(まぁ一人だけで色々考えたら頭ロストベルトになるからね。夏草にいるわけだし、バカンスするか)
『ライン通知 ポニテおじさん』
【ん?】
『リッカちゃんたちがプラモ作るみたいだ、一緒にどうだい?』
【制作経験あります?】
『初めてさ!素組みって指でちぎるのかな?』
【すぐそっち行くんでプラモ選んでおくだけで大人しくしといてください。怒りますよ】
『そんなに!?』
〜
【何作るか決めました?】
ロマン「これさ!」
『ストライクガンダム』
【ほう…じゃあ私は】
【ガンダムヴァサーゴ】
「ガンダムなのかいそれ!?」
【ゲテモノガンダムですよ。ささ、まずはニッパーを使って…】
【手の施しようがない患者が目の前にいた場合、人はどうしてあげるのが正解なんでしょうね】
場所を変え、ここはプラモデル屋。リッカ達が遊びに来るという情報を聞きつけ、ロマニとニャルはプラモコーナーで初心者向けのプラモデルに四苦八苦している。ニャルは別に苦手なわけではなくテキトーに、ロマニは必死にランナーを探している。
「おや、どうしたのかな。君にしては珍しい、人道的な質問だね」
【らしくないのは分かっています。邪神失格だ。でも…ドクターとして、曲がりなりにも命の始まりや終わりに向き合うあなたに聞いてみたい】
ランナーこれですよ、と邪神からロマニは受け取り質問に答える。もちろん、目星は付けていた。
「…どうしようもないロストベルトでも観測したのかな?」
【ブッッ…!わ、解っちゃいました?】
ニッパーでパーツを傷付けないよう、丁寧に取り外しながらロマニなりの所感を捉え、教えを伝える。
「さながら、人間の悪性を煮詰めたような世界を見てしまって、それをなんとかしたいと悪戦苦闘中ってところだろ。君を悩ませる事なんて、それくらいしか思い浮かばないしね」
【…お見事です】
「もっと言うなら、楽園の皆にそう言った一面を見せないようにせめて前提だけでもなんとかしてあげたい。君が慣れない悩みを懐くのは、大体そんな所かな」
怖い!このドクター怖いとドン引く邪神。嘗めてはいけない、このポニーテールおじさんは比類なき智慧の覇者である。ジョイントパーツを嵌め込みながら、彼は語る。
「そのロストベルトがどういうものかはまだ見ていないから全容を掴めている訳じゃないけれど…僕としては、特に何もしなくてもいいんじゃないかとは思うんだ」
なんですと?アウチッ!ニッパーが指に刺さり悶絶するニャルに治癒魔術を掛け、その理由を語るロマニ。
「いや、別に傍観しろとか見ている人が苦しめばいいという意味じゃなくてね。ロストベルトは間違ってはいたと言え、それは積み重ねられた歴史なんだ。それに手を加えたら、それはありのまま純粋な未知の歴史と言えるものではなくなってしまうんじゃないかな?」
【…!】
「完全無欠の旅路…それを目指すのは勿論ボクも賛成だよ。でも、『悲劇を受け止め乗り越える事』と『悲劇そのものを無かった事にする』のは、似ているようで大きく違うものだとボクは思うんだ」
しまった…!パーツ結合の向きを間違え、力を込めて直そうとするロマニ。
「悲劇や、恐ろしい歴史を見たくないって気持ちは痛いほど解る。素晴らしい景色と、尊いものを汚したくないという気持ちも大歓迎だ。でも、ニャル君。それを僕ら大人が判断し、感じる機会を取り上げてしまうのは…酷い事なんじゃないかとボクは思うよ」
【!!!】
…あまりの衝撃に、ニッパーを取り落とす。ニャルの太腿に刺さった。痛さすら感じない衝撃だった。
「誤解しがちだけど、リッカちゃんがいたのは掛け値抜きのこの世の地獄だ。ギルから聞いたんだけど、エアちゃんはロンドン特異点でこの世全ての悲劇や哀しみを見せられている。ゲーティアが見たものと、全く同じものだ。──だからこそだとボクは思う。醜いものや、哀しいものを見せられてなお、この世界や歴史を素晴らしいという答えを出してくれた。そんな奇跡は、無菌室や綺麗なだけのものを見ていただけでは生まれなかった筈だ。ボク達が厚いフィルターをかけてあげる必要は、無いんじゃないかと思うんだよ。きみだってそうだ。君の娘さんは、君が綺麗な神様だからと誤解して好きになったのかい?」
【…違う、筈です】
「だろう?子の成長はボクら大人の想像よりずっと早い。どれだけの悲劇に満ちた世界でも、どれだけ醜い世界でも、楽園の皆はこう言ってくれる筈だ。『ろくでもなかったけど、それでも楽しかった!』ってさ!」
…ニャルは泣いた。ロマンは自分よりずっとずっと、楽園の事を理解していた。尊きものを理解していた。自分は、ほんの上辺すら楽園の旅路を理解していなかった。
「それと、さっき手の施しようがない状況と言ったね。終わっている、或いはもう手遅れなものだった場合はどうすればいいのかな、と。そうだなぁ、ボクの観点からしてみれば…例えば、世界を末期患者に例えるとしよう。苦しまないよう安楽死させるのは、論理的に禁止されているし…だからといってチューブや機器に繋がれ、ただ生かされているという状態は健全な生命活動とは言い難いよね」
だからといって見捨てることはしない、匙を投げる事はしない。最後の最後まで、ドクターは最善を尽くす。──世界における向き合い方も、或いは同じでは無いのではないかと。
「人理焼却の戦いは、ボク達の歴史を取り戻す戦いだった。ロストベルトは、はっきり言ってボク達の救済なんて余計なお世話だろう。だからといって滅ぼしてほしいだなんて望んでいる筈もない。だけど行き止まりで、手の施しようがない世界なのだとしたら…」
【だと、したら?】
「『看取る』為に、ボク達は関わるべきなのかもしれない。発展して、衰退して行き止まりになってしまった歴史を、昇華するにしろ剪定するにしろ。ボク達は手遅れになった歴史のありのまま受け止め、受け入れ、忘れない為に戦う。末期の隣人の手を、そっと握るように。『お疲れ様でした』と告げるように。懸命に生きてきた歴史にしてあげるべき敬意は、きっとそれくらいなんだとボクは思うよ」
看取る為に。詰んだ歴史でも、どうしょうもない世界でも、そこにしかないものを見て、感じることだけが。異なる世界に触れ合う旅人として立ち合えるスタンスでは無いかと、ロマンは邪神に告げたのだ。
「それでも、どうしても言うのなら。戦って勝ち取るしか無いのだと思う。お互いの歴史の覇者の座をかけて、互いの歴史をかけて戦うんだ。そうして歴史を勝ち取って…初めて生殺与奪の権利を振るう資格がもたらされるのだとボクは思う。不倶戴天の歴史なら、もうお互いの存在を懸け戦うしかないんだ。己の歴史を尊重するのなら、相手の歴史から尊厳を護りたいのなら」
ようやく五体のパーツが完成し、安堵するロマン。そして、やがて声が聞こえてくる。少女達の元気な声だ。
「あ、来たみたいだ。さぁ、リッカ君に会いに行こうか!」
【…先に行っていてください。すぐに追いつきますから】
ロマンをそっと後押しし、天を仰ぎ目頭を抑える。ゆるふわドクターは、リッカ達へと合流するためプラモを持っていく。一人、ロマンの言葉を噛みしめるニャル。
【…余計なお世話だった。そうとも。余計なお世話だったのさ】
自分が思っているほど彼女達は弱くない。自分が思っているほど人類史の業は浅くない。そうだとも。善意も、尊さも、悪意も、悍ましさも。『汎人類史』程じゃないのだ。
彼女達はきっと美徳を見出す。地獄でもきっと愉悦を見つけ、痛快に笑うのだろう。必ず素敵なものを見つけるのだろう。
『どうしようも無かったけど、それでも素晴らしいものはたくさんあったよね!』と。ずっとそうやって、楽園は色んな者達を魅了してきたのだから。
【お膳立てした旅路なんて、余計なお世話もいいところか。ははっ、とんだ毒親だったよ私は】
そうだとも。ロストベルトでしか見られないものもある。かけがえのない真作がある。誰の手も加えられていない、吐き気を催す様な邪悪が溢れている。
それらは──【邪悪】と『悲劇』という、完全無欠の旅路を彩る紋様なのだ。それらを目の当たりする瞬間を心待ちにして──
邪神は、余計なお世話の介入を全て放棄することを決意した──。
ニャル(色々反省する事の多い案件だったよ。やっぱり会話と議論と言うものはいいものだ。相談して良かった…)
「ありがとう、ドクターロマンティック。そして部員の皆…じゃあ、私なりに妖精國を楽しめる方向にシフトするか…」
(女王暦の、1割の真作を手に入れる為の道標を。さて、まずは厄災を…ん?)
「…まてよ?そもそも女王暦ってどうやって出来たんだったか?確か、汎人類史のモルガンがレイシフトを解析し、異聞帯のモルガンに記憶をインストールして…それがなかったらオークニー戦争で異聞帯モルガンは死んだわけで…】
(誰だっけ?ブリテン担当のクリプター。そもそもモルガンを召喚したのは…)
【…………ベリル・ガット?あの、開きにしてるアイツ?】
(………あれ?これ、もしかして……)
【…もう既に私…女王暦フラグ、潰してた?】
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