人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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天空海「オラァ!!夏草の女生徒を盗撮とか恥を知りなさいこの変態!!バッチリ見てたんだからね!神妙にしないともっとぶん殴るわよ!!」

盗撮犯「ぼ、暴力反対…げぶぉ!」

「言って聞くなら誰が殴るか!犯罪なんかする奴は痛みを食らわせるので丁度いいのよ!勘違いしないでもらいたいけど、こんな野蛮な生徒はあたしだけだから!さっさとスマホとデータ寄越しなさい!無慙さん呼ぶわよ!」

「ひぃいぃいぃい血染めの番犬はご勘弁をぉ!スス、スマホです…!」

「データ確認と…ちょっとあんた!なんであたしの写真が一枚も無いのよ!?」

「だ、だって…性格知れば知るほど萎えるタイプだし…」

「オラァ!!!」

「す、スマホがぁー!?」



無慙「今日は屑がよく湧くな…」

半グレグループリーダー「かっ、くけ、けっ…」

「いでぇ、いでぇよぉ…」「死ぬ、死ぬぅ…」「おかあちゃぁん…」「たすけ、たすけて…」

敵対グループ「いたぞ!無慙だ!応援を呼べ!囲んでブッ殺せぇ!!」

「「「「うぉおぉおぉおぉおぉお!!」」」」

無慙「生きていいと、誰が言った…!!」



うたうちゃん「!当番通信…すみません、私は行きます」

ソウゴ「使命を果たすか」

うたうちゃん「はい。…また、会えますか?おじいさま」

ソウゴ「お前がそれを望むならば、な」

「…また、必ず会いましょう。では」

ソウゴ「ふっ…まさに傑作の人工知能だ」

(…どうやら、ただの遊楽とはいかぬらしいな)


夕暮れの悪徳達

「いやいやいや、おかしくないかい!?いくらなんでも環境の変化が劇的すぎる!逢魔が時ってこういう事じゃないよね!?怪異じゃなくて人災じゃないか!」

 

ロマニの言う通り、その変化というものは妖怪が出るとか、怪異が起きるといったものではない。ただ人が、人を貶める犯罪が横行する故郷のもう一つの顔。魔が湧き出した、夏草の黄昏の姿だった。

 

「私の故郷で何してるの貴方達は───!!」

 

当然、リッカが容認できるようなものではない。考えるより先に気炎を吐き、目の前の蛮行全てを蹴散らさんと一歩を踏み締めるリッカを、ゆかなと榊原が制する。

 

「気持ちは解るが待て。暴行もまた罪だぞ、リッカ。ミイラ取りがミイラになる」

 

「…ッ!!」

 

当然、力付くで跳ね除ける真似ができる筈もなく、現代社会における暴力の重要さをゆかなは告げる。とりあえず殴る、とりあえずぶっ飛ばすが出来るが可能な時間は、人生において短い。

 

「堪えて、リッカ。暴力はあなたの本懐じゃないし、自分より程度の低い相手の土俵に立ってはダメ」

 

榊原の窘めを聞き、拳と怒りを堪えるリッカ。かつての不良達の様に言葉で説得出来ればいいが、目の前の悪事は一つ一つ収めていくには多すぎる。

 

「しかし!私達の故郷を蹂躪されて黙って見ていろというのは無体ではないですか!」

 

「──見て見ぬ振りをする訳じゃないさ。リッカに早苗。法を犯すものあれば、護る者も確かにいるのだから」

 

ルルの言葉と、猛烈なエンジン音が轟くのは同時だった。見れば、珍走団が走行してきた後続の道から、凄まじい勢いで疾走する影がある。

 

「この夏草は、自衛の体制だって万全なんだ!せーの!!」

 

ルルの言葉に、大和ら三人が続く。ゆかなは耳を塞ぎ、大声に備える。彼等が呼ぶのはもちろん──

 

「「「「おまわりさーーん!うたうちゃーーん!!」」」」

 

夏草を守護する最高戦力達。それと同時に、銀色のバイクに乗り込んだ水色髪の天空海に似ていながら違う操縦者が疾走し駆け抜ける。

 

「悪質な交通法違反者を確認。拘束します」

 

猛烈な速度で加速し、即座に距離を縮めていく銀色の機影。その迅速な行動に、リッカら帰郷組は息を呑む。

 

「う、うたうちゃん!?」

「バイクにも乗るのですか!?」

「それにあれは…あのバイクは!」

 

彼女の乗っているバイクは市販ではない。当然、彼女が治安維持用に任された都市の備品の一つだ。素早くコンソールを叩き、バイクより跳躍するうたうちゃん。ボディが割れ、ビークルモードから変形し人型機動兵器に変化するバイク。かつて活躍したモビルビークル、ガンバライジング社支給品──

 

『オートバジン・バトルモード』

 

「オートバジンだーっ!!!」

 

「鎮圧、開始します」

 

素早く跳躍したうたうちゃんは捕縛用スイープクロスを展開し、珍走団達の捕縛の為にしならせ瞬時に伸ばしきる。同時にオートバジンが進行方向に鎮座し、バイク車輪型のバルカン口径を回転させ、無数の威嚇射撃を開始する。

 

「クソっ!来やがったあのガラクタ…ぎゃあぁあ!」

「痛ぇ!!ちきしょうゴム弾がぁ!」

「ぐゎぁぁあぁ!!」

 

珍走団毎一斉掃射し抵抗の意志を完全に削ぐ鎮圧射撃。空中からの一方的な攻撃にて、迅速に暴走を停止させる。

 

「捕縛」

 

うたうちゃんは跳躍し、バイクに巻き込まれる前に身柄をクロスにて回収、そのまま大いに勢いと反動を付け、空中へ放り投げる。なすがままに舞い上がった珍走団は身動きも取れず、うたうちゃんの放出する暴徒鎮圧電流を流し込まれる。

 

「「「「あばばばばばばば!!」」」」

 

「身柄を確保、検挙します」

 

素早く四人をクロスで厳重に捕縛し、身柄を確保する。コントロールを失ったバイクはオートバジンが素早く身を呈し被害が起きぬように割って入り無力化した。見るも見事な逮捕劇、通報を受けてから数分もかからぬ手際にて場を収める。

 

「どけ!ポンコツ野郎!!」

「!」

 

しかし、休む間もなくひったくり犯が猛烈な速度で迫りくる。うたうちゃんは素早くステップし、ファイティングポーズを取り迎撃の体勢を取る。

 

「ロボット三原則も護れねぇ欠陥品がぁ!!」

 

大型のバタフライナイフを振りかざし、うたうちゃんに迫るひったくり。深く刺されば人など簡単に殺されるであろう比類なき凶器にも、うたうちゃんは微塵も怯むことなく対処した。

 

「───防衛鎮圧マニューバ、機動」

 

彼女の身体から蒸気と電流が迸り、爆発的な力の高まりが示される。一歩、うたうちゃんの間合いに入ったひったくり犯の雑なナイフの一撃を回避し──

 

「うげげげげげばぁあぁ!!」

 

顔面に2発、鳩尾に一発、背中に肘打ち、足払いにて宙に浮いた後素早く腕を拘束し叩きつける。捕縛用に渡された手錠を両腕に付け、完全に無力化させるに2秒もかからなかった。

 

「現行犯で確保します。どうか神妙に」

 

「う、うわっ…!うわぁあぁっ!」

「お、おい!」

 

その鎮圧執行を目の当たりにし、錯乱し逃げるブレザーのカツアゲグループに、ぐりんと首を回し右腕を構え、瞳孔の色彩が素早く収縮拡大を繰り返す。

 

「抵抗は無意味です。確保」

 

瞬間、右腕の肘から先が飛び出し、カツアゲグループのリーダー格に飛ばされ、背中に直撃する。そのまま背を掴み、リーダーを振り回しグループ達を纏めて薙ぎ払った。

 

「「「げぅ…」」」

 

「す、凄い…!彼女が天空海先輩をモチーフにした郷土ロボット、うたうちゃん…!?」

 

素早い鎮圧、死傷者0。榊原やルルが焦らない理由がここにあった。夕方は既に、無慙やうたうちゃんの狩りの時間なのだ。

 

「通報を聞き対処にやって参りました。お怪我はありませんか?」

 

「いつもありがとう、うたうちゃん。お陰様で私達には怪我一つないわ、ありがとう」

 

「いえ。暴徒鎮圧は経験値を積んでいます。生徒の皆様もご無事で良かった」

 

にこり、と小さく微笑むうたうちゃんを見て一同は確信する。彼女や彼が、夏草の夕方から夜を決して無法にしないようにする番人であるのだと。見れば彼女は今、婦警の制服に身を包んでいた。法を守護する、警護AIと言ったところか。

 

「私のおうちをパーティー会場にしたいとの要請は受けています。準備は整っておりますので、どうか細心の注意を払ってお向かいください。榊原先生」

 

「本当にありがとう。もちろんあなたや無慙さんにも席はあるから…」

 

瞬間、遠くから怒号と爆発音が響き渡った。鎮圧に勤しんでいるのは、彼女だけではない。血染めの番犬が、邪悪と屑をすり潰しているのだ。

 

「治安維持部隊に、無慙巡査の援護に向かいます。夜、私の家にて積もる話を行いましょう。皆様に紹介したい方もおりますので」

 

「気を付けてね、うたうちゃん。またメンテナンスをさせてもらうからさ」

 

「はい、大和さん。また後で是非お願いします。それでは皆様、お気をつけて」

 

『オートバジン・ビークルモード』

 

素早くうたうちゃんの傍にてバイク形態を取り、ヘルメットを下ろし走り去っていくうたうちゃん。

 

「彼女は郷土奉仕AIの他に、治安維持暴徒鎮圧AIとしての役割も持っている。特別な番号を入力すれば、すぐに来てくれる。いい?正義感はもちろん大事だけど、暴力は振るった者にも責を問われる。まずは秩序の番人を信じることを忘れずに…」

 

「「カッコいいー!!」」

 

無論、早苗とマシュからしてみれば颯爽と自分達を助けてくれたヒーローに熱烈な視線と想いを向けるのは無理からぬ話であり。

 

「先生。…パーティーの最後で構いません。どうか教えて下さい」

 

「リッカ…」

 

「一体、夏草はこの一年でどうなっちゃったのか。…先生の口から、聞きたいです」

 

黄昏の空を眺めながら、リッカは乞う。何もかもが変わったこの夏草の全容を。幸いにも、彼女とて隠すつもりは無いのか──

 

「もちろん。包み隠さず、伝えるつもり」

 

リッカの嘆願を、真正面から頷き受け止める榊原であった──。

「」




うたうちゃん宅

グドーシ「これは立派なお家でござる。まさに一人の市民として扱われておられるのですな」

歩くこと十分、白と蒼の爽やかな一戸建ての宅がリッカ達を迎え入れる。かの家が、うたうちゃんに割り当てられた自宅である。

榊原「彼女も夏草の市民権を持つ、人格を有した大切な存在だもの。ドックや倉庫などではない、人として対等な扱いを…、…」

榊原が捉えたのは、うたうちゃん宅の門の鍵をいじっている不審者達。その無礼者達に、榊原は毅然と話しかける

榊原「何をしているのです?其処はうたうちゃんの家、不法侵入は犯罪ですよ」

くたびれたスーツの男「何が不法侵入だ、プラスチックの塊がこんな立派な家に住むなんて馬鹿げてる…!こんなものを作っている暇と土地があるなら、私のような失業者の手当や仮住居に使うべきなんだ!」

アスカ「はぁ!?よく知らないくせにうたうちゃんを馬鹿にするな!何様だアンタは!」

「うるさい!子供は黙っていろ!この不景気に仕事が無くなった私の苦労が解ってたまるか!私はこれまで散々社会に貢献してきたんだ、そんな私よりあんなガラクタが恵まれているなんておかしい!そうだ、私の社会貢献を顧みれば、この家は私のものであるべきなんだ!」

リッカ「無慙さんを呼びます、先生」

榊原「大丈夫。──」

「おい、鍵があるならさっさと…ひぃっ!?」

瞬間、榊原から醸し出される、圧し潰すような重圧と射殺す様な視線が失業した男を貫いた。あまりの迫力に、腰を抜かし倒れ込む男。

「失せろ、俗物。彼女はれっきとした私達の隣人だ」

「あ、あぁ…」

「──失せろと言った!消えるがいい!!」

「うわぁあぁあぁあ!?」

矢も盾もたまらず、逃げ去る男。ふぅ、と胸を撫で下ろす榊原。

「夏草の住民では無い、わね。うたうちゃんの事を知れば、あんな事を言える筈が…あ」

一同「(にんまり)」

榊原「あ、あはは…じゃ、入ろっか」

「「「「「「はい!榊原様!ばんざーい!」」」」」」

それはやめなさい…!生徒達にいじられ、困り照れる
榊原であった──。

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