人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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無慙「お前、自宅に戻れ。パーティーがあるんだろう」

うたうちゃん「駄目です、巡査。あなた一人に任せる訳にはいきません」

無慙「たわけが。屑の相手にかかずらい、奉仕の使命を蔑ろにする気か。怠惰の罪を俺に晒すつもりか?跡形もなく解体するぞ」

うたうちゃん「しかし…」

無慙「何故か、善意の協力者も今日は数多い。お前の損失は俺一人でどうとでもなる。使命を果たせ、うたう」

「……。解りました。皆様の御祝いのサポートを行います。そちらもどうか、お気をつけて。深夜までにはご帰宅を」

「言われるまでもない。さっさと行け」

『オートバジン・ビークルモード』

「ご無事で、巡査」

走り去るうたうちゃんを見送り、無慙は一人、向き直る。

無慙「…さて」

『改造装甲車両』
『武装トラック』


「一匹残らず、刑務所に叩き込む…!」


〜屋上

アジーカ『……………』

『気遣いの化身』



真意と祝辞の工作

「ただいまぁ!」

「リッカさん、グドーシさん…ただいま戻りました…!」

 

蒼白の豪邸、素晴らしい立地に建てられたうたうちゃんの自室。沢山の歓迎グッズに迎えられた一同の後を追うように、じゃんぬとカーマが沢山の紙袋を持ち帰還する。

 

「じゃんぬ、おつかれ様!カーマも!」

 

「そういえばいつの間にかいなくなっていたじゃんぬさん!そしてロリの神カーマさん!どうしたんですか!?」

 

「ロリの神じゃないです、愛の女神です!あぁいや、別に女神という訳では無いのですが…調査と買い出しですよ。私は調査、そしてじゃんぬさんは手頃な店の安全を確保していたんです。悟られないよう、リッカさんはおくびにも出さなかったので皆さんも気付かなかったみたいですけど」

 

カーマは夏草の調査と、じゃんぬはリッカの故郷の内緒の掃除に、学校を出た際から一役買っていたのである。門前に不審者はいたが、帰宅路に敵対者が一人もいなかったのはそういう事だ。こっそり掃除人をやった辺り、出来る相棒であり右腕を通り越して半身である。ついでにパーティーグッズも買い出して来たようで、大きな袋を両手に持っている。出来る正妻である。

 

「通学路に蔓延ったヤツらも一掃しておいたわ。夏草の残りの連中も、パーティーには来れるはずよ」

 

「と、突然いなくなった事にも気付かせずに、本当に先輩に必要な事を…!?」

 

「技アリね、シールダーちゃん?」

 

ぐぬぬ!と口をへの字に結ぶマシュと胸を張るじゃんぬ。グドーシに抱きつくカーマという追加の来客を経て、続々と蒼白の豪邸に来賓が集っていく。

 

「グループラインでアカネや会長、エルも来るって連絡が来ていたよ。皆もリッカを御祝いするんだって張り切っていたからね。スザクと天空海先輩は、見回りしてからだってさ」

 

「マメですね、大和さん。流石!関や皆はこれなさそうだな…夏が近いから合宿の準備か、残念だな…」

 

「言うな、アスカ。これっきりのパーティーじゃない。生きていれば何度だって出会えるし、催しを楽しめる。今は俺達だけでもリッカをお祝いしようじゃないか」

 

「おや、随分としおらしいなサラ。ふざけるな!俺は負けてなどいない!などとムキになるものかと思っていたが?」

 

「からかうなよ、ゆかな。わがままを一度聞いてもらったんだ。私だって弁えるし、自制も反省もする。今は皆でお祝い、解っているさ」

 

「いつも周りを振り回しているんだから、たまには大人しくしててもらいたいもんね」

 

「大和…お前は時に辛辣だな…」

 

「ほら、立ち話をしている場合ではないぞ!夜の間を強盗避けに騒ぐのなら、ここは皆で協力して準備を整える局面だ!前提条件を皆でクリアし、錦を持ってきた同胞を盛大にお祝いするのだ!」

 

ルルの言葉に、一同は従い準備に取り掛かる。体力が無く童貞ではあるが、彼はカリスマ性を持つ皆のまとめ役だ。最終的に彼の言う事に、なんだかんだ皆は従う事を容認する。それは彼が、いつだってその場の最善を見抜くからだ。

 

「私も手伝いますよ皆さん!守矢神社で鍛えに鍛えた家事力と行事力!私がただの諏訪子様や神奈子様の金魚のフンでは無いところをお見せします!」

 

「それは助かる。では私はソファの柔らかさをチェックするから、私の代わりの仕事を頼んだぞ早苗。いやぁ、緑髪仲間に頼もしい仲間がいてくれて嬉しいなぁ」

 

「早苗に仕事を押し付けるな!食っては寝て食っては寝ての繰り返しなのに、何故スタイルが崩れんのだこの魔女め…!」

 

「身体の作りが違うと言ったろう?坊や。食べても太らない、栄養が胸にしか行かないという体質はいるものさ、目の前にな。ほら、コーラを持ってこい」

 

「ピザに合うコーラはフルカロリーですね!ルル君お願いします!」

 

「見事なまでにアゴで使われるな君は!奉仕体質、素直すぎるというのも考えものだ…!」

 

「人聞きの悪い。早苗にはきちんと私のピザキャンディを渡しているんだぞ?とっておきの報酬だろう?」

 

「あんまり美味しくはないです!」

 

「懐柔に失敗しているだろうがっ!マシュさん、ジャンヌさん。手伝ってもらえますか?」

 

「はい!じゃんぬさん、確かに気遣いでは私は遅れを取りました…しかし!手際の良さではどうでしょう!」

 

「パティシエの私に手際で勝負しようっての?いい度胸ね。行くわよフクヤマ、どちらが真のテキパキウーマンかしっかりジャッジしなさい」

 

「テキパキウーマン!?や、やってみます…!」

 

「それではリッカ殿、拙者はカーマ殿と外で見張りをしておりまする。不心得を働くものが、おらぬとも限りませぬからな」

 

「少なくとも、パーティーが行われている間は目を光らせておきますよ。安心して、皆さんの愛に触れてくださいね。リッカさん」

 

「グドーシ…カーマ…。ありがとう!私も、皆の気持ちを無下にしたくないし、とことん楽しんじゃう!」

 

一同がうたうちゃんの自宅を、歓迎パーティーの飾り付けにして行う中、榊原がリッカにそっと耳打ちする。

 

「リッカ。ロマニさんは何処に行ったのかしら」

 

「えっ?さっきトイレは何処かなって二階にあがってふらふらいなくなったきりだと思いますけど…」

 

「凄いぞこの家!庭もあるしテラスもある!温水プールに充電カプセル付きの豪華仕様だ!市抱えの奉仕AIならではの優遇っぷりだ!トイレも水洗式!ちょっとまってAIって排泄するのかい!?」

 

ロマニの下世話な感嘆の台詞が響き、苦笑しながらもリッカに榊原はあるものを託す。

 

「本当はお話するつもりだったけど、パーティーや歓迎の気持ちを邪魔するのも悪いこと。…──あなたのホームステイ先、こういった怪異や異常に詳しい組織でしょ」 

 

そう言ってリッカに握らせたのは、記録媒体であるUSBメモリ。そこに小さくラベルが貼ってある簡素なものだ。

 

「あなたの面倒を見てくれた組織の人達に、ロマニさんにこれを見せて。私なりに解ること、私が知る事を纏めたデータが入ってる。この夏草に起きている異常を、突き止める手がかりになる筈」

 

「先生…!」

 

「発展はともかく、まともに街も歩けなくなる時間があるのは流石に普通じゃない。危なすぎて真相には近付けなかったけれど、あなたが帰ってきた今なら…」

 

「うたうちゃん、コードネームキャロル・ディーヴァ。パーティーに参加する為に帰ってまいりました」

 

「おや、お帰りなさいませうたうちゃん殿。先は見事な捕物でした。感服致しましたぞ」

 

「ありがとうございます。無慙さんに言われ、業務の引き継ぎを行ってまいりました」

 

「…返り血や埃が酷いですよ。悪い事は言いませんから、クリーニングしてきてください。人もAIも清潔ですよ、清潔」

 

「すみません、そうさせていただきます。…?榊原さん、リッカさん。どうかなさいましたか?」

 

「いえ、なんでもないわ。ディーヴァ…付けてもらったの?素敵な名前ね」

 

「はい。マスターとなった、にゃる様に。そちらの方はマスターの親愛なる隣人としてお話を聞いています。藤丸リッカさん。夏草にお帰りなさい」

 

「は、はい!ホントに天空海先輩にそっくりだ…!」

 

(…積もる話は、また後で。恐らくきっと、穏やかな一日の終わりにはならない筈だから)

 

榊原の耳打ちに、決意を以て頷くリッカ。榊原先生は誤魔化そうとも、はぐらかそうともしていない。真実の開帳、そして皆の歓迎の気持ちを両立しようとしてくれている。

 

(だったら私も、それに応えなくちゃ!)

 

パーティーと、夏草の謎を解く。両方を滞りなく行う事を決意し、リッカもまた、パーティーの準備に参加するのであった…──。




うたうちゃん「ツリー、ツリーはそちらに…あ、危ないので支えましょうか?」

リッカ「ん、ありがとう!大丈夫だよ、うたうちゃん!」

うたうちゃん「良かった。主賓の方が怪我をしては大変ですから。なんなりと用命を仰ってください」

リッカ「──じゃあ、これ…」

『USBメモリ』

うたうちゃん「?これは…」

「トイレでフラフラしてるお兄さんに渡してきてくれるかな?意味は、あの人なら解るから!」

「──はい。解りました」



ロマニ「広すぎて落ち着かなかった…駆け込み用として開放されてるんだね、そっか…」

うたうちゃん「ロマニさん」

「わぁ!?な、なんだうたうちゃんかぁ、美人がにゅっと無表情で来るのは怖いなぁ…!」

うたうちゃん「驚かせてごめんなさい、こちらを、リッカさんから」

『USBメモリ』

ロマニ「これは…?」

「秘匿情報に、私は関与していません。それでは、失礼します」

渡すという使命を果たし、準備に戻るうたうちゃん。ロマニは掌のUSBメモリを目の当たりにし、驚愕する。

「これは──!?」

そこには、記されていたのだ。ラベルに、ロマン…いや、楽園にのみ意味が解る単語がいくつか。

そこには──

『アスタロト』『アスモデウス』『アンドロマリウス』『ダンタリオン』『クロセル』『マルコシアス』

…ソロモンの使役した悪魔達の名前が、ラベルにて貼られていたのだ──

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