人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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マシュ(キョロキョロ、キョロキョロ)

リッカ「どったの?」

マシュ「じゃんぬさんの姿が見えません…ですが姿が見えないのは必ずリッカ先輩の為に何かをしている為と見抜いています!必ず私の予想を超えてくるはず!」

じゃんぬ「別に大したことして無いわよ?」

マシュ「じゃんぬさん!!」

じゃんぬ「はい、これ。リッカ」

リッカ「これ、パンフレット?」

じゃんぬ「夏草のスポット一つ一つの今のオススメを纏めといたわ。これで一年のブランクも安心よ?」

マシュ「じゃんぬさん!!!」
リッカ「ありがとー!大切に大切に活用するねっ!」

早苗「カーマさん、私は思います。性別に囚われてはいけないのだと!」

カーマ「まぁ、グドーシさん以外皆女性でも最悪構わないかもとは何回か…」

ロマニ「問題あるよ!?」

カーマ(圧倒的正ヒロイン力です…私も見習わなくては…!)

じゃんぬ「まぁその前に、ゴージャスな王様のやりすぎなくらいな恩賞が待ってるでしょうけど──」


報奨授与〜ゴージャス式学生歓待の図〜

「ふ────はははははは!!突如叩き込まれた非日常、我等が愉しむ愉快な日常に巻き込まれながらよくぞ我等が龍と並び立った!その意気軒昂、その気炎万丈実に良し!リッカと肩を並べるに相応しき有望なる種子共よ!端的に言って見事であった!その奮闘、我等を存分に愉しませたぞ!誇るがいい!雑種蔓延る現世に輝く秘宝共!」

 

普段の彼を知るものからすればまるで想像できぬ程に朗らか、そして嵐のように怒涛、そして痛快極まる賛辞を投げる黄金の王。リゾートホテルのロビーに招かれた一行に浴びせられた褒め殺しは、海を超えて富士山に轟く程だ。

 

「相変わらずとんでもない上機嫌ぶりね。慣れるとこの高笑いが無いと座りが悪いのがまた厄介よ。誘い笑いってやつ?」

 

「めっちゃ尊大な口調から、かつてないくらい褒めてくれる…!褒めて伸びそう、一日に1メートルくらい…!」

 

「アカネちゃん伸びスギィ!紹介するね、彼が私達カルデアという組織の王にして総大将!押しも押されぬ最古の王にして、愉快痛快天上天下泰平御機嫌王!その名も!」

 

瞬間、宙から金色一色、黄金のみにて造られた特注の浴室が厳かに舞い降りる高天ヶ原の名物、K18黄金風呂仕様。素材 18金無垢、貴金属工業謹製。仕様 外寸縦700mm、横1,200mm、高さ650mm。時価2億9000万のゴージャス風呂、そこに身を浸しし黄金の王──

 

「そう!我こと御機嫌王ギルガメッシュよ!即ち我だよ!!ふふははははは!赦しなく我を見るななどさもしい事は言わん、浴槽に降臨、2つを同時にこなすゴージャスに目を凝らすがいい!いや実によい、我にふさわしい浴槽があったものよ!夏草、気に入った!並びに貴様等も同様にだ!よろしくすることを赦してくれるわ──!!」

 

「空から風呂入りながら降りてきたんですけどーー!?」

 

一同の驚愕と瞠目を一身に集め、ゴージャスは黄金の浴室にて痛快に笑い飛ばすのであった───。

 

 

「閻魔亭は神秘、こちらは科学といったところか。しかし金の浴室とは思い切った催しをするではないか。もしやこれが我等とリッカめの縁となったのか…?」

 

スパ衣装となり、腰に手を当て牛乳を飲み干す御機嫌王。妙な所で夏草に親近感を感じ取りながら寛ぎ倒すその姿に、おずおずと榊原が手を挙げる。

 

「王、様。余暇を楽しむ最中すみません、発言をよろしいですか?」

 

「許すぞ、賢人。述べるがいい」

 

マッサージチェアに腰を下ろし、一行を見下ろすギルに榊原が上申を告げる。リッカらはともかく、そこらのセレブや芸能人など足元にも及ばない彼の王気に二の句を告げられない生徒達への配慮である。

 

「まずは彼等を秘宝と称してくださった事に感謝を。そして、リッカを何より大切にしていただいた事にも」

 

「良い。礼を言われる事はしておらぬ。そこな龍は自らの意志で羽ばたいたのだ。我等はその為に鱗を磨き、爪を磨き、牙を研いだに過ぎぬ」

 

マッサージチェアに揺られながらもその王気はそのままに榊原に応対するギル。その威風堂々たる姿にも、榊原は退く事がない。ともすれば泡を吹く輝きに、毅然と教師として応対する。

 

(セレブだ…!芸能人とかじゃない石油王な感じの!天空海先輩が目じゃない感じの!)

(どういう意味よアカネぇ!私だって調子いい時はあれくらいやれるんだから!)

 

(彼が、リッカの留学先の王ギルガメッシュ…じゃんぬさんが本当にジャンヌ・ダルクなのだとしたら、彼も必然的にウルク第五王朝の王、ギルガメシュという事に…)

(高笑いしてお風呂入って牛乳飲んでるあの人が…?)

(あの方がマルドゥーク神のパイロットですね!!絶対にそうですね!!)

 

頭を垂れながらヒソヒソ話を行う、ともすれば無礼にも繋がる対応にも御機嫌王は目くじら一つ立てない。なぜならば、彼は常に御機嫌であるからだ。

 

「ふはは、生徒共の自主性に満ちた呟きが聞こえるわ。思えばリッカめの運命を変えたのもまた貴様等夏草の民であったな。貴様らが雑種の群れであったなら、我等が龍は人類が滅ぼす悪でしか無かった。あり得ざる獣の在りようも、大きく変わっていただろうよ」

 

「すみません、大変な無礼を。ですがお許しを。真なる王への謁見と拝謁の栄は、我等凡俗に受け止めるに余りあり…」

 

「フ、良いといった。加えてその礼を弁えた応対、真に聡き者にしか振る舞えぬ気品の有り様だ。貴様の生徒という故に、無礼の免責には充分に過ぎる。──我が楽園に貢献した礼、夏草に尽力した礼。共に貴様らにくれてやろう。我と、市長たる内海めがな」

 

そう言ってギルは指を鳴らし、榊原に資料を賜す。そこには一人ひとりの生徒の名前と、名称の記名欄がある。

 

「貴様らは学生、並びに高校生という人生の岐路に立っているな?リッカめの進路はほぼ内定しているから良いとしてだ。せっかくの羽伸ばし、未来を憂いていては存分に楽しめまい。報奨として、貴様らに誂えたものをくれてやる!喜べ!」

 

「と、といいますと…?」

 

「志望する職業、就職先、進学先を書くがいい!その進路に進む為の奨学金、塾講制度、コネクション!全て我が負担してやろう!努力せねば道は拓けぬ、しかし努力は報われるとは限らぬ!ならば貴様らの努力!我が必ず『報いて』やろうではないか!貴様らに、望む未来の道筋をくれてやる!!」

 

「「「「「え───えぇえぇー!!?」」」」」

 

望む場所への、望む人生への道筋。或いは未来への選択。それらを一人ひとりに完全に委ねる環境をゴージャスは託す選択をした。資格が必要ならば習得の為の環境を、学力が必要ならば望むままの勉学を。資金が必要ならば無利子無担保の奨学金を。彼等の人生の選択の『不条理』を破壊し、未来を選択する『尊重』。それこそを、彼等学生への褒美としたのだ。

 

(こ、これって!一流企業とか、やりたい職業とかに必要な勉強や資格習得を個人でやれるってこと!?)

(奨学金、塾講費用も全額負担とは…!特待生、スポーツ推薦扱いのようなものではないか…!)

 

アカネ、黒神も驚愕する。しかしそれは決して、楽をするチケットではない。

 

(あくまでこれは挑戦権だ。学ぶ機会、挑む機会というだけで確定された成功の証ではない)

(研鑽と進歩をしなければ、機会を棒に振った愚者に成り下がる、か。随分と自主性に任せてくれるんだな?)

 

ルル、ゆかなの言うようにこれはあくまで世の競争社会、社会の理不尽、止むに止まれぬ事情を乗り越えさせるだけのもの。本人の努力無くして、成功はあり得ない。ただ──『報われる努力』の場を整えたもの。成功も失敗も、託された者のものだ。

 

「よろしい…のですか?学生にとって、これ程の優越は無いと教師の立場から言わせていただけるものを…」

 

「構わぬ。才気溢れるリッカめの盟友が、下らぬ世の不条理に潰され落ちぶれる無様を晒せば何より曇るが誰かは明白。支援はするが後押しはせぬ。我等がかけるは期待と激励のみよ。──そして、これは貴様への報奨でもあるぞ。賢人」

 

そう、生徒には挑戦の権利が与えられた。望む未来、望みの人生を手にする挑戦権が、だ。そして──その未来を掴むには、優秀な導き手が必要である。

 

「教師として存分に辣腕を振るえ。こやつらの望む勉学の資料は市長が自腹で提供するそうだ。比類なき才覚を活かすも殺すも──貴様次第だぞ」

 

「…ありがとう、ございます!最高の報奨、謹んで受けさせていただきます!」

 

「これミストップモデルとか書いていいの!?留学とか本人に会えちゃうの!?」

 

「バーチャル権威として、研究に没頭とかも出来るのかな…」

 

「教会に纏めて支援金を渡してやるか…」

 

未来の見えぬ不安を取り払われ、希望と喜色に満ちる学生達。リッカとマシュ、早苗やじゃんぬなど進路が決まっている者達は、笑顔で顔を見合わせる。

 

「先行きの見えぬ人生の煩悶、確かに我が打ち払った!望むままに努力し奮起する選択を貴様らに与える!なればこそ、此度の観光と遊興にも打ち込めると言えよう!存分に学び、遊べ!!青春の謳歌──それを!貴様等への報奨とする!異論はあるか!!」

 

「「「「「ありがとうございます!!」」」」」

 

「ならばよい!!では後は任せたぞロマニ!これより我等は二度風呂だ!ふふははは!湯治はよき文明な!」

 

告げるだけ告げ、賜す賜し自室へと戻るギルガメッシュ。愉快な黄金の残光は、彼等の魂に焼き付く。

 

「リッカ。君の身請け人はなんというか…とても凄いな…」

「あの凄さに、私達は助けられてきたからね!」

 

ルルの言葉に胸を張るリッカ。無限に広がった未来に胸踊らせながら、一同は高天ヶ原ホテルの部屋へと向かうのであった──。

 

 

 

 




伊邪那岐亭(最高級客室)

ギル《ふはは、恩賞を渡す程度で一時を費やすとは。詳しい施設の堪能は夕方になりそうだな。しかし学生への贈り物には難儀したな。ただ推薦だけでは堕落や慢心を生む。挑戦の機会と環境とは──流石は我が至宝。慧眼よな》

──進言、お役に立って何よりです!この機会に皆様も存分に羽根を伸ばして参りましょう!…ですが、あの。そのう…

《む?どうした、エア?》

──こ、このお風呂は大変、大変…き、気恥ずかしいのですが…っ。

エアが萎縮しながら入浴する風呂、それは高天ヶ原もう一つの名物──

《何を言う。お前の為にあるような風呂ではないか。ふはは!持ち帰るか?》

──だ、ダメです!フォウも張り切ったお陰で、湯船が虹色に…!

フォウ『プレシャスパワーはエリクサー並みのパワーがあるぞぅ!』

それは夏草、千葉における世界初。時価3億8000万の純プラチナ風呂。外寸:縦700mm、横1,200mm、高さ650mmの空間に注がれる虹色の秘湯に、ギルに促され申し訳無さげに入浴するエアの姿がありましたとさ──

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