人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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市長室 

内海「果たしてくれたか、皆。よくぞ、我等大人に果たせぬ戦いを乗り越えた…」

(アスモデウス、ダンタリオン。…さらばだ。お前達に見出された財宝、夏草の為に費やすことを改めて誓うぞ)

「さて、藤丸の帰参もある今、何か市長としてやってやれる事を探さなくてはならんな…何が喜ぶであろうか…」

?「ふははは、ならば我のプランに耳を傾けてはどうだ?我等が龍の身元請負人として、奴等の慰安…並びに護らねばならぬ小粒の秘宝を庇護してやるぞ?即ち、この夏草をな」

内海「ヌゥ!?そなたは…!?」

──こ、こんにちはー!

はくのん「月から失礼します」




旅行はプランニングが楽しみの七割

「それでは改めまして皆様!おはよう御座います!そして大変お疲れ様でした!我等夏草絶対救い隊の頑張りと奮闘により無事に贖罪と看取りは終わり、善悪二元の夏草はいつも通りの愉快な夏草となりました!これも一重にリッカさんの特異性を受け止めてくださった皆様の暖かいご厚意があればこそであり!無念かつ遺憾ながら夏草を早期に離れてしまった私としても大変喜ばしい事であることは最早語るに及ばず!で、あるからして此度は観光という本来の目的に立ち上り…」

 

昼時に差し掛かる夏草、グドーシ邸にて。跳ね起きた早苗を始め徹夜で奮闘し続けた夏草の者らがロマン、カーマ、榊原を始めとした者らによって作られた朝食と昼食を堪能しながら覚醒を促している。元気よく演説をかます緑髪のうるさい方、早苗のバイタリティには半分呆れの入った驚愕が浮かんでいる。

 

「神様とはタフネスじゃないとやっていけないんだな…頭を使っていた俺もこれほど疲れているというのに…」

 

「能力の習熟の差が出たのかもね。聞いた話だと、幻想郷って場所で日々修行してたみたいだし。プラモバトルのダイブ時間が長いと慣れる、みたいなものと一緒かも」

 

「そういうヤマトちゃんだってピンピンしてるじゃん…私は怪獣になってバチボコにやりあったから全身が筋肉痛なんだぁ。リアルファイトなんていつ以来だよぅ…」

 

「ガンバスターこそ人類の希望!やはり純人類製のスーパーロボットというのは本当にいいものですね!!」

 

「ここに早苗ちゃんばりに元気なのがいるんですが…」

 

「言うな、アスカ。ヤツはミノフスキー粒子を食べれば生きていけるタイプの人間なのだろう」

 

「朝ピザは流石にダメか?ダメか…」

 

思い思いの所感を告げながら、朝兼昼御飯を食べていく一行。疲労はあれど、負傷はない。その事実に感謝しながら、穏やかな一時を過ごしていく。

 

「皆、食べながらでいいから聞いてね。本当にお疲れ様、そしてありがとう。皆のお陰で、あるべきものはあるべき場所へと還りました」

 

そんな折、榊原が代表して話の口火を切る。これにて、ある意味で二つ存在していた状態の夏草は正しい状態へと立ち戻った。これにて、潔癖な善と汚濁の悪と切り分けられることなく、穏やかに夏草の時間は進んでいくだろう。

 

「ボクも、所長に変わって…あいつらに変わって御礼を言わせてもらうよ。人理保障機関、カルデアの任務に協力してくれてありがとう。そしてもっと言うなら、君達の心が、ボクらの希望を繋ぎ止めてくれていた」

 

「希望とはリッカの事か?いやはや、どんな手間を加えればこんな逸材になるのか非常に興味があるよ、私は」

 

「えへへ〜。美味しい御飯と柔らかいふかふかベッド、適度な運動が秘訣だよ!」

 

「僕としてはマルドゥーク様という遙か先の未来にして原初のスーパーロボットを所有しているカルデアという組織に非常に興味があります!!どんな活動をして、どんな組織なのか…!ぜひぜひ、見学プランなどを組んでは貰えませんかね!?」

 

「…ん。進路の問題も近いし、そこら辺はおいおい話して行こっか。今は特別休暇でもあるから、まずは夏草の色んなところを回りながら、リッカや皆の口から仔細を聞く、ってことで」

 

「「「「さんせーい!!」」」」

 

榊原の提案に賛成した一同の話題は、自然と夏草の観光名所に移っていく。千葉県のほぼ全域をカバーしている夏草市は、スポットのみでも軽く50は越える。一週間遊び回るにしても、地点を絞らねば一つ辺りへ向き合う時間は非常に短くなってしまう。

 

「デスティニーランドは外せなくない?テーマパークの王道…というか、普段怪獣しか見てない私が絶対行くことのない場所だから今しか行く機会無いし…!」

 

「はいはいはい!あたしが客引きやってる夏草水族館とかマジオススメよ!シャチがいるのシャチが!日本で二箇所しかいないのよ!シャチがいる場所!」

 

「金狼寺、まだあるよね!?あそこの住職さんには凄くお世話になったんだよ私!元気かな、会いに行きたいなぁ!」

 

「寺とは中々渋いですね…!しかし現人神であるこの東風谷はこの冠陽神社は外せないと思います!伊邪那岐様や伊邪那美様を始めとしたもう神なら大体祭神とされる節操のない凄い神社を視察したいですね!守矢の現人神として!」

 

「私としては、やっぱり商店街エリアがお勧めかな。古き良き駄菓子屋とか、古くはあるけどあそこにしかない場所がある風情が凄くオススメだよ。最近、駄菓子屋は少なくなる一方だしね。夕方からは関くん達も安売り弁当争奪戦に入るみたいだし」

 

「ピザを買い込んで公園巡りは私のオススメだぞ。アンデルセン公園やロマンの森なんて面白いスポットもある。ベンチに寝転がりながら食べるピザは最高だぞ?チーズが顔にかかって叫んだりしたが」

 

「そこは普通に夏草教会をお勧めするところじゃないのか、ゆかな…。皆にも見てほしいんだがな。人を翫ぶ魔女のような言動のお前の、清楚なシスター姿をな」

 

「逆にデカいモールなら、夏草マイティモールとかどうです?首都圏最高クラスのモールで、歩いているだけで一日を楽しく過ごせる場所ですよ。ヤマトさんやサラなんかいつもあっちこっち行って探すのがホント大変なんですから」

 

「何を言っている。お前がいつもはぐれるんだろう」

「ふふ、いつもごめんね。ありがとう、アスカ」

 

「…ヤマトさんは怒るに怒れませんが、アンタは迷子の自覚がない辺り本当に厄介だな…」

 

「ふむ、海上の景色を楽しみたいなら『海鷹』。牧羊的な光景を楽しみたいならママ牧場を推薦しよう。乳搾りに羊の毛刈り、アルパカとの触れ合いを体験できる。生徒会長役務に疲弊した週には、一人で牛と戯れているぞ」

 

「…皆様の意見は様々ですが、移動距離や手段を考慮されていません。私がディーヴァと、最適なルートや順番を計算します」

(これが人間がよくやるという、『行きたい所を片っ端から入れたけど移動時間と滞在時間を考慮してない』問題なのね。酷いと一つのスポット滞在時間が5分とかになるみたいよ?)

 

「ははは、久方ぶりの帰郷に加え朋友との旅行プラン。気持ちが浮き立つのも無理なき事に拙者は思われます。拙者は皆様の行きたい所が、拙者の行きたい所にございます故」

 

「グドーシさん。もしよかったらどこかレジャーホテルやスパに行きませんか?混浴がある感じの所で」

 

「おぉ、それは。リッカ殿やカーマ殿とお入りできたら心から有意義な一時になりましょうぞ」

 

「えぇ、そうでしょう!…………?????(自分の企みが受理されたのと微塵もラブコメの気配がしなかったブッダ式混浴了承にポルナレフ状態になるカーマ)」

 

「出来ればカルデア職員の皆も羽根を伸ばしてほしいからなぁ…どこか大掛かりな拠点になる場所、ないかなぁ?マリーやゴッフさん、シバにもたまにはオフは必要だよ!せっかく取り戻した外界に、たまには触れるのもさ!」

 

会議は踊る。パンフレットを見たりうたうちゃんの目からビーム式スクリーンを囲みながら言う、ああでもないこうでもないといった旅行の計画。当たり前の、学生の時間。

 

「ふふ…。これから楽しみね。…おっと」

 

見ればスマートフォンに連絡が来ている。秘匿通信…『市長』と書かれた連絡先に素早く返信する。

 

「はい、榊原です。…はい、はい。…本当ですか!?わ、わかりました。お伝えします」

 

(内海さん、あなたは…思いきりが良すぎるというか…)

 

「──皆、聞いて。伝えたい事があるの」

 

連絡を終え、榊原が皆に神妙な顔を向ける。何やら奇想天外なる下知をうけた、彼女から語られる話題とは──

 

 




天空海「なんか怖い!怒られる時みたいのやつ!」

ルル「如何になさいました?先生。先の連絡が、何か?」

榊原「えぇ。──内海市長からよ」

うたうちゃん「内海市長から…!」
(緊急連絡かしら!?)

一同が身構える。それは、夏草で最も偉い者の言葉だった。

「えぇ。──みんなの活躍、大変喜んでいたわ。まずはその事を伝えます。そしてなんと…!」

「「「「なんと…?」」」」

「その功績を祝して、今から数日間!夏草スパランド『高天ヶ原』が私達に貸し切りとなりました!夏草にリッカが滞在している間、自由に使っていいそうよ!」

生徒一同「「「「「はぁ───!?」」」」」

ロマン「高天ヶ原って?(ヒソヒソ)」

うたうちゃん「東京湾に面した約5万6,000坪の広大な敷地に、温泉や屋内外のプール&スパ、全室オーシャンビューのホテル、エンターテインメント施設などを備える複合型リゾートです。その敷地通り、超広大な場所で貸し切りだなんてどれ程の費用が必要なのか検討も…」

ロマン「とんでもない一級地じゃないかー!?え、貸し切り!?本当に!?」

榊原「詳しくはスパランド新オーナーに話を聞いてほしいそうよ。名前は…『ギルガメッシュ』さんという方ね。さぁ皆、一旦解散して支度を整えましょう!」

ロマン「君かーー!!」

マシュ「おはよう御座います!なんの騒ぎですか!?」

リッカ「ゴージャス炸裂!!」

マシュ「えぇ!?」

夏草の旅行、その足掛かりがゴージャスにより確定した瞬間であった──。

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