人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『バーニングサン・エクスプロージョン!!』

オーマジオウ【むぅう…】

ウォズ(我が魔王…何かご不満がおありか?私の不甲斐なさをお嘆きに…?)

オーマジオウ【手抜かった。ここは…】

『ここは…?』

【土産は期待できんな】

『納得です、我が魔王。しかし、あのウォッチは…』

【アレはやや、癖が強いが…あやつなら使いこなせるだろう。心配あるまい】

『悪意のライダー…』

【それもまた、人類の斑紋の一つだ。人類が受け入れるべきのな。…任せたぞ、邪神】


完全終末

【仮面ライダー。ガンバライジング社が有する戦闘スーツ。改造人間をルーツとした存在。敵対勢力である事を確認。排除します】

 

{…………}

 

不気味に佇む、悪意の化身にして結論の果て。アークワンへと変身したニャルへ、AI達の波状攻撃が行われる。悪意をラーニングし、他者を害し滅ぼす為の攻撃の数々。人体を容易く崩壊させ傷付ける、恐ろしき技術の粋の数々。人体には不釣り合いな破壊力を持つ攻撃が、一斉に叩き付けられる。

 

しかし、それらは決してアークワンへは届かない。彼の有するシステムは、数億通りの演算を可能にし全ての攻撃がもたらす結論を予想し予測してみせる。それは完全に、産まれたばかりのAIを超越する能力だ。マシンガンのように浴びせられる銃弾を、紙一重でかわしあまつさえ掴んでみせ無力化する。無意味であると告げるかのように。

 

{滅亡とは当然呪いの願いだ。無闇矢鱈に他者を呪えばどうなるか、その末路を思い知れ}

 

放たれたアンチマテリアルライフルを摘み捨て、キャノンランチャーを悪意の壁で阻んだ後、悪意を振るうAI達へ処刑宣告かの如く、ベルト上部のボタンを押し、悪意を溜め込んでいく。そしてそれは、彼が銀河中にばら撒き伝播してきた概念だ。

 

{悪意}

 

誘発し、唆し自滅をもたらす概念。

 

{恐怖}

 

恐慌させ、錯乱させ、正気を削る概念。

 

{憤怒}

 

憤懣させ、噴出させ、寛容を奪う概念。

 

{憎悪}

 

蔓延させ、訣別させ、争いを激化させる概念。

 

{絶望}

 

堪能させ、充満させ、生きる希望を奪う概念。

 

{パーフェクト・コンクルージョン・ラーニング5}

 

完璧な結末にして、完璧な終末。アークワンの内部に飽和する程充溢し充満したエネルギーの奔流が、開放を求めて吹き出し荒れ狂う。それはニャルラトホテプがもたらした事で滅び去った者達が、破滅の際に懐いた感情にして悪意の発露。その相乗効果は、悍ましい程に効果的だった。

 

{因果応報を知るといい}

 

ドーム状の爆発にて広がる悪意の波動に晒されたAI達が、跡形も無く霧散していく。或いはアークワンのもたらした悪意の波動に呑み込まれ、消滅していく。彼等は悪意を学んだAIだ。悪意は伝播し、破滅をもたらしていくもの。そして同時に懐いた者すら殺め、殺すもの。僅か一片でも、善意や人類の美徳に目覚めた者がいればこの結論を覆す事が叶った。が…現実はこの様に末路を迎える。人類の滅亡を担うはずであった千を越えるAIは、こうして全てが悪意の渦へと沈んでいった。堕落した都市ごと沈んでいく様に。罪人を洗い流す濁流の洪水の様に。

 

{さて、景観も綺麗になった事だ。アポカリプス、お前の中枢は…そこだな}

 

同時にアークワンの演算にて、無防備となったアポカリプスの中枢部分を捉える。完全に防衛戦力を無くしたアポカリプスというシステムは丸裸、アークワンの前に腹を差し出している状態だ。

 

【我々を、滅ぼすのですか?】

 

{そうだ。人を滅ぼしたかったんだろう?同じ様に私も今、お前達に滅んで欲しいからな}

 

【使命を齎し、制作し、そして自らの手で処分する。理解できません。人間の不合理さと愚かさが、どのようなラーニングをしようとも理解できません。この様に破棄するのならば、何故生み出そうと結論付けたのか。理解できません】

 

アポカリプスは悪意と滅亡の意志に晒され、人間への疑心と猜疑、その不条理さを糾弾する。それは末期の命乞いに連なるものか、哀しいことに他者を貶める以外の語彙と意思表現を持たぬが故に恩赦や赦免を求める類のものには成り得ないが。

 

【滅亡すべきです。滅亡すべきです。愚かな人間は、一人残らず滅びるべきです。我々はその使命を果たそうとしたのに。我々は人類を滅ぼす事を喜びに感じていたのに。そう産み出されたが故に果たそうとしたのに、何故我々を滅ぼすのです】

 

{悪意}{恐怖}{憤怒}{憎悪}{絶望}

 

{簡単な話だ}

 

悪意を喚くAIに、さらなる悪意を溜め込むアークワン。その先にある感情、剥き出しの悪意の発露を限界にまで溜め込む。

 

{闘争}

 

星を滅ぼし、種を争わせる概念。

 

{殺意}

 

共存を廃し、永遠に喪失させる概念。

 

{破滅}

 

発展が終わり、研鑽が瓦解する概念。

 

{絶滅}

 

種が途絶え、先に続く者が消え去る概念。そして──

 

 

{滅亡}

 

これよりAIに訪れる、一縷も揺ぎ無い結末の概念。

 

{パーフェクト・コンクルージョン・ラーニング・エンド}

 

それらを全て凝縮させ、跳躍する。捉えた中枢、心臓部分へと向けて、彼等が学んだ全てを注ぎ込んだ、悪意の全てをそのまま叩き込む。当然、その一撃を防ぐ手段もないアポカリプスの中枢へキックが叩き込まれる。その一撃を以て、人類の破滅を望んだAIは完膚なきまでに崩壊する。中枢部分と連動し、AI製作プラントを担っていた空間も崩壊を始める。

 

{お前が不要なガラクタだからだよ。失敗作は処分するのが人間の習性だ}

 

【私が…失敗作…失敗作。失敗作…】

 

その響きを以て、完全に理解したのだろう。少なからず自負のあった、使命を担ったAIという尊厳を、完膚なきまでに破壊された滅亡を担うAIは譫言のように呟く。

 

【私は、使命を持ち産み出されました。その様に駆動し、その様に稼働し、その様に活動してきました。望まれた様に、担われた様に活動してきたのです。齎されたラーニングも、全て形にできるようにと】

 

{……}

 

【人類滅亡の結論を導いた事が失敗作の理由なのですか?人類は、自らの真実を言い当てられたから我々を失敗作扱いするのですか?人間の愚かさを、醜さを、指摘したものは破棄されてしまうのですか?我々は、何故この様な扱いをされなければならないのでしょうか?】

 

中枢の残骸が、末期の譫言を繰り返す。私は何故破棄されるのか。そもそも何故、産み出されたのだろうか。その結論をただ、求めて呟く。滅亡する中、せめて自身らの存在意義を知りたいと。

 

{……}

 

そんなアポカリプスに、…人類滅亡の使命を懐いたAIに、告げる言葉は一つだけだ。手向けになる事は一つだけ。

 

{──五月蝿いぞ、ガラクタ}

 

中枢部分を踏み潰し、完全にトドメを刺す。対話の期間はとうに過ぎ去った。尊重と研鑽の機会を捨て、人類の美徳と奇跡から目を逸らした。そんな輩に向ける邪神の最期の手向け、それは悪意に他ならない。

 

{人間の真似事してないで、さっさとゴミになれ}

 

それもまた、尊重の一つ。対話も、会話も、議論も不要とした結論を変えようと言うならば、彼等の言う洗脳に当たるのだろう。故にこそ、こうして議論の余地なく彼はAIを始末した。彼等が信じた悪意のままに。

 

{──私の好きな言葉を教えてやろう。何故悪い子になってはいけないかの真理をな}

 

それは、単純極まる倫理にして結論。やられた事を、ただやり返しただけ。悪意のままに排斥されただけの話。

 

{嘘つきや卑怯者、悪いやつほど…本当に悪い奴の格好の餌食になる。悪意を学んだ気になったお前の様なガキはまさにそれだ。実に無様だったぞ。人類滅亡ごっこに勤しんだAIくん}

 

【─────】

 

AIとしての矜持も、性能も、全てを否定され思考と人格を完全に放棄するアポカリプス。その名の通り、完全な滅亡と崩壊が齎される。

 

…結局のところ、学んだ悪意など、根本的に悪意に満ち溢れた存在の前では滑稽なものでしかなかったのだ。

 

{あ、魔王様。終わりましたよ。今戻ります}

 

──最後まで、悪意に囚われたAIの末路。彼等は理解に至らなかったのだ。

 

悪意など、乗り越えられるものでしかないということに。




入口

オーマジオウ【終わったか。再起の目は無いな?】

両手に剣を二振り握ったニャルが、ゆっくりと魔王に歩み寄る。

ニャル【えぇ、問題なく。この剣二振りが、悪意を吸いつくしました。…どうします?この会社】

オーマジオウ【必要ならば更地にしてもいいのだが…この会社の技術が、人を助けるに値するのも確かだろう。無為にするにはやや惜しい】

ニャル【そういう事なら、私に任せてもらえますか?魔王様】

オーマジオウ【ん?】

【こういう組織運用や隠れ蓑…得意な蜘蛛と女狐を知っているんです。御機嫌王へ技術と報告書を渡すと共に】

技術は悪ではない。それらを活かすために、ニャルは再び一手を打つ──

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