人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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アジーカ『ごめんなしゃい』

じゃんぬ「なんで威嚇してたのかしら?怒らないから、正直に言ってごらんなさい?」

アジーカ『……』

〜裏夏草 コンビニ

残骸【ありがとうございましたー】

ニャル【あ、やったハスター出た。自慢しよ】

アジーカ『ヴリトラ…インド』

天空海「あれ!?リッカ!?リッカじゃない!?妹!?妹なんていたの!?」

アジーカ『!』

「かわいいー!ちんまりしてるのねちんまり!いいわ好き!いつでも真っ直ぐな目ねー!(ふにふに)」

ニャル【おやおや、君はクロケルの…いや違う!自前か!?】

アジーカ『ファッ、ファッ』

天空海「かわゆーい!ふにふに〜!」

アジーカ『ファッ』

ニャル【すっかりマスコットだねぇ、アジーカちゃん】

アジーカ『!』

ガブー

天空海「いたぁーい!?」



アジーカ『名誉セーブ』

じゃんぬ「あぁ、あんまり知らない人に突然可愛がられるのはだめなのね…」

アジーカ『ドラゴンとして』

名誉は大事なアジーカであった。


フォー・ギブン・ホープ・シンギュラリティ

「この術式を止める手筈は整った!?」

「本当なのですか、ドクター!?」

 

リッカとマシュの上げる声に、力強く頷くロマニ。彼はヘタレでチキン、現状維持したがる悪癖があるがそれは昔の話。シバを愛の下に妻に迎えた彼は、人間の愛と心を懐いた優しく聡明な真の王である。いや、ソロモンの力を皆の為に振るう一人の人間であるのだ。

 

「あぁ。天空海ちゃんが何故夏草の民でありながらこの裏の夏草に招かれたのか…それを考察し、カルデアの皆と吟味し、榊原さんとグドーシ君に尋ね、ニャルの情報と重ね合わせて答えを出したんだ」

 

「えっ!?私そんな重要キャラだったの!?世界が私を放っておかない的な!?あははー、それは当然かつ必然的なアレなのはそうなんだけど改めて言われると照れるわねー!まぁ私夏草のイメージキャラクターのモデルに選ばれるくらいは才色兼備だしー!?」

 

「ロマニさん、お話のお続きを。どうやったらアンドロマリウスさんを止められるのですか?天空海さんが凄いことは皆知っていますから」

 

うたうちゃんが辛辣なんですけどー!?ガビンと驚く天空海を慰めるアジーカ。幼女に慰められるトップグラビアアイドルが夏草の天空海である。

 

「まずこの術式の根底は『贖罪』だ。彼らはリッカちゃんに行った数多の行為を悔い、償いたいと今の廃棄口たる夏草を作った。そこに悪意は無い。ただひたすらに、リッカ君への償いをしたいとの気持ち…こう僕が言うのはなんだけど、人類愛の様相となっているんだよ。僕らを排斥しないのがその証拠だ。でも、それには必ず限界が来る。世界の人間が懐く悪意は、アンドロマリウスが受け止めきれるものじゃない。いつかやがて、出来損ないの術式が出来上がってしまう。この世の悪意を集積した、かつてリッカ君を落とした地獄…【この世全ての悪】へ」

 

それは贖罪の果て。苦難と、償いの果てに…悪そのものへとなり果てる末路。善意は悪意に呑まれ、やがてリッカがする筈だった人類の滅亡を果たすと、ロマンは結論付けたのだ。

 

「それを止める為に、リッカ殿。並びに天空海殿…うたうちゃん、並びに夏草の善良なる民の心が必要となるのでございまする」

 

「贖罪…私───、…!!」

 

リッカは弾かれた様に顔を上げる。彼女は一を聞いて、全てを把握できる存在であるが故に。

 

「免罪…!術式に私が、贖罪はもういいよと告げる事がこの術式を終わらせるカギ!?」

 

『我等がグランドマスターは理解が早いわね。エクセレントよ、リッカ』

 

「そうだ、リッカ君。善意の静止は止まらない、彼等が彼等を許せないからだ。悪意の妨害には屈しない。彼等の決意は本物だからだ。リッカ君、なら──君が告げてあげてほしい。エアちゃんが感謝を告げたように、もう自分を責めなくていいという言葉を。贖罪の巡礼の果て、鐘を鳴らし大地に告げるように」

 

免罪。罪を許し、償いを終えること。それこそが、善意で編まれた術式となった彼等を終わらせる唯一無二のもの、贖罪の果てであると首脳達は告げたのだ。罪が赦される時が来たのだと。

 

『罪は消えないかもしれん。過去は消えないかもしれん。しかしそれを受け止め、歩み、苦悶の足取りを前に進めた先には──赦しが、あるべきだと。俺は思う』

 

「ロマンチストじゃないか、坊や」

 

『お前を見ていればロマンチストにもなる。シスターとしてのお前は、決して手抜きをせず真摯的だ。マルコシアスを助けたのは、お前の優しさがあってこそだと理解しているさ』

 

「───。な、生意気なやつめ。童貞の癖に…」

 

「…ルル。いつもそんな風にゆかなちゃんに接しなよ」

 

『?なんの話だ、スザク』

 

「──うん!赦す、ってなんだか上からでイヤだけど…私はもう、彼等に償ってほしい事は何もない。魔神の魂を、開放してあげたい!」

 

その答えに、ニャルは満足げに頷く。誰かを赦す事。それは真なる強さと寛容さが無ければ叶わない、究極の尊重のカタチだからだ。

 

「うん、リッカ。あなたならそう言うって信じてた。…今、術式でリッカの一年間の澱みは全て廃棄口に集まっている。これらを全て浄化して、リッカの赦しを共に添えた時──本当の意味で、彼等の償いは終わりを告げる」

 

タスクを完了し、そして赦しを乞うた相手に赦される。それこそが、本当の意味で…真の意味で。魔神たちの昇華が行われるのだ

 

「はっはーん!読めたわよ榊原センセ!その魔神なんたらの領域を浄化するのはこの美少女祈祷師にして浄化請負人、雨宮天空海の出番って訳でしょ?魔神達が最後に選んだ切り札!そーなんでしょ!?」

 

「いや、あなたの浄化の力と水の力は完全な自前です。だってあなたが小学生の頃に発現した時期と魔神達が昇華した時期はどう考えても合わないでしょう?」

 

「選ばれた夏草の英雄とかじゃないのぉ!?」

 

(((((神に愛されすぎている…)))))

 

クロケルが用意したカウンター術式とは全く関わりなく、天空海は高い神通力と浄化能力を有していた事に驚愕する一同。彼女だけ、何か常人に及ばぬ領域で会話と展開に殴り込んでいるのだ。

 

【アジーカちゃんと裏の夏草を観光していた所、街のいくつかにウラヌスタワーに伸びる霊脈ラインを発見した。そしてウラヌスタワーの頂上に、術式を統括する空間もな。ここでリッカ、天空海、そして…ディーヴァ。君が使命を果たすんだ】

 

「私…ですか?」

 

ニャルは頷き、うたうちゃんは戸惑う。それは、夢にも見なかった配役であったからだ。

 

【免罪には赦しと実感が必要だ。術式に、夏草にて生み出された命である君が告げるんだ。あなた達の気持ちは、確かに夏草に届いたと。──夏草の民達は、確かに幸せであるからもう大丈夫だと。君の、心を見せてやれ】

 

「なるほど。純真無垢のうたうちゃんが得た結論は、そのまま夏草の姿と我々の在り方を示す事になるわけか。うむ!会長として異論はない!」

 

そもそも偉大なる先輩が託した電子の隣人だからな!そう告げる黒神に、反論するものはいなかった。

 

「…………」

(大丈夫?責任は重大よ。あなたは夏草の総意を、今の夏草を彼等に伝える役目を担うの。覚悟は)

 

「やります。やらせてください。言葉は下手で、歌は不愉快な私でも、私は伝えたい。同じ、夏草を愛した魔神の皆様に」

 

うたうちゃんは、迷わなかった。何故ならそれは、彼女が心から信じているもの。

 

「私が産み出されてから、幸福を感じない日はありませんでした。優しい人々に祝福され生まれて、優しい人々に尊重してもらえて、夏草の一員だと認めてもらえた。ここにいる人達全員に、護ってもらえた。そんな人達の優しさを、素晴らしさは…あなたの願いがあったからカタチになったんだよと、伝えたいんです。だって私達は、同じだから」

 

人に祝福されて産まれた自分。自我を尊重されて産まれた彼等。だから、彼らの善意を護りたい。その願いは、とても素晴らしいものだったと伝えたいのだ。

 

「私は、夏草の皆を幸せにするAI。でも、幸せにするだけの道具じゃなくて、私を幸せにしてくれた人達をアンドロマリウスさんに伝えたい。私は…夏草の皆に幸せにしてもらったAIだから!」

 

(よく言えました!大賛成よ、それ!)

 

ディーヴァと違わぬ答えを導く、魔神の願いと民の心が産み出した電子の隣人。彼女は本当の意味で、人類の善性を『謳う』AIである事を選んだのだ。

 

【──。……フッ。歌が不愉快な不器用AIが一瞬でここまで進化する。環境とは、凄まじいな】

 

ニャルはその結論に至ったAIを、万感の想いで見届ける。或いはそれは…エアが尊重に目覚めた事を見たギルガメッシュの気持ちを理解した故か。

 

「言うじゃない!やっぱ血の色でもタンパク質かプラスチックかじゃなくて、どう生きるかで価値は決まるわけよ!先輩嬉しいわうたうちゃん!顔貸した甲斐があるわー!」

 

「本人より可愛いもんね」

 

「大和ォ!!もっぺん言いなさいよぽわぽわぁ!!」

 

「「『(尊死)』」」

 

「アジーカも加えて死んでんじゃないわよ緑髪ロボオタク!」

 

「──愛の女神として、太鼓判を。素敵な愛の満ちるいい街ですね。榊原さん」

 

「──ええ。本当に」

 

優しい心は、人にもAIにも宿る。その光景に榊原もまた、目を潤ませるのだった──。




ニャル【当然皆にも仕事はある。残骸を破棄するため、手当たりしだいに攻撃をしてほしい。彼の仕事を手伝ってやってくれ】

朱雀「大丈夫なんですか?反撃などは…」

ニャル【当然されるが、その分術式の浄化は早まる。そしてリッカちゃんの魂は洗浄されいいこと尽くめだ。魔神達が力を託したのは、そういう事だ】

リッカ「人員なら任せて!ギルが手はずを整えてくれた、人理の諸先輩方がいるからね!」

マルコシアス『俺は当然後方支援だ。肉体労働は雑魚だからな』

アカネ「え、じゃあ…怪獣タイム…!?」
エル「一緒に暴れてやろうではありませんか!!」

ゆかな「小林や、雪風にも声をかけるか。あいつらも運命力や運動神経は大したものだからな」

じゃんぬ「リッカ、当然私達は一緒ですよ」
マシュ「サーヴァントとして、お供します!」

リッカ「うん!うたうちゃん、行こう!夏草は、素晴らしい場所だって伝えるために!」

マルコシアス『…ゆかな。スザク。お前達のできないことは俺がやる。だから頼む、俺を支えてくれ。夏草に、リッカ達に…カッコいいところを見せたい』

ゆかな「今更カッコつける必要なんてないだろうに、…ばかめ」
朱雀「もちろんだよ。僕達は…友達だろ?ルル」

ルル『──あぁ!行くぞ皆!これより、アンドロマリウスお疲れ様大作戦を開始する!!最後の戦いだ!!』

「「「「名前だっさっ!!」」」」

グドーシ「ふふ…夏草の未来は明るいですな」
榊原「はい!」
ロマン「子供かぁ…いいなぁ…!」

ディーヴァ(しっかりやるわよ、うたうちゃん。私達の使命、果たしに行きましょ!)
「うん!夏草を幸せにするのは…私達だから!」

ソウゴ「──行け。希望に満ちた若人たちよ」

その輝きを、年長たちは優しく見守っていた─。

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