人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ちょっと皆様の妖精國に対する反応が多種多様で面白かったので、色々我等の邪神に頭を悩ませてもらうだけの話を書きたくなりました。
楽園始まって以来の無茶振りに頭を悩ませるニャルという醜態をお楽しみください。
そして、元ネタははだしのゲンです。
はだしのゲン コラ と調べてくだされば把握できるはずです、ごゆっくりどうぞ!

注意 第六章のネタバレを多分に含みます。ネタバレを気にする方はどうぞご容赦ください…!


6章記念プチエピソード〜はだしのニャル〜

【妖精國のハッピーエンド、妖精國のハッピーエンド、妖精國のハッピーエンド…】

 

夏草絶賛エンジョイ中、ちょっとだけ違う時間の中。学生服に身を包んだニャルラトホテプが暗い部屋に電球明かりの中、一心不乱に絵と計画を書き記し、一人誰とも知れずに計画を整えている。

 

【ハッピーエンドに導く為にレイシフトだろうとなんだろうとするつもりだ、しかし…どこから手を付ければ良いのだろうか…】

 

いつもの余裕綽々かつ人を嘲り尊さを護る邪神の姿がない。妖精…と書いてかいぶつと読むような輩の楽園…をどう最良の結末へ導くのかを必死に考えている。正直な話、楽園の利点に繋がるものと労力が釣り合わないという冷めた結論を必死に振り払う。

 

【自分だけの意見ならともかく、部員の皆様からのアイディアをいくつかいただいた。なんとしてでも形にしてみせるぞ…。レイシフト、或いはスライドでどこから介入して何処から挑むかだ…】

 

ガリガリと書き記し、必死に理論を構築する。果たして、彼は最良の結末をもたらす事が出来るのか…。いま、邪神の叡智が試される…。

 

〜妖精共を教育

 

【妖精達は決して全員がクズなわけではない。文化を模倣するという特性上、始まりの6人に巫女さんと神様と一緒に徹底的に教えこむという手段で…】

 

カリカリと、教鞭を振るうイラストと話を聞く六妖精の絵を描く。ゆるふわのモリゾーと巫女が傍にいる微笑ましい光景だ。楽しい事を追求模倣する妖精達の性質ならばきっと…

 

【教えを乞う殊勝さがあるならあんな悲劇は起こっとらん!!】

 

力の限りスケッチブックを引き裂き、頭を抱えうずくまるニャル。

 

【この授業つまんないねー、つまんないのは先生が悪いんだ、殺しちゃおうとなるのが目に見えている…。黒板にモノ書いている時に後ろから刺されるのが関の山だ…】

 

全く自制心や忍耐もなく、世界の命運よりサボタージュを選択する様な輩に何故大人しく教えを乞うという真似ができるのか。思い付きで全てを台無しにするのをなんとも思わない輩達なのだ。そもそも発展と展望が出来るのならあんな地獄にはなっていない。遺憾ながらサブプランとする他無いのである…。

 

〜善良な妖精だけ確保して離脱・隔離

 

【宝探しの気分で優しい、素敵な妖精を楽園で保護だ…。片手で足りるくらいだが確かに価値あるものは存在する、楽園で一緒に暮らせる妖精達をなんとか…】

 

楽園の門を開き、リッカ達が妖精達を歓迎するイラストを描く。ダ・ヴィンチと一緒にいる店主の妖精、可愛らしげな羽根の妖精や大柄な妖精、メスガキめいた妖精だけを招いてさっさと妖精國に見切りをつけ…

 

【モリゾーオルタ様の怒りと呪いで汎人類史が終わってしまう!!】

 

力の限りスケッチブックを引き裂き、頭を抱えるニャル。

 

【エアちゃんとフォウの関係を当てはめてみれば残当な怒りと呪いすぎる…先祖の罪が子孫の免罪と楽園入りを全力で阻むとか度し難い程の罪深さだ…】

 

性質的に考えても、いとも容易く善から悪へと変化するおぞましい性質を持っている妖精を楽園へと招く事がどれ程リスキーな事かを思えば早計に取っていい手段ではない。サーヴァントクラスの力と全く教育を受けていないクソガキの精神が汎人類史の人間社会に迎合できない存在に過ぎる。騎士に通ずる程の理性と自省を促す事など、下級に出来るはずがない。遺憾ながら、これもサブプランにする他無いのであった…

 

〜トネリコちゃんを手取り足取りサポートしていく

 

【いっそ楽園の妖精たる彼女達をサポートして安らかな終わりをもたらすという穏便策で…本来の彼女の夢と、妖精としての使命を果たさせ…】

 

そもそもブリテンはどう足掻いても滅びる。人類の世の為に神秘の滅びを促され、そもそもブリテン自体も人間に神秘を渡すくらいならと滅びを選ぶ。せめてその終わりを緩やかかつ円滑に終わらせる方向で…

 

【楽園の妖精側の負担が多すぎる!!】

 

力の限りにスケッチブックを引き裂き、頭を抱えるニャル。

 

【何百年も虐げられるいたいけな少女とか頭プレシャスな私には耐えられない…そんなものはただの邪神の所業だ…私邪神だけど…】

 

星から派遣された妖精を、ブリテンの妖精達は本能的に虐げ迫害する。つまり何百年も妖精たちに殺され、終わり、虐げられるアルトリアを見なくてはならないのだ。娘や家族を持ってしまった以上、妖精共に愛想を尽かし滅ぼしてしまう可能性の方が圧倒的に多い。滅ぼしてしまうのが目に見えている。アルトリアではなく、自分が破滅のスイッチを押す的な意味で。サブプランにするしか無いのであった…

 

〜いっそブリテンの意志に従う

 

【滅びたいものをむりやり存続するから苦悩が始まるんだ。いっそ単純にブリテンの滅びたいという意志を全力で推進してやるという事で…】

 

ブリテンは滅びたいという意志の使者を必ず出してくる。滅びるべきものが滅びないという状況を打開する、或いは滅びを促すという手段を使い…

 

【叙事詩に消えない傷を付ける気か!?】

 

力の限りにスケッチブックを引き裂き、頭を抱えるニャル。

 

【頭妖精かよ私…完全無欠のはっぴぃえんどに私が泥を塗ってどうするんだ…滅びに加担するとか度し難い邪悪だよ私…】

 

一番やってはいけない事を思い付き頭を抱えるニャルラトホテプ。どうでもいいが、殺されたくなかったら頭妖精かよと言う言葉は相手に言わないようにしよう。万死に値する罵倒である。吐き気を催す邪悪ぶりから、これもサブプランとする他ないのであった…

 

 

〜根本から伐採する

 

【そもそも始まりの妖精達のやらかしが原因だ。反省を促すなんて彼女や彼は優しすぎた。ならば私がいっその事…】

 

そもそも誰にも存続を願われていない土地なのだ。それを無理に存続し繁栄したから歪みが生まれ、悲劇が生まれ、醜悪な国が産まれた。そもそもの話、一柱と一人の惨劇と犠牲の上に成り立つ世界というものを認めることこそが間違いなのかもしれない。醜悪な悪意に心優しい神が謀殺される前に、その巫女が尊厳を奪われ踏み躙られる前に始まりの六人の妖精をこの手で…

 

【妖精達は全員が…悪魔のような存在ではないんだ…!】

 

力の限りにスケッチブックを引き裂き、頭を抱えるニャル。

 

【悪いところだけ見て滅びればいいだなんてゲーティアと同じじゃないか…人間を護る為に立ち上がった妖精だっている、人間と絆を結んだ妖精だっている。尊重って、エアちゃんがもたらした尊重ってそういうものな筈だ…】

 

無感動に滅ぼすのは簡単だ。自分もそうするべきだと理性と邪神の側面が冷徹に告げている。だが、それはあくまで自身の観点であるものだ。そこで僅かでも輝くものがあるのなら、纏めて始末するという手段に安易に走ってはいけない。やるならば躊躇わないが、全ての可能性を試し潰えてからでも遅くない。

 

【どうしよう…どうすればケルヌンノス君を、巫女ちゃんを助ける事が出来るんだ…】

 

どうしても。楽園の関係を、尊きものを見て解りあった者達を見てから感じた…異なる種族や、異なる存在が分かり合い、通じあった奇跡を思えば。彼が助けたいのは妖精共などでは断じてなく。

 

【なんとかして、なんとかして始まりを変える事さえ出来れば…】

 

ガリガリと偏執的にスケッチに書き続けるニャル。苦悩の邪神の並列思考は延々と続くのであった…。

 




【そもそも聖剣が完成していないからセファールが世界を滅ぼして、何も無かった世界に妖精共がケルヌンノス君を波除けの大地に、巫女ちゃんをクローニング技術にした。そこがターニングポイントなんだ。なんとかして代わりを用意して…】

(代わりなんて何処にある?セファールが星の全てを回収し無の海となった。何もないんだ。セファール以外は、セファール以外、は………)

【…………!!】

(セファールは聖剣で倒されるものだ。それが間に合わずに妖精共は楽園から地表に出てきた。そこには僅かなタイムラグがある)

【…トラペゾヘドロン】

(これは文明、人類の発展という術式ではない。セファールを倒すことは可能だ。そしてブリテンは、人間のブリテンを呪うもの。…ブリテンを、セファールの手より庇護する。或いは…)

【ケルヌンノス君の『代わり』となる大地を用意し、妖精共を『断罪』し【改良】すれば………】

(………賭けだ。かつて見た成長しきったセファールはそれなりに強大だ。殺しきれるかどうかの保証は無いし無事でいられるかも解らん。だが…)

【あの妖精共を調教するよりは、なんとでもなる筈だ…!】

(作れるか…!?罪を重ねぬ妖精共の、穏やかな終わりを迎える楽園の土台を…!?)

【…やってみせろ、ニャルラトホテプ。娘に、家族に、皆に、姫様やフォウ君に…素晴らしい国であったと思われるような土台を作るんだ…!】

僅かに見えた光明──始まりの善意を救う細工──を形にするため、楽園の邪神は夏草を堪能する傍ら、必死に災厄のロストベルトへの備えを進めるのだった──

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