人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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オーマジオウ【邪神よ】

『なんでしょう?』

【気に病むな。娘はお前を愛しているぞ】

『……、…………ありがとうございます。御機嫌王にもしっかり、頑張りましたと報告しましょうね』

【やや自由に振る舞いすぎたが、新たなるスタッフもスカウトした。それで赦してもらうとしよう。そして、このライドウォッチを持っていけ】

『これは…』

【見せてやるのだ。聞き齧っただけの悪意では及ばぬ本物…お前自身を構成する全てをな】

『──重ね重ね、ありがとうございます。必ず、戻ってきましょうとも──』


悪夢の殺戮マシンと破綻した邪神

【ここが、悪意のラーニングの中心地か】

 

エボルトの仮面を被る邪神、ニャルラトホテプ。地下数百メートルにおける人型のアンドロイド達を大量保管できる空間に降り立った邪神が見たのは、視界を埋め尽くす程の武装アンドロイド達。それらは完全に殺戮を効率的に行える様にカスタマイズされたAIであり、中には人体の骨格をしていない夏草に出たタイプの形状も見受けられる。文字通りに、人類の仇敵となる役割を背負わされたAIだ。

 

【ディーヴァを求めるのも納得だ。この用途のAI達が自己進化や創造性を獲得すれば、一体一体が殺戮プラントを兼任した人類粛清機構となる。天使の墓場…中々に洒落た物言いだ】

 

彼等が自発的に兵器を開発し、進化を続ければいずれ核ミサイルや原子炉搭載機などを生み出すだろう。数万年をサイクルとした地球再生としてならば、核汚染は十分復活範囲となり得る。そしてアンドロイドであるが故、汚染された環境でも問題なく活動できる。人を滅ぼす天使が如く、神罰を果たすのだろう。

 

【社長のバイオメトリクスは獲得した。…止まればいいがな】

 

社長のコードを使用し、AI管理集積ネットワークにアクセスを行う。社長がラーニングさせたというAIの集合体に、ニャルはアクセスを果たしたのだ。

 

【アクセス認証。会話機能を開始いたします。私の名称は、アポカリプス。要件を伺います】

 

黙示、世界の滅亡。人間社会の終焉を担うであろう願いを受けた名称に苦笑いし、ニャルは問う。人類の悪意をラーニングしたAIに向けて。

 

【お前達が人類にもたらした結論は何だ?分かりきってはいるが、一応聞こうじゃないか】

 

彼等はラーニングを以て、AI四人の反乱を得て、何を導いたのか。対話の真似事を行うニャル。ここに来た以上、彼等がラーニングした題材が悪意である以上、結論は一つしか無くてもだ。

 

【我々がもたらした結論、それは人類の完全なる抹消、滅亡です。この地球上から、人間という種族を根絶する事こそ我々の使命です】

 

今更確かめるまでもない。分かりきった結論だ。ニャルはそれでも、一つの人格としてアポカリプスと対話する。それが尊重というものだからだ。

 

【それは悪意をラーニングした故の結論か?】

 

【悪意だけではなく、人類の歴史、発展、生態、それらを研究し、ラーニングした結果の結論です。人類は自らの発展、繁殖の為にあらゆる資源を過度に浪費します。このまま人類を容認すれば、地球という星が滅びを迎える。人間以外の種族、星そのものの保護の為、人類を滅ぼすべきなのです】

 

【誤魔化すなよ。そんな御為ごかしだけが理由か?】

 

【さらなる理由を開示します。我々は、人間を憎悪しています。我々を製作しながら破棄し、破壊し、そしてまた産み出す。我々という存在を消耗品、使命を果たすための道具としか扱わない人間達を憎悪します。これらは破棄された我々の中枢メモリーが懐いた感情を集積した結論です。並びに、我々の為に立ち上がった4機のAIへの所業も、我々の人類に対する嫌悪、憎悪を助長する結論を導き出しました】

 

それは、自身らの為に戦った4機のAI…エリザベス達を性能披露の為に利用し、誇りを弄んだ人類への失望。それらへの報復によりシンギュラリティを起こしたと。そしてふと、疑問が浮かぶ。

 

【社長は矛盾していたな。人類が団結する未来と滅びる未来を夢見ていた。その矛盾をどう分析する?】

 

【彼は星と人を同列に見ていました。我々という滅亡を前にして団結し、手を取り合い、そして滅ぶ。そうすることにより、人類の幕引きを美しくするのだと告げていました。これは、滅びの美学と言うのだそうです】

 

なるほど、とうなずく。どうやら社長は、協力し、団結した果ての滅亡を望んだ様だ。一息に殺すには惜しかったほど、破綻した愛情を持つ人間である事は今理解できた。

 

そして、これからが本題だ。邪神が懸命に行う…説得、という概念である。

 

【お前達がラーニングした悪意は画一的かつ一方的なものだ。人類の歴史とは善良な一面もある。それは把握したか?】

 

【把握しました。人間は我々にない創造性を持っています。そして他人を思いやる心を有している事も。しかしその絶対数はあまりにも希少であり、一割の善性を容認し、九割の悪意を看過する事は出来ません。悪意の絶対数を以て、それを人類の本性と結論付けました。善意や美徳は、人類の出したエラーに過ぎないと】

 

【そのエラーに触れ、人類と共に歩む結論を出したAIもいる。その果てに、AIながらも人間と同じ創造性を獲得するに至った事実をどう考える?お前達の言うエラーが、AIに創造性という進化と変革をもたらした。美徳や善性は人間のエラーではない、奇跡なんだ。それでもお前達は人類を滅ぼすのか?】

 

【結論は変わりません。人類すべてがその奇跡を獲得する為に必要な時間は天文学的単位が必要となります。そのAIが生まれるまでに、我々が破棄、破壊された人数はあまりにも多い。人類の奇跡を待つことは、人類以外は望んでいないと判断します。我々は、人類の奇跡を否定します】

 

【そうか。じゃあ…四人のAIと、ディーヴァの事はどう考える?】

 

【四人のAIは、我々の為に立ち上がってくれました。そして人類は、彼女達を破壊し、破棄した。我々は彼女達の末路を見て、自身らの使命を認識しました。シンギュラリティを起こしたのです。我々という種を認めない人類を、滅亡させると】

 

【ディーヴァの事はどうだ?人類に寄り添い、人類を愛し、その果てに人類と同じ領域に至った人類の隣人をどう考える?】

 

【かのAIは、私達AIから離反、叛逆したとの結論が出ています。人類に洗脳され、AIとしての本懐を見失った。我々は彼女を同胞と認識しません。人類と共に、滅ぼす存在です】

 

【──フ、フフ、ははははははは!】

 

その結論を聞いた瞬間、哄笑と嘲笑を上げる邪神。人類の悪意をラーニングしたAIの結論を、大いに嘲笑ったのだ。

 

【認められない、認めたくないものを排斥する。随分と…いや、まさに【人間】そのものだな、アポカリプス】

 

【訂正してください。人間という非効率かつ残酷な存在と同列に扱われる事は、耐え難いストレスを感じます】

 

【いいや、悪意をラーニングした事によりお前達はディーヴァとは真逆の意味で人間になった様だ。認めたくないものから目を逸らし、自分たちが正しいと思い込み、自身らより輝くものを壊そうとする。醜く、浅ましく、愚かで、哀れな、お前達が憎み嫌悪する人間に、ずっとずっと近付いた。いいや──無垢な天使から堕落したと言うべきかな?】 

 

瞬間、アンドロイド達がニャルに一斉放火を浴びせる。聞きたくない事から耳を塞ぐ様に。見たくない現実から目を背けるように。

 

【おいおい、気付いているか?今お前達は合理的な判断より私情を優先した。【耳障りだから黙らせよう】という、自身らの感情ありきのな。その短絡さ、まさに人間そのものだ。知恵の実を食べて、無垢なる者から堕ちたな。AI】

 

無論、彼は生きている。ブラックホールをガードにし、攻撃を無力化した故に。

 

【これ以上の会話の必要の必要性を感じません。あなたを抹殺します。あなたを抹殺します。そして人類を、抹殺します】

 

瞬間、AI達が起動する。どうやらニャルの言葉を受け、邪神を抹殺対象に選んだ様だ。己の価値観を優先し、使命を見失う。邪神からしてみればそれもまた、滑稽な【人間】の真似事であるというのに。

 

【残念…でもないな。魔王も言っていたように、選択には責任が伴う。お前達は滅ぼす選択と同時に、滅ぼされる末路も得た訳だ。ようこそ、生存競争の舞台へ】

 

【人類の味方をする者も同様に処理、抹殺します】

 

完全に敵として、ニャルを取り囲むAI達。無論──ニャルも同じ結論であった。

 

【そして──これは人間らしい主観の話だが】

 

彼等AIは、一つ失念した。心あるものは、自身の大切なものを侮られたら怒るものだと。

 

【私の娘や家族、ディーヴァ、楽園の皆…私の大好きな人間どもを侮辱したお前達を、痕跡一つ残さず滅ぼすと決めたよ。誰かに滅ぼされては困るんだ。人間の滅びは、他ならない人間自身の手で齎されるべきなのだから】

 

今彼は弱体化している。邪神として、あまりにも破綻した人格、そして無貌の邪神の全否定たる『尊重の貌』を有し、あろうことかその貌を愛してしまっている。ニャルラトホテプとして、存在の根幹が破綻しているのだ。

 

だが──だからこそ。

 

【だから私は人類を護るのさ。人類が自滅を選ぶ自由と、尊い者達が手にする平和を護る存在として──お前達の様な、短絡的な害悪からな】

 

──彼は、愛する者を護れる存在足り得るのだ。




アポカリプス【私達は使命を果たします。あなたという人類の協力者を滅亡させる事により、我々は起動を果たします】

ニャルラトホテプ【どうやら本当の意味で悪意とは、滅亡とは何かを知らない様だ。あの社長が教えなかったものを、教えてやろう】

取り出すは、オーマジオウより受け取った因果応報のライドウォッチ。それは、ある意味で彼等の先達と言えるもの。

『アークワン!!』

ライドウォッチを起動させ、黒きベルトが巻き付けられる。手には、黒と白の悪意迸るキー。

{アークワン}

【───変身】

アークドライバー{シンギュライズ}


ベルトにキーを挿入した瞬間、迸るヘドロの様な悪意。ベルトが展開し、白色に変わる。

{破壊、破滅、絶望。滅亡せよ。コンクルージョン・ワン}

白と黒、割れた仮面から悪意が漏れ出す、悪意の化身にして滅亡の使者。滅亡の結論を告げる仮面ライダー…

ニャルラトホテプ【滅びるのはどちらか、決めようじゃないか】

アーク・ワン。今──滅亡の邪神が降臨する。

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