってくれるって!それを励みに頑張ろう!」

 

「・・・えぇ」

 

「貴女たちは恵まれている。苦楽を友にする学友は、何より得難いものです」

 

「はいっ!マリーと一緒に勉強できて、嬉しいです!」

 

「はい。貴女はどうです?オルガマリー」

 

――態々、問われるまでもない

 

「はい!幸せです!」

 

「――宜しい」

 

「幸せだなんて、大袈裟だなぁマリーは」

 

「ふふっ、本当よ?」

 

 

「フハハハハハハ!!集まっているな!」

 

 

高笑いと共に現れる、黄金の英雄王

 

 

「ギル!?何故!?」

 

「監督役だ!不慮の怪我、不幸な事故が起こらぬよう、貴様らの鍛練を我が見届ける!」

 

「適任!」

 

「マスター!オルガマリー!王の眼下の下、思う存分自らを鍛え上げるがよい!あ、腹筋や背筋はつけすぎるなよ。引き締まった身体が良いのであってお前たちにアマゾネス的な筋肉は望んでおらぬ」

 

「勿論、女性の柔肌と艶やかさは残して鍛え上げます。大切ですからね、そこは」

 

「解るか、大賢者」

「えぇ。ケイローンPと御呼びください」

 

ガッシリと握手する二人

 

 

「筋肉系女子はうっすらお腹が割れてるくらいが丁度いいってグドーシがいってたなぁ」

 

「グドーシ?」

 

「私の大事な親友!終わったら教えてあげるね!」

 

 

「・・・えぇ。色々聞かせて、マシュと一緒に、貴女の事を」

 

「うんっ!」

 

 

「おっと、待たせちまったか?」

 

疾風の如くアキレウスが

 

「申し訳ない。ジャンヌ先輩と協力して力作を作っていた」

 

獅子の如く、ヘラクレスが現れる

 

 

「パンクラチオンの基礎は私が教えます。これはレスリングとボクシングを組み合わせた格闘技、ですので・・・」

 

 

「打撃は俺が教えてやるよ。一瞬で相手をフルボッコにする真の英雄の打撃を叩き込んでやるぜ!」

 

「紳士的にですよ、アキレウス。彼女らにキズをつけた数だけ、私が貴方にパンクラチオンを叩きこみます」

 

「わ、解ってますよ先生!」

 

 

「私は絞め技、関節技を教える。獅子を絞め殺せる様になるのを目的で、君達に手解きしよう」

 

「ネロもやっていましたね。ネメアの獅子のように武具が通じぬ相手に有効です」

 

 

 

「我もウルクアーツを教授しても良いのだが・・・瞬間移動が最低条件ゆえ敷居が高い。またの機会で良かろうよ」

 

 

――瞬間移動・・・!?なにそれ凄い

 

「ヘラクレス、アキレウス、ケイローン先生が師匠かぁ・・・凄いね!」

 

「監督役に、最高の王様もいるしね」

 

「フッ。あたりまえの事を言うな、照れるではないか」

 

 

「おっ、なんだよ。やっぱ褒められんの嬉しいんじゃねぇかぐわぁあぁあぁあぁっ!!?」

 

瞬間、ギルが黄金の波紋をゲート代わりにして一瞬で、全方位から分身と共にアキレウスをフルボッコにする

 

「今のがウルクアーツだ。いずれ貴様らにも教えてやろう」

 

 

「不意打ちとはきたねぇぞ!?」

 

「対応できぬ方が間抜けなのだ。我は挑発には勿論対応するぞ?拳で」

 

 

「くそっ、マジモンの瞬間移動とかデタラメやりやがる・・・」

 

「始めるぞ」

 

「はいよ!」

 

「ではまず、二人で身体を解しましょうか。軽くじゃれあってみましょう」

 

 

「じゃれあう・・・?」

 

「はい、じゃれあいです」

 

「キャットファイトか!おもしれぇ!」

 

 

「フハハハハハハ!我が見届ける!気兼ねなくやるがいい!」

 

 

「よぉし!じゃあやろうか!怪我しない程度にね!」

「えぇ、行くわよリッカ!」

 

 

「待った待った!挨拶は忘れんなよ?」

 

 

「そうだ、古事記にも書かれているぞ?」

 

 

 

「そだね。ドーモ、オルガマリー=サン。リッカです」

「ど、ドーモ、リッカ=サン。オルガマリー、です」

 

 

「日本の挨拶ですか。粋なものです」

 

 

「じゃあ次はギリシャだな!二人とも、耳を貸しな・・・」

 

「ふむふむ」

「・・・解りました」

 

 

 

「よし!やってみな!」

 

 

 

 

 

 

二人が拳を握り、突き合わせる

 

 

「私は藤丸立香。親友グドーシの教えを胸に進む、人類最後のマスター」

「私はオルガマリー・アニムスフィア。英雄王の威光の下に進む、カルデアス所長」

 

 

 

「開幕だ!さぁ見せてみよ!」

 

 

 

「「いざ尋常に――」」

 

 

二人が、ぶつかりあう!

 

 

 

「「勝負ッッッッ!!!」」

 

――新たな土地での、青春の時――




「ちなみにウルクアーツの使い手は私ね?これはウルクアーツ伝道師として、喚ばれるっきゃ」




「我が声を聴け!!全砲門、解錠!!!」
「天を見よ!滅びの火は即座に満ちた!!」
「さぁ、目覚めよエアよ!お前に相応しき舞台が整った!!」
「地獄を識れ!!この英雄王のみが持ちうる、剣でなっ!!!」



「ウソ――――!!?なんで金ぴかがこんなにいるのよぉ――――――!!?」


「稀少な大人の僕の邪魔をしないでください。まったく」


『私は救いようのない女神です×5』

「うぐぐぐう・・・たしゅけてぇ~・・・」

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